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家庭的な颯:03
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食後の食器を重ねながら
柊がふと手を止めた。
「洗い物、俺やるよ」
「えっ、いいんですか?助かります」
颯はすぐに笑顔で返し
スポンジや洗剤を手渡してくれる。
その動きも手際がよく
さすがだなと柊は内心感心していた。
黙々と並ぶ食器を洗いながら
水の音に混じって
颯の声がふわりと響いた。
「……先輩、今日の部長
こないだと同じ事言ってましたね」
柊は手を止めずに応じる。
「はは。あの人、忘れちゃうんだよ
俺はもう何百回も聞いてるよ」
「ふふっ。僕こっそりメモしてました。
今日ので、17回目でした」
頬を緩ませながらそう言う颯は
食器棚に箸を戻しながら
ニコニコと笑っている。
「……ほんと神城は
ニコニコしながら毒吐くよな」
「えっ、そんなことないですよ~?」
小首をかしげる
その仕草があまりに可愛くて
柊はつい視線を奪われてしまう。
あの夜のことがなければ
ただの可愛い後輩で
終わってたのかもしれない。
* * *
片付けを終えると
ふたりはリビングへ移り
ラグに腰を下ろした。
ローテーブルには
温かいお茶とコンビニスイーツ。
「そういえば忘年会、どうだった?」
ふとした会話の流れで
柊が尋ねると
颯はお茶を手にしながら
少しだけ視線を泳がせた。
「楽しかったですよ。
みんな、ほんと元気で。」
「でも──やっぱり
先輩の近くが安心します。
空気、柔らかくなるし」
「……俺、そんなタイプ
じゃないと思うけどな」
「僕はそう思ってます」
▶︎
ソファの上、湯気の立つマグを
両手で包みながら、颯がふいに口を開いた。
「……あの時、本当は
先輩の横行きたかったんですけどね」
柊は、湯飲みを口に運ぶ手を止めた。
「……え?」
「先輩、同期の人たちと
座ってたじゃないですか。」
「僕、近く行こうとしたら──
新卒の子たちが勢いよく引っ張ってって」
笑いながら話す颯の声は明るい。
けれど、言葉の端にあるのは
ほんの少しの寂しさ。
「……ああ。ずっと囲まれてたな」
「二次会も……先輩たちが
別行動になったって聞いて
ちょっと残念でした」
颯は、照れたように肩をすくめてみせた。
「僕も、そっちに行けばよかったなあって。
先輩と、もう少し話したかったです」
柊の喉の奥が、熱くなる。
そんな風に思ってくれてたなんて。
「なんで言わなかったんだよ……」
ぽつりとこぼれた言葉に
颯は微笑んだ。
「言ったら……なんか
甘えてるみたいで、やめときました」
柊の表情は少しだけ緩んでいた。
そしてそれに気づいたのか
颯がいつもの笑顔で
膝を抱えながら言った。
「でも、今日こうして一緒にいられるから
いいかなって思ってます」
目が合う。
その一瞬だけ、柊の心臓が音を立てた。
ただの後輩。
そう思い込んできたはずの存在が、
いつの間にか自分の心の中に
特別な居場所を持っていたことを
痛いほどに思い知らされる夜だった。
柊がふと手を止めた。
「洗い物、俺やるよ」
「えっ、いいんですか?助かります」
颯はすぐに笑顔で返し
スポンジや洗剤を手渡してくれる。
その動きも手際がよく
さすがだなと柊は内心感心していた。
黙々と並ぶ食器を洗いながら
水の音に混じって
颯の声がふわりと響いた。
「……先輩、今日の部長
こないだと同じ事言ってましたね」
柊は手を止めずに応じる。
「はは。あの人、忘れちゃうんだよ
俺はもう何百回も聞いてるよ」
「ふふっ。僕こっそりメモしてました。
今日ので、17回目でした」
頬を緩ませながらそう言う颯は
食器棚に箸を戻しながら
ニコニコと笑っている。
「……ほんと神城は
ニコニコしながら毒吐くよな」
「えっ、そんなことないですよ~?」
小首をかしげる
その仕草があまりに可愛くて
柊はつい視線を奪われてしまう。
あの夜のことがなければ
ただの可愛い後輩で
終わってたのかもしれない。
* * *
片付けを終えると
ふたりはリビングへ移り
ラグに腰を下ろした。
ローテーブルには
温かいお茶とコンビニスイーツ。
「そういえば忘年会、どうだった?」
ふとした会話の流れで
柊が尋ねると
颯はお茶を手にしながら
少しだけ視線を泳がせた。
「楽しかったですよ。
みんな、ほんと元気で。」
「でも──やっぱり
先輩の近くが安心します。
空気、柔らかくなるし」
「……俺、そんなタイプ
じゃないと思うけどな」
「僕はそう思ってます」
▶︎
ソファの上、湯気の立つマグを
両手で包みながら、颯がふいに口を開いた。
「……あの時、本当は
先輩の横行きたかったんですけどね」
柊は、湯飲みを口に運ぶ手を止めた。
「……え?」
「先輩、同期の人たちと
座ってたじゃないですか。」
「僕、近く行こうとしたら──
新卒の子たちが勢いよく引っ張ってって」
笑いながら話す颯の声は明るい。
けれど、言葉の端にあるのは
ほんの少しの寂しさ。
「……ああ。ずっと囲まれてたな」
「二次会も……先輩たちが
別行動になったって聞いて
ちょっと残念でした」
颯は、照れたように肩をすくめてみせた。
「僕も、そっちに行けばよかったなあって。
先輩と、もう少し話したかったです」
柊の喉の奥が、熱くなる。
そんな風に思ってくれてたなんて。
「なんで言わなかったんだよ……」
ぽつりとこぼれた言葉に
颯は微笑んだ。
「言ったら……なんか
甘えてるみたいで、やめときました」
柊の表情は少しだけ緩んでいた。
そしてそれに気づいたのか
颯がいつもの笑顔で
膝を抱えながら言った。
「でも、今日こうして一緒にいられるから
いいかなって思ってます」
目が合う。
その一瞬だけ、柊の心臓が音を立てた。
ただの後輩。
そう思い込んできたはずの存在が、
いつの間にか自分の心の中に
特別な居場所を持っていたことを
痛いほどに思い知らされる夜だった。
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