先輩は、僕のもの

ゆおや@BL文庫

文字の大きさ
77 / 258
18

首輪の代わりに着けられた痕:02

しおりを挟む
「……先輩」

押し付けられるように
刻まれた咎愛の印。
まだ火照るその上を
颯の指先が、そっとなぞる。

優しく。
まるで、壊してしまったおもちゃを
撫でる子どものように。

柊の肌がぴくりと震える。
今さら優しくされても
身体はその痛みを忘れていない。

けれど次の瞬間――

颯が、すとん、と柊の胸元に頬を寄せた。
すり、と、首筋に小さく頭を擦りつける。

まるで子猫のように。
愛されたくて、触れてほしくて、
でも、「自分の匂いを残すように」

肩口、鎖骨、胸元――
肌に残る汗と熱の上を
まるで確かめるようにすり寄るたび、
柊の心臓がいやらしく跳ねた。

そして、ふわっと笑う。
本当に、なにも知らないような、無垢な笑み。

「……先輩、ありがとうございました」

「すごく、気持ちよかったです」

満面の笑みを浮かべたまま、
唇をそっと重ねてくる。

軽い、けれど拒めない。
子猫のように甘えながら
獣のように支配する。

それが、神城颯だった。



ブツン、と部屋の灯りが落とされ
あたりは間接照明のぬるい光だけになった。
暖房の低いうなりと
カーテン越しの
冬の風音だけが静かに響いている。

ソファには柊。
さっきまで吊るされ
支配されていた身体を
ようやく沈めた。

背もたれに寄りかかった背中が
じくじくと痛む。

胸元――

あの唇が、あの声が、
あの舌が……刻みつけた赤い烙印。
熱が引かず、衣服の下で
ズキズキと疼いている。

さっきまで
あんなことをしていたのに。

ベッドからは、ふわりと布団の音。
毛布にくるまった颯が、小さく息を吐く。

「……先輩仕事納め
 お疲れ様でした。」

「ゆっくり休みましょうね」

穏やかな
何の変哲もない労いの声。
それだけを残して
颯は背を向けて布団に潜り込んでいった。

まるで、何もなかったかのように。

(…………)

柊はソファの上
毛布にくるまりながら視線をさまよわせる。

まだ熱い。
まだ鼻の奥も喉の奥も
焼けるようにざわめいている。

あんなに恥をかかされ、
あんなに肌を這われ、
あんなに――躾けられたばかりなのに。

なのに、彼は何も言わない。
あどけなく、穏やかで
まるで犬を可愛がる少年のように。

(……俺は――)

犬だった。俺は……完全に。

そして今、「先輩」と呼ばれ
何もなかったように「上司」に戻されている。

烙印だけが、熱く、柊の肌に残されたまま。

(どうすればいいんだよ……
 明日から……)

答えなんて
きっと颯しか持っていない。

だけど今
彼はただの“後輩”として、眠っている。

柊は、目を閉じた。
そのまま眠れるほど
身体も心も、軽くはなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

壁乳

リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。 最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。 俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 じれじれラブコメディー。 4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。 (挿絵byリリーブルー)

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...