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唾液まみれの腋:02
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タオルで顔を拭われたあとも
柊は微動だにできなかった。
力が抜けたのではない。
ただ──どこか、動きたくなかった。
この余韻を少しでも
長く感じていたかった。
香りの名残。
舌に残る微かな酸味。
鼻腔に染みついた体温の湿り気。
そして、何より──
あのあどけない笑顔に
もう一度落とされていた。
「……先輩、立てますか?」
優しい声が、耳元に落ちる。
「無理しなくていいですよ。
支えます。」
颯がそっと手を差し伸べてきた。
細くて柔らかな指。
けれどその掌は、迷いなく
柊の身体を導いていく。
促されるがままに、ベッドへ。
頬に残る微かな
ぬくもりと香りを感じながら、
柊は布団に身を沈める。
火照りは引いていなかった。
むしろ、熱は奥に籠もったまま。
指先も、胸元も
まだほんのり震えていた。
(……続きがあるなら、どうする?)
自分に問いかけながらも答えは出ない。
ただひとつ、確かなのは──
颯が言ったあの言葉。
「……今日はここまでにしておきますね」
・・・
今日はという事は
“これで終わりではない”
ということだった。
背を向けると、視界の隅にソファが見えた。
そこにちょこんと座った颯が、
タオルを畳んで、丸めて
静かに身体を横たえる。
しばらくして、
微かな寝息が聞こえはじめた。
(……寝てるのか)
可愛らしく整った横顔。
さっきまで
柊を支配していたとは
思えないほど穏やかだった。
(……なんなんだよ……)
そう思いながら──
柊は、まだ火照る身体を
布団の中に埋めた。
眠気が、
静かに意識を引き込んでいく。
そして──朝が来た。
▶︎
通勤電車の中。
颯はふわっとあくびをしながら
いつも通り、部下として隣にいる。
小さな体にも似合うスーツ。
少し寝癖を気にして手櫛で整えながら
スマホを眺めている。
「先輩、今日の会議、10時からですよね?
あ、資料印刷しておきますね」
駅のホームを出たときの笑顔も、
オフィスのデスクで交わす言葉も──
何事もなかったように、当たり前の顔で。
だけど──
柊の鼻先には、まだ残っていた。
すり寄られた肌の匂い。
顔に馴染ませられたあの香り。
舌の奥に微かに残る、あの味。
(……俺だけが、まだ終わってない)
それは、確かに支配の余韻だった。
そしてその余韻は──
きっとまた
次の夜に呼び戻されるのだと。
柊は、黙って息を吐いた。
香りを、思い出すように。
柊は微動だにできなかった。
力が抜けたのではない。
ただ──どこか、動きたくなかった。
この余韻を少しでも
長く感じていたかった。
香りの名残。
舌に残る微かな酸味。
鼻腔に染みついた体温の湿り気。
そして、何より──
あのあどけない笑顔に
もう一度落とされていた。
「……先輩、立てますか?」
優しい声が、耳元に落ちる。
「無理しなくていいですよ。
支えます。」
颯がそっと手を差し伸べてきた。
細くて柔らかな指。
けれどその掌は、迷いなく
柊の身体を導いていく。
促されるがままに、ベッドへ。
頬に残る微かな
ぬくもりと香りを感じながら、
柊は布団に身を沈める。
火照りは引いていなかった。
むしろ、熱は奥に籠もったまま。
指先も、胸元も
まだほんのり震えていた。
(……続きがあるなら、どうする?)
自分に問いかけながらも答えは出ない。
ただひとつ、確かなのは──
颯が言ったあの言葉。
「……今日はここまでにしておきますね」
・・・
今日はという事は
“これで終わりではない”
ということだった。
背を向けると、視界の隅にソファが見えた。
そこにちょこんと座った颯が、
タオルを畳んで、丸めて
静かに身体を横たえる。
しばらくして、
微かな寝息が聞こえはじめた。
(……寝てるのか)
可愛らしく整った横顔。
さっきまで
柊を支配していたとは
思えないほど穏やかだった。
(……なんなんだよ……)
そう思いながら──
柊は、まだ火照る身体を
布団の中に埋めた。
眠気が、
静かに意識を引き込んでいく。
そして──朝が来た。
▶︎
通勤電車の中。
颯はふわっとあくびをしながら
いつも通り、部下として隣にいる。
小さな体にも似合うスーツ。
少し寝癖を気にして手櫛で整えながら
スマホを眺めている。
「先輩、今日の会議、10時からですよね?
あ、資料印刷しておきますね」
駅のホームを出たときの笑顔も、
オフィスのデスクで交わす言葉も──
何事もなかったように、当たり前の顔で。
だけど──
柊の鼻先には、まだ残っていた。
すり寄られた肌の匂い。
顔に馴染ませられたあの香り。
舌の奥に微かに残る、あの味。
(……俺だけが、まだ終わってない)
それは、確かに支配の余韻だった。
そしてその余韻は──
きっとまた
次の夜に呼び戻されるのだと。
柊は、黙って息を吐いた。
香りを、思い出すように。
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