先輩は、僕のもの

ゆおや@BL文庫

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24.

甘く蕩けるバレンタイン:02

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「……重かったですね、これ。
 持ち帰りだけで腕パンパンです」

「颯がチョコもらいすぎなんだよ」

2人で手分けして運んだ紙袋は
帰宅してすぐ床に置かれ
中から色とりどりのチョコレートが
わらわらと顔を出した。

「わっ……これ、全部合わせたら
 何種類あるんだろ……!」

屈みこんだ颯の目が輝く。
包装紙をそっと開きながら
まるでおもちゃ箱を覗く子どものように声を弾ませた。

「先輩のほうが数は多かった気がしますけど、
 質は僕の勝ちかもしれません……ふふっ
 見てくださいこれ。ガナッシュに金箔ついてる」

「すごっ。本気のやつ混ざってんな……」

「チョコって、なんでこんなに
 人を幸せにするんでしょうね……」

そんなふうに頬をゆるませながら、
颯は次々と包装を開け
甘い香りに頬を染めていく。

その手が、一粒の銀紙に触れた。

「……リキュール入り、だって。気になる……」

囁くような声とともに、
指先が器用に銀紙を剥がし
ころりとしたチョコが現れる。

それを見つめる横顔には
ほんのりとした色気が滲んでいて──
柊は思わず、言葉を失った。

ぱく、と軽く口に含むと、
颯はふわっと瞼を緩めた。

「……っ、けっこう…
 効きますね、これ」

その唇に、チョコがわずかに残る。

気にした様子もなく、
舌を滑らせてぺろりと
拭い取るその仕草に──
柊の視線が、釘付けになった。

……滑らかな舌先。
チョコを舐めとる濡れた音。
ふと光る唇の端。

心臓が高鳴る音が
やけにうるさく感じられる。

「……あれ」

気づかれた。
視線を戻そうとしたその瞬間、
颯が首を傾けながら、ゆっくりと微笑んだ。

「……そんなに、舌ばっかり見て」

柔らかく、けれど鋭く。
甘さの奥に潜む鋭利な挑発が
静かに降ってくる。

「──舌、欲しいんですか?」

目の奥で、わずかに笑った。

冗談のように見えて
冗談にしきれない距離感。

部屋に満ちるチョコの甘い香りが、
柊の理性を、またひとつ溶かしていく。

喉の奥がひりつくように疼いて、
何も言い返せなかった。

「……ふふ。ちょっと待っててくださいね」

そう言ってまた別のチョコに指を伸ばす仕草すら、
今の柊には、挑発のように見えていた。

このまま“欲しい”と口にしてしまえば、
どれほど深く呑まれていくのか。
想像するたび、体の奥が熱くなる。




「……これ、中がとろけるやつですね。見てください」

颯が手に取ったのは
洋酒入りの生チョコレート。
ひと口サイズのそれは
外側こそ固く整えられていたが、
中には液状のガナッシュが閉じ込められていた。

柊が返事をする前に、
颯はゆっくりと、そのチョコを唇に当てた。

わざと噛まずに
少しだけ口の中で転がしてから──
ゆっくりと前歯で割る。

「……ん、っ……」

小さく、湿った息が漏れた。

とろりと甘いチョコが唇の端から溢れ、
透明な唾液と混じりながら
口角にうっすらと光の筋を作る。

赤みを帯びた照明がその艶を強調して、
まるで媚薬のように
ねっとりと張りついて見えた。

「……すっごい濃いですこれ。
 中、かなりとろとろで……」

潤んだ目を伏せながら、
颯は舌先で、じわりと上唇をなぞう。

ぴちゃ、と水音が鳴った。

舌が唇の上を往復するたび、
ぬめるような艶がそこに広がり、
甘い香りと熱が
じわじわと柊の身体を犯していく。

喉が、鳴った。

理性の奥に、何かが落ちる音がした。


見ていた。
否応なしに、焼きついていた。

颯はゆっくりと
唇に残ったチョコを指先で拭った。

「……ねぇ」

甘さの芯に、熱を含んだ声が落ちてくる。

目が、笑っている。
けれどその奥にあるものは、明確な誘惑だった。

「わんこくん」

柊の名を呼ぶ声音が、耳の奥でとろける。

「……口の周りに
 チョコ……ついちゃったから」

わざとらしく、
唇の端に残るチョコを
ほんの少しだけ残して、
艶やかに微笑んだ。

「……ぺろぺろ、してくれませんか?」

唇の動きを、音が伝う。
艶のある舌先がその一言一言を包み、
まるで命令のように、全身を痺れさせる。

「ほら、……ね?
 そんなに見てたんだから。
 責任、取ってください」

指先で、チョコのついた唇を
少しだけ引いてみせるその仕草。
ほんの数センチ──それだけで
柊の理性は限界ぎりぎりに達していた。
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