先輩は、僕のもの

ゆおや@BL文庫

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24.

甘く蕩けるバレンタイン:13

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「……ふぅ」

息を整えるように
ゆっくりと大きく吐いてから、
颯は柊の髪を撫でる。

その手つきは穏やかで
優しくて──どこまでも馴染んでいた。

柊は、もう動けなかった。

脚はだらしなく開いたまま、力が抜けていて、
喉も、声を出すために使い果たした後だった。
身体中の感覚が過敏なまま
ただ静かに、息をしているだけ。

そして──
引き抜かれて
ヒクヒクしている蕾の奥に残る“空洞感”。

(……抜けた……)

それがこんなにも、はっきりわかることに、
今さらながら恥ずかしさが押し寄せてくる。

中に出されたものが、 
まだじんわりと残っていて、
押し返すように
重たくとろけた何かが熱を孕んで広がっている。

足の間を、温かなタオルで拭われる感覚。
ぬるん……と垂れていたチョコと白濁が
優しく拭き取られていく。

「……ちょっと冷たいですけど、我慢してくださいね」

頬を染めたまま
何も言えずに瞬きだけを返すと、
颯は笑って、少しだけタオルの力を弱めた。

「……ほんと、えっちな身体に
 なりましたね、ワンコくん」

タオル越しに、またぬちゃりと
濡れた音がして、柊の肩が小さく跳ねる。

(……ああ、また……
 触れられるたびに、思い出す)

自分の身体がどんなふうに躾けられたか、
どんな風に泣かされたか、
どんなふうに……快楽に溺れていたか。

それが、身体の奥に、皮膚の上に
まだ消えずに残っている。

(……愛情だったんだろうか)

ちゃんと抱き締められた。
名前を呼ばれて、優しくされた。
何度も「可愛い」と言われた。

(でも……全部、“していいようにされた”だけ……?)

背筋が少しだけ冷える。
それでも、拭かれていることに
安堵している自分もいて──

(どっちだよ……もう、わかんない……)

ほんのわずかに口を開こうとしたとき、
優しい声が落ちてきた。

「……だいじょうぶですよ。
 全部、僕が拭いてあげますから。」


「目閉じて...余韻に浸ってください....」

その言葉に、なぜか喉が詰まって
返事ができなかった。


支配か、愛か。
安心か、囚われか。
混濁した余韻だけが、まだ身体の奥で、脈を打っていた。




愛されたいのか。
支配されたいのか。

それとも──

愛しているのか。
支配したいだけなのか。

その境目は、すでに輪郭を失っていた。

甘さと熱に溶かされ
快楽の余韻に浸るだけの今の柊には、
どの言葉も、どれも正解のようで
どれも届かないままだった。

(でも……)

残っているのは
身体に染みついた温もり。
奥にまだ感じる、満たされた感覚。
そして──名前を呼ばれたときのあの声の優しさ。

そしてその声で颯は耳たぶを甘噛みしながら囁く。

「……また、ご褒美あげますね」

耳元で囁かれたその言葉は、
命令のようで、優しさのようで、
まるで甘やかしの続きを予告するような響きだった。

柊はもう、反応することもできなかった。
力の抜けたまま、視界がにじみ
瞼がゆっくりと閉じていく。

(……どっちでも、いい……)

(ご褒美でも...躾でも....)

ただ、あのときの腕の中にあった
“熱”だけは、嘘じゃないと思いたかった。

肌の奥に残る、痺れるような余韻。
心に触れた、やわらかな囁き。
耳の奥に残る“柊さん”という響き。

どれも、ただの躾だったのかもしれない。
それでも──


(俺たちは....どういう関係なんだ.....?)
(ご主人様と犬....?)
(上司と部下の仮面を被ったセフレ.....?)

(でも....愛されてる。と身体は思い込んでいる....)

そう思った瞬間、少しだけ呼吸が楽になった。
胸の奥がじんわりと温かくなり、
柊はその余韻を
腕で抱きしめるように、そっと丸まる。

身体が、心が、ふわりと宙に
浮くように軽くなっていく。

静かに、まるで眠りに落ちるように。

「……ん……」

小さな吐息とともに
柊はそっと目を閉じた。

腕の中の静けさと
まだ微かに残る甘さに身を任せながら──

愛だったのか。
支配だったのか。

その答えを知るのは、
まだもう少しだけ先のことだった。
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