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今後の生活

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40日目の朝
もう日常の光景と思うぐらいに今朝もゾルスとバルタが作った朝食を普通に食べてます。
みんなかなり異世界に毒されてきたな・・・・

そして朝食が終わるとアイテムBOXに家を収納し、毎朝恒例となり今朝が最後となるゴブリン軍団が捕えてきてくれた魔物を槍で刺してトドメを刺す作業をします。

「とりあえず今日中に町に着きますがこの前話したように暫くの間は自由に町中とかは歩き回れませんし、法律とか文化や風習も日本と全く違いますから、そこだけは注意してください」
そう言って出発をします。

「まったく、町についても自由が無いとは・・」
野田課長がブツブツと文句をいってますが、町に着いたら暫くは何処かに宿舎を用意してもらいそこで生活をしてもらい、その間に文化や風習に慣れてもらう予定です。
町について即トラブルで拘束とかこのメンツならありそうです。

そう思い一応、プレモーネの門を警備する兵士と面識のあるアルチに今日町に着くとアモンさんとグランバルさんに伝えてもらうよう連絡要員としてひとっ走りしてもらいます。

そして森を歩き続け昼を少し過ぎた頃には、森を抜けます。
「ゾルス、ロゼフ、バルタ、3人はサンダーウルフ達10匹とゴブリン軍団を連れて砦に戻って」
「我々もですか?」
ロゼフが抗議の声を上げます。
「うん、自分の護衛はハンゾウとアルチとその他10匹に任せるから残りは砦に戻って砦の改修とゴブリン軍団の訓練と統制を計って」
「砦の改修に訓練と統制ですか?」
「そう、急造の砦だから不具合があるだろうし、ゴブリンの戦闘訓練や狩りや農作業、料理とか色々と教えて習慣をつけさして。何匹いても統制が取れなけば意味無いし、反対に統制が取れれば大きな戦力になるから」
「そういう事でしたら、ですが護衛が・・・」
「大丈夫、そこは何とかやるよ。ゾルスは、一応砦の主だから砦の名前とあと進化した主要ゴブリンに名前を付けてあげて普通のゴブリンを統率できるように指導をしてあげてね」
「はっ、かしこまりました」
そう言ってゾルスは頭を下げます。

「あと、ゾルス、砦の名前だけどマサトとかタケウチとか付けるのはダメだから。自分でいい名前考えてね。あと信賞必罰を徹底して、大きな手柄を上げたら褒美を与えるとかしてゴブリン軍団のやる気を引き出してあげてね」
そう言ってオーガの魔石を20個程袋に入れゾルスに渡します。
必要に応じてゴブリンに与え進化をさせるためです。

「とりあえず、次の転送が20日ぐらいだから15日後位には砦に行くから。」
「かしこまりました。それまでにはしっかりとゴブリン達を鍛えておきます。」
「よろしく、何かあれば伝令でサンダーウルフを送って、こちらからの伝令もサンダーウルフに行ってもらうから。」
「はは、ご期待に沿えるよう全力を尽くします。」
そう言ってゾルス達はゴブリン軍団を引き連れ来た道を戻っていきます。

あっ、伝え忘れた。
「イルチ、ゾルス達に伝令してくれる?」
「はい、何を伝えますか?」
「とりあえず砦に人間が宿泊することもあると思うから砦内は常に清潔にしておいてって伝えて」
「かしこまりました。すぐに伝えて参ります。」
そう言うとイルチはつい先ほど森に戻ったゾルス達を追いかけます。
うん、ごめんイルチ。
そう思いながら町に向けて出発をします。
今度は地響きも聞こえてきませんしのんびりと町に入れそうです。

門の前では守備隊の兵士が槍を持って町に入る人の身分証の確認や荷物の確認をしています。
「おつかれさまで~~す」
そう言って門番の兵士に声をかけるとその場で待つように言われ一人が奥に走っていきます。
「武内!!町にはすんなり入れるんじゃなかったのか!!話が違うじゃないか!!」
また野田課長が騒ぎ出します。
うん、あなた達という荷物があるからすんなり入れないんですよ。
そう思いながらしばらく待つとアモンさんがやってきました。

「マサト、やっと帰ってきたか、で何人だ?」
「今回は8人でした」
「そうか、8人か」
そう言ってアモンさんの案内で一行は門の中に入ります。
「ロレンス、タイロ、お前たちはマサトが連れてきた異世界の人を兵舎の部屋に案内しろ、食事時間は迎えに行って食堂に案内をしろ」
そう言ってアモンさんはロレンスとタイロに指示をだします。

「マサトは俺と一緒にグランバルさんの所に来てもらうぞ」
そう言ってすでに用意をしていたのでしょう馬車に乗るよう促します。

「武内!!!なんでお前だけ別行動なんだ!!何処に行くつもりだ!!」
また野田課長が声を張り上げて癇癪を起してます。
「領主の館に行くんですよ。これからの事とか色々話があるんで」
そう言うと馬車に乗り込もうとしますが野田課長は納得していないようでさらに騒ぎます。
「領主の所に行くなら我々が言って直接話すのが筋だろう!!お前が話て何になるっていうんだ!!」
「野田課長が行って領主に何を話すんですか?」
「それは・・・この世界での地位の約束と生活の保障だ!!私たちは被害者なんだから当然の権利だろう!!」

あ~やっぱりこの人ダメだ・・・
「野田課長、ハッキリ言ってそのどれも保証されませんよ。それにこの世界でネレースは創造神として信仰されてますから罵倒したり冒涜したら最悪拘束されて主教裁判にかけられますよ。ここは日本じゃないんですから人権だの権利だの言っても通用しませんから。」
さすがにここまで言うと野田課長は黙り込んでしまいました。

「武内君、私も同席させてもらえないか?それなら野田課長達も納得するだろう。」
月山部長がそう提案をしてきます。
実際は面倒なんで断りたいのですが、ここで断るとあとあと面倒が起きそうなので了承し月山部長と共に馬車に乗り込みます。
まあ、表に出せない話をする際は個人的な依頼の話ということで別室で話すしかないでしょうね・・そう思いながら馬車に揺られ領主館に向かいます。

「おう、マサト、首尾は上々だったようだな、ただ伝令にサンダーウルフを使うのはどうにかならんのか?」
「サンダーウルフ以外だとゴブリンしか伝令出来るのいないんですよ。」
そう言いながら椅子に腰かけます。

「で、そちらの方を紹介してもらえるか?」
「ええ、こちらの人は自分が日本で働いていた時の上司で月山ひろしさんです。」
「ということは、ヒロシ=ツキヤマと言えばいいのかな?私はこのドグレニム領の領主をしているグランバルだ。」
そう言うとグランバルさんは右手を出し握手を求めます。
「月山、いえ、ヒロシ=ツキヤマです。ツキヤマとでも呼んでください」
そう言って月山部長も右手を出し握手をします。
なんか大人同士の貫禄のある挨拶だな・・・そう思いながら二人を見ます。

メイドさんがお茶を淹れてくれたので席に座り話をはじめます。
とは言えグランバルさんは月山部長が来るとは思っていなかったらしく自分から口を開こうとしません。
恐らく、下手な事を言うと後々面倒だと予測しているのでしょう。
そう思い自分から月山部長達に漏れても問題ない会話を振ります。

「とりあえず今回は8人の転移者を救出できました。で、この8名の今後の生活の場所なのですが暫くは兵舎を借りるとしてもいつまでも兵舎に住み着くわけにはいかないのでまずはそこの問題を解決したいんですが。」
そう言うとグランバルさんはすでに答えを用意していたようですぐに回答が来ます。

「それに関してだが町の中に使われていない広い屋敷がある、マサトが町を出て森に行った後、職人を手配してそれなりの人数が生活できるよう改装して、料理人、使用人も用意してある。そこに住んでもらって生活基盤を固めてもらった後に自分たちで住む家を見つけるなどしてほしい。」
「で?月々の家賃はおいくらですか?」
本当はタダなんですがあえて質問をします。

「そうだな・・・・とりあえず食費・使用人の給料・屋敷の維持費があるから一人当たり月3000レンだな」

グランバルさんの言葉を聞き月山部長が自分に声をかけてきます。
「3000レンとはどのくらいの価値なんだ?」

まだ町に来たとは言え物価や通貨などを全く知らないので不安になったのでしょう。
「3000レンだと大体感覚的に日本円で3万円くらいでいでしょうか。まあこの価格ですから、食事も豪華じゃないですし使用人も最低限の事しかしてくれませんから基本的には自分の事は自分でやって貰う事になりますね」
「そうか、3万くらいか・・」

3万円ぐらいと聞いて安心したのか月山部長の顔に安堵の表情が見えます。
「オークの魔石が大体1000レンから1500レンくらいで売れますから大体月にオーク2、3匹ですかね」
そう言うと月山部長は苦笑いを浮かべています。

「それはそうとグランバルさん、捜索を依頼していました領内に居ると思われる他の転移者は発見できましたか?」
そう言うとグランバルさんはニヤリと笑い状況報告をしてくれます。恐らく他国の件は後で話してくれるでしょう。

「領内の転移者だが、一人で転移をしたという日本人を4名、あと10日程前に転移したという日本人を17名保護している。ただ、話を聞く限り転移後4名ほど魔物に殺されたそうだ、今プレモーネに11人、あとは領内のアルイームの町に6名、ロスティムの町に5名居る。」
「その二つの町は遠いんですか?」
「いやプレモーネから徒歩で3日程の所だ」
3日程度ならそんなに遠くないようです。

「プレモーネに来てもらい保護したほうがいいか?」
「そうですね、しばらくはプレモーネに集まっていてもらった方がいいと思います。」
「そうか、なら別の宿舎を用意出来次第プレモーネに来てもらうよう手配する。」

月山部長は話について行けず空気になっています。
うん、だって自分たちの待遇とか聞きに来たら他の転移者の捜索の進捗とか聞かされてもね・・・

「グランバルさん、次の転移は約20日後です。転移場所は前回日本人が転移した場所が有力ですのでそのあたりを聞き込みしていただいて20日後の転移後に保護できるように手配をお願いします。あと次回の転移者は1組20~30名前後で来る可能性があるので宿舎の手配もお願いします。」
「20~30人か・・・てなると次回は多くて100人近くが転移してくるって事か?」
「恐らく、もっと多い可能性もあります。」
「わかった、何とかする。」

表立って話せる内容も終わったのでグランバルさんは話を月山部長に振ります。
「ツキヤマは何か聞きたい事とかあるか?」
そう言うと月山部長は少し考えて口を開きます。」
「そうですね、まず我々がこの町で自活をするためには仕事をする必要があると思うのですが働き口はあるのでしょうか?」
「仕事に関してはギルドで紹介をしている、主に日雇いや週雇がメインだが仕事を選ばなければ仕事が出来ないことはないだろうな、領主からも城塞の拡張工事を行っているから人員を常に募集をしているしな」
「そうですか、大体日雇いで一日どのくらい稼げるのですか?」
「仕事にもよるが特に専門の技術が無い場合は500レン位だな」
「日本円で一日5千円ぐらいですか」

そう言って月山部長は思案顔をしています。
一日500レンと聞いて少なく感じているんでしよう、ただ20日働いたとして10000レン、日本円に換算して10万円くらいでこの世界で生活するには十分な額です。

「まあ全員とはいかないだろうが、幾人かはこちらの領内で雇いたいとは思っている。」
そういうグランバルさんの言葉に月山部長は顔を上げ口を開きます。

「それはどの様な仕事としてですか?」
「現在マサトの話を聞いて予定しているのは、転移してきた日本人の相談役、医療などの知識、簿記という計算の知識を持っている人を優先的に雇い入れて知識を吸収することを予定している。」
実際、以前見せてもらった帳簿などは無駄が多く間違えもかなりありそうでしたので切実な問題です。

「それだと全員を雇用してもらうのは無理ですね」
「そうだな、この世界にない知識を持っていると聞いているからその知識を活かしてもらえる人が優先になるな、まずツキヤマには日本人の相談役になってもらいたいと思っている。まあこれは強制ではないんだが受けてもらえると助かる」

そう言われた月山部長は少し驚いた感じです。
野田課長が騒ぐから自分が代表で来たつもりがいきなり転移してきた日本人の相談役をとオファーを受けたんですから驚くのも当然ですね。
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