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10年後
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月日が10年が経った。
周りを見渡す。そこには数年経ったであろう腐りきった死骸に、普通に一般人には見せられないグロテスクな光景が映し出されてる。
また俺の下には神の祠のボスと思われる龍……天神龍《エギドナ》が死骸となって倒れ伏せていた。
自分の身体を確認する。まだこいつとの戦いで身体が痺れているものの、問題なく動かすことができる。
「……さすがに生身だと不審者だと思われるか」
獣っぽい魔物から作った布だけを取り出し、できるだけ顔がバレなさそうにローブのみたいに被る。
服は……少しだけきついが、ここに来る前のものを着よう。こんなことなら何か買えばよかったと後悔しながらも、荷物にもなるしなぁ……と能天気に考えながら、外に出るために俺が今まで来た道を戻る。
「“ギャラララララララ!!!!!”」
すると、数十はいるヘビような身体をした禍々しい鱗を纏った魔物が俺に襲いかかる。
名前は……確か天蛇《あまのじゃく》だったか?
少しだけ思考を巡らせながらも、とりあえず用ないから俺はそいつらの攻撃を避けながら特に何もせずに逃げる。
「もうお前らに用がないからね」
意味のない殺傷はしないと決めている。好きで殺したいわけじゃないし。
そう思いながらも俺はあの洞穴へと全速力で向かうのであった。
◇
世界には因果が絡むように二人の規格外な存在がいた。
その一人、魔王。
魔物、魔人など、あらゆる魔に属するものの頂点。人間も魔の者も関係ない、何もかもを混沌へと陥れようとする世界にとってイレギュラーな存在。
それに対比するように現れたもう一人の人物、勇者。
嘗て世界を破滅まで陥れようとした魔王を撃破し、人間の世界に光という安息を与える者。
魔の者との共存など全く考えておらず、人間の脅威として現れた魔王というイレギュラーを消滅させる者。
「アリシア様~!」
とある王国にて。そのイレギュラーな存在でもある勇者が街に訪れていた。
彼女の名はアリシア。今世紀の魔王ニグラス・メドレアの対となるように現れた勇者である。
また彼女の仲間には双子という因果に結ばれ、その代償として強大な力を授かった者、ロアとティア。
生まれながらにして人とは思えない並外れた才能と力を秘めている者、クレフィ。
その四人が集まった勇者パーティーは人々からは黄金の世代とも呼ばれ、再び世界に平和が来る日を心待ちにしていた。
「にしてものあのゴミはいなくなったよな~」
勇者パーティーを見ていた一人の一般市民がそう呟く。それに反応するように近くにいたもう一人の男が口を動かした。
「なにがだよ?」
「いやさ、十年前にいたんだよ。アリシア様率いる勇者パーティーの足を引っ張っていた奴」
「……あぁ、あいつか。名前は確か……テオだったか?」
ビクリ。
その名前を聞いたアリシアは足を止め、その一般市民の声に耳を傾ける。クレフィはそれを見て嫌な予感を感じすぐに止めようとしたが……遅かった。
「そうそう!あの無能!最初は勇者パーティーに選ばれるくらいだからどんな実力を持ってたかと思ったら、俺達よりも少しだけ身体が丈夫な奴!!」
「まぁ確かに勇者パーティーと言われれば、少し疑問が出るが……そんなに言わなくてもいいんじゃないか?」
「だったらなんでいないんだよ?きっとその無能っぷりにアリシア様も見捨てたんだと思うぜ。ちょっとだけ苛ついてたんだ。身体が頑丈なだけなガキがどうして勇者パーティーに」
「今、テオのこと言ったのか?」
「………え?」
「あ、アリシア様!?」
「答えろ。今テオのことをなんと言った?……無能だと?」
アリシアの魔力がその一般人を威圧するように放出される。いつもは自分たちの光であるはずの勇者の威圧が向けられ、足を動かすことが出来ずに尻もちをついてしまう。
「やめなさいアリシア」
「ッ!クレフィ……だがこいつは……!」
「……その人が言ってることも事実よ。今は抑えなさい。貴方は、勇者なんだから」
「……くっ!」
暴発させていた魔力を身体に抑え込み、最後にその一般人にがんを飛ばしてからその場を去っていった。
テオの行方不明から10年の月日が経った。
なにも音沙汰がない。ただ聞くのは彼が失踪したという話だけ……アリシアの心の中には少しずつ彼に対する罪悪感が積もっていく。
(……テオ)
『アリシアが泣いてたら俺が絶対助けてやる!!』
「……頼む、テオ。生きててくれ……お願いだから……」
ぼそっと吐かれた切実な願いを聞き、クレフィも、彼女のことを待っていたティアとロアも表情が暗くなる。
だが、そんな中でも彼女らは人々の希望の光として歩みを止めない。
それが……勇者としての使命なのだから。
◇
……なぜ、アリシアを助けたいかなんて明確な理由はない。
ただ助けたい……そんな具体性も何も無い目標であり俺の使命のようなもの。
月日が経てばそんなもの変わるのではないか……そう思ったが、どうやら一度決めたことを曲げることはなかったらしい。
俺の具体性のない目標であり、その使命は……いつの間にか生きる目的へとなっていた。
走っていると、俺が落ちてきた洞穴へとやっとついた。
下には残骸がたくさんあり、俺が殺してきた魔物なのだろうと予想できる。
「……ここから、始まるんだ」
地面を蹴り、長年鍛えた身体と勇者の加護による常人離れの肉体で壁を蹴り、上へと登っていく。
――救いたいから、助けるんだ。
――笑顔になってほしいから、俺は戻るんだ。
そして、今度こそ間違えない。あの時、俺が助けられなかった命が自分の糧となるように。
「――今度こそ、絶対に」
――その悲劇をぶち壊す。
そして俺は10年ぶりに、地上に登り詰めたのであった。
周りを見渡す。そこには数年経ったであろう腐りきった死骸に、普通に一般人には見せられないグロテスクな光景が映し出されてる。
また俺の下には神の祠のボスと思われる龍……天神龍《エギドナ》が死骸となって倒れ伏せていた。
自分の身体を確認する。まだこいつとの戦いで身体が痺れているものの、問題なく動かすことができる。
「……さすがに生身だと不審者だと思われるか」
獣っぽい魔物から作った布だけを取り出し、できるだけ顔がバレなさそうにローブのみたいに被る。
服は……少しだけきついが、ここに来る前のものを着よう。こんなことなら何か買えばよかったと後悔しながらも、荷物にもなるしなぁ……と能天気に考えながら、外に出るために俺が今まで来た道を戻る。
「“ギャラララララララ!!!!!”」
すると、数十はいるヘビような身体をした禍々しい鱗を纏った魔物が俺に襲いかかる。
名前は……確か天蛇《あまのじゃく》だったか?
少しだけ思考を巡らせながらも、とりあえず用ないから俺はそいつらの攻撃を避けながら特に何もせずに逃げる。
「もうお前らに用がないからね」
意味のない殺傷はしないと決めている。好きで殺したいわけじゃないし。
そう思いながらも俺はあの洞穴へと全速力で向かうのであった。
◇
世界には因果が絡むように二人の規格外な存在がいた。
その一人、魔王。
魔物、魔人など、あらゆる魔に属するものの頂点。人間も魔の者も関係ない、何もかもを混沌へと陥れようとする世界にとってイレギュラーな存在。
それに対比するように現れたもう一人の人物、勇者。
嘗て世界を破滅まで陥れようとした魔王を撃破し、人間の世界に光という安息を与える者。
魔の者との共存など全く考えておらず、人間の脅威として現れた魔王というイレギュラーを消滅させる者。
「アリシア様~!」
とある王国にて。そのイレギュラーな存在でもある勇者が街に訪れていた。
彼女の名はアリシア。今世紀の魔王ニグラス・メドレアの対となるように現れた勇者である。
また彼女の仲間には双子という因果に結ばれ、その代償として強大な力を授かった者、ロアとティア。
生まれながらにして人とは思えない並外れた才能と力を秘めている者、クレフィ。
その四人が集まった勇者パーティーは人々からは黄金の世代とも呼ばれ、再び世界に平和が来る日を心待ちにしていた。
「にしてものあのゴミはいなくなったよな~」
勇者パーティーを見ていた一人の一般市民がそう呟く。それに反応するように近くにいたもう一人の男が口を動かした。
「なにがだよ?」
「いやさ、十年前にいたんだよ。アリシア様率いる勇者パーティーの足を引っ張っていた奴」
「……あぁ、あいつか。名前は確か……テオだったか?」
ビクリ。
その名前を聞いたアリシアは足を止め、その一般市民の声に耳を傾ける。クレフィはそれを見て嫌な予感を感じすぐに止めようとしたが……遅かった。
「そうそう!あの無能!最初は勇者パーティーに選ばれるくらいだからどんな実力を持ってたかと思ったら、俺達よりも少しだけ身体が丈夫な奴!!」
「まぁ確かに勇者パーティーと言われれば、少し疑問が出るが……そんなに言わなくてもいいんじゃないか?」
「だったらなんでいないんだよ?きっとその無能っぷりにアリシア様も見捨てたんだと思うぜ。ちょっとだけ苛ついてたんだ。身体が頑丈なだけなガキがどうして勇者パーティーに」
「今、テオのこと言ったのか?」
「………え?」
「あ、アリシア様!?」
「答えろ。今テオのことをなんと言った?……無能だと?」
アリシアの魔力がその一般人を威圧するように放出される。いつもは自分たちの光であるはずの勇者の威圧が向けられ、足を動かすことが出来ずに尻もちをついてしまう。
「やめなさいアリシア」
「ッ!クレフィ……だがこいつは……!」
「……その人が言ってることも事実よ。今は抑えなさい。貴方は、勇者なんだから」
「……くっ!」
暴発させていた魔力を身体に抑え込み、最後にその一般人にがんを飛ばしてからその場を去っていった。
テオの行方不明から10年の月日が経った。
なにも音沙汰がない。ただ聞くのは彼が失踪したという話だけ……アリシアの心の中には少しずつ彼に対する罪悪感が積もっていく。
(……テオ)
『アリシアが泣いてたら俺が絶対助けてやる!!』
「……頼む、テオ。生きててくれ……お願いだから……」
ぼそっと吐かれた切実な願いを聞き、クレフィも、彼女のことを待っていたティアとロアも表情が暗くなる。
だが、そんな中でも彼女らは人々の希望の光として歩みを止めない。
それが……勇者としての使命なのだから。
◇
……なぜ、アリシアを助けたいかなんて明確な理由はない。
ただ助けたい……そんな具体性も何も無い目標であり俺の使命のようなもの。
月日が経てばそんなもの変わるのではないか……そう思ったが、どうやら一度決めたことを曲げることはなかったらしい。
俺の具体性のない目標であり、その使命は……いつの間にか生きる目的へとなっていた。
走っていると、俺が落ちてきた洞穴へとやっとついた。
下には残骸がたくさんあり、俺が殺してきた魔物なのだろうと予想できる。
「……ここから、始まるんだ」
地面を蹴り、長年鍛えた身体と勇者の加護による常人離れの肉体で壁を蹴り、上へと登っていく。
――救いたいから、助けるんだ。
――笑顔になってほしいから、俺は戻るんだ。
そして、今度こそ間違えない。あの時、俺が助けられなかった命が自分の糧となるように。
「――今度こそ、絶対に」
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そして俺は10年ぶりに、地上に登り詰めたのであった。
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