300年『宮廷魔法使い』として国を支え続けた魔女ですが、腹黒王子にはめられて国外追放されました ~今さら戻れと言っても無駄です~

日之影ソラ

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17.第三の試練『知恵』

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「クリアしたのは良かったです。さすが先生ですね」
「はい」
「ただ何の説明もなく飛び込むのはどうでしょう? もし間違っていたら落ちていたんですよ?」
「……そうですね」

 私の機転で第二の試練は無事にクリアした。
 のだが……
 向こう側へ渡ってすぐに、アレクのお説教が始まりました。

「あの一瞬で僕がどれだけ心配したかわかりますか?」
「ご、ごめんなさい……」
「次からは気を付けてくださいね?」
「はい……」
 
 まさかアレクにお説教される日がくるなんて。
 成長したね……

「それでは次の試練へ向かいましょうか」
「そ、そうね。気を取り直して行きましょう」

 壁には新たな扉が生成されていた。
 罠がないことを確認してから扉を開け、長く続く一本道を歩く。
 今度の明かりは緑色だ。
 そうして次の部屋にたどり着く。

「こ、これは……」

 同じく巨大な空間。
 二つ目のように橋や大穴はない。
 代わりに壁や天井、床の一面まで敷き詰められているものがある。

「扉だらけですね」
「ええ……」

 一面の扉。
 右を見ても左を見ても、同じ見た目の扉がある。
 列もバラバラ、向きもそれぞれ。
 数は多すぎて数えられない。

「やーやーやー! 第三の試練にたどり着くとは中々じゃな! さっそくじゃが次の試練を言い渡すぞ? 第三の試練は『知恵』じゃ!」
「今度は知恵の試練みたいだね」
「はい。問題でも出すのでしょうか? もっとも先生なら、答えられない問いはないと思いますが」
「それはさすがに買いかぶり過ぎだよ」

 魔法のことなら自信はあるけどね。
 それでも全ては無理だよ。
 だって出題者はドラゴンで、私なんかよりずっと前に生まれた存在なんだし。
 さすがに知恵で勝てるとは思えないな。

「それにたぶん質問とかじゃないと思うよ」
「ですね」

 私たちの視界には、おびただしい数の扉が見える。
 この扉が試練に関係しているのは間違いなさそうだ。
 
「目の前に扉が見えるじゃろう? それらは全部で千あるのじゃ! その中に一つだけ、次の試練へ向かうための扉がある。それを引き当てるのじゃ! ちなみに外れの扉は他の扉に通じておるぞ」
「え、それだけ?」
「意外と簡単そう――」
「ただし! 開けて良いのは千回までじゃ! それから外れの扉を開ける度、当たりの場所も変わるから注意するのじゃぞ!」

 少女の説明は以上で終わった。
 扉は千か所、内当たりは一か所のみで、外すたびに場所が変わる。
 加えて千回の回数制限付き。

「試しに一か所開けてみようかな」

 そう呟いて、近くにあった壁の扉を開けてみる。
 扉を開けた先は、紫色の幕で覆われていた。
 開けただけじゃ繋がっている先は見えないらしい。
 
「アレク」
「他の扉は開いていませんよ」

 尋ねる前に答えが返ってきた。
 さすがアレク、私が言う前に意図をくみ取ってくれたみたいだ。

「もしかしていきなり正解?」
「行ってみましょう」

 期待して扉の中へ。
 幕を抜ける感覚はちょっぴり気持ちが悪い。
 湿った空気の幕を通り抜けているようだった。
 そして肝心の結果は――

「「あっ」」

 不正解。
 しかも出た先は、天井にあった扉。
 つまり、真っ逆さま。

「わっ!」
「先生!」

 間一髪、落下のギリギリでアレクが体勢を立て直し、私を抱きかかえて着地する。
 
「大丈夫ですか?」
「うん。ありがとうアレク」

 咄嗟のことで魔法発動が遅れてしまったな。
 だいぶ実戦の感覚が鈍っている?
 それとも単に衰えたとか……それは考えたくないな。

「今のでわかったけど、扉を開けてすぐに別の扉に繋がるわけじゃないんだね」
「そのようですね。加えて出た先が同じ面とは限らない。あと上下左右もバラバラなので、感覚を保つのが難しい」

 扉を出た途端に重力の向きが変わる。
 初めての体験に身体が驚いてしまったけど、理解して挑めば逆に楽しいかも?
 なんて遊んでいる暇はないんだった。
 
「正解が移動してしまうなら、全て開ける方法は使えませんね」
「……そうでもないよ? 今回は魔法も封じられてないしね」
「先生?」

 実はとっくに気付いていた。
 この試練の攻略法に。

「【影握手シャドウハンド】」

 私が発動したのは影を自在に操る魔法。
 自身の影を媒体に、無数の黒い手を発現させる。
 手の数は火力量に起因する。
 魔女である私にかかれば、千や二千を生み出すくらい簡単だ。

「扉を開ける度に場所が移動するんでしょ? だったら全部開けちゃえば、正しい扉は逃げ道をなくすよね?」
「なるほど、その手がありましたか。さすが先生」
「ありがとう。でも正直これ、知恵って感じじゃないのよね」
「確かにそうですね。っと、ありましたよ」

 アレクが指をさす。
 開いた扉の一か所だけ、紫の幕がかかっていない。
 先には道が続いていた。

「第三の試練も難なくクリアですね」
「ええ」

 知恵の試練をクリアした私だけど、どうにも引っかかる。
 アレクにも言ったけど、この解決方法は知恵と呼べるだろうか?
 さっきの機転もそうだけど、迷宮の試練は名前と内容が微妙に合ってないような気が……

「もしかしてドラゴンって」

 かなり大雑把な性格なのかな?
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