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いくら、ショー様とお姉様が仲良くなっても、わたしとトーリ様が仲良くなってしまえば、お姉様達のターゲットが変わるだけ。
それでは意味がないので、わたしとトーリ様は相性が良くないふりをする事に決めた。
そうすれば、わたしとトーリ様の婚約が決まったら、嫌がる者同士で結婚させてやったと、お姉様達は思うだろうから。
相性が良くないふり、といっても、トーリ様は不機嫌そうな顔で、私の方は一切見ずに無言。
わたしは、ショー様の方しか見ない。
ただ、それだけ。
もちろん、お互いに礼儀は忘れないようにする。
今日の事については、ブロット公爵家からオブライエン伯爵に迷惑をかける事を話はつけてくださっているので、パーティーが台無しになった、と本気で怒られる事はなさそうだった。
上手く、パーティーの余興にしてくださるつもりらしい。
トーリ様も他の人に挨拶をしてくると言って去っていく。
これも打ち合わせ通りで、ボロが出てもいけないので、あまり一緒にいない事にした。
ちなみに、ショー様は先に1人で来られていて、パーティー会場の中で、他の招待客と談笑していた。
ショー様に視線を送っていると、わたしと目が合い、人前だからか笑いかけてくれた。
それに対して照れた仕草をしていると、背後から声を掛けられた。
「久しぶりね、アザレア」
「……お姉様…」
振り返ると腹が立つことに、わたしと同じ色のドレスを着たお姉様が1人で立っていた。
(わたしのドレスの色はショー様から聞いたんでしょうね。それに合わせて作らせたんだわ。お義兄様の瞳は赤色じゃないから)
お義兄様は近くにいそうになくて、目だけ動かして探してみると、お姉様の背後の方で、他のお客様と話をしている姿が見えた。
(わざと、お義兄様は、お姉様を1人にさせたのね)
お姉様と私達家族が縁を切った事は詳しい事を知っている人間しか知らない。
その事を考えて、当たり障りのない会話をする。
「お姉様、お久しぶりですね。お元気そうで良かったです」
「あら、全然、連絡をくれないんだもの。私の事なんて忘れちゃったのかと思ってたわ」
(いちいち、腹の立つ言い方をする人だわ)
「そうですね。お姉様の事は出来れば思い出したくなかったですし」
これくらい言い返しても良いだろうと思って答えると、お姉様はムッとした顔をする。
「どういう事?」
「それはお姉様が一番良くわかっていらっしゃると思いますよ?」
「やっぱり、あの事、ショックだったの?」
笑みがこらえきれなかったみたいで、お姉様の口元がピクピクと震えるのがわかった。
「ショックでしたが、今はショー様がいますから」
「え? ショー様、あら、ショー様ね…ふふっ」
お姉様はそれはもう嬉しそうだった。
扇で口を隠し、目を三日月みたいにさせながら、お姉様は続ける。
「ねぇ、知ってる、アザレア? 私の所に手紙が届いてるの」
「…トーリ様からですか?」
トーリ様がお姉様に手紙を送っている話は、ショー様から聞いているので尋ねると、お姉様は首を何度も横に振る。
「もちろん、トーリ様からももらっているわ。だけどね、違うの。ショー様からももらっているのよ? しかも熱烈なラブレター! 既婚者の私もさすがに心が動いてしまいそう…!」
(知ってるわよ。ショー様は自慢げに話をしてくれていたからね)
お姉様は言葉を止めると、扇を閉じ、頬に手を当ててうっとりしながら言う。
「ビトイみたいな感じで、ショー様に迫られちゃったら、また私も、あの時みたいにおかしくなっちゃうかもしれないわ。アザレア、その時はごめんなさいね」
笑みをなんとか消して、申し訳無さそうな顔をするお姉様。
「謝るくらいなら、その様な事はなさらないで下さい。あなたは既婚者なんですよ」
「無理よ。気持ちはそんなに簡単に止められるものではないの。だから、私とショー様に何かあっても許してね?」
「勝手にすればいいが、僕は絶対に許さないからな」
お姉様の言葉に応えたのは、お姉様の背後から現れた、お義兄様だった。
※次話はマーニャ視点になります。
それでは意味がないので、わたしとトーリ様は相性が良くないふりをする事に決めた。
そうすれば、わたしとトーリ様の婚約が決まったら、嫌がる者同士で結婚させてやったと、お姉様達は思うだろうから。
相性が良くないふり、といっても、トーリ様は不機嫌そうな顔で、私の方は一切見ずに無言。
わたしは、ショー様の方しか見ない。
ただ、それだけ。
もちろん、お互いに礼儀は忘れないようにする。
今日の事については、ブロット公爵家からオブライエン伯爵に迷惑をかける事を話はつけてくださっているので、パーティーが台無しになった、と本気で怒られる事はなさそうだった。
上手く、パーティーの余興にしてくださるつもりらしい。
トーリ様も他の人に挨拶をしてくると言って去っていく。
これも打ち合わせ通りで、ボロが出てもいけないので、あまり一緒にいない事にした。
ちなみに、ショー様は先に1人で来られていて、パーティー会場の中で、他の招待客と談笑していた。
ショー様に視線を送っていると、わたしと目が合い、人前だからか笑いかけてくれた。
それに対して照れた仕草をしていると、背後から声を掛けられた。
「久しぶりね、アザレア」
「……お姉様…」
振り返ると腹が立つことに、わたしと同じ色のドレスを着たお姉様が1人で立っていた。
(わたしのドレスの色はショー様から聞いたんでしょうね。それに合わせて作らせたんだわ。お義兄様の瞳は赤色じゃないから)
お義兄様は近くにいそうになくて、目だけ動かして探してみると、お姉様の背後の方で、他のお客様と話をしている姿が見えた。
(わざと、お義兄様は、お姉様を1人にさせたのね)
お姉様と私達家族が縁を切った事は詳しい事を知っている人間しか知らない。
その事を考えて、当たり障りのない会話をする。
「お姉様、お久しぶりですね。お元気そうで良かったです」
「あら、全然、連絡をくれないんだもの。私の事なんて忘れちゃったのかと思ってたわ」
(いちいち、腹の立つ言い方をする人だわ)
「そうですね。お姉様の事は出来れば思い出したくなかったですし」
これくらい言い返しても良いだろうと思って答えると、お姉様はムッとした顔をする。
「どういう事?」
「それはお姉様が一番良くわかっていらっしゃると思いますよ?」
「やっぱり、あの事、ショックだったの?」
笑みがこらえきれなかったみたいで、お姉様の口元がピクピクと震えるのがわかった。
「ショックでしたが、今はショー様がいますから」
「え? ショー様、あら、ショー様ね…ふふっ」
お姉様はそれはもう嬉しそうだった。
扇で口を隠し、目を三日月みたいにさせながら、お姉様は続ける。
「ねぇ、知ってる、アザレア? 私の所に手紙が届いてるの」
「…トーリ様からですか?」
トーリ様がお姉様に手紙を送っている話は、ショー様から聞いているので尋ねると、お姉様は首を何度も横に振る。
「もちろん、トーリ様からももらっているわ。だけどね、違うの。ショー様からももらっているのよ? しかも熱烈なラブレター! 既婚者の私もさすがに心が動いてしまいそう…!」
(知ってるわよ。ショー様は自慢げに話をしてくれていたからね)
お姉様は言葉を止めると、扇を閉じ、頬に手を当ててうっとりしながら言う。
「ビトイみたいな感じで、ショー様に迫られちゃったら、また私も、あの時みたいにおかしくなっちゃうかもしれないわ。アザレア、その時はごめんなさいね」
笑みをなんとか消して、申し訳無さそうな顔をするお姉様。
「謝るくらいなら、その様な事はなさらないで下さい。あなたは既婚者なんですよ」
「無理よ。気持ちはそんなに簡単に止められるものではないの。だから、私とショー様に何かあっても許してね?」
「勝手にすればいいが、僕は絶対に許さないからな」
お姉様の言葉に応えたのは、お姉様の背後から現れた、お義兄様だった。
※次話はマーニャ視点になります。
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