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「マーニャ嬢をショーの婚約者にする案、もしくは、ノーマン家が雇うという案、どちらかになるかもしれない。ノーマン家にいく場合は、離婚されてしまったけれど、実家に迷惑を掛けたくないから働く先を探したという事にさせる」
「そうすれば、ビトイも喜ぶでしょうしね…。ノーマン家に対しては、お姉様にもある種、責任を取らせるという意味合いなのでわかりますが、どうして、トーリ様のお家の案が出てくるんですか?」
驚いて聞き返すと、トーリ様は眉根を寄せて答える。
「ショーが雇いたいと言い出す可能性がある。そうなった時に、父上は婚約者としてなら許可を出すだろう。父上はショーの婚約者を見つけたいからな。だから、ブロット家に来る場合は、表向きには彼女をショーの婚約者として呼ぶ予定だと思う。離婚の原因はショーにあるから、その責任を取るという事にするだろうな」
「ショー様がお姉様を雇いたい…?」
わたしの問いに答えてくれたトーリ様の話では、ショー様はとてもプライドが高く、自分が馬鹿にされたと思うと、我を忘れるくらいに怒るんだそう。
だから、今回のお姉様の件でもかなり、腹を立てているんじゃないかという事だった。
「その事については後で話すが、まず言っておきたい事がある。これから、ショーは八つ当たりで君にもっと酷い事をするかもしれない。だから、絶対に2人きりにならない様にしてほしい。もちろん、そうならない様にショーに見張りはつけるけど、学生じゃないから完璧じゃない。それに、彼らは君を直接助ける事は出来ない。ショーにバレてしまったら意味がないからな。助けを呼ぶ事くらいしか出来ないんだ」
(もしかして、前にちょうど良く、馬車が来ないと言ってトーリ様が現れてくれたのは、それでだったのね。影で見張っている人が、トーリ様を呼びに行ってくれたんだわ)
申し訳なさそうにしている、トーリ様を見ながら、そんな事を思った後、気になって聞いてみる。
「お姉様がビトイの家、もしくは、トーリ様の家に行ったら、わたしはもう、ショー様の事を好きなふりをしなくてもいいんでしょうか…」
「そうする必要がなくなるからな。すでに君は嫌な思いをしているんだろう? それなら、嫌いになってもおかしくない。そういう趣味だと思われても困るだろうし」
「それはそうですね。わたしにはそんな趣味はないですし」
(いたぶられても好きだなんて気持ちは浮かんでこないわ)
頷いてから、トーリ様に宣言する。
「次に暴力をふるわれたら、諦めるというふりをします」
「次に暴力って…、そうなる前に諦めるふりはした方がいい。暴言を吐かれた時でもいいだろう」
「暴言は色々と言われてますし、今更と思われそうで…」
「何かワードを決めたらいい。それが引っかかったでいいだろう」
「わかりました。そうします」
(わざわざ、暴力をふるわれるのを待つのも馬鹿らしいものね)
「今のところ、どちらの案を取る方が可能性が高いんでしょうか」
「ノーマン家だとは思うが…」
トーリ様が難しい顔で答える。
(ビトイの家だというのなら、お姉様は必死に離婚を拒否するでしょうね…。それに、嫌がるお姉様に対して、お義兄様はどうやって離婚するつもりなのかしら…。わたしにはさっぱりわからないわ)
わからない事ばかりだけれど、とりあえず、トーリ様に聞ける事は聞いてみる。
「もし、ショー様の希望通りブロット公爵家に行く場合は、表向きは婚約者ですが、裏ではどんな扱いになるのでしょう?」
「そうするんじゃないかという予想で言うが、たぶん、専属メイドにでもして……」
そこまで言うと、トーリ様は言葉を止めてから、少し考えて、また口を開く。
「自分の好きな様にするかもしれない」
(言葉を選んでくださったのね…。という事は、お姉様はブロット公爵家に行けばメイドではなく、実際は違う扱いをされるという事になりそうね…)
頷いてから、疑問に思った事を尋ねてみる。
「そういえば、公爵令息と元伯爵令嬢との結婚は可能なんですか?」
「嫡男じゃないし、ショーの場合は父上は文句は言わないよ。それに、世間体ではマーニャ嬢は君の姉だ。だから、出戻りであったとしても、伯爵令嬢扱い出来るだろう」
「……そうでした。世間体的にはそうですね…。お兄様が継いだら、元伯爵令嬢になるんでしょうけど…。というか、わたしもまだ、お姉様と呼んでますし、家族の縁って簡単に切れるものじゃないんですね…」
「そうだな。切りたくても切れない。どこかの養子になったりすれば違ってくるんだろうけど」
トーリ様が目を伏せて悲しげに呟いた。
(ショー様と自分の事を言っておられるのかしら…? 特に、トーリ様とショー様は似ていないけれど双子だもの。何かと話題にされるでしょうしね…)
その後は、これからについての話をして、トーリ様からは、わたしがショー様と2人きりにならない様に気にかけてくださるけれど、自分の方でも注意してくれと再度言われた。
そして、数日後、お姉様の処遇が決まった。
※次話はマーニャ視点になります。
「そうすれば、ビトイも喜ぶでしょうしね…。ノーマン家に対しては、お姉様にもある種、責任を取らせるという意味合いなのでわかりますが、どうして、トーリ様のお家の案が出てくるんですか?」
驚いて聞き返すと、トーリ様は眉根を寄せて答える。
「ショーが雇いたいと言い出す可能性がある。そうなった時に、父上は婚約者としてなら許可を出すだろう。父上はショーの婚約者を見つけたいからな。だから、ブロット家に来る場合は、表向きには彼女をショーの婚約者として呼ぶ予定だと思う。離婚の原因はショーにあるから、その責任を取るという事にするだろうな」
「ショー様がお姉様を雇いたい…?」
わたしの問いに答えてくれたトーリ様の話では、ショー様はとてもプライドが高く、自分が馬鹿にされたと思うと、我を忘れるくらいに怒るんだそう。
だから、今回のお姉様の件でもかなり、腹を立てているんじゃないかという事だった。
「その事については後で話すが、まず言っておきたい事がある。これから、ショーは八つ当たりで君にもっと酷い事をするかもしれない。だから、絶対に2人きりにならない様にしてほしい。もちろん、そうならない様にショーに見張りはつけるけど、学生じゃないから完璧じゃない。それに、彼らは君を直接助ける事は出来ない。ショーにバレてしまったら意味がないからな。助けを呼ぶ事くらいしか出来ないんだ」
(もしかして、前にちょうど良く、馬車が来ないと言ってトーリ様が現れてくれたのは、それでだったのね。影で見張っている人が、トーリ様を呼びに行ってくれたんだわ)
申し訳なさそうにしている、トーリ様を見ながら、そんな事を思った後、気になって聞いてみる。
「お姉様がビトイの家、もしくは、トーリ様の家に行ったら、わたしはもう、ショー様の事を好きなふりをしなくてもいいんでしょうか…」
「そうする必要がなくなるからな。すでに君は嫌な思いをしているんだろう? それなら、嫌いになってもおかしくない。そういう趣味だと思われても困るだろうし」
「それはそうですね。わたしにはそんな趣味はないですし」
(いたぶられても好きだなんて気持ちは浮かんでこないわ)
頷いてから、トーリ様に宣言する。
「次に暴力をふるわれたら、諦めるというふりをします」
「次に暴力って…、そうなる前に諦めるふりはした方がいい。暴言を吐かれた時でもいいだろう」
「暴言は色々と言われてますし、今更と思われそうで…」
「何かワードを決めたらいい。それが引っかかったでいいだろう」
「わかりました。そうします」
(わざわざ、暴力をふるわれるのを待つのも馬鹿らしいものね)
「今のところ、どちらの案を取る方が可能性が高いんでしょうか」
「ノーマン家だとは思うが…」
トーリ様が難しい顔で答える。
(ビトイの家だというのなら、お姉様は必死に離婚を拒否するでしょうね…。それに、嫌がるお姉様に対して、お義兄様はどうやって離婚するつもりなのかしら…。わたしにはさっぱりわからないわ)
わからない事ばかりだけれど、とりあえず、トーリ様に聞ける事は聞いてみる。
「もし、ショー様の希望通りブロット公爵家に行く場合は、表向きは婚約者ですが、裏ではどんな扱いになるのでしょう?」
「そうするんじゃないかという予想で言うが、たぶん、専属メイドにでもして……」
そこまで言うと、トーリ様は言葉を止めてから、少し考えて、また口を開く。
「自分の好きな様にするかもしれない」
(言葉を選んでくださったのね…。という事は、お姉様はブロット公爵家に行けばメイドではなく、実際は違う扱いをされるという事になりそうね…)
頷いてから、疑問に思った事を尋ねてみる。
「そういえば、公爵令息と元伯爵令嬢との結婚は可能なんですか?」
「嫡男じゃないし、ショーの場合は父上は文句は言わないよ。それに、世間体ではマーニャ嬢は君の姉だ。だから、出戻りであったとしても、伯爵令嬢扱い出来るだろう」
「……そうでした。世間体的にはそうですね…。お兄様が継いだら、元伯爵令嬢になるんでしょうけど…。というか、わたしもまだ、お姉様と呼んでますし、家族の縁って簡単に切れるものじゃないんですね…」
「そうだな。切りたくても切れない。どこかの養子になったりすれば違ってくるんだろうけど」
トーリ様が目を伏せて悲しげに呟いた。
(ショー様と自分の事を言っておられるのかしら…? 特に、トーリ様とショー様は似ていないけれど双子だもの。何かと話題にされるでしょうしね…)
その後は、これからについての話をして、トーリ様からは、わたしがショー様と2人きりにならない様に気にかけてくださるけれど、自分の方でも注意してくれと再度言われた。
そして、数日後、お姉様の処遇が決まった。
※次話はマーニャ視点になります。
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