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プロローグ
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国の面積の六分の一が湖であるサウザン王国は、自然豊かな国で人間と他の動物たちとの棲み分けが上手くできている。
国民性は大らかな人が多く、親しみやすいと国外からの評価が高い。
もうすぐ十九歳になる私、ララティア・シリルはサウザン王国の東の辺境伯の長女で、家族構成は両親に兄が一人だ。
ワイン色の少しウェーブのかかった長い髪に薄い水色の瞳を持ち、自分で言うのもなんだが、目も大きく可愛らしい顔立ちだと言われている。
私の婚約者は一つ年上のフォークス・シェイン様。彼は王太子であり、私が『無償の愛』を捧げている相手である。
今から三百年前、当時の国王はある一人の魔女に恋をした。嫌がる彼女を無理やり妻にし、三年後には子供を生ませた。それから二年後、国王は違う女性に恋をし、邪魔になった魔女と2歳になった子供を殺すことにした。
息子は無事に逃すことはできたものの、自分が捕まり、火あぶりにされた魔女は、命が消える前にこう叫んだ。
『王子が二十歳になってから五年間、親族以外に無償の愛を捧げ続けてもらえなければ、人間の姿ではなくなる呪いをかけてやった!』
なぜ五年間なのか。予想では魔女が陛下のために自分の人生を犠牲にした年数ではないかと言われている。当時の書物には魔女と親しかった人間の話として『魔女は優しい人だった。だから、五年の猶予をみてやったんだろう』と記されている。
当時の国王には何もなかったが、彼の息子には呪いが発動し、二十歳になった時、王子はトカゲに変化したそうだ。彼は二十五歳になるまでに無償の愛を捧げてくれる人が見つかり、元の姿に戻ったとのことだ。
幼いながらも、この話を読んだ時には『どうせなら、魔女を殺した国王にも変な呪いをかけてあげれば良かったのに――』と本気で思ったものだ。
私は幼い頃から、気が強く体を動かすことが大好きだったが、歴史書を読むことも好きだった。
家族で王都に出向く時には、王家が管理する図書館によく連れて行ってもらっていた。そこで私は、フォークス様と出会ったのだ。
先祖のせいで呪われてしまったフォークス様。何の罪もないのに呪われている彼が気の毒に思えたこと。金色のサラサラの髪に青色の瞳を持つ、整った顔立ちの彼が、無邪気な笑顔を見せてくれたあの日からずっと、私は彼を思い続けている。
そして三年前、その思いが報われて、私はフォークス様の婚約者になった。
無償の愛とは何の見返りも求めないもの。
サウザン王国に愛人や側妃は認められていないが、彼に愛人ができても、私はそれを責めることができない。
ただ、彼を愛し続けるだけ。
私はそれでいいと思っていた。いつか、彼の機嫌を損ねて無視をされるようになっても、嫌いだと言われて暴力をふるわれるようになっても、目の前で他の女性に愛を囁いていたとしても、ずっと彼の側にいられますようにと願っていた。
そんな願いは、私のことをライバル視している公爵令嬢によって叶わぬものとなる。
フォークス様から『運命の人』を紹介され、私が彼に『無償の愛』を捧げることをやめることになったのは、フォークス様が二十歳を迎えた当日に行われた誕生日パーティーの時だった。
国民性は大らかな人が多く、親しみやすいと国外からの評価が高い。
もうすぐ十九歳になる私、ララティア・シリルはサウザン王国の東の辺境伯の長女で、家族構成は両親に兄が一人だ。
ワイン色の少しウェーブのかかった長い髪に薄い水色の瞳を持ち、自分で言うのもなんだが、目も大きく可愛らしい顔立ちだと言われている。
私の婚約者は一つ年上のフォークス・シェイン様。彼は王太子であり、私が『無償の愛』を捧げている相手である。
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息子は無事に逃すことはできたものの、自分が捕まり、火あぶりにされた魔女は、命が消える前にこう叫んだ。
『王子が二十歳になってから五年間、親族以外に無償の愛を捧げ続けてもらえなければ、人間の姿ではなくなる呪いをかけてやった!』
なぜ五年間なのか。予想では魔女が陛下のために自分の人生を犠牲にした年数ではないかと言われている。当時の書物には魔女と親しかった人間の話として『魔女は優しい人だった。だから、五年の猶予をみてやったんだろう』と記されている。
当時の国王には何もなかったが、彼の息子には呪いが発動し、二十歳になった時、王子はトカゲに変化したそうだ。彼は二十五歳になるまでに無償の愛を捧げてくれる人が見つかり、元の姿に戻ったとのことだ。
幼いながらも、この話を読んだ時には『どうせなら、魔女を殺した国王にも変な呪いをかけてあげれば良かったのに――』と本気で思ったものだ。
私は幼い頃から、気が強く体を動かすことが大好きだったが、歴史書を読むことも好きだった。
家族で王都に出向く時には、王家が管理する図書館によく連れて行ってもらっていた。そこで私は、フォークス様と出会ったのだ。
先祖のせいで呪われてしまったフォークス様。何の罪もないのに呪われている彼が気の毒に思えたこと。金色のサラサラの髪に青色の瞳を持つ、整った顔立ちの彼が、無邪気な笑顔を見せてくれたあの日からずっと、私は彼を思い続けている。
そして三年前、その思いが報われて、私はフォークス様の婚約者になった。
無償の愛とは何の見返りも求めないもの。
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ただ、彼を愛し続けるだけ。
私はそれでいいと思っていた。いつか、彼の機嫌を損ねて無視をされるようになっても、嫌いだと言われて暴力をふるわれるようになっても、目の前で他の女性に愛を囁いていたとしても、ずっと彼の側にいられますようにと願っていた。
そんな願いは、私のことをライバル視している公爵令嬢によって叶わぬものとなる。
フォークス様から『運命の人』を紹介され、私が彼に『無償の愛』を捧げることをやめることになったのは、フォークス様が二十歳を迎えた当日に行われた誕生日パーティーの時だった。
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