4 / 35
2 辺境伯令嬢の『無償の愛』が失われる日 ①
「殿下、どういうことですか!」
呆然としている私の代わりに、お父様が訴える。
「そのような大事な話は、まず、本人や家族に連絡をすべきでしょう。少なくともこんな大勢の前で話すことではありません!」
「だから、今日は来なくても良いと言ったのだ。改めて話しに行くものをわざわざ傷つきに来たのはララティアだ」
私を見つめるフォークス様の目は鋭く冷たい。こんな目で見られるのは初めてだった。
「……婚約の破棄を受け入れた場合、私はどうなるのですか」
運命の人の基準は私にはわからない。ただ、一生を共にするつもりでいる人だということくらいわかる。
……私は捨てられたのか。いや、元々、無償の愛だったのだから、婚約を破棄されたという事実だけだ。
ウェンディ様が嘲笑しているのがわかり、私はグッと唇を噛んで涙をこらえた。
「婚約を破棄するということは、ララティアはお役御免だということでよろしいでしょうか」
憤っているお父様の代わりに、お兄様が冷静に尋ねると、フォークス様は首を横に振る。
「そうではない。ララティアには私への無償の愛を貫いてもらう」
「殿下は、ララティアにどうしろとおっしゃるのです?」
「ララティアは私に無償の愛を捧げると誓った。それなら、私だけを思い続け独身を貫くのだ」
静まり返っていた会場内がどよめいた。
正式に誓ったのは婚約者になったからだ。それに運命の人がいるのに、無償の愛を捧げる人が必要なの?
黙ってフォークス様を見つめていると、彼は私を見て嘲笑する。
「ララティア、何を驚いている。お前は、どんなことになっても私を愛してくれると誓ったはずだ」
それは時と場合によると今更言っても意味がない。
「フォークス様にお聞きしたいことがございます」
「なんだ?」
「どうして、私の無償の愛が必要なのでしょうか。フォークス様の運命の人は、私のように無償の愛を捧げることはできないのですか?」
「生意気な口をきくな!」
フォークス様は私の頬を打つと、婚約破棄の書類を私に叩きつけた。
女性の小さな悲鳴と声にならない声が、会場内に響く。お父様たちが私に駆け寄ろうとしたけれど、近くにいた騎士に止められた。
「動くな。私の許可なく動いた者は、王家に反逆するとみなす」
そう叫んだあと、フォークス様は打たれた頬を押さえている私に命令する。
「ララティア、跪け」
「……っ」
フォークス様の命令なら跪くことなんて苦ではない。ただ、彼の腕の中にいるウェンディ様の前で跪きたくなかった。躊躇しながらも跪くと、フォークス様は靴のつま先を私の頭に当てて話し始める。
「私の婚約者だということをいいことに、ウェンディに嫌がらせをしていたらしいな」
「そんなことはしていません」
「黙れ! 嫉妬に狂った女め!」
フォークス様は顔を上げて答えた、私の額を靴底で押した。後ろに倒れ込んだ私にフォークス様が一歩近づいた時だった。
「待て」
国内の貴族が動くことができない中。フォークス様の動きを止めた止めたのは、懐かしい声だった。
フォークス様の婚約者になってから、会うことがなくなった幼なじみは、私の所にやって来ると、私に手を差し出す。
「だから、俺にしとけと言ったんだ」
隣国、セブレブ王国の王太子、アーサー・トーンは整った眉を寄せて、私にそう囁いた。
呆然としている私の代わりに、お父様が訴える。
「そのような大事な話は、まず、本人や家族に連絡をすべきでしょう。少なくともこんな大勢の前で話すことではありません!」
「だから、今日は来なくても良いと言ったのだ。改めて話しに行くものをわざわざ傷つきに来たのはララティアだ」
私を見つめるフォークス様の目は鋭く冷たい。こんな目で見られるのは初めてだった。
「……婚約の破棄を受け入れた場合、私はどうなるのですか」
運命の人の基準は私にはわからない。ただ、一生を共にするつもりでいる人だということくらいわかる。
……私は捨てられたのか。いや、元々、無償の愛だったのだから、婚約を破棄されたという事実だけだ。
ウェンディ様が嘲笑しているのがわかり、私はグッと唇を噛んで涙をこらえた。
「婚約を破棄するということは、ララティアはお役御免だということでよろしいでしょうか」
憤っているお父様の代わりに、お兄様が冷静に尋ねると、フォークス様は首を横に振る。
「そうではない。ララティアには私への無償の愛を貫いてもらう」
「殿下は、ララティアにどうしろとおっしゃるのです?」
「ララティアは私に無償の愛を捧げると誓った。それなら、私だけを思い続け独身を貫くのだ」
静まり返っていた会場内がどよめいた。
正式に誓ったのは婚約者になったからだ。それに運命の人がいるのに、無償の愛を捧げる人が必要なの?
黙ってフォークス様を見つめていると、彼は私を見て嘲笑する。
「ララティア、何を驚いている。お前は、どんなことになっても私を愛してくれると誓ったはずだ」
それは時と場合によると今更言っても意味がない。
「フォークス様にお聞きしたいことがございます」
「なんだ?」
「どうして、私の無償の愛が必要なのでしょうか。フォークス様の運命の人は、私のように無償の愛を捧げることはできないのですか?」
「生意気な口をきくな!」
フォークス様は私の頬を打つと、婚約破棄の書類を私に叩きつけた。
女性の小さな悲鳴と声にならない声が、会場内に響く。お父様たちが私に駆け寄ろうとしたけれど、近くにいた騎士に止められた。
「動くな。私の許可なく動いた者は、王家に反逆するとみなす」
そう叫んだあと、フォークス様は打たれた頬を押さえている私に命令する。
「ララティア、跪け」
「……っ」
フォークス様の命令なら跪くことなんて苦ではない。ただ、彼の腕の中にいるウェンディ様の前で跪きたくなかった。躊躇しながらも跪くと、フォークス様は靴のつま先を私の頭に当てて話し始める。
「私の婚約者だということをいいことに、ウェンディに嫌がらせをしていたらしいな」
「そんなことはしていません」
「黙れ! 嫉妬に狂った女め!」
フォークス様は顔を上げて答えた、私の額を靴底で押した。後ろに倒れ込んだ私にフォークス様が一歩近づいた時だった。
「待て」
国内の貴族が動くことができない中。フォークス様の動きを止めた止めたのは、懐かしい声だった。
フォークス様の婚約者になってから、会うことがなくなった幼なじみは、私の所にやって来ると、私に手を差し出す。
「だから、俺にしとけと言ったんだ」
隣国、セブレブ王国の王太子、アーサー・トーンは整った眉を寄せて、私にそう囁いた。
あなたにおすすめの小説
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】
須木 水夏
恋愛
大好きな幼なじみ兼婚約者の伯爵令息、ロミオは、メアリーナではない人と恋をする。
メアリーナの初恋は、叶うこと無く終わってしまった。傷ついたメアリーナはロメオとの婚約を解消し距離を置くが、彼の事で心に傷を負い忘れられずにいた。どうにかして彼を忘れる為にメアが頼ったのは、友人達に誘われた夜会。最初は遊びでも良いのじゃないの、と焚き付けられて。
(そうね、新しい恋を見つけましょう。その方が手っ取り早いわ。)
※ご都合主義です。変な法律出てきます。ふわっとしてます。
※ヒーローは変わってます。
※主人公は無意識でざまぁする系です。
※誤字脱字すみません。
【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。
こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。
彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。
皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。
だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。
何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。
どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。
絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。
聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──……
※在り来りなご都合主義設定です
※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です
※つまりは行き当たりばったり
※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください
4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!
最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。
ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。
ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も……
※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。
また、一応転生者も出ます。
幼馴染み同士で婚約した私達は、何があっても結婚すると思っていた。
喜楽直人
恋愛
領地が隣の田舎貴族同士で爵位も釣り合うからと親が決めた婚約者レオン。
学園を卒業したら幼馴染みでもある彼と結婚するのだとローラは素直に受け入れていた。
しかし、ふたりで王都の学園に通うようになったある日、『王都に居られるのは学生の間だけだ。その間だけでも、お互い自由に、世界を広げておくべきだと思う』と距離を置かれてしまう。
挙句、学園内のパーティの席で、彼の隣にはローラではない令嬢が立ち、エスコートをする始末。
パーティの度に次々とエスコートする令嬢を替え、浮名を流すようになっていく婚約者に、ローラはひとり胸を痛める。
そうしてついに恐れていた事態が起きた。
レオンは、いつも同じ令嬢を連れて歩くようになったのだ。
捨てられたなら 〜婚約破棄された私に出来ること〜
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
長年の婚約者だった王太子殿下から婚約破棄を言い渡されたクリスティン。
彼女は婚約破棄を受け入れ、周りも処理に動き出します。
さて、どうなりますでしょうか……
別作品のボツネタ救済です(ヒロインの名前と設定のみ)。
突然のポイント数増加に驚いています。HOTランキングですか?
自分には縁のないものだと思っていたのでびっくりしました。
私の拙い作品をたくさんの方に読んでいただけて嬉しいです。
それに伴い、たくさんの方から感想をいただくようになりました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただけたらと思いますので、中にはいただいたコメントを非公開とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきますし、削除はいたしません。
7/16 最終部がわかりにくいとのご指摘をいただき、訂正しました。
※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。
【完結】で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?
Debby
恋愛
キャナリィ・ウィスタリア侯爵令嬢とその婚約者のシアン・フロスティ公爵令息の前に、昨年までシアンが留学していた隣国での友人が現れた。
その友人はロベリーと名乗り、シアン不在の時を狙い、キャナリィに何かと声をかけてくる。
キャナリィの幼馴染み兼親友のクラレット・メイズ伯爵令嬢の「必要以上にキャナリィに近付くな」と言う忠告も無視するロベリーと何故かロベリーを受け入れるキャナリィ。
キャナリィの不貞の噂が学園に流れる中開かれた新入生歓迎のガーデンパーティーで、ロベリーに心惹かれた令嬢によってそれは取り返しのつかない事態にまで発展してしまう。
「で、まずはあなたが私に嫌がらせをする理由をお聞かせいだいても宜しいかしら?──」
キャナリィに近付くロベリーの目的は?
不貞を疑われたキャナリィは無事にその場を収めることが出来るのだろうか?
----------
覗いて頂いてありがとうございます。
★2025.4.26HOTランキング1位になりました。読んでくださったかた、ありがとうございます(^-^)
★このお話は「で。」シリーズの第二弾です。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入りました。良かったら覗いてみてくださいね。
(*´▽`人)アリガトウ
ついで姫の本気
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
国の間で二組の婚約が結ばれた。
一方は王太子と王女の婚約。
もう一方は王太子の親友の高位貴族と王女と仲の良い下位貴族の娘のもので……。
綺麗な話を書いていた反動でできたお話なので救いなし。
ハッピーな終わり方ではありません(多分)。
※4/7 完結しました。
ざまぁのみの暗い話の予定でしたが、読者様に励まされ闇精神が復活。
救いのあるラストになっております。
短いです。全三話くらいの予定です。
↑3/31 見通しが甘くてすみません。ちょっとだけのびます。
4/6 9話目 わかりにくいと思われる部分に少し文を加えました。