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4 辺境伯令嬢の『無償の愛』が失われる日 ③
その日の晩、婚約破棄についての協議書を作っている時に、アーサーたちが訪ねてきた。王城に泊まることになっているそうだが、今晩は私の家に滞在してもらうことになった。
私はパーティーが始まらないうちに辞去したが、アーサーたちは事の顛末を見届けるために残ってくれていた。
あの後、騒ぎを聞きつけた国王陛下がやって来て、フォークス様に『もっといいやり方があっただろう!』と激怒したそうだ。
「だから、あんなのは駄目だって言っていたじゃないですかぁ」
アーサーと同じく、私の幼馴染であるセブレブ王国の公爵令息であるミランシス・ノーブは涙目になって私に言った。
彼は数少ない魔法使いの末裔であったりする。
金色の髪に緑色の瞳を持つ彼は、女性と見間違えるほどに綺麗な見た目をしている。彼は昔から泣き虫だったが、大人になっても直っていないらしい。
ミランは子供の頃から、アーサーの付き人で大人になった今もその立場は変わらない。公爵家の跡を継ぐまでは、このままの状態でいるつもりなのでしょう。
「ミラン、無償の愛を捧げると決めたのは私よ。フォークス様は悪くない」
「まだあんな奴のことが好きなのかよ」
呆れた顔をするアーサーに訴える。
「今はまだ婚約者なの。好きでいなければならないし、簡単に忘れられるものではないわ」
「忘れるつもりはあるのか?」
真正面に座り、長い足を組むアーサーは不服そうな顔をして私を見ている。
それもそうだろう。彼は昔、私のことを好きだと言ってくれた。嬉しかったが、その頃の私はフォークス様しか頭になかったから、気持ちを受け入れなかった。その頃の私とまったく成長していないと呆れられてしまうのは仕方がない。
「あるわ」
「婚約破棄の協議書にサインをしても、相手がゴネてくる可能性があるが、戦う覚悟はたあるのか?」
「もちろんあるわ」
「俺と結婚する気は?」
「ある……って、誘導しないでよ! ない! 今のところはない!」
慌てて訂正すると「もうちょっと質問を増やしてから聞くべきだったか」とアーサーは不満げな顔をした。
「今のところということは、嫌ではないんですよねぇ?」
「ミラン、私はまだ婚約中なの。そんな話はできないわ」
「婚約中なのに、相手は浮気してましたけどねぇ?」
「浮気じゃないわ。運命の人を見つけたのよ」
「運命の人って、どうやって見つけたんですかねぇ?」
「魔法でわかったりしないの?」
「わかるわけがないじゃないですかぁ。そんな魔法ないですもん」
ミランが間延びした声で話す時は、彼がリラックスしている時だ。こうして三人で話していると、昔に戻ったみたい。こんなことを考えている場合でもないのに、ニワトリの『コケコ』を三人でヒヨコから育てて可愛がっていたのを思い出して切なくなった。
最初はメスかオスかわからなかったから、どちらでもいけそうな名前をつけたのよね。
コケコッコーと鳴くのはオスだし、コケコという名前は可愛いからメスでもいいだろうと、幼い頃の私が提案したことを思い出した。
きっと『コケコ』は虹の橋を渡ってしまっている。私がフォークス様を愛さなかったら看取ってあげられたのに――。
「とにかく早く婚約破棄を成立させてくれ」
アーサーに急かされ我に返った私は、協議書を作成し、アーサーたちや家族に見てもらった。
時刻を見ると、ちょうど十二時になり、日付が変わったところだった。
ウェンディ様は自分の愛のおかげで、フォークス様が変化しないと言っていたが、私にはそうとは思えない。
私がフォークス様の手の届かない所に行くまでは、彼を愛し続けよう。
私が愛することをやめた時、呪いが発動したとしても、それは私の知ったことではないのだ。
こう思っている時点で私の『無償の愛』は失われていたのだが、幸運なことに呪いが発動することはなかった。
私はパーティーが始まらないうちに辞去したが、アーサーたちは事の顛末を見届けるために残ってくれていた。
あの後、騒ぎを聞きつけた国王陛下がやって来て、フォークス様に『もっといいやり方があっただろう!』と激怒したそうだ。
「だから、あんなのは駄目だって言っていたじゃないですかぁ」
アーサーと同じく、私の幼馴染であるセブレブ王国の公爵令息であるミランシス・ノーブは涙目になって私に言った。
彼は数少ない魔法使いの末裔であったりする。
金色の髪に緑色の瞳を持つ彼は、女性と見間違えるほどに綺麗な見た目をしている。彼は昔から泣き虫だったが、大人になっても直っていないらしい。
ミランは子供の頃から、アーサーの付き人で大人になった今もその立場は変わらない。公爵家の跡を継ぐまでは、このままの状態でいるつもりなのでしょう。
「ミラン、無償の愛を捧げると決めたのは私よ。フォークス様は悪くない」
「まだあんな奴のことが好きなのかよ」
呆れた顔をするアーサーに訴える。
「今はまだ婚約者なの。好きでいなければならないし、簡単に忘れられるものではないわ」
「忘れるつもりはあるのか?」
真正面に座り、長い足を組むアーサーは不服そうな顔をして私を見ている。
それもそうだろう。彼は昔、私のことを好きだと言ってくれた。嬉しかったが、その頃の私はフォークス様しか頭になかったから、気持ちを受け入れなかった。その頃の私とまったく成長していないと呆れられてしまうのは仕方がない。
「あるわ」
「婚約破棄の協議書にサインをしても、相手がゴネてくる可能性があるが、戦う覚悟はたあるのか?」
「もちろんあるわ」
「俺と結婚する気は?」
「ある……って、誘導しないでよ! ない! 今のところはない!」
慌てて訂正すると「もうちょっと質問を増やしてから聞くべきだったか」とアーサーは不満げな顔をした。
「今のところということは、嫌ではないんですよねぇ?」
「ミラン、私はまだ婚約中なの。そんな話はできないわ」
「婚約中なのに、相手は浮気してましたけどねぇ?」
「浮気じゃないわ。運命の人を見つけたのよ」
「運命の人って、どうやって見つけたんですかねぇ?」
「魔法でわかったりしないの?」
「わかるわけがないじゃないですかぁ。そんな魔法ないですもん」
ミランが間延びした声で話す時は、彼がリラックスしている時だ。こうして三人で話していると、昔に戻ったみたい。こんなことを考えている場合でもないのに、ニワトリの『コケコ』を三人でヒヨコから育てて可愛がっていたのを思い出して切なくなった。
最初はメスかオスかわからなかったから、どちらでもいけそうな名前をつけたのよね。
コケコッコーと鳴くのはオスだし、コケコという名前は可愛いからメスでもいいだろうと、幼い頃の私が提案したことを思い出した。
きっと『コケコ』は虹の橋を渡ってしまっている。私がフォークス様を愛さなかったら看取ってあげられたのに――。
「とにかく早く婚約破棄を成立させてくれ」
アーサーに急かされ我に返った私は、協議書を作成し、アーサーたちや家族に見てもらった。
時刻を見ると、ちょうど十二時になり、日付が変わったところだった。
ウェンディ様は自分の愛のおかげで、フォークス様が変化しないと言っていたが、私にはそうとは思えない。
私がフォークス様の手の届かない所に行くまでは、彼を愛し続けよう。
私が愛することをやめた時、呪いが発動したとしても、それは私の知ったことではないのだ。
こう思っている時点で私の『無償の愛』は失われていたのだが、幸運なことに呪いが発動することはなかった。
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