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6 辺境伯令嬢の『運命の人』②
「ど……、どういうことですか?」
ウェンディ様はひきつった笑みを浮かべて私に尋ねてきた。困惑した様子のアーサーの腕を掴んだまま笑顔で答える。
「フォークス様に捨てられた私を可哀想に思ってくださったアーサー殿下が、婚約を申し込んでくださったのです」
「アーサー殿下が……、あなたに……婚約を申し込んだ?」
信じられないと言わんばかりに、ウェンディ様は私とアーサーを交互に見つめる。あまりのショックでアーサーに挨拶をすることも忘れてしまっているみたい。
「俺が彼女に婚約を申し込んでも問題はないだろ?」
アーサーがウェンディ様に尋ねると、彼女は焦った顔で答える。
「お言葉を返すようですが、問題はありますでしょう。その婚約は他国間でのお話であり、あなたは王太子殿下です。大体、婚約破棄は今朝決まったばかりですのに婚約だなんて……。まるで、前々から段取りしていたように思われてしまうのではないでしょうか」
「君とフォークス殿下は1年前から急接近してるよな。他国とはいえ王太子の動きを他の国がまったく無関心なわけがないだろ」
「……それは……、そうかもしれませんが」
ウェンディ様は頷いたあと、悔しそうに唇を噛んだ。
やっぱり、ウェンディ様は私に対抗したくてフォークス様に近づいたのね。フォークス様は素敵だし、いつしか彼に心を奪われたのでしょうけれど、こんな様子では彼女の『無償の愛』はいつまで続くものなのかといった感じね。
「ウェンディ様、私は陛下に報告を終えましたら、ここを出るつもりです。あなたとフォークス様の邪魔をするつもりはありませんのでご心配なく」
「そ、そんな……っ」
「どうぞお幸せに。あ、そうでした!」
私はわざとらしく大きな声を上げて、ウェンディ様に厳しい口調で話す。
「ウェンディ様、私に嫌がらせをされたなどと嘘の噂を流したことは許されることではありません。私を信じてくださらなかったフォークス様については何も言いませんが、私の名誉回復のためにしなければならないことはさせていただきます」
「わ、私は、ほ、本当のことをフォークス様に伝えただけで、嘘の噂を流したわけではありません」
「本当のことであるのならば、私が調べたとしても同じ結果が出ることでしょう」
ウェンディ様はこんな展開を予想していなかったのか、困惑しているようにも見えた。
「お話は終わりましたでしょうか」
「えっ、ああ……、そうですわね」
小さな声で答えると、ウェンディ様は背を向けた。彼女の身体が小刻みに震えているのは、思い通りにいかなかった悔しさなのか、それとも嘘がバレるかもしれないという恐怖からなのか。
ウェンディ様が帰っていったあと、アーサーが私に聞いてくる。
「……えーと、ララティア、俺の婚約の申し込みを受けてくれたと判断しても良いんだよな?」
「まだ、フォークス様のことを完全に忘れられたわけじゃないの。でも、必ず忘れてみせるわ。今はこんな調子だけど、それでも良ければお願いしたいの」
「もちろん。俺がお前に好きになってもらえるように努力をするだけだ」
「私もあなたをがっかりさせないように頑張るわ」
微笑み合うと、ミランが泣きながら手を叩く。
「良かった! 本当に良かったですぅ!」
「おい。鼻水が垂れてるぞ」
「だ、だって、やっとアーサー様の思いが報われるんです。涙も鼻水も出ますよぉ!」
「気持ちは嬉しいが汚い」
アーサーとミランのやり取りに癒される。
私たちの前ではこんな調子のミランだけど、社交場でのミランは氷の貴公子とも呼ばれているのだから驚きだ。
ハンカチで涙と鼻水を拭っているミランを呆れた顔で見つめながら、アーサーが呟く。
「どうせ話をするのなら、運命の人についての話をすれば良かったな」
「そう言われればそうね。どうしてわかったのか知りたかったわ。そんなことを調べられる魔法はないのでしょう?」
アーサーと私が答えを求めてミランを見ると、彼は頷く。
「昨日も言いましたが、運命の人が誰かわかるような魔法は存在しません」
「……ということは、誰かが嘘をついたのか? それとも、デーニー公爵令嬢がそう言わせたか」
私の運命の人は、フォークス様ではない。
二人の会話を聞いて、相手が誰であろうと、私の目を覚ますきっかけを作ってくれた人には感謝したいと思った。
ウェンディ様はひきつった笑みを浮かべて私に尋ねてきた。困惑した様子のアーサーの腕を掴んだまま笑顔で答える。
「フォークス様に捨てられた私を可哀想に思ってくださったアーサー殿下が、婚約を申し込んでくださったのです」
「アーサー殿下が……、あなたに……婚約を申し込んだ?」
信じられないと言わんばかりに、ウェンディ様は私とアーサーを交互に見つめる。あまりのショックでアーサーに挨拶をすることも忘れてしまっているみたい。
「俺が彼女に婚約を申し込んでも問題はないだろ?」
アーサーがウェンディ様に尋ねると、彼女は焦った顔で答える。
「お言葉を返すようですが、問題はありますでしょう。その婚約は他国間でのお話であり、あなたは王太子殿下です。大体、婚約破棄は今朝決まったばかりですのに婚約だなんて……。まるで、前々から段取りしていたように思われてしまうのではないでしょうか」
「君とフォークス殿下は1年前から急接近してるよな。他国とはいえ王太子の動きを他の国がまったく無関心なわけがないだろ」
「……それは……、そうかもしれませんが」
ウェンディ様は頷いたあと、悔しそうに唇を噛んだ。
やっぱり、ウェンディ様は私に対抗したくてフォークス様に近づいたのね。フォークス様は素敵だし、いつしか彼に心を奪われたのでしょうけれど、こんな様子では彼女の『無償の愛』はいつまで続くものなのかといった感じね。
「ウェンディ様、私は陛下に報告を終えましたら、ここを出るつもりです。あなたとフォークス様の邪魔をするつもりはありませんのでご心配なく」
「そ、そんな……っ」
「どうぞお幸せに。あ、そうでした!」
私はわざとらしく大きな声を上げて、ウェンディ様に厳しい口調で話す。
「ウェンディ様、私に嫌がらせをされたなどと嘘の噂を流したことは許されることではありません。私を信じてくださらなかったフォークス様については何も言いませんが、私の名誉回復のためにしなければならないことはさせていただきます」
「わ、私は、ほ、本当のことをフォークス様に伝えただけで、嘘の噂を流したわけではありません」
「本当のことであるのならば、私が調べたとしても同じ結果が出ることでしょう」
ウェンディ様はこんな展開を予想していなかったのか、困惑しているようにも見えた。
「お話は終わりましたでしょうか」
「えっ、ああ……、そうですわね」
小さな声で答えると、ウェンディ様は背を向けた。彼女の身体が小刻みに震えているのは、思い通りにいかなかった悔しさなのか、それとも嘘がバレるかもしれないという恐怖からなのか。
ウェンディ様が帰っていったあと、アーサーが私に聞いてくる。
「……えーと、ララティア、俺の婚約の申し込みを受けてくれたと判断しても良いんだよな?」
「まだ、フォークス様のことを完全に忘れられたわけじゃないの。でも、必ず忘れてみせるわ。今はこんな調子だけど、それでも良ければお願いしたいの」
「もちろん。俺がお前に好きになってもらえるように努力をするだけだ」
「私もあなたをがっかりさせないように頑張るわ」
微笑み合うと、ミランが泣きながら手を叩く。
「良かった! 本当に良かったですぅ!」
「おい。鼻水が垂れてるぞ」
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