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11 加護のキス
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レイブンの家に着いてからは、用意されていた夕食を食べ、お風呂に浸かっている内に、いつの間にか眠っていたみたいで、目を覚ました時には、夜は明けていて、太陽の光がカーテンの隙間から射し込んでいた。
ぼんやりとした頭のまま寝返りを打つと、なぜか目の前にレイブンの顔があって、思わず悲鳴を上げそうになった。
横になっている私の目の前にいるレイブンは、顔は私の方に向けて、枕に頭を預けて気持ちよさそうに眠っていた。
というか、どうして、レイブンが私の横で眠ってるの!?
寝返りをうってみて、見える範囲を確認してみると、私はレイブンの部屋にいる事がわかった。
服は着替えさせられていて、ベッド脇のテーブルには、ネックレスが置かれていた。
シルクだろうか、白くてサラサラのネグリジェで、何だか落ち着かない。
何にしても、私はここにいちゃいけないわ。
だって、ここ、レイブンの部屋だもの!
そう思って、静かに身を起こすと、腕を掴まれた。
「どこ行くんだよ」
「…レイブン」
私が言葉を続ける前に、引き寄せられて抱きしめられた。
「レ、レイブン、ちょっと待って! 態勢が変なの!」
「うん、わかる」
私の右横に寝ていたレイブンは、背を向けている私の左腕を引っ張ったものだから、彼の体の上に、私の上半身がもたれかかる形になってしまった。
レイブンの笑い声が聞こえたかと思うと、腕をはなしてくれたので、身を起こして、レイブンの方に向き直って彼を見つめる。
「昨日はちゃんと話せなかったから、今、もう一度話すけど、ごめんなさい、レイブン。私、ずっとあなたを騙してたの」
「レティは騙してたって思ってるみたいだけど、別に俺はレティに騙されたなんて思ってないから気にすんな。アメリアだって、そう言ってたろ?」
「レイブン。昨日も言ったと思うし、騙していた私が言うのもなんだけど、あなた、本当に良い人すぎるわ」
「考え方は人それぞれだと思うけどな。俺にしてみれば、俺がレティの立場だったら、そうせざるを得ないだろうなって事が理解できるから、たとえ、騙されていたとしても気にならない。何より、お前だって辛かったんだろ」
レイブンは上半身を起こして、私を抱きしめてくれた。
あったかい。
とても、あったかい。
なぜなら。
「レイブン、聞いてもいい?」
「何だ?」
「どうして、あなた、上半身裸なの!?」
「ん? ああ、暑かったんだよ」
「暑かったって!」
ベッドに横になっていた時、私には上にタオルケットがかけられていたけど、レイブンは何もかけられていない状態だったから、暑かったと言われても納得できない事はないのだけど…。
「下をはいてるからいいだろ。いつもだったら、下もはいてない」
目線を下に向けると、黒色の生地が見えて、レイブンが黒のズボンを着ている事がわかった。
何だか恥ずかしくなって、両手で彼を押し退けようとする。
「何だか恥ずかしいから離れて」
「嫌だ」
「どうして!?」
「レティは逃げようとするだろ」
「逃げないわよ」
別に逃げるつもりはなかった。
この部屋から、立ち去らなければいけないと思っただけだったから、そう言ったけれど、レイブンは信用してくれていないみたいだった。
レイブンは私の頭を撫でながら言う。
「気付いてあげられなくてごめんな」
「…何の事?」
「ずっと、レティは苦しんでたろ? それなのに、呑気でごめん」
「レイブンは悪くない。打ち明けようと思えば打ち明けられたのに、あなたに嫌われるかもしれないと思うと怖かったのよ。そうなったら、私はどうなるのか不安だったし…。結局は自分の事だけ考えてたの」
「つきたくもない嘘をつかされてただけだろ? 俺は騙されたなんて思ってない」
「レイブン…、疑う事や怒る事も大事よ?」
「こんな事、誰にでも言ってるわけじゃない。レティアにだから言うんだ」
ポンポンと頭を撫でられてから、腕を優しく掴まれて、彼は自分から、私の身体を少しだけ離させた。
不思議に思って顔を上げると、レイブンが私を見つめていて、腕をつかんでいた右手の親指が、私の唇に触れた。
「してもいいか?」
「本当に後悔しない?」
「する訳ないだろ」
加護のキスをかけられるのは、一人一回きりというわけではない。
だけど、魔力を一時だけ、かなり奪う事になるらしい。
だから、キスをしたら、レイブンは丸一日寝込む可能性があると聞いた。
それでも、私にしようとしてくれているのなら…。
「どうしたら良いの?」
「目をつぶってくれてたらいい」
「ちょっと待って。魔法で口の中を綺麗にするから」
「あ、そうだな、俺も」
朝、起きた時の口内は細菌がいると聞いた事がある。
何より、口臭も気になるし。
普通に歯を磨く事も出来るんだけど、今はレイブンの部屋だから、それも無理なので諦めて、魔法で済ませると、レイブンも同じ様にしたみたいだった。
「では、お願いします」
正座をして、目をぎゅっと閉じると、レイブンの笑う声が聞こえた。
「すごく緊張してる顔してる」
「笑わないでよ」
「ごめん」
鼻に何かが当たったと同時に、私の唇に温かい何かが優しく触れて、すぐに離れた。
「終わった?」
「何が?」
目を開けて聞くと、レイブンがきょとんとした顔をするから、文句を言う。
「加護の魔法をかけてくれたんじゃないの?」
「……ごめん。普通にキスしていいか聞いただけだった」
「え? そうなの!?」
「じゃあ、改めて」
レイブンが顔を近付けてきたから、彼の口を手で塞ぐ。
「駄目」
「何でだよ」
「加護のキスをしてくれるの?」
「するけど、普通のキスもする」
「普通のキスは駄目よ」
「何でだよ!?」
「まだ、何も片付いていないから」
「どうして、加護のキスはしてもいいんだ?」
大きな手で頬を撫でられるとくすぐったくて、彼の手に自分の手を重ねて答える。
「色んな人に追われている時に、ネックレスのおかげで助かったの。フォーウッド様から逃れられた時は本当に助かったわ」
「フォーウッドから逃れた?」
「あ、話をしていなかったわね…」
あまり、話をしたくないけれど、フォーウッド様との出来事を話すと、レイブンが怒りの表情になった。
「あいつ、そんな事してたのかよ。っていうか、一度しか会った事ないから詳しくは知らないんだけどな。レティアの私物をコレクションにしてるみたいだから、あいつの部屋だけ燃やしてやろうかな」
「レイブン、大丈夫だから。もう、彼に会わなければいい事だけだもの」
「でも、気持ち悪くないか?」
「確かに気持ちは悪いけれど、思い出したくもないから」
「そっか」
レイブンは頷くと、私の額に自分の額を当てて、目を閉じた。
私には理解できない言葉、きっと魔法の呪文なんだと思う。
呟くように長い文章を言葉にした後、レイブンが目を開けた。
視線が重なり合ってから、ゆっくりと目を閉じた。
私の唇に、レイブンのそれが優しく触れた後、レイブンの舌がするりと口内に入ってきて、思わず声が漏れた。
「んぅっ」
深いキスの後、息が苦しくなってきて、声を上げるとレイブンの唇と私のそれが離れた。
うまく息が出来なかったせいで、呼吸が荒くなる。
「幸せ…、だけど、やばい」
レイブンがそう言うなり、ばたんとベッドの上に倒れた。
「レイブン!? しっかりして!」
そうだったわ。
丸一日寝込むかもしれないって言ってたじゃない!
意識はあるけれど、体が動かせないらしく、レイブンが弱々しい声で言う。
「悪いけど、誰か呼んできてくれ」
「わかったわ!」
慌てて、ベッドからおりて、裸足のまま部屋の扉を開けると、ノースとアメリアが廊下に扉を挟んで立っていたので、二人に助けを求める。
「アメリア、ノース! 大変、レイブンが加護のキスのせいで倒れちゃったの!」
「おお! とうとうやったんか! おめでとう、レティア」
「ありがとう? よくわからないけど、ノース、そんな事を言ってる場合じゃないのよ」
「レティア様、ご安心ください。加護のキスは体力が奪われている様なものだけですから、しっかり休めば、いつも通りに元気になりますから」
アメリアが背中を撫でて慰めてくれる。
「そうなの? それなら良かったけれど…。でも、本当にびっくりしたわ。意識があるから良かったけれど、突然、倒れるんだもの」
「…おかしいですね。普通なら、強い倦怠感に見舞われるだけで、倒れるまではいかないと思うんですが…」
「レティア、レイブンはどんなキスしてきた?」
「ちょっと、ノース!」
アメリアが怒ったけれど、ノースは苦笑しながら私に言う。
「原因がわかるかもしれねぇから。なんつーか、その触れるだけのキスじゃなかったか?」
「え? そんなんじゃなかったわ。その、なんていうか、口の中に…」
「…レティア様。それ、レイブン様の自業自得ですから、心配しなくて大丈夫です」
何かを察したかの様に、アメリアが眉を寄せて言った。
「どういう事?」
「レイブンが欲張って、普通のキスでいいのに、ディープなんかするから、余計に魔力を奪われてんだ。まあ、より、強い加護になるだろうけど、自分がしたかっただけだろうな。色んな意味で」
「そうね、色んな意味で」
ノースの言葉にアメリアが渋い顔をして頷いた。
もしかして、強い加護以外にも意味があるって事?
ま、まさか…!
「レイブン!」
部屋の中に戻り、ぐったりしているレイブンに向かって叫ぶ。
「あなた、今まで我慢していたから、あのキスをしたの!?」
「…それだけじゃねぇよ。強い加護になるし…。まあ、したかったってのもあるけど…」
「もう!」
手元にあった枕をとって、軽く、レイブンの顔に当てた時だった。
「元気そうだな」
声が聞こえて振り返ると、シブン様が笑いながら部屋に入ってきたところだった。
「レイブンはアメリア達に任せて、レティア、君に話がある」
「承知しました。あの、着替えてからでもよろしいでしょうか?」
「もちろん」
シブン様は頷くと「後で俺の部屋に来てくれ」と言って、アメリアに私の事を頼んでから、部屋を出て行った。
私に話したい事って、一体何なのかしら。
不安が少しだけ頭をよぎった。
ぼんやりとした頭のまま寝返りを打つと、なぜか目の前にレイブンの顔があって、思わず悲鳴を上げそうになった。
横になっている私の目の前にいるレイブンは、顔は私の方に向けて、枕に頭を預けて気持ちよさそうに眠っていた。
というか、どうして、レイブンが私の横で眠ってるの!?
寝返りをうってみて、見える範囲を確認してみると、私はレイブンの部屋にいる事がわかった。
服は着替えさせられていて、ベッド脇のテーブルには、ネックレスが置かれていた。
シルクだろうか、白くてサラサラのネグリジェで、何だか落ち着かない。
何にしても、私はここにいちゃいけないわ。
だって、ここ、レイブンの部屋だもの!
そう思って、静かに身を起こすと、腕を掴まれた。
「どこ行くんだよ」
「…レイブン」
私が言葉を続ける前に、引き寄せられて抱きしめられた。
「レ、レイブン、ちょっと待って! 態勢が変なの!」
「うん、わかる」
私の右横に寝ていたレイブンは、背を向けている私の左腕を引っ張ったものだから、彼の体の上に、私の上半身がもたれかかる形になってしまった。
レイブンの笑い声が聞こえたかと思うと、腕をはなしてくれたので、身を起こして、レイブンの方に向き直って彼を見つめる。
「昨日はちゃんと話せなかったから、今、もう一度話すけど、ごめんなさい、レイブン。私、ずっとあなたを騙してたの」
「レティは騙してたって思ってるみたいだけど、別に俺はレティに騙されたなんて思ってないから気にすんな。アメリアだって、そう言ってたろ?」
「レイブン。昨日も言ったと思うし、騙していた私が言うのもなんだけど、あなた、本当に良い人すぎるわ」
「考え方は人それぞれだと思うけどな。俺にしてみれば、俺がレティの立場だったら、そうせざるを得ないだろうなって事が理解できるから、たとえ、騙されていたとしても気にならない。何より、お前だって辛かったんだろ」
レイブンは上半身を起こして、私を抱きしめてくれた。
あったかい。
とても、あったかい。
なぜなら。
「レイブン、聞いてもいい?」
「何だ?」
「どうして、あなた、上半身裸なの!?」
「ん? ああ、暑かったんだよ」
「暑かったって!」
ベッドに横になっていた時、私には上にタオルケットがかけられていたけど、レイブンは何もかけられていない状態だったから、暑かったと言われても納得できない事はないのだけど…。
「下をはいてるからいいだろ。いつもだったら、下もはいてない」
目線を下に向けると、黒色の生地が見えて、レイブンが黒のズボンを着ている事がわかった。
何だか恥ずかしくなって、両手で彼を押し退けようとする。
「何だか恥ずかしいから離れて」
「嫌だ」
「どうして!?」
「レティは逃げようとするだろ」
「逃げないわよ」
別に逃げるつもりはなかった。
この部屋から、立ち去らなければいけないと思っただけだったから、そう言ったけれど、レイブンは信用してくれていないみたいだった。
レイブンは私の頭を撫でながら言う。
「気付いてあげられなくてごめんな」
「…何の事?」
「ずっと、レティは苦しんでたろ? それなのに、呑気でごめん」
「レイブンは悪くない。打ち明けようと思えば打ち明けられたのに、あなたに嫌われるかもしれないと思うと怖かったのよ。そうなったら、私はどうなるのか不安だったし…。結局は自分の事だけ考えてたの」
「つきたくもない嘘をつかされてただけだろ? 俺は騙されたなんて思ってない」
「レイブン…、疑う事や怒る事も大事よ?」
「こんな事、誰にでも言ってるわけじゃない。レティアにだから言うんだ」
ポンポンと頭を撫でられてから、腕を優しく掴まれて、彼は自分から、私の身体を少しだけ離させた。
不思議に思って顔を上げると、レイブンが私を見つめていて、腕をつかんでいた右手の親指が、私の唇に触れた。
「してもいいか?」
「本当に後悔しない?」
「する訳ないだろ」
加護のキスをかけられるのは、一人一回きりというわけではない。
だけど、魔力を一時だけ、かなり奪う事になるらしい。
だから、キスをしたら、レイブンは丸一日寝込む可能性があると聞いた。
それでも、私にしようとしてくれているのなら…。
「どうしたら良いの?」
「目をつぶってくれてたらいい」
「ちょっと待って。魔法で口の中を綺麗にするから」
「あ、そうだな、俺も」
朝、起きた時の口内は細菌がいると聞いた事がある。
何より、口臭も気になるし。
普通に歯を磨く事も出来るんだけど、今はレイブンの部屋だから、それも無理なので諦めて、魔法で済ませると、レイブンも同じ様にしたみたいだった。
「では、お願いします」
正座をして、目をぎゅっと閉じると、レイブンの笑う声が聞こえた。
「すごく緊張してる顔してる」
「笑わないでよ」
「ごめん」
鼻に何かが当たったと同時に、私の唇に温かい何かが優しく触れて、すぐに離れた。
「終わった?」
「何が?」
目を開けて聞くと、レイブンがきょとんとした顔をするから、文句を言う。
「加護の魔法をかけてくれたんじゃないの?」
「……ごめん。普通にキスしていいか聞いただけだった」
「え? そうなの!?」
「じゃあ、改めて」
レイブンが顔を近付けてきたから、彼の口を手で塞ぐ。
「駄目」
「何でだよ」
「加護のキスをしてくれるの?」
「するけど、普通のキスもする」
「普通のキスは駄目よ」
「何でだよ!?」
「まだ、何も片付いていないから」
「どうして、加護のキスはしてもいいんだ?」
大きな手で頬を撫でられるとくすぐったくて、彼の手に自分の手を重ねて答える。
「色んな人に追われている時に、ネックレスのおかげで助かったの。フォーウッド様から逃れられた時は本当に助かったわ」
「フォーウッドから逃れた?」
「あ、話をしていなかったわね…」
あまり、話をしたくないけれど、フォーウッド様との出来事を話すと、レイブンが怒りの表情になった。
「あいつ、そんな事してたのかよ。っていうか、一度しか会った事ないから詳しくは知らないんだけどな。レティアの私物をコレクションにしてるみたいだから、あいつの部屋だけ燃やしてやろうかな」
「レイブン、大丈夫だから。もう、彼に会わなければいい事だけだもの」
「でも、気持ち悪くないか?」
「確かに気持ちは悪いけれど、思い出したくもないから」
「そっか」
レイブンは頷くと、私の額に自分の額を当てて、目を閉じた。
私には理解できない言葉、きっと魔法の呪文なんだと思う。
呟くように長い文章を言葉にした後、レイブンが目を開けた。
視線が重なり合ってから、ゆっくりと目を閉じた。
私の唇に、レイブンのそれが優しく触れた後、レイブンの舌がするりと口内に入ってきて、思わず声が漏れた。
「んぅっ」
深いキスの後、息が苦しくなってきて、声を上げるとレイブンの唇と私のそれが離れた。
うまく息が出来なかったせいで、呼吸が荒くなる。
「幸せ…、だけど、やばい」
レイブンがそう言うなり、ばたんとベッドの上に倒れた。
「レイブン!? しっかりして!」
そうだったわ。
丸一日寝込むかもしれないって言ってたじゃない!
意識はあるけれど、体が動かせないらしく、レイブンが弱々しい声で言う。
「悪いけど、誰か呼んできてくれ」
「わかったわ!」
慌てて、ベッドからおりて、裸足のまま部屋の扉を開けると、ノースとアメリアが廊下に扉を挟んで立っていたので、二人に助けを求める。
「アメリア、ノース! 大変、レイブンが加護のキスのせいで倒れちゃったの!」
「おお! とうとうやったんか! おめでとう、レティア」
「ありがとう? よくわからないけど、ノース、そんな事を言ってる場合じゃないのよ」
「レティア様、ご安心ください。加護のキスは体力が奪われている様なものだけですから、しっかり休めば、いつも通りに元気になりますから」
アメリアが背中を撫でて慰めてくれる。
「そうなの? それなら良かったけれど…。でも、本当にびっくりしたわ。意識があるから良かったけれど、突然、倒れるんだもの」
「…おかしいですね。普通なら、強い倦怠感に見舞われるだけで、倒れるまではいかないと思うんですが…」
「レティア、レイブンはどんなキスしてきた?」
「ちょっと、ノース!」
アメリアが怒ったけれど、ノースは苦笑しながら私に言う。
「原因がわかるかもしれねぇから。なんつーか、その触れるだけのキスじゃなかったか?」
「え? そんなんじゃなかったわ。その、なんていうか、口の中に…」
「…レティア様。それ、レイブン様の自業自得ですから、心配しなくて大丈夫です」
何かを察したかの様に、アメリアが眉を寄せて言った。
「どういう事?」
「レイブンが欲張って、普通のキスでいいのに、ディープなんかするから、余計に魔力を奪われてんだ。まあ、より、強い加護になるだろうけど、自分がしたかっただけだろうな。色んな意味で」
「そうね、色んな意味で」
ノースの言葉にアメリアが渋い顔をして頷いた。
もしかして、強い加護以外にも意味があるって事?
ま、まさか…!
「レイブン!」
部屋の中に戻り、ぐったりしているレイブンに向かって叫ぶ。
「あなた、今まで我慢していたから、あのキスをしたの!?」
「…それだけじゃねぇよ。強い加護になるし…。まあ、したかったってのもあるけど…」
「もう!」
手元にあった枕をとって、軽く、レイブンの顔に当てた時だった。
「元気そうだな」
声が聞こえて振り返ると、シブン様が笑いながら部屋に入ってきたところだった。
「レイブンはアメリア達に任せて、レティア、君に話がある」
「承知しました。あの、着替えてからでもよろしいでしょうか?」
「もちろん」
シブン様は頷くと「後で俺の部屋に来てくれ」と言って、アメリアに私の事を頼んでから、部屋を出て行った。
私に話したい事って、一体何なのかしら。
不安が少しだけ頭をよぎった。
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