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10 歪んだ愛(フォーウッドside)
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何とか穴から抜け出したフォーウッドが屋敷に戻ると、ヘーベル公爵が怒りの形相で近寄ってきた。
「今まで、どこへ行っていたんだ!」
「レティアを探しに行っていたんですよ」
「なんだって!? どうしてお前がその事を知っているんだ!?」
(騎士がレティアを連れて行くのを見たからだ。と答えたら、もっと怒り出すだろうから、言うのはやめておこう)
「何か、騎士が怪しい動きをしていたので、気になったんですよ。そうしたら、レティアが馬車に乗るのが見えたんです」
「何だと!? それで、レティアは捕まえたのか?」
「いいえ。逃げられました」
「何をやっているんだ!」
この時のヘーベル公爵はレティアをレイブン達が保護したなどとは思ってもおらず、迎えに行かせた騎士が、彼女を連れて来るものだと思い込んでいた。
「まあいい。レティアはその内、騎士が連れ帰ってくる」
「本当ですか!?」
「どうした。フォーウッド、どうして、そんなに嬉しそうな顔をしている?」
怪訝そうにする父に、フォーウッドは笑顔を消して言う。
「父上、お願いがあります」
「こんな大変な時に何を言うつもりだ」
ヘーベル公爵は眉根を寄せながらも、話を聞く気らしく、胸の前で腕を組んで、フォーウッドを見た。
その為、エントランスホールで二人は立ったままで会話を続ける。
「レティシアがレイブンに嫁ぐのであれば、レティアは用無しですよね? そうなった場合は僕にもらえませんか?」
「馬鹿な事を言うな! レティシアは嫁には行かせん! レティアが嫁に行くんだ!」
「……どういう事ですか?」
「詳しい話は後でする。それより、レティシアを知らないか?」
少し疲れた表情の父に、フォーウッドは尋ねる。
「レティアを逃したのは、レティシアでしょうから、父上が探していると知って、慌ててレティアを探しにでも行っているんじゃないですか?」
「そうかもしれないが…。レティシアもお前の姿も見えなくて、メーナは部屋で寝込んでいる。顔を見せてやってくれ」
「承知しました」
メーナはヘーベル公爵夫人の名で、フォーウッドとレティシアの母の名前だ。
(もう、僕も20歳になるんだぞ。姿が見えないからって寝込むのはやめてほしいんだけどな)
そんな事を思いながら、フォーウッドはヘーベル公爵に一礼してから、その場を去り、一度、自分の部屋に戻った。
部屋に入り、鍵を締めて一息ついてから、彼はとある場所に向かった。
彼の部屋には大きなウォークインクローゼットがあり、そこは、メイドだろうが誰であろうが、立ち入りを禁止している。
以前、間違えて入ってしまったメイドは、すぐにクビにした。
(この神聖な場所に入っていいのは僕だけだ)
ウォークインクローゼットに続く扉を開け、中に入り、大きく深呼吸する。
そして、ウォークインクローゼットの中に置かれてある、ドレスの一つに頬を寄せた。
(これは、確か、最後にレイブンに会いに行った時のドレスだったか…。くそ、あんな男に、このドレスを着たレティアを見られただなんて…!)
ハンガーに掛けられた水色のドレスに、顔面を当て、優しく手で他の部分を触る。
(レティアは僕のものだ。幼い頃から目を付けていたんだ。レティシアがレイブンに惚れてくれたおかげで、僕の人形に出来ると思ったのに…!)
心を落ち着けようとドレスから顔を手をはなし、今度は隅に置かれてあるチェストの引き出しの中から、白色の女性用の下着を手に取り、顔に当てようとした、その時、扉が叩かれる音が聞こえた。
「誰だよ、こんな時に」
フォーウッドは舌打ちをして、下着をチェストの中に戻すと、ウォークインクローゼットから出て、返事を返す。
「誰だ?」
「お兄様、私よ」
返ってきたのは、レティシアの声だった。
「帰ったのか」
「ええ。それよりも、お兄様、力を貸してほしいの」
扉を開けてやると、レティシアはことわりもなく、部屋の中に入り、そう言った。
「どうしてほしいんだ?」
「わたくし、どうしてもレイブン様が欲しいの」
「……あんな男のどこがいいんだ?」
「あら、お兄様。見た目に関しては、お兄様とレイブン様なら、レイブン様の圧勝ですわよ」
「可愛くない妹だ」
「キャハハ、それはそうでしょう。妹の見た目にそっくりな女性に興味を持っている兄なんて、気持ち悪くてしょうがないわ」
いつからか、レティシアはフォーウッドの気持ちに気付いていた様で、はっきりとそう言ってから続ける。
「だけど、今は、あの女が邪魔なの。だから、お兄様がどうにかしてよ。監禁して洗脳して、お兄様がいなければ生きていけない様にしてよ! そうすれば、レイブン様だって諦めるはず!」
「そう出来たら、僕も幸せだよ」
(気づかれていたなら、レティシアには、もう隠す必要はないな)
「レティシア、お前の事も可愛いと思うが、やはり、性的には見れない。だけど、彼女なら血が繋がっていないんだから、そういう目で見てもおかしくないんだ。彼女を僕の人形にしてやる。十年以上我慢したんだ。もう我慢しなくても許されるはずだ」
べろりと舌なめずりをするフォーウッドを、レティシアは蔑んだ目で見ていたが、止めようとはしなかった。
「まあ、外見はわたくしに似ているから、あの女がレイブン様に好かれるのもわからないわけではないわ」
「そうだな。レティシアも中身はあんまりだが、外見は可愛いよ」
「中身も可愛いに決まってるじゃない。でも、変態のお兄様に言われても、あまり嬉しくないけれど」
キャハハとレティシアは笑った後、フォーウッドを見て念押しする。
「あの女を早く見つけて捕まえてよね。私が見つけたら、すぐに、お兄様に連絡するから。その時は、好きな様に可愛がってあげて?」
「わかった。この手でレティアを抱けるのが楽しみで仕方がない」
「キャハハ! お兄様、その顔、外ではしない方がいいわよ。とっても気持ち悪い。もう、この話は今は終わりにしましょう。じゃあ、私は、お母様のところに行ってくるわ」
「僕も行こう。そういえば、レティシア、レティアを逃したのは君なんだろ?」
「そうだけど…」
「父上には話したのか?」
「これからよ。怒られるかしら?」
「さあな。レティアが帰ってきたら、許してくれるだろう」
レティシアと共に母の部屋に向かっていたフォーウッドだったが、頭の中では、レティアをどうするかしか考えていなかった。
(僕が婚約者と結婚したら、レティアの事は奴隷だと言って、家に住まわせよう。関係を持っている事を知られなければそれでいい)
フォーウッドの婚約者は同じく公爵家の人間で、見た目も悪くなく、彼にしてみれば、ちょうどいい飾りだった。
(見た目は従順そうな女だし、騙されてくれるだろう)
婚約者の事を考えて、にやりと口元に笑みを浮かべた。
フォーウッドの母、メーナの部屋には、すでに父である公爵もいて、フォーウッド達がやって来ると不機嫌そうな顔をした。
「すぐに顔を見せに行けと言っただろう」
「申し訳ございませんでした」
「お父様、お母様、申し訳ございませんでした」
フォーウッドとレティシアが頭を下げると、メーナはベッドから起き上がり、泣きながら、二人を抱きしめた。
「ああ! 無事で良かった! あの最低で最悪な魔道士達にさらわれたんじゃないと心配したのよ!」
(ちょっと無断で家をあけただけで大袈裟な…)
そう思っているのはフォーウッドだけでなく、レティシアもその様で、彼女の母を見る目はどこか嘲っている様にも見えた。
「家族が揃ったので話したい事がある」
ヘーベル公爵は、フォーウッド達に、部屋のソファーに座る様に促してから、自分は向かい側のソファーに座り、三人と対面すると、難しい顔をして話を始めた。
「このままでは、我が家が危うい。だから、どうしてもレティアを見つけなければ…」
「どうしてです? レティシアが嫁にいけばいいだけの話でしょう?」
事情を知らないフォーウッドが聞くと、ヘーベル公爵は答える。
「レティシアを嫁にいかせる気はない。魔道士の嫁になるのはレティアだ」
「そんなの駄目です! お父様、お母様、お願い! 私はレイブン様の妻になりたいの! それに、あの女には、レイブン様の妻になる資格はないわ!」
レティシアが立ち上がって叫ぶと、ヘーベル公爵は首を横に振る。
「それがあるんだ」
「どういう事ですか…」
フォーウッドが聞き返すと、ヘーベル公爵は、驚きの事実を口にしたのだった。
「今まで、どこへ行っていたんだ!」
「レティアを探しに行っていたんですよ」
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「何だと!? それで、レティアは捕まえたのか?」
「いいえ。逃げられました」
「何をやっているんだ!」
この時のヘーベル公爵はレティアをレイブン達が保護したなどとは思ってもおらず、迎えに行かせた騎士が、彼女を連れて来るものだと思い込んでいた。
「まあいい。レティアはその内、騎士が連れ帰ってくる」
「本当ですか!?」
「どうした。フォーウッド、どうして、そんなに嬉しそうな顔をしている?」
怪訝そうにする父に、フォーウッドは笑顔を消して言う。
「父上、お願いがあります」
「こんな大変な時に何を言うつもりだ」
ヘーベル公爵は眉根を寄せながらも、話を聞く気らしく、胸の前で腕を組んで、フォーウッドを見た。
その為、エントランスホールで二人は立ったままで会話を続ける。
「レティシアがレイブンに嫁ぐのであれば、レティアは用無しですよね? そうなった場合は僕にもらえませんか?」
「馬鹿な事を言うな! レティシアは嫁には行かせん! レティアが嫁に行くんだ!」
「……どういう事ですか?」
「詳しい話は後でする。それより、レティシアを知らないか?」
少し疲れた表情の父に、フォーウッドは尋ねる。
「レティアを逃したのは、レティシアでしょうから、父上が探していると知って、慌ててレティアを探しにでも行っているんじゃないですか?」
「そうかもしれないが…。レティシアもお前の姿も見えなくて、メーナは部屋で寝込んでいる。顔を見せてやってくれ」
「承知しました」
メーナはヘーベル公爵夫人の名で、フォーウッドとレティシアの母の名前だ。
(もう、僕も20歳になるんだぞ。姿が見えないからって寝込むのはやめてほしいんだけどな)
そんな事を思いながら、フォーウッドはヘーベル公爵に一礼してから、その場を去り、一度、自分の部屋に戻った。
部屋に入り、鍵を締めて一息ついてから、彼はとある場所に向かった。
彼の部屋には大きなウォークインクローゼットがあり、そこは、メイドだろうが誰であろうが、立ち入りを禁止している。
以前、間違えて入ってしまったメイドは、すぐにクビにした。
(この神聖な場所に入っていいのは僕だけだ)
ウォークインクローゼットに続く扉を開け、中に入り、大きく深呼吸する。
そして、ウォークインクローゼットの中に置かれてある、ドレスの一つに頬を寄せた。
(これは、確か、最後にレイブンに会いに行った時のドレスだったか…。くそ、あんな男に、このドレスを着たレティアを見られただなんて…!)
ハンガーに掛けられた水色のドレスに、顔面を当て、優しく手で他の部分を触る。
(レティアは僕のものだ。幼い頃から目を付けていたんだ。レティシアがレイブンに惚れてくれたおかげで、僕の人形に出来ると思ったのに…!)
心を落ち着けようとドレスから顔を手をはなし、今度は隅に置かれてあるチェストの引き出しの中から、白色の女性用の下着を手に取り、顔に当てようとした、その時、扉が叩かれる音が聞こえた。
「誰だよ、こんな時に」
フォーウッドは舌打ちをして、下着をチェストの中に戻すと、ウォークインクローゼットから出て、返事を返す。
「誰だ?」
「お兄様、私よ」
返ってきたのは、レティシアの声だった。
「帰ったのか」
「ええ。それよりも、お兄様、力を貸してほしいの」
扉を開けてやると、レティシアはことわりもなく、部屋の中に入り、そう言った。
「どうしてほしいんだ?」
「わたくし、どうしてもレイブン様が欲しいの」
「……あんな男のどこがいいんだ?」
「あら、お兄様。見た目に関しては、お兄様とレイブン様なら、レイブン様の圧勝ですわよ」
「可愛くない妹だ」
「キャハハ、それはそうでしょう。妹の見た目にそっくりな女性に興味を持っている兄なんて、気持ち悪くてしょうがないわ」
いつからか、レティシアはフォーウッドの気持ちに気付いていた様で、はっきりとそう言ってから続ける。
「だけど、今は、あの女が邪魔なの。だから、お兄様がどうにかしてよ。監禁して洗脳して、お兄様がいなければ生きていけない様にしてよ! そうすれば、レイブン様だって諦めるはず!」
「そう出来たら、僕も幸せだよ」
(気づかれていたなら、レティシアには、もう隠す必要はないな)
「レティシア、お前の事も可愛いと思うが、やはり、性的には見れない。だけど、彼女なら血が繋がっていないんだから、そういう目で見てもおかしくないんだ。彼女を僕の人形にしてやる。十年以上我慢したんだ。もう我慢しなくても許されるはずだ」
べろりと舌なめずりをするフォーウッドを、レティシアは蔑んだ目で見ていたが、止めようとはしなかった。
「まあ、外見はわたくしに似ているから、あの女がレイブン様に好かれるのもわからないわけではないわ」
「そうだな。レティシアも中身はあんまりだが、外見は可愛いよ」
「中身も可愛いに決まってるじゃない。でも、変態のお兄様に言われても、あまり嬉しくないけれど」
キャハハとレティシアは笑った後、フォーウッドを見て念押しする。
「あの女を早く見つけて捕まえてよね。私が見つけたら、すぐに、お兄様に連絡するから。その時は、好きな様に可愛がってあげて?」
「わかった。この手でレティアを抱けるのが楽しみで仕方がない」
「キャハハ! お兄様、その顔、外ではしない方がいいわよ。とっても気持ち悪い。もう、この話は今は終わりにしましょう。じゃあ、私は、お母様のところに行ってくるわ」
「僕も行こう。そういえば、レティシア、レティアを逃したのは君なんだろ?」
「そうだけど…」
「父上には話したのか?」
「これからよ。怒られるかしら?」
「さあな。レティアが帰ってきたら、許してくれるだろう」
レティシアと共に母の部屋に向かっていたフォーウッドだったが、頭の中では、レティアをどうするかしか考えていなかった。
(僕が婚約者と結婚したら、レティアの事は奴隷だと言って、家に住まわせよう。関係を持っている事を知られなければそれでいい)
フォーウッドの婚約者は同じく公爵家の人間で、見た目も悪くなく、彼にしてみれば、ちょうどいい飾りだった。
(見た目は従順そうな女だし、騙されてくれるだろう)
婚約者の事を考えて、にやりと口元に笑みを浮かべた。
フォーウッドの母、メーナの部屋には、すでに父である公爵もいて、フォーウッド達がやって来ると不機嫌そうな顔をした。
「すぐに顔を見せに行けと言っただろう」
「申し訳ございませんでした」
「お父様、お母様、申し訳ございませんでした」
フォーウッドとレティシアが頭を下げると、メーナはベッドから起き上がり、泣きながら、二人を抱きしめた。
「ああ! 無事で良かった! あの最低で最悪な魔道士達にさらわれたんじゃないと心配したのよ!」
(ちょっと無断で家をあけただけで大袈裟な…)
そう思っているのはフォーウッドだけでなく、レティシアもその様で、彼女の母を見る目はどこか嘲っている様にも見えた。
「家族が揃ったので話したい事がある」
ヘーベル公爵は、フォーウッド達に、部屋のソファーに座る様に促してから、自分は向かい側のソファーに座り、三人と対面すると、難しい顔をして話を始めた。
「このままでは、我が家が危うい。だから、どうしてもレティアを見つけなければ…」
「どうしてです? レティシアが嫁にいけばいいだけの話でしょう?」
事情を知らないフォーウッドが聞くと、ヘーベル公爵は答える。
「レティシアを嫁にいかせる気はない。魔道士の嫁になるのはレティアだ」
「そんなの駄目です! お父様、お母様、お願い! 私はレイブン様の妻になりたいの! それに、あの女には、レイブン様の妻になる資格はないわ!」
レティシアが立ち上がって叫ぶと、ヘーベル公爵は首を横に振る。
「それがあるんだ」
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