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21 加護の魔法
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レイブンは忙しいのか、アメリアの見舞いに行った日に、ノースに連れて行かれてから、顔を見せに来てはくれなかった。
元々、人の家だから、頻繁に会いに来てくれていたわけではないし、護衛の人から、レイブンは元気にしていると聞いているから、何かあったのかとか、そんな心配はしていないけれど、どうも、やって来た執事との間で色々とあったらしく、その事で忙しいらしい。
たしか、ベーゼフさんだったわよね…。
あの人、私の事を嫌っているのが、態度で見え見えだったわ。
ただ、他の人の前では、そんな態度を見せなかったのは、プロなのかしら?
……本当のプロなら、私の前でも不機嫌な顔はしないか…。
そういえば、フォーウッド様がシブン様が手配していた騎士が、ヘマをやってしまって、彼に逃げられてしまったと聞いたけど、まだ見つかっていないのかしら。
それだけが、ちょっと不安。
レイブンには、頑張りすぎて、身体を壊さないようにしてほしいけど、ヘーベル公爵に命を狙われているから、頑張って全てを片付けてしまわないと、落ち着いた気持ちにもなれないんだと思うから難しいところ。
兄や両親の事を、本音をいえば、もっと聞きたい気持ちがあるけど、今のレイブンはそれどころじゃなさそうだし、落ち着いてから話をしてもらおう。
「レティアさん、本当に一緒に行かないの?」
杖をつきながらだけれど、少しずつ歩ける様になってきた、黒色の腰までのびた巻き髪を持つティリーが、ちょっと残念そうな顔で聞いてきた。
「ええ。私はお留守番しておくわ。私がいるせいで、ティリーは自由に外に行けないんだもの。せっかくだから、家族水入らずで外を楽しんで」
「別にレティアが一緒に来ても、外は楽しめるじゃない。それに、レティアがここに来てくれたから、私は元気になれたのよ? 何より、ずっとここにいる訳でもないし…」
「ありがとう。だけど、私の事は大丈夫だから、気にしないで」
本音は、ティリー達家族を見ると、自分の家族の事を思い出して、不意に涙がこぼれそうになるから駄目なだけ。
泣いてしまえば、きっと、ティリー達は私に気を遣って、私の前では家族で楽しそうな姿を見せようとはしてくれなくなりそうな気がした。
私はそんな事は望んでいない。
出来れば、幸せな家族を見ていたい。
だけど、両親がどうなったかわからないという事実を聞いて、心が揺れているのも確かだ。
こんな不安定な気持ちのまま、家族旅行に付いていくのは嫌だった。
「私の分も楽しんできて?」
「…ありがとう。でも、レティアも気を付けてね」
「心配してくれてありがとう。でも、ずっと家の中にいるから大丈夫よ」
「それが…」
ティリーが何か言おうとした時、彼女の背後からやって来た、彼女のお父さんが止めた。
「不安にさせるのは良くない。一日だけなんだから大丈夫だよ」
「だけど…」
「レティア。明日は早めに帰ってくる様にするから、絶対に家を出てはいけないよ? 誰かが訪ねてくるという事はないと思うが、絶対に扉を開けてはいけない。どうしても諦めない様なら、ティリーのふりをして返事だけするんだ。いいね?」
「あの、一体…」
何かあるのかと聞きたかったけれど、出発の時間だという事で、二人は私に手を振って、ミントの所に行ってしまった。
ミントはティリー達と話をした後、私の所に来て申し訳なさそうな顔をする。
「アイラ様、申し訳ございません。本日、ティリーさん達を連れて行くはずの魔道士が体調不良で、転移魔法を使えるのが、すぐに動ける人間の中では私しかおりませんので、私が三人を連れて行きます。少しの間だけ、魔道士がいなくなり、女性騎士二人に護衛を頼む事になりますが、よろしいでしょうか?」
「ええ、かまわないわ。魔道士の人達は人数が少ないから、ハードスケジュールになってしまっているし、体調不良になってもおかしくないもの」
「…すぐに戻ってまいりますので」
「焦らなくていいわ。今まで何もなかったんだから、少しの時間くらい大丈夫よ。ゆっくり帰ってきて?」
「そんな事をしたら、レイブン様に怒られます。実は、今回、魔道士が休みだという事を、レイブン様に伝えていないんです」
「そうなの? もし、バレたら、その時は私が謝るわ。大体、ノースだって、全然、会いに来てくれないし、何してるのかしら」
笑いながら言うと、なぜかミントは黙ってしまった。
「ミント…?」
「いえ。レティア様はレイブン様に愛されて羨ましいなと…」
「え? レイブン? どういう事? あなたにだって旦那様や子供が…」
「そうですよね…。失礼しました」
「……?」
ミントの様子がおかしい気がして首を傾げた。
まさか、レイブンが好きだなんて言い出さないわよね?
「では、ティリー様達がお部屋に案内されるまでは見届けて帰ってきます」
「あ、う、うん。お願いね」
ミントやティリー達に手を振り、皆が家から出て行った後は、さっきのミントの事が気にはなったけれど、彼女が帰ってくるまで部屋でゆっくりする事にした。
ミントの事だから、すぐに帰ってくるかな。
でも、少しは時間がかかるわよね。
ティリー達を送って、はい、さよなら、というのも愛想がない気もするし、明日、帰る時間などの打ち合わせもするだろうから。
待っている間に、本でも読もうかな。
なんて、思って、読みかけの小説を手に取った時だった。
玄関の扉が叩かれる音が微かに聞こえた。
トントン。
やっぱり聞こえた。
黙って耳を澄ますと、外からの会話がかすかに聞こえてきた。
「留守みたいですね」
「居留守を使っているだけかもしれない。扉を開けろ!」
その声を聞いて、私は自分の部屋の扉を開け、部屋の前に立っていた女性騎士に小声で言う。
「フォーウッド様だわ…」
女性騎士達は無言で首を縦に振ると、玄関の方に向かっていった。
部屋の中で大人しくしていると、大きな音と共に、女性騎士の悲鳴が聞こえた。
窓から逃げようかと思ったけれど、カーテンを少しだけ動かして外を見ると、ガラの悪そうな男達が、周りをうろついているのがわかった。
隠れる所を探さないと…!
そう思ったけれど、小さな部屋には隠れられる様なところはなかった。
最終的に、ベッドの下に身を滑り込ませ、口を手でおさえた。
家の中が急に騒がしくなる。
「レティアを探せ! 騎士がいるという事は、必ずいるはずだ!」
フォーウッド様の叫ぶ声が聞こえた。
どうして、この場所がわかったの?
誰かが密告した?
いくつかの足音が聞こえ、ティリーの部屋の扉が開けられる音がした。
なぜ、ティリーの部屋が開けられたのかわかるかというと、扉にベルがかけられているから。
女性騎士は大丈夫だろうか?
家の中に、女性騎士と私しかいないのは、ある意味良かった。
ティリー達がいたら、何をされるかわからない。
ミントが帰ってきたとしても、人数が多いから大丈夫かしら…。
キイ。
扉が開く音がして、部屋の中に誰かが入ってきたのがわかった。
ベッドの下に隠れている私は、ネックレスの赤い石を握りしめる。
気付かないで、お願い。
目を閉じて祈ったけれど、願いは届かなかったのか、入ってきた誰かの足音が、どんどん近付いてくる。
口を手でおさえ、呼吸を落ち着かせながら目を開けると、男の人らしき、茶色のズボン、そして、黒の革靴が見えた。
ベッドの下をのぞきこむつもりなのか、誰かは膝を付けてしゃがみ、そして、頬を床につけた。
その瞬間、私は、フォーウッド様と目があった。
体が硬直し、震えだけが襲ってきた。
恐ろしくて声も出せない。
ただ、フォーウッド様が凝視しているのだけがわかる。
目は充血していて、感情が全く見えない。
見つかってしまった…!
絶望を感じた時、なぜか彼が何も言わずに立ち上がった。
どうして…?
声がもれないように口を手でおさえたまま、ジッとしていると、足音は遠ざかっていき、フォーウッド様は部屋を出て行った様だった。
フォーウッド様に、私の姿が見えなかったの?
そういえば、以前もこんな事があった。
もしかしたら、見えなくなる魔法が発動したのかもしれない。
私ったら、その事をシブン様達に伝えていなかった。
これがいつも出来るなら、レイブンの家にいても大丈夫だったかもしれない…。
ああ、でも、私の恐怖心に反応しているなら、レイブン達が近くにいたら、私の恐怖心が半減して、見えてしまう可能性もあるから、余計に迷惑がかかってしまうかもしれないし、これはこれで良かった…?
「レティアがいないぞ!」
フォーウッド様の叫ぶ声が聞こえた。
「そんな事はありません! 絶対にいるはずです!」
聞いた事のない男性の声が聞こえた。
彼が私の居場所をフォーウッド様に教えたの?
でも、どうして、私がここにいる事を知ったの?
「僕に嘘をつくだなんて許さない! お前の家族は皆殺しにしてやる!」
「やめて下さい! 本当に嘘はついていないんです!」
「心配するなよ。まずはお前から殺してやるから。おい、こいつを殺せ!」
「助けて、助けて下さい! 本当に、ここにいると聞いたんです! 悪いのは私にその情報を教えた奴です!」
「うるさい! 言い訳するな!」
このままじゃ、見知らぬ誰かかもしれないけれど、その人が殺されてしまう。
意を決して、ベッドから出ようとした時だった。
「こんな所にいたのか、ヘーベル公爵令息。探したんだぞ?」
レイブンの声が聞こえて、安堵で涙が出そうになった。
元々、人の家だから、頻繁に会いに来てくれていたわけではないし、護衛の人から、レイブンは元気にしていると聞いているから、何かあったのかとか、そんな心配はしていないけれど、どうも、やって来た執事との間で色々とあったらしく、その事で忙しいらしい。
たしか、ベーゼフさんだったわよね…。
あの人、私の事を嫌っているのが、態度で見え見えだったわ。
ただ、他の人の前では、そんな態度を見せなかったのは、プロなのかしら?
……本当のプロなら、私の前でも不機嫌な顔はしないか…。
そういえば、フォーウッド様がシブン様が手配していた騎士が、ヘマをやってしまって、彼に逃げられてしまったと聞いたけど、まだ見つかっていないのかしら。
それだけが、ちょっと不安。
レイブンには、頑張りすぎて、身体を壊さないようにしてほしいけど、ヘーベル公爵に命を狙われているから、頑張って全てを片付けてしまわないと、落ち着いた気持ちにもなれないんだと思うから難しいところ。
兄や両親の事を、本音をいえば、もっと聞きたい気持ちがあるけど、今のレイブンはそれどころじゃなさそうだし、落ち着いてから話をしてもらおう。
「レティアさん、本当に一緒に行かないの?」
杖をつきながらだけれど、少しずつ歩ける様になってきた、黒色の腰までのびた巻き髪を持つティリーが、ちょっと残念そうな顔で聞いてきた。
「ええ。私はお留守番しておくわ。私がいるせいで、ティリーは自由に外に行けないんだもの。せっかくだから、家族水入らずで外を楽しんで」
「別にレティアが一緒に来ても、外は楽しめるじゃない。それに、レティアがここに来てくれたから、私は元気になれたのよ? 何より、ずっとここにいる訳でもないし…」
「ありがとう。だけど、私の事は大丈夫だから、気にしないで」
本音は、ティリー達家族を見ると、自分の家族の事を思い出して、不意に涙がこぼれそうになるから駄目なだけ。
泣いてしまえば、きっと、ティリー達は私に気を遣って、私の前では家族で楽しそうな姿を見せようとはしてくれなくなりそうな気がした。
私はそんな事は望んでいない。
出来れば、幸せな家族を見ていたい。
だけど、両親がどうなったかわからないという事実を聞いて、心が揺れているのも確かだ。
こんな不安定な気持ちのまま、家族旅行に付いていくのは嫌だった。
「私の分も楽しんできて?」
「…ありがとう。でも、レティアも気を付けてね」
「心配してくれてありがとう。でも、ずっと家の中にいるから大丈夫よ」
「それが…」
ティリーが何か言おうとした時、彼女の背後からやって来た、彼女のお父さんが止めた。
「不安にさせるのは良くない。一日だけなんだから大丈夫だよ」
「だけど…」
「レティア。明日は早めに帰ってくる様にするから、絶対に家を出てはいけないよ? 誰かが訪ねてくるという事はないと思うが、絶対に扉を開けてはいけない。どうしても諦めない様なら、ティリーのふりをして返事だけするんだ。いいね?」
「あの、一体…」
何かあるのかと聞きたかったけれど、出発の時間だという事で、二人は私に手を振って、ミントの所に行ってしまった。
ミントはティリー達と話をした後、私の所に来て申し訳なさそうな顔をする。
「アイラ様、申し訳ございません。本日、ティリーさん達を連れて行くはずの魔道士が体調不良で、転移魔法を使えるのが、すぐに動ける人間の中では私しかおりませんので、私が三人を連れて行きます。少しの間だけ、魔道士がいなくなり、女性騎士二人に護衛を頼む事になりますが、よろしいでしょうか?」
「ええ、かまわないわ。魔道士の人達は人数が少ないから、ハードスケジュールになってしまっているし、体調不良になってもおかしくないもの」
「…すぐに戻ってまいりますので」
「焦らなくていいわ。今まで何もなかったんだから、少しの時間くらい大丈夫よ。ゆっくり帰ってきて?」
「そんな事をしたら、レイブン様に怒られます。実は、今回、魔道士が休みだという事を、レイブン様に伝えていないんです」
「そうなの? もし、バレたら、その時は私が謝るわ。大体、ノースだって、全然、会いに来てくれないし、何してるのかしら」
笑いながら言うと、なぜかミントは黙ってしまった。
「ミント…?」
「いえ。レティア様はレイブン様に愛されて羨ましいなと…」
「え? レイブン? どういう事? あなたにだって旦那様や子供が…」
「そうですよね…。失礼しました」
「……?」
ミントの様子がおかしい気がして首を傾げた。
まさか、レイブンが好きだなんて言い出さないわよね?
「では、ティリー様達がお部屋に案内されるまでは見届けて帰ってきます」
「あ、う、うん。お願いね」
ミントやティリー達に手を振り、皆が家から出て行った後は、さっきのミントの事が気にはなったけれど、彼女が帰ってくるまで部屋でゆっくりする事にした。
ミントの事だから、すぐに帰ってくるかな。
でも、少しは時間がかかるわよね。
ティリー達を送って、はい、さよなら、というのも愛想がない気もするし、明日、帰る時間などの打ち合わせもするだろうから。
待っている間に、本でも読もうかな。
なんて、思って、読みかけの小説を手に取った時だった。
玄関の扉が叩かれる音が微かに聞こえた。
トントン。
やっぱり聞こえた。
黙って耳を澄ますと、外からの会話がかすかに聞こえてきた。
「留守みたいですね」
「居留守を使っているだけかもしれない。扉を開けろ!」
その声を聞いて、私は自分の部屋の扉を開け、部屋の前に立っていた女性騎士に小声で言う。
「フォーウッド様だわ…」
女性騎士達は無言で首を縦に振ると、玄関の方に向かっていった。
部屋の中で大人しくしていると、大きな音と共に、女性騎士の悲鳴が聞こえた。
窓から逃げようかと思ったけれど、カーテンを少しだけ動かして外を見ると、ガラの悪そうな男達が、周りをうろついているのがわかった。
隠れる所を探さないと…!
そう思ったけれど、小さな部屋には隠れられる様なところはなかった。
最終的に、ベッドの下に身を滑り込ませ、口を手でおさえた。
家の中が急に騒がしくなる。
「レティアを探せ! 騎士がいるという事は、必ずいるはずだ!」
フォーウッド様の叫ぶ声が聞こえた。
どうして、この場所がわかったの?
誰かが密告した?
いくつかの足音が聞こえ、ティリーの部屋の扉が開けられる音がした。
なぜ、ティリーの部屋が開けられたのかわかるかというと、扉にベルがかけられているから。
女性騎士は大丈夫だろうか?
家の中に、女性騎士と私しかいないのは、ある意味良かった。
ティリー達がいたら、何をされるかわからない。
ミントが帰ってきたとしても、人数が多いから大丈夫かしら…。
キイ。
扉が開く音がして、部屋の中に誰かが入ってきたのがわかった。
ベッドの下に隠れている私は、ネックレスの赤い石を握りしめる。
気付かないで、お願い。
目を閉じて祈ったけれど、願いは届かなかったのか、入ってきた誰かの足音が、どんどん近付いてくる。
口を手でおさえ、呼吸を落ち着かせながら目を開けると、男の人らしき、茶色のズボン、そして、黒の革靴が見えた。
ベッドの下をのぞきこむつもりなのか、誰かは膝を付けてしゃがみ、そして、頬を床につけた。
その瞬間、私は、フォーウッド様と目があった。
体が硬直し、震えだけが襲ってきた。
恐ろしくて声も出せない。
ただ、フォーウッド様が凝視しているのだけがわかる。
目は充血していて、感情が全く見えない。
見つかってしまった…!
絶望を感じた時、なぜか彼が何も言わずに立ち上がった。
どうして…?
声がもれないように口を手でおさえたまま、ジッとしていると、足音は遠ざかっていき、フォーウッド様は部屋を出て行った様だった。
フォーウッド様に、私の姿が見えなかったの?
そういえば、以前もこんな事があった。
もしかしたら、見えなくなる魔法が発動したのかもしれない。
私ったら、その事をシブン様達に伝えていなかった。
これがいつも出来るなら、レイブンの家にいても大丈夫だったかもしれない…。
ああ、でも、私の恐怖心に反応しているなら、レイブン達が近くにいたら、私の恐怖心が半減して、見えてしまう可能性もあるから、余計に迷惑がかかってしまうかもしれないし、これはこれで良かった…?
「レティアがいないぞ!」
フォーウッド様の叫ぶ声が聞こえた。
「そんな事はありません! 絶対にいるはずです!」
聞いた事のない男性の声が聞こえた。
彼が私の居場所をフォーウッド様に教えたの?
でも、どうして、私がここにいる事を知ったの?
「僕に嘘をつくだなんて許さない! お前の家族は皆殺しにしてやる!」
「やめて下さい! 本当に嘘はついていないんです!」
「心配するなよ。まずはお前から殺してやるから。おい、こいつを殺せ!」
「助けて、助けて下さい! 本当に、ここにいると聞いたんです! 悪いのは私にその情報を教えた奴です!」
「うるさい! 言い訳するな!」
このままじゃ、見知らぬ誰かかもしれないけれど、その人が殺されてしまう。
意を決して、ベッドから出ようとした時だった。
「こんな所にいたのか、ヘーベル公爵令息。探したんだぞ?」
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