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18-1 妹の婚約者
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お姉様の悔しそうな顔を見て、性格が悪いかもしれないけれど、かなりスッキリした気分になった。
「行こうか」
「はい」
ジェリー様に促されて屋敷を出ようとすると、お姉様が諦めずに叫んでくる。
「そんな! 相手がジェラルド様だっておと、お父様は知ってるの!?」
「……知らないんじゃないでしょうか」
足を止めて答えると、お姉様はなぜか勝ち誇ったような顔をする。
「そんなのおかしいじゃない! お父様が知らないのに、どうやって許可を取ったのよ!? お父様を騙したの!?」
「名前が空白の状態でサインしてくださったんです。私の婚約者なんて、誰でも良いということなんでしょう」
「そんな! 無責任じゃないの!」
「無責任なのは、お父様のほうでしょう?」
「わかってるわよ!」
お姉様はイライラした様子で叫び、ジェリー様のほうに目を向ける。
「ジェラルド様、本当にミリーで良いのですか? この子の本性をテイン様から、しっかりお聞きになったほうが良いと思いますわ」
「テインから話は聞いてるよ。だけど、僕は自分の目で見たものを信じるタイプなんでね。今のところ、テインの言っていたことは嘘だってことがわかってる」
ジェリー様はお姉様にそう言ったあと、私の背中に軽く手を触れる。
「いつまでも相手にしていられないから行こうか。ここにいるとうるさい」
「は、はい! 行きましょう!」
「うるさいだなんて!」
お姉様が顔を真っ赤にして言い返すと、ジェリー様は微笑んで言う。
「言い方が悪かったようだから謝ろう。すまなかった。でも、女性だけで集まるお茶会を邪魔したくないんだ。エル……、エルというのは、僕が決めたミリエルの愛称だが、エルは今日のお茶会には誘われていないようだし、僕が約束をいれさせてもらった。もし、レナス侯爵夫人が何か言うようなら、僕とエルは今からデートで連絡がつかないから、僕の父に連絡をいれてほしい」
「父って……、ヨウビル公爵閣下じゃないですか!」
「そうだよ。だから、文句があるなら連絡をいれてくれと言っているんだ」
出来るものならすれば良いと言わんばかりの挑戦的な口調のジェリー様に、さすがのお姉様も敗北を認めたのか、歯を食いしばったあと、顔を下に向けた。
そして、顔を上げた時には貼り付けたような笑みを、ジェリー様に向けた。
「承知しましたわ。母にはそう伝えます。ミリー」
お姉様は私のほうを見て、言葉を続ける。
「帰ってきたら、お母様に叱られるわよ」
「だそうなんですが、私はどうすれば良いのでしょうか?」
堂々とそんな脅しをかけられても困るだけなので、ジェリー様に助けを求めてみる。
すると、ジェリー様は大きく息を吐いてから、お姉様に言う。
「さっきも言ったが、文句があるようなら父に連絡してくれ。エルを責めることは許さない」
ジェリー様が私の肩を抱いて言うと、お姉様は悔しいからなのか怒りでなのかわからないけれど、ぶるぶると体を震わせた。
「今度こそ行こう。時間の無駄だ」
「はい」
ジェリー様の言葉に頷いてから、お姉様のほうに振り返って言う。
「帰ってきた時に、私に対して何か嫌がらせをしたりしたら、言うなと言われてもジェリー様に言いますから」
お姉様の返事を待たずに歩き出し、屋敷を出て、扉が閉められたところで、中からお姉様の叫び声が聞こえた。
「ミリーのくせに生意気なのよ! このままで済むと思わないでよ!? 絶対に私のものにしてやるんだから!」
私のものにするというのは、ジェリー様のことを言ってるのかしら?
気になって、ジェリー様のほうを見てみると、私の視線に気が付いてくれて、微笑んでから首を横に振る。
「もし、君にいらないと言われて捨てられたとしても、僕はレジーノ嬢のものにはならない」
「わたしはジェリー様を捨てたりなんかしません」
「……そうか。ありがとう」
否定すると、ジェリー様ははにかんだ笑顔を見せてくれた。
※次話は他視点になります。(母と姉)
「行こうか」
「はい」
ジェリー様に促されて屋敷を出ようとすると、お姉様が諦めずに叫んでくる。
「そんな! 相手がジェラルド様だっておと、お父様は知ってるの!?」
「……知らないんじゃないでしょうか」
足を止めて答えると、お姉様はなぜか勝ち誇ったような顔をする。
「そんなのおかしいじゃない! お父様が知らないのに、どうやって許可を取ったのよ!? お父様を騙したの!?」
「名前が空白の状態でサインしてくださったんです。私の婚約者なんて、誰でも良いということなんでしょう」
「そんな! 無責任じゃないの!」
「無責任なのは、お父様のほうでしょう?」
「わかってるわよ!」
お姉様はイライラした様子で叫び、ジェリー様のほうに目を向ける。
「ジェラルド様、本当にミリーで良いのですか? この子の本性をテイン様から、しっかりお聞きになったほうが良いと思いますわ」
「テインから話は聞いてるよ。だけど、僕は自分の目で見たものを信じるタイプなんでね。今のところ、テインの言っていたことは嘘だってことがわかってる」
ジェリー様はお姉様にそう言ったあと、私の背中に軽く手を触れる。
「いつまでも相手にしていられないから行こうか。ここにいるとうるさい」
「は、はい! 行きましょう!」
「うるさいだなんて!」
お姉様が顔を真っ赤にして言い返すと、ジェリー様は微笑んで言う。
「言い方が悪かったようだから謝ろう。すまなかった。でも、女性だけで集まるお茶会を邪魔したくないんだ。エル……、エルというのは、僕が決めたミリエルの愛称だが、エルは今日のお茶会には誘われていないようだし、僕が約束をいれさせてもらった。もし、レナス侯爵夫人が何か言うようなら、僕とエルは今からデートで連絡がつかないから、僕の父に連絡をいれてほしい」
「父って……、ヨウビル公爵閣下じゃないですか!」
「そうだよ。だから、文句があるなら連絡をいれてくれと言っているんだ」
出来るものならすれば良いと言わんばかりの挑戦的な口調のジェリー様に、さすがのお姉様も敗北を認めたのか、歯を食いしばったあと、顔を下に向けた。
そして、顔を上げた時には貼り付けたような笑みを、ジェリー様に向けた。
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お姉様は私のほうを見て、言葉を続ける。
「帰ってきたら、お母様に叱られるわよ」
「だそうなんですが、私はどうすれば良いのでしょうか?」
堂々とそんな脅しをかけられても困るだけなので、ジェリー様に助けを求めてみる。
すると、ジェリー様は大きく息を吐いてから、お姉様に言う。
「さっきも言ったが、文句があるようなら父に連絡してくれ。エルを責めることは許さない」
ジェリー様が私の肩を抱いて言うと、お姉様は悔しいからなのか怒りでなのかわからないけれど、ぶるぶると体を震わせた。
「今度こそ行こう。時間の無駄だ」
「はい」
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私のものにするというのは、ジェリー様のことを言ってるのかしら?
気になって、ジェリー様のほうを見てみると、私の視線に気が付いてくれて、微笑んでから首を横に振る。
「もし、君にいらないと言われて捨てられたとしても、僕はレジーノ嬢のものにはならない」
「わたしはジェリー様を捨てたりなんかしません」
「……そうか。ありがとう」
否定すると、ジェリー様ははにかんだ笑顔を見せてくれた。
※次話は他視点になります。(母と姉)
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