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33 元婚約者の来訪
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クレイにポピー様の事を、今はどう思っているのか、聞く事が出来ないまま、数日が経った頃、オッサムが私の執務室にやって来ました。
「リサ、話があるんだ」
「何でしょう?」
深刻そうな顔をしているので、お姉様に何かあったのか、と不安な気持ちになっていると、応接セットのソファーに座った、オッサムが口を開きました。
「もうすぐ、ブランカの19歳の誕生日だろう?」
「ああ、そういわれればそうですね。お姉様の誕生日パーティーを開くのですか?」
「それもそうだが、気になる事があるんだ」
「…何でしょう?」
「この国の成人年齢は20歳だよな?」
「…そうですね」
何を言おうとしているのか、初めはわかりませんでしたが、頷く前に気付いてしまいました。
オッサムは国花がお姉様に出ない事を不安に思い始めたのではないでしょうか…。
普通、国花は成人になる前に現れている様です。
王配になりたいという野心があるからか、お姉様に国花が出ないという事は、オッサムにとって、ずっと気がかりなんでしょう。
「成人を過ぎてから、国花が出る事はあったんだろうか」
「ありえるのではないですか?」
「どうしてそう思うんだ?」
「何事にも例外はあるからです」
嘘は言っていません。
私という、別の意味での例外がありますから。
ただ、そう考えてみると、私の誕生日のあの日に、お姉様が、この先にも心を入れ替える事はないと判断されたのでしょうか…。
「王家の人間しか入れない場所に、その事について書かれた文献があるときいたんだが、それを見せてもらうわけにはいかないだろうか」
「お姉様と結婚なされば見れますよ」
「…そうじゃなくて、結婚する前に見たいんだ」
「それは私の権限では無理ですし、出来たとしても、あなたに見せてあげるつもりはありません」
強く言った後、彼を軽く睨んで尋ねます。
「もし、お姉様が女王である可能性がなくなったら、どうするつもりなんですか?」
「そ、それは…。そうなったら、跡を継ぐのは君だから…」
「君だから、なんですか?」
「……」
さすがにその先の言葉は口に出せない様でした。
これは困りました。
早い内に手を打たないと面倒な事になりそうです。
「あなたに見せる事は出来ませんが、私が確認してきましょう。何が知りたいんです?」
「いや、その、国花は長女以外にも出る事はあるのか…とか」
「わかりました。時間はかかるかと思いますが、何かわかるものがあるか探して、確認してみます…。ただ、オッサム」
「何だい?」
「あなたはお姉様が好きなのですよね?」
「…そうだけど、どうしたんだよ、いきなり」
「どうして、長女以外に国花が出るか知りたいのかと思いまして…。お姉様の事が好きなら、国花が出なくても良いのではないのですか?」
私の言葉に、オッサムがびくりと肩を震わせました。
「リサ、僕達は上手くいっていたよな?」
「何の話です?」
「もし、ブランカが20歳になっても、国花が出なかった時は、僕との事を考えてくれないか…?」
「あなた、何をふざけた事を言ってるんです?」
私の後ろに立っていたフィアナが何か言う前に、私が強い口調で聞き返すと、オッサムは苦笑してから首を横に振ります。
「言ってみただけだよ。君より、ブランカの方が女王にふさわしい事はわかっている。女性や王は他国の要人と会う事が多いから、華やかな顔立ちで、性格のおおらかな人間じゃないと無理だ。それを考えれば、ブランカと君なら、ブランカが勝っている」
「お姉様は可愛らしい顔立ちをされていますものね」
「ああ。王妃様によく似ているよ。君はどちらかというと国王様似だよな」
「オッサム、いいかげんにして下さい。あと、私がすでに結婚している事をお忘れですか?」
睨みつけると、オッサムは苦笑したまま、立ち上がります。
「怒らせてしまってごめん。ただ、言えるのは君よりブランカの方が人としても女性としても魅力的なのは確かだって事だよ。君はブランカの様に心優しくないからね」
「ありがとうございます」
オッサムに何を言われても、どうでもいいです。
ただ、話す事が不快になってきたので、帰るように促します。
「お帰りの様ですね。お姉様と仲良くして下さいね」
「もちろんだよ。君達も余り者同士で仲良くしたらいい」
オッサムは笑顔で嫌味を言った後、私の部屋から出ていきました。
「何なんですか、あれは!」
フィアナがオッサムが部屋から離れていくのを、わざわざ廊下まで出て確認した後、部屋に戻ってきて怒ってくれました。
「お姉様の外面に騙されてるんですよ。私にとってはその方がいいんです。お姉様も味方がこれ以上減るのは辛いでしょうから、オッサムの前では、可愛くて心優しい女性のフリをしてくれるでしょう」
フィアナに笑顔で言ってから、彼女の怒りが落ち着くのを待って、言葉を続けます。
「一応、文献を確認しておこうと思います。お父様がすでに確認しては下さっているんですが、私も動かないと、オッサムに怪しまれても嫌ですから」
「国王様が調べられた結果は、どうだったんですか?」
「やはり、長女、長男が多いようですが、その方達が病弱だった場合は、次女や次男に出ている事もあるんだそうです」
「ブランカ様は病弱ではないですよね…?」
フィアナに尋ねられ、大丈夫だとは思いますが、お姉様の健康について調べてみようと思ったのでした。
「リサ、話があるんだ」
「何でしょう?」
深刻そうな顔をしているので、お姉様に何かあったのか、と不安な気持ちになっていると、応接セットのソファーに座った、オッサムが口を開きました。
「もうすぐ、ブランカの19歳の誕生日だろう?」
「ああ、そういわれればそうですね。お姉様の誕生日パーティーを開くのですか?」
「それもそうだが、気になる事があるんだ」
「…何でしょう?」
「この国の成人年齢は20歳だよな?」
「…そうですね」
何を言おうとしているのか、初めはわかりませんでしたが、頷く前に気付いてしまいました。
オッサムは国花がお姉様に出ない事を不安に思い始めたのではないでしょうか…。
普通、国花は成人になる前に現れている様です。
王配になりたいという野心があるからか、お姉様に国花が出ないという事は、オッサムにとって、ずっと気がかりなんでしょう。
「成人を過ぎてから、国花が出る事はあったんだろうか」
「ありえるのではないですか?」
「どうしてそう思うんだ?」
「何事にも例外はあるからです」
嘘は言っていません。
私という、別の意味での例外がありますから。
ただ、そう考えてみると、私の誕生日のあの日に、お姉様が、この先にも心を入れ替える事はないと判断されたのでしょうか…。
「王家の人間しか入れない場所に、その事について書かれた文献があるときいたんだが、それを見せてもらうわけにはいかないだろうか」
「お姉様と結婚なされば見れますよ」
「…そうじゃなくて、結婚する前に見たいんだ」
「それは私の権限では無理ですし、出来たとしても、あなたに見せてあげるつもりはありません」
強く言った後、彼を軽く睨んで尋ねます。
「もし、お姉様が女王である可能性がなくなったら、どうするつもりなんですか?」
「そ、それは…。そうなったら、跡を継ぐのは君だから…」
「君だから、なんですか?」
「……」
さすがにその先の言葉は口に出せない様でした。
これは困りました。
早い内に手を打たないと面倒な事になりそうです。
「あなたに見せる事は出来ませんが、私が確認してきましょう。何が知りたいんです?」
「いや、その、国花は長女以外にも出る事はあるのか…とか」
「わかりました。時間はかかるかと思いますが、何かわかるものがあるか探して、確認してみます…。ただ、オッサム」
「何だい?」
「あなたはお姉様が好きなのですよね?」
「…そうだけど、どうしたんだよ、いきなり」
「どうして、長女以外に国花が出るか知りたいのかと思いまして…。お姉様の事が好きなら、国花が出なくても良いのではないのですか?」
私の言葉に、オッサムがびくりと肩を震わせました。
「リサ、僕達は上手くいっていたよな?」
「何の話です?」
「もし、ブランカが20歳になっても、国花が出なかった時は、僕との事を考えてくれないか…?」
「あなた、何をふざけた事を言ってるんです?」
私の後ろに立っていたフィアナが何か言う前に、私が強い口調で聞き返すと、オッサムは苦笑してから首を横に振ります。
「言ってみただけだよ。君より、ブランカの方が女王にふさわしい事はわかっている。女性や王は他国の要人と会う事が多いから、華やかな顔立ちで、性格のおおらかな人間じゃないと無理だ。それを考えれば、ブランカと君なら、ブランカが勝っている」
「お姉様は可愛らしい顔立ちをされていますものね」
「ああ。王妃様によく似ているよ。君はどちらかというと国王様似だよな」
「オッサム、いいかげんにして下さい。あと、私がすでに結婚している事をお忘れですか?」
睨みつけると、オッサムは苦笑したまま、立ち上がります。
「怒らせてしまってごめん。ただ、言えるのは君よりブランカの方が人としても女性としても魅力的なのは確かだって事だよ。君はブランカの様に心優しくないからね」
「ありがとうございます」
オッサムに何を言われても、どうでもいいです。
ただ、話す事が不快になってきたので、帰るように促します。
「お帰りの様ですね。お姉様と仲良くして下さいね」
「もちろんだよ。君達も余り者同士で仲良くしたらいい」
オッサムは笑顔で嫌味を言った後、私の部屋から出ていきました。
「何なんですか、あれは!」
フィアナがオッサムが部屋から離れていくのを、わざわざ廊下まで出て確認した後、部屋に戻ってきて怒ってくれました。
「お姉様の外面に騙されてるんですよ。私にとってはその方がいいんです。お姉様も味方がこれ以上減るのは辛いでしょうから、オッサムの前では、可愛くて心優しい女性のフリをしてくれるでしょう」
フィアナに笑顔で言ってから、彼女の怒りが落ち着くのを待って、言葉を続けます。
「一応、文献を確認しておこうと思います。お父様がすでに確認しては下さっているんですが、私も動かないと、オッサムに怪しまれても嫌ですから」
「国王様が調べられた結果は、どうだったんですか?」
「やはり、長女、長男が多いようですが、その方達が病弱だった場合は、次女や次男に出ている事もあるんだそうです」
「ブランカ様は病弱ではないですよね…?」
フィアナに尋ねられ、大丈夫だとは思いますが、お姉様の健康について調べてみようと思ったのでした。
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