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第1話 視線
パーティー会場に入り、先に来ているはずのお父様達の姿を探した。
人は多かったけれど、すぐに姿を見つけられたので声を掛けようかと思ったけれど、私達にかまっている余裕はなさそうだったのでやめておいた。
私達が住んでいるレスルワ国は戦争を好まない平和な国だ。
お父様から聞いた話では、先代の両陛下は気の弱い方達で、周りがフォローをしながら公務をこなされていたらしい。
周りはそんな両陛下を時には頼りないと思う時もあったそうだけれど尊敬していた。
両陛下の国民に対する深い愛情や自己犠牲の精神に心を打たれたのと、この人達だからこそ仕えようと思わせるカリスマ性があったらしかった。
お父様達が王家主催のパーティーなのに忙しそうにしている理由は、現国王陛下のせいだった。
新しい国王陛下は自分に意見する先代の陛下達を厄介者として辺境にある別宮に追いやってしまっただけでなく、そのくせ公務をこなせないんだそう。
なぜ、そんな人が国王になってしまったのかというと、先代の国王陛下の持病が悪化してきた為、静養すれば治るかもしれないという医者からの判断で早めの退位を決められた。
……のだけど、あと1年以上は先の話のつもりでいたのに、現在の国王陛下である、その当時王太子だったテッカ・レブンジー様が自分が今すぐに国王になると言い出し、国王の証である王冠を手に入れ、彼が国王となってしまった。
この国の決まりでは、国王になれる資格を持つのは血筋ではなく、王冠を手にしたものだった。
ただ、基本は代々受け継がれてきているものなので、王冠は宝物庫のもっと奥にある部屋に厳重な警備体制で保管されていたのだけれど、その警備が破られ、テッカ様が王冠を手にし、彼の両親である先代の両陛下を城から追い出す事を決めた。
その事実を知った貴族は暴君が誕生してしまったと嘆いた。
テッカ様に手を貸した人間達は暗殺集団で、警備についていた騎士や守衛達だけでなく、侵入の際に鉢合わせしたメイドまで容赦なく皆殺しにした為、余計に貴族達の怒りを買ったけれど、テッカ様は私のお父様も含む貴族達に向かって「次に俺の悪口を言えばどうなるかわかっているよね? 家族全員皆殺しだから」と脅したらしい。
今日の即位を祝うパーティーも本来なら貴族達は開きたくなかったそう。
それなのになぜ、パーティーが開かれたかというと、宰相達が陛下に媚びへつらっているから。
城で働いている人達の多くは、おかしいと思っていても口には出せずに黙っている人が多いけれど、政治を担う官僚達は陛下の手下になっていた。
「お父様達には大人しくしていろと言われたけれど、陛下に挨拶に行かないといけないわよね?」
「リゼはいいと思うが、僕は行かないといけないだろうな」
パーティー会場の入口付近で尋ねると、ルークスがうんざりした様な顔で言うから聞いてみる。
「あなたは陛下にお会いした事があるの?」
「まあね」
「私達女性は、テッカ様が王太子時代からお会いした事がないんだけど、どうしてかしら?」
その頃から性格が悪かったの?
なんて事は口に出せなかったけれど、ルークスはわかってくれたみたいだった。
「自分の娘が今の陛下に目をつけられて、自分の嫁にしたいだなんて言い出されたら困るからだろうな」
「……そんな事ってあるの?」
「あるよ。気に入ったメイドは全て妾にしているみたいだから。本来なら今日もリゼを連れて来たくはなかったんだよな。でも、婚約者がいる人間は全て連れてくるようにっていうお達しだったんだ。欠席も許さないって言うんだから無茶苦茶だよ」
ルークスの話を聞いて、私はお会いした事のない陛下の事がより嫌いになった。
もちろん、それを今、口に出す事は出来ないけれど。
パーティーが始まって少しすると、ルークスは彼のお父様に呼ばれて私から離れる事になった。
「少しの間待っててくれるか? 陛下に挨拶してくるから」
「ええ。目立たない所で待ってるわ」
頷いてから、人の邪魔にならない場所に移動しようとすると、友人が声を掛けてくれたので、ルークスが帰ってくるまでは友人と話をする事にした。
彼女のパートナーも誰かと話をしているみたいなので、先日のお茶会の時の話に花を咲かせていると、視線を感じて、そちらに目を向けた。
すると、ルークスの姿が見え、その隣に金色の長い髪を1つにまとめた若い男性がいて、その男性が私の方を見ている事に気が付いた。
私とその人との距離はかなり離れているし、人が行き交っているので、ずっと目があったままじゃなかったけれど、その男性がこちらを見ているのはわかった。
その時、ルークスの焦った様な顔が見えて、私は慌てて視線をそらした。
もしかして、今のが陛下だったの…?
目があってしまったけれど、大丈夫だった?
遠かったから大丈夫よね?
「リゼア、どうかしたの?」
友人に尋ねられて、私は大きく首を横に振る。
「何でもないわ。誰かに見られてるようだったけれど気の所為だと思う」
この後すぐにルークスが私の所にやって来てくれて、先程の男性が陛下だと教えてくれた。
私に興味を示していたから、ルークスが自分の婚約者だと伝えたら、あっさり引いてくれたらしいけれど、ルークスのお父様と私のお父様がすぐに私を連れて家に帰る様にとルークスに指示したとの事で、私は友人に挨拶をして、慌てて帰途に着いたのだった。
そして、数日後、私の元に陛下からの手紙が届いた。
手紙には「あなたに一目惚れをした。ルークスとの婚約を解消し、私の婚約者になるように」と書かれていた。
人は多かったけれど、すぐに姿を見つけられたので声を掛けようかと思ったけれど、私達にかまっている余裕はなさそうだったのでやめておいた。
私達が住んでいるレスルワ国は戦争を好まない平和な国だ。
お父様から聞いた話では、先代の両陛下は気の弱い方達で、周りがフォローをしながら公務をこなされていたらしい。
周りはそんな両陛下を時には頼りないと思う時もあったそうだけれど尊敬していた。
両陛下の国民に対する深い愛情や自己犠牲の精神に心を打たれたのと、この人達だからこそ仕えようと思わせるカリスマ性があったらしかった。
お父様達が王家主催のパーティーなのに忙しそうにしている理由は、現国王陛下のせいだった。
新しい国王陛下は自分に意見する先代の陛下達を厄介者として辺境にある別宮に追いやってしまっただけでなく、そのくせ公務をこなせないんだそう。
なぜ、そんな人が国王になってしまったのかというと、先代の国王陛下の持病が悪化してきた為、静養すれば治るかもしれないという医者からの判断で早めの退位を決められた。
……のだけど、あと1年以上は先の話のつもりでいたのに、現在の国王陛下である、その当時王太子だったテッカ・レブンジー様が自分が今すぐに国王になると言い出し、国王の証である王冠を手に入れ、彼が国王となってしまった。
この国の決まりでは、国王になれる資格を持つのは血筋ではなく、王冠を手にしたものだった。
ただ、基本は代々受け継がれてきているものなので、王冠は宝物庫のもっと奥にある部屋に厳重な警備体制で保管されていたのだけれど、その警備が破られ、テッカ様が王冠を手にし、彼の両親である先代の両陛下を城から追い出す事を決めた。
その事実を知った貴族は暴君が誕生してしまったと嘆いた。
テッカ様に手を貸した人間達は暗殺集団で、警備についていた騎士や守衛達だけでなく、侵入の際に鉢合わせしたメイドまで容赦なく皆殺しにした為、余計に貴族達の怒りを買ったけれど、テッカ様は私のお父様も含む貴族達に向かって「次に俺の悪口を言えばどうなるかわかっているよね? 家族全員皆殺しだから」と脅したらしい。
今日の即位を祝うパーティーも本来なら貴族達は開きたくなかったそう。
それなのになぜ、パーティーが開かれたかというと、宰相達が陛下に媚びへつらっているから。
城で働いている人達の多くは、おかしいと思っていても口には出せずに黙っている人が多いけれど、政治を担う官僚達は陛下の手下になっていた。
「お父様達には大人しくしていろと言われたけれど、陛下に挨拶に行かないといけないわよね?」
「リゼはいいと思うが、僕は行かないといけないだろうな」
パーティー会場の入口付近で尋ねると、ルークスがうんざりした様な顔で言うから聞いてみる。
「あなたは陛下にお会いした事があるの?」
「まあね」
「私達女性は、テッカ様が王太子時代からお会いした事がないんだけど、どうしてかしら?」
その頃から性格が悪かったの?
なんて事は口に出せなかったけれど、ルークスはわかってくれたみたいだった。
「自分の娘が今の陛下に目をつけられて、自分の嫁にしたいだなんて言い出されたら困るからだろうな」
「……そんな事ってあるの?」
「あるよ。気に入ったメイドは全て妾にしているみたいだから。本来なら今日もリゼを連れて来たくはなかったんだよな。でも、婚約者がいる人間は全て連れてくるようにっていうお達しだったんだ。欠席も許さないって言うんだから無茶苦茶だよ」
ルークスの話を聞いて、私はお会いした事のない陛下の事がより嫌いになった。
もちろん、それを今、口に出す事は出来ないけれど。
パーティーが始まって少しすると、ルークスは彼のお父様に呼ばれて私から離れる事になった。
「少しの間待っててくれるか? 陛下に挨拶してくるから」
「ええ。目立たない所で待ってるわ」
頷いてから、人の邪魔にならない場所に移動しようとすると、友人が声を掛けてくれたので、ルークスが帰ってくるまでは友人と話をする事にした。
彼女のパートナーも誰かと話をしているみたいなので、先日のお茶会の時の話に花を咲かせていると、視線を感じて、そちらに目を向けた。
すると、ルークスの姿が見え、その隣に金色の長い髪を1つにまとめた若い男性がいて、その男性が私の方を見ている事に気が付いた。
私とその人との距離はかなり離れているし、人が行き交っているので、ずっと目があったままじゃなかったけれど、その男性がこちらを見ているのはわかった。
その時、ルークスの焦った様な顔が見えて、私は慌てて視線をそらした。
もしかして、今のが陛下だったの…?
目があってしまったけれど、大丈夫だった?
遠かったから大丈夫よね?
「リゼア、どうかしたの?」
友人に尋ねられて、私は大きく首を横に振る。
「何でもないわ。誰かに見られてるようだったけれど気の所為だと思う」
この後すぐにルークスが私の所にやって来てくれて、先程の男性が陛下だと教えてくれた。
私に興味を示していたから、ルークスが自分の婚約者だと伝えたら、あっさり引いてくれたらしいけれど、ルークスのお父様と私のお父様がすぐに私を連れて家に帰る様にとルークスに指示したとの事で、私は友人に挨拶をして、慌てて帰途に着いたのだった。
そして、数日後、私の元に陛下からの手紙が届いた。
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