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18 五大公爵家の令嬢と令息たち ③
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くしゃくしゃになった封筒を受け取り頭を下げる。
「ありがとうございます、バロン兄様」
「礼を言われることじゃない」
「バロン! 大事なものなのに、しわくちゃになっているじゃないか!」
お兄様に怒られたバロン兄様は不服そうな顔をして言い返す。
「中身が無事なんだから別にいいだろ! かたいこと言うなって!」
「お前が言うと軽く聞こえるんだよ! 反省しろ」
「領民の前では無口な公爵令息で通ってるから安心しろって」
「……本当かよ。それに、領民の前ではちゃんとしているからって大事なものをぞんざいに扱って良いわけじゃないぞ」
お兄様とバロン兄様の話を黙って聞いていると、ワイアットが他の人たちと同じように封筒を私に差し出して話しかけてくる。
「私の父から預かったものです。ソフィーに預けておきます。父は、これからもあなたの味方につくと言っていました」
「ありがとう、ワイアット。それに、ララベル、ジュート、バロン兄様、本当にありがとう」
頭を下げてお礼を言うと、お兄様と目が合った。
「もちろんお兄様にも感謝しています。当主様方には、お礼の手紙を送るようにするわ」
胸に抱えた封筒を手で優しく撫でながら言うと、バロン兄様が言う。
「王家の問題は五大公爵家だけじゃなく、みんなで考える必要があるからな。なのに、現在の当主でもなく、次期当主でもないソフィー1人に任せようとすんのが初めから間違ってんだよ。あ、別にソフィーが頼りないとか言うわけじゃねぇからな」
「ありがとうございます、バロン兄様」
お礼を言うと、バロン兄様は気にするなと言わんばかりに手を横に振ってから、ララベルに尋ねる。
「そういや、ケイティがララベルの家に養女になってたら、どうなってたんだろうな」
「ありえませんわ! そんなことになっていたら、ケイティの存在ごと消して差し上げます」
「そっかあ。それなら、ケイティを今からでもララベルの家の養女にしない?」
ジュートがおっとりした口調で言うと、ララベルが叫ぶ。
「あんな汚らわしい女を家に入れるだなんて考えられませんわ!」
「その勢いでケイティを精神的に潰してやれよ」
「そんなことをおっしゃるのなら、バロン兄様がケイティを妹にしてさしあげたらどうです?」
「ケイティは俺とフィアンのことを嫌っているからな。ゴリラ兄弟とか言われたことあんだよ。あながち間違ってねぇけど」
バロン兄様がけらけら笑うのを呆れた顔で見ていたワイアットが口を開く。
「ちょうど五大公爵家の次期当主が集まっているようですので、ソフィーも含め、これからのことを話し合いたいのですがかまいませんか」
「元々、俺はソフィーとこれからのことについて話がしたかったから来たんだ」
お兄様が頷いてから立ち上がる。
「もう少し広い場所に移動するか。ここでは6人も座って話せないからな」
「そうですわね。でも、バロン兄様はずっと立っておいたら良いかと思いますわ」
ララベルに話をふられたバロン兄様が眉根を寄せる。
「何でそんな意地悪なことを言うんだよ」
「さっき、身の毛もよだつような話をされたのは、どこのどなたですか!」
ララベルが叫んだと同時に、外から声が聞こえてきた。
「おい、ソフィア! 醜い顔を見せろ! 今回も貴様の家までやって来ているんだから感謝しろ! 早く出てこい!」
聞こえてきたのはゼント様の声だった。
「どういうことだ、ソフィー」
「わかりません。前は火をつけに来てましたけど、今日は違うみたいですね」
お兄様の質問に答えて小さく息を吐いてから、テーブルの上に上書の入った封筒を置く。
そして、声が聞こえてきた方向の窓に近づいた。
すると、窓の向こうでゼント様とケイティが寄り添って立っているのが見えた。
もしかして、また、ここでイチャつくつもりなの?
ワンパターンすぎるでしょう。
「ソフィアめ! 俺にフラれたことを後悔するがいい! ケイティ、愛しているぞ!」
「私もです、ゼント様ぁ」
二人は見つめ合い、抱き合ったかと思うと唇を重ね、そのまま深いキスに移行した。
「何だあれは……」
いつの間にか、お兄様が後ろに立っていて、呆然とした表情で呟いた。
「おお、サカってるな!」
「気持ち悪い」
「王太子ともあろう方が…」
バロン兄様、ジュート、ワイアットの順で、二人を見た感想が飛んできた。
「見たくもないものを見せられましたわね」
いつの間に出したのかわからないけれど、さっきまで持っていなかった扇で口元を隠して、ララベルが呟いた。
ララベルが二人を見る目はまるで、汚物を見るようなものだ。
「……ん? え、あ、きゃあぁぁっ!」
ケイティが私たちの視線に気付き、悲鳴を上げてゼント様の身体を突き飛ばした。
「ありがとうございます、バロン兄様」
「礼を言われることじゃない」
「バロン! 大事なものなのに、しわくちゃになっているじゃないか!」
お兄様に怒られたバロン兄様は不服そうな顔をして言い返す。
「中身が無事なんだから別にいいだろ! かたいこと言うなって!」
「お前が言うと軽く聞こえるんだよ! 反省しろ」
「領民の前では無口な公爵令息で通ってるから安心しろって」
「……本当かよ。それに、領民の前ではちゃんとしているからって大事なものをぞんざいに扱って良いわけじゃないぞ」
お兄様とバロン兄様の話を黙って聞いていると、ワイアットが他の人たちと同じように封筒を私に差し出して話しかけてくる。
「私の父から預かったものです。ソフィーに預けておきます。父は、これからもあなたの味方につくと言っていました」
「ありがとう、ワイアット。それに、ララベル、ジュート、バロン兄様、本当にありがとう」
頭を下げてお礼を言うと、お兄様と目が合った。
「もちろんお兄様にも感謝しています。当主様方には、お礼の手紙を送るようにするわ」
胸に抱えた封筒を手で優しく撫でながら言うと、バロン兄様が言う。
「王家の問題は五大公爵家だけじゃなく、みんなで考える必要があるからな。なのに、現在の当主でもなく、次期当主でもないソフィー1人に任せようとすんのが初めから間違ってんだよ。あ、別にソフィーが頼りないとか言うわけじゃねぇからな」
「ありがとうございます、バロン兄様」
お礼を言うと、バロン兄様は気にするなと言わんばかりに手を横に振ってから、ララベルに尋ねる。
「そういや、ケイティがララベルの家に養女になってたら、どうなってたんだろうな」
「ありえませんわ! そんなことになっていたら、ケイティの存在ごと消して差し上げます」
「そっかあ。それなら、ケイティを今からでもララベルの家の養女にしない?」
ジュートがおっとりした口調で言うと、ララベルが叫ぶ。
「あんな汚らわしい女を家に入れるだなんて考えられませんわ!」
「その勢いでケイティを精神的に潰してやれよ」
「そんなことをおっしゃるのなら、バロン兄様がケイティを妹にしてさしあげたらどうです?」
「ケイティは俺とフィアンのことを嫌っているからな。ゴリラ兄弟とか言われたことあんだよ。あながち間違ってねぇけど」
バロン兄様がけらけら笑うのを呆れた顔で見ていたワイアットが口を開く。
「ちょうど五大公爵家の次期当主が集まっているようですので、ソフィーも含め、これからのことを話し合いたいのですがかまいませんか」
「元々、俺はソフィーとこれからのことについて話がしたかったから来たんだ」
お兄様が頷いてから立ち上がる。
「もう少し広い場所に移動するか。ここでは6人も座って話せないからな」
「そうですわね。でも、バロン兄様はずっと立っておいたら良いかと思いますわ」
ララベルに話をふられたバロン兄様が眉根を寄せる。
「何でそんな意地悪なことを言うんだよ」
「さっき、身の毛もよだつような話をされたのは、どこのどなたですか!」
ララベルが叫んだと同時に、外から声が聞こえてきた。
「おい、ソフィア! 醜い顔を見せろ! 今回も貴様の家までやって来ているんだから感謝しろ! 早く出てこい!」
聞こえてきたのはゼント様の声だった。
「どういうことだ、ソフィー」
「わかりません。前は火をつけに来てましたけど、今日は違うみたいですね」
お兄様の質問に答えて小さく息を吐いてから、テーブルの上に上書の入った封筒を置く。
そして、声が聞こえてきた方向の窓に近づいた。
すると、窓の向こうでゼント様とケイティが寄り添って立っているのが見えた。
もしかして、また、ここでイチャつくつもりなの?
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「ソフィアめ! 俺にフラれたことを後悔するがいい! ケイティ、愛しているぞ!」
「私もです、ゼント様ぁ」
二人は見つめ合い、抱き合ったかと思うと唇を重ね、そのまま深いキスに移行した。
「何だあれは……」
いつの間にか、お兄様が後ろに立っていて、呆然とした表情で呟いた。
「おお、サカってるな!」
「気持ち悪い」
「王太子ともあろう方が…」
バロン兄様、ジュート、ワイアットの順で、二人を見た感想が飛んできた。
「見たくもないものを見せられましたわね」
いつの間に出したのかわからないけれど、さっきまで持っていなかった扇で口元を隠して、ララベルが呟いた。
ララベルが二人を見る目はまるで、汚物を見るようなものだ。
「……ん? え、あ、きゃあぁぁっ!」
ケイティが私たちの視線に気付き、悲鳴を上げてゼント様の身体を突き飛ばした。
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