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21 ケイティの本音 ②
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さすがのケイティも、この話を他の人に聞かれるのはまずいと考えたみたいだった。
ジュートに頼んでケイティに優しくしてもらうことが、彼女の気持ちを引き出すのには手っ取り早い方法なのかもしれない。
でも、ジュートはケイティを嫌っているし、王太子殿下の婚約者を誘惑しただなんて言われたら大変なことになる。
ケイティがジュートに、責任を取れとか言い出しても困るしやらないほうが良い。
「気持ちを隠してまで、ゼント様に近づいたということは、そんなに王妃の座が欲しかったの? それとも、私への嫌がらせが一番だったの?」
「そうよ。あなたの婚約者を奪いたかったのが一番の理由だった。でも、今は違う。ゼント様と結婚して、私がこの国を好きなように動かすのよ。わたしが実権を握れば、あなたを処刑できるしね」
「あなたはどうしても私を処刑したいみたいね。そんなことばかり言っていると、あなたの身に返ってくるかもしれないわよ?」
「そんな訳ないし、ありえないわ。それより、ジュート様の件はあなたが断られたということにしなさいよ!」
「どうして、そんなことをしないといけないの? ジュートだって納得しているんだからいいじゃないの」
「ジュート様があなたに断られたということが許せないのよ! こんなことになるなら、私だって考えたのに!」
ケイティは私を睨みつけて言った。
「……考えたって、何を考えるの?」
「それは、その、あなたに教える必要はないでしょう」
「ケイティ、私は馬鹿なの。わからないから、ぜひ教えてほしいんだけど?」
下手に出てあげると、ケイティは満足そうな顔になった。
「どうしたの、ソフィア、いきなり謙虚な態度になったじゃない。私に言われて、ジュート様の申し出を断ることをやめておこうかと考えちゃった?」
どうして、そんな考えになるのかわからない。
でも、ケイティの考えていることなんて私に理解できるはずがないのよね。
「そんな訳ないでしょう。ただ、ゼント様がお気の毒だと思っただけよ」
「どうして、ゼント様が気の毒なの?」
「だって、ゼント様はあなたのことを本当に愛していらっしゃるじゃない? それなのにあなたは……」
「あら、そうかしらね」
ケイティが鼻で笑った。
予想外の反応だったので、詳しく聞いてみることにする。
「どうして、そんなことを言うの? わざわざ、ゼント様は私の所までやって来て、あなたとの仲を見せつけているじゃないの」
「……ソフィア、さっきの言葉は忘れてちょうだい!」
ケイティの顔が一気に青ざめただけでなく、自分からやって来ておいて、後退りし始めた。
言ってはいけないことを口にしてしまったみたいだった。
ただ、言ってはいけないことが、自分のジュートへの思いを私に話してしまったことなのか、ゼント様の気持ちを疑うような発言をしたことなのかはわからない。
「ケイティ、あなたがここにやって来て、私を呼び出したのよ。それなのに、してきた話を忘れろって言うの? じゃあ結局、あなたは何をしに来たのよ」
「ジュート様の話は忘れなくても良いわ! だから、あなたが断られたことにしなさいよ!」
「それはお断りするわ。嘘をつく必要なんてないもの」
「なら、その件については諦めるから、さっきの話は忘れてちょうだい!」
「嫌よ。あなたに指図される筋合いはないしね」
ケイティが無言で睨みつけてきたけれど、話は終わりだと判断し、家の中に戻ろうとすると、ケイティが叫ぶ。
「さっきのこと、誰かに言ったりしたら許さないから!」
「どのことかわからないし、あなたに許されなくても、私は痛く痒くもないわ」
「うるさい! ソフィアは黙って、私の言うことを聞いていればいいのよ!」
「お断りよ」
律儀に言葉を返して、私はケイティに背を向けると素早く家の中に入って鍵を締めた。
メイドたちが心配げに近寄ってきてくれたので、大丈夫だと笑顔を見せ、ララベルが待っているダイニングルームに向かう。
すると、彼女は椅子には座っておらず、立った状態で私を出迎えてくれた。
「小さな声のところは聞こえませんでしたけど、窓を開けてもらいましたから、ある程度の話は聞こえてきましたわ」
ララベルは笑顔で続ける。
「やはり、ケイティは賢くありませんわね。あんな言葉を口にしてしまうなんて……」
「ララベルはケイティの話のどの部分に引っかかったの?」
「聞こえなかった部分もありますから、あなたがひっかかった部分の全てと一致はしないでしょうけれど、言わせてもらいますわね」
ララベルはそこまで言ってから小さく息を吐き、難しい表情で口を開く。
「ゼント様はあなたのことが好きだったのかもしれませんわね」
「……え? ちょっと待ってララベル。何の話をしているの?」
「そう考えれば、先程のケイティの言葉に説明がつきますもの」
「ケイティのさっきの言葉って、ゼント様の気持ちを疑うような言い方をしたことかしら」
「ええ。だから、それは言ってはいけなかったことだと思い出して、あなたに忘れるように言ったんじゃないのでしょうか」
「それって……」
困惑していると、ララベルがありえないことを言い出す。
「ゼント様の嫌がらせは、あなたにかまってほしくて、始めたことだったらどうしますの?」
「はい? そんなのありえないわ。ケイティのことが好きだから、人を殺すことまで出来たんじゃないの?」
「殺された侍女は喉を先に焼かれたんじゃないかと言われていましたわよね?」
「え、ええ」
「そんなことを、ゼント様が思いつくかしら? 焼死体が見つかったからと言って、ゼント様がやったと決めつけるのはおかしいんじゃなくて?」
ララベルに言われて、そう言われてみればそうだと思った。
私もワイアットも最初から、ゼント様だと決めつけていた。
「ケイティは常識を知りませんから、悪知恵は働きます。ゼント殿下を唆して殺人をさせたという可能性もありますけれども、ケイティの性格なら人の命乞いや苦痛の声を聞いて喜ぶタイプではありませんこと?」
「でも、そうなると、殺人を頼んだのはケイティじゃなくなるんじゃない? 悲鳴を聞けなかったんだから、ケイティの望みは叶っていないわ」
「本当に悲鳴を聞かなかったかどうかはわからないでしょう?」
「命乞いをさせてから、殺したということ? ……待って。そうなると、ゼント様はこの件には関わっていないということになるけど、あなたはそう思っているの?」
「……それはまだわかりませんわ。ただ、ケイティの発言が気になっただけですの。私がケイティを大嫌いだから、あら探しをしてしまっているだけかもしれませんし、私たちだけでなく、他の人もまじえて議論すべき話だとは思いますわ」
立ったまま話をしていたので、ララベルは話し終えると椅子に座り、すっかり冷めてしまった、お茶を一口飲んだ。
私は彼女の横に立って頭を抱える。
「何がなんだかわからないわ。ケイティは殿下のことが好きだと思っていたら、まだジュートのことを思っていて、ゼント様は私のことを嫌っていると思っていたけど、実際は好きだったって言うの? そんなことは信じられないわ。今のゼント様はケイティに夢中にしか思えない」
「今は、ケイティに惹かれているのは確かでしょうね。まあ、男性によっては、本能で女性に手を出す人間もいますから、何とも言えませんけど」
「ケイティのことは好きじゃないけど、淫らな行為は好きだということ?」
「そういうことですわね」
「そんなことを平気でする人なんているのかしら」
「いますわよ」
ララベルははっきりと言うと、眉をひそめて言う。
「こんな恥ずかしい話を、人にするべきではないと思ってはいたのですけれど、お話しても良いかしら?」
「……もちろんよ。ララベルが話してもいいと思うんなら話して?」
「ゼント殿下がケイティを好きではなくとも、そういうことが出来ると思ったのには理由がありますの。実は、私の婚約者は、浮気をしておりまして、その件について問い詰めたらこう言いましたの」
ララベルは、まるで婚約者が目の前にいるかのように、前を睨みながら続ける。
「心は君の所にある。だけど、身体が言うことをきいてくれない。それが本能だから許してほしいと」
「あなたに直接そう言ったの?」
「そうですわ。種の保存だとか何とか言っておられましたけどね!」
「彼はあなたのところに婿に来るのよね? それなのに、そんな態度が大きいの? ……と、ちょっと待って。その話はあとでゆっくり聞かせてちょうだい。今は、ゼント様の件に話を戻すけれど、ゼント様の気持ちも、今はどこにあるのかわからないと、ララベルは言いたいの?」
「ええ。大体、ケイティとゼント殿下が愛し合っているところを、あなたに見せつけてどうするというんです? 妬いてほしかっただけではないでしょうか」
まさかそんな、と思いながらも、ララベルの言うことも、間違ってはいないかもしれないという気にもなってしまった。
……このことはワイアットやお父様たちに相談しておいたほうが良いわよね。
ひとまず、ゼント様たちの話はおいておいて、ララベルが話をしてくれた、彼女の婚約者についての話を聞くことにした。
ジュートに頼んでケイティに優しくしてもらうことが、彼女の気持ちを引き出すのには手っ取り早い方法なのかもしれない。
でも、ジュートはケイティを嫌っているし、王太子殿下の婚約者を誘惑しただなんて言われたら大変なことになる。
ケイティがジュートに、責任を取れとか言い出しても困るしやらないほうが良い。
「気持ちを隠してまで、ゼント様に近づいたということは、そんなに王妃の座が欲しかったの? それとも、私への嫌がらせが一番だったの?」
「そうよ。あなたの婚約者を奪いたかったのが一番の理由だった。でも、今は違う。ゼント様と結婚して、私がこの国を好きなように動かすのよ。わたしが実権を握れば、あなたを処刑できるしね」
「あなたはどうしても私を処刑したいみたいね。そんなことばかり言っていると、あなたの身に返ってくるかもしれないわよ?」
「そんな訳ないし、ありえないわ。それより、ジュート様の件はあなたが断られたということにしなさいよ!」
「どうして、そんなことをしないといけないの? ジュートだって納得しているんだからいいじゃないの」
「ジュート様があなたに断られたということが許せないのよ! こんなことになるなら、私だって考えたのに!」
ケイティは私を睨みつけて言った。
「……考えたって、何を考えるの?」
「それは、その、あなたに教える必要はないでしょう」
「ケイティ、私は馬鹿なの。わからないから、ぜひ教えてほしいんだけど?」
下手に出てあげると、ケイティは満足そうな顔になった。
「どうしたの、ソフィア、いきなり謙虚な態度になったじゃない。私に言われて、ジュート様の申し出を断ることをやめておこうかと考えちゃった?」
どうして、そんな考えになるのかわからない。
でも、ケイティの考えていることなんて私に理解できるはずがないのよね。
「そんな訳ないでしょう。ただ、ゼント様がお気の毒だと思っただけよ」
「どうして、ゼント様が気の毒なの?」
「だって、ゼント様はあなたのことを本当に愛していらっしゃるじゃない? それなのにあなたは……」
「あら、そうかしらね」
ケイティが鼻で笑った。
予想外の反応だったので、詳しく聞いてみることにする。
「どうして、そんなことを言うの? わざわざ、ゼント様は私の所までやって来て、あなたとの仲を見せつけているじゃないの」
「……ソフィア、さっきの言葉は忘れてちょうだい!」
ケイティの顔が一気に青ざめただけでなく、自分からやって来ておいて、後退りし始めた。
言ってはいけないことを口にしてしまったみたいだった。
ただ、言ってはいけないことが、自分のジュートへの思いを私に話してしまったことなのか、ゼント様の気持ちを疑うような発言をしたことなのかはわからない。
「ケイティ、あなたがここにやって来て、私を呼び出したのよ。それなのに、してきた話を忘れろって言うの? じゃあ結局、あなたは何をしに来たのよ」
「ジュート様の話は忘れなくても良いわ! だから、あなたが断られたことにしなさいよ!」
「それはお断りするわ。嘘をつく必要なんてないもの」
「なら、その件については諦めるから、さっきの話は忘れてちょうだい!」
「嫌よ。あなたに指図される筋合いはないしね」
ケイティが無言で睨みつけてきたけれど、話は終わりだと判断し、家の中に戻ろうとすると、ケイティが叫ぶ。
「さっきのこと、誰かに言ったりしたら許さないから!」
「どのことかわからないし、あなたに許されなくても、私は痛く痒くもないわ」
「うるさい! ソフィアは黙って、私の言うことを聞いていればいいのよ!」
「お断りよ」
律儀に言葉を返して、私はケイティに背を向けると素早く家の中に入って鍵を締めた。
メイドたちが心配げに近寄ってきてくれたので、大丈夫だと笑顔を見せ、ララベルが待っているダイニングルームに向かう。
すると、彼女は椅子には座っておらず、立った状態で私を出迎えてくれた。
「小さな声のところは聞こえませんでしたけど、窓を開けてもらいましたから、ある程度の話は聞こえてきましたわ」
ララベルは笑顔で続ける。
「やはり、ケイティは賢くありませんわね。あんな言葉を口にしてしまうなんて……」
「ララベルはケイティの話のどの部分に引っかかったの?」
「聞こえなかった部分もありますから、あなたがひっかかった部分の全てと一致はしないでしょうけれど、言わせてもらいますわね」
ララベルはそこまで言ってから小さく息を吐き、難しい表情で口を開く。
「ゼント様はあなたのことが好きだったのかもしれませんわね」
「……え? ちょっと待ってララベル。何の話をしているの?」
「そう考えれば、先程のケイティの言葉に説明がつきますもの」
「ケイティのさっきの言葉って、ゼント様の気持ちを疑うような言い方をしたことかしら」
「ええ。だから、それは言ってはいけなかったことだと思い出して、あなたに忘れるように言ったんじゃないのでしょうか」
「それって……」
困惑していると、ララベルがありえないことを言い出す。
「ゼント様の嫌がらせは、あなたにかまってほしくて、始めたことだったらどうしますの?」
「はい? そんなのありえないわ。ケイティのことが好きだから、人を殺すことまで出来たんじゃないの?」
「殺された侍女は喉を先に焼かれたんじゃないかと言われていましたわよね?」
「え、ええ」
「そんなことを、ゼント様が思いつくかしら? 焼死体が見つかったからと言って、ゼント様がやったと決めつけるのはおかしいんじゃなくて?」
ララベルに言われて、そう言われてみればそうだと思った。
私もワイアットも最初から、ゼント様だと決めつけていた。
「ケイティは常識を知りませんから、悪知恵は働きます。ゼント殿下を唆して殺人をさせたという可能性もありますけれども、ケイティの性格なら人の命乞いや苦痛の声を聞いて喜ぶタイプではありませんこと?」
「でも、そうなると、殺人を頼んだのはケイティじゃなくなるんじゃない? 悲鳴を聞けなかったんだから、ケイティの望みは叶っていないわ」
「本当に悲鳴を聞かなかったかどうかはわからないでしょう?」
「命乞いをさせてから、殺したということ? ……待って。そうなると、ゼント様はこの件には関わっていないということになるけど、あなたはそう思っているの?」
「……それはまだわかりませんわ。ただ、ケイティの発言が気になっただけですの。私がケイティを大嫌いだから、あら探しをしてしまっているだけかもしれませんし、私たちだけでなく、他の人もまじえて議論すべき話だとは思いますわ」
立ったまま話をしていたので、ララベルは話し終えると椅子に座り、すっかり冷めてしまった、お茶を一口飲んだ。
私は彼女の横に立って頭を抱える。
「何がなんだかわからないわ。ケイティは殿下のことが好きだと思っていたら、まだジュートのことを思っていて、ゼント様は私のことを嫌っていると思っていたけど、実際は好きだったって言うの? そんなことは信じられないわ。今のゼント様はケイティに夢中にしか思えない」
「今は、ケイティに惹かれているのは確かでしょうね。まあ、男性によっては、本能で女性に手を出す人間もいますから、何とも言えませんけど」
「ケイティのことは好きじゃないけど、淫らな行為は好きだということ?」
「そういうことですわね」
「そんなことを平気でする人なんているのかしら」
「いますわよ」
ララベルははっきりと言うと、眉をひそめて言う。
「こんな恥ずかしい話を、人にするべきではないと思ってはいたのですけれど、お話しても良いかしら?」
「……もちろんよ。ララベルが話してもいいと思うんなら話して?」
「ゼント殿下がケイティを好きではなくとも、そういうことが出来ると思ったのには理由がありますの。実は、私の婚約者は、浮気をしておりまして、その件について問い詰めたらこう言いましたの」
ララベルは、まるで婚約者が目の前にいるかのように、前を睨みながら続ける。
「心は君の所にある。だけど、身体が言うことをきいてくれない。それが本能だから許してほしいと」
「あなたに直接そう言ったの?」
「そうですわ。種の保存だとか何とか言っておられましたけどね!」
「彼はあなたのところに婿に来るのよね? それなのに、そんな態度が大きいの? ……と、ちょっと待って。その話はあとでゆっくり聞かせてちょうだい。今は、ゼント様の件に話を戻すけれど、ゼント様の気持ちも、今はどこにあるのかわからないと、ララベルは言いたいの?」
「ええ。大体、ケイティとゼント殿下が愛し合っているところを、あなたに見せつけてどうするというんです? 妬いてほしかっただけではないでしょうか」
まさかそんな、と思いながらも、ララベルの言うことも、間違ってはいないかもしれないという気にもなってしまった。
……このことはワイアットやお父様たちに相談しておいたほうが良いわよね。
ひとまず、ゼント様たちの話はおいておいて、ララベルが話をしてくれた、彼女の婚約者についての話を聞くことにした。
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