【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ

文字の大きさ
39 / 53

39 アネモネ姫登場

しおりを挟む
 私があの時、イヤーカフでラス様に連絡する前の話をリアが説明すると、ラス様が表情を歪める。

「そういえば、マヌグリラの王家の剣を返しましたね。あの時がありましたか・・・・・」
「うう、忘れてました・・・。ごめんなさい」
「リアさんが謝ることではないですよ」
「そうだって。リアちゃんはユーニを守ろうとしてくれたんだろ?」

 しょげるリアの頭をユウヤくんが優しく撫でる。

「そうだよ。リアがいなかったら私はまあ、回復魔法使えるから死ななかったかもしれないけど、絶対に痛い思いしてたし」

 考えたらあの時、アスラン王太子殿下はリアが止めなかったら、ちゃんと助けてくれたんだろうか。
 今、思うとゾッとするけど、どうやら悪い人でもなさそうだし、いや、でも、嘘でもあんな風にする必要あったかな。

「そう言ってくれるのはありがたいけど・・・・、まあ、そうだね! もう過ぎたことはしょうがないか!」

 リアは開き直ったようにそう言うと、いつもの明るい笑顔に戻って続ける。

「よっしゃ、どんな試練でもどんと来いだわ!」
「あんま無理はすんなよ?」
「大丈夫よ!」

 リアは明るく言うけど、ユウマくんはどこかまだ心配そう。
 ユウマくんの気持ちもわかる。
 果たし状を送りつけてくるという事や、女性で騎士という事はきっと色んな意味で強そうなイメージ。
 もちろん、リアも気は強いけど騎士ではないし、体格だってそう大きいわけじゃない。
 というか、身長はある方かもしれないけど、すごく細いし。
 相手の女の人はどんな人なんだろう?

「大丈夫よ」

 リアは不安そうにしている私に気が付いて、にっこり笑ってくれた。



 次の日、今晩は顔合わせも兼ねての晩餐会を催してくれるらしく、私達も完全装備で城へと向かった。
 まあ、装備といっても、ドレスやアクセサリーと化粧だけど。
 馬車を降りると正装姿のユウヤくんが待ってくれていて、手を差し出してくれた。
 いつもなら、ぴょんと飛び降りちゃうけど、ここは異国の地だし、何より私にとって戦いの場だから、ちゃんとしなくては!
 誰に見られているかわからないし。

「ありがとう」

 ユウヤくんの手の上に自分の手を重ねて微笑む。

「今日は、なんか、違うな」
「え、そうかな?」
「ああ。可愛いっつーより綺麗だ」
「えっ?! あ、えっと、ありがと」

 ユウヤくんがなんだか可愛く笑って言うから、頬が熱くなる。

 綺麗だなんて、言われたのは初めてだし嬉しい。

 エスコートしてもらった状態で、リア達を待たずにユウヤくんが歩いていこうとするから、私は足を止める。

「リア達がまだだよ」
「なんか話があるから先に行っててくれって、ユウマは言ってたけど」
「ふぅん」

 リアの方を見ると、今日は髪をアップにせず全部おろしているから、本当のお姫様みたい。
 横にいるユウマくんも正装で前髪を上げているから、いつもよりカッコ良く見えるし、二人が並んでいるのは何度見ても目の保養になる。
 そんな二人は何やら真剣な表情で会話をしていて、邪魔しても悪いから、ラス様の姿を探す。

「ラス様は?」
「まだ来てないみたいだな」
「宿から出る時はすぐに追いつきます、って言ってたのに」
「とりあえず先に行くぞ」
「うん」

 今日は顔合わせもあるみたいだけど、私としてはラス様がいるからお断りします、という事で、ちゃんと紹介できるように一緒に来てもらう事になったんだけど、まさか、嫌になって逃げたんじゃないよね?
 ラス様はそんな人じゃないよね?
 ちょっと不安になってきた。
 いや、でも真面目だし、何も言わずに逃げ出すことのほうが嫌がるか。

 そんな事を考えていたら、いつの間にか城の中に入っていた。
 お城の外見も内側もアダルシュのお城と変わりはあまり変わらないようにも思える。
 まだ、エントランスだからだろうか。
 もちろん装飾品だったり、中のつくりは違うけど。
 時間が早いからか、招待客らしき人は見当たらず、準備の最中なのか、メイドさん達が行き交っている。
 
「ユウヤくんは昨日はどこに泊まったの?」
「昨日は別棟」
「というか、ダンスホールはどこにあるの?」
「あっち、って」

 ユウヤくんが後ろを振り返った瞬間。

「きゃー、ユウヤ、会いたかったー!」

 がばっ。
 突然、可愛らしい顔立ちの小柄な女の子がユウヤくんの首に抱きついた。

「好き好き! 会いたかった! ユウヤはどうだった?」

 私よりも少し年下だろうか、ユウヤくんの瞳と同じ紅色のプリンセスラインのドレスに身を包み、さらさらの長い黒髪につけている花のコサージュも紅色で、彼女の今の行動通りユウヤくんへの愛を感じられる出で立ち。

「残念ながらオレは会いたくなかった」

 ユウヤくんに飛びついて、必死に顔にキスをしようとしてくる女の子の顔をユウヤくんはおさえつけていたけど、呆気にとられている私に気が付いて、突然慌て始めた。

「ユーニ! これは違うからな!」
「え?」

 何が違うの?
 とりあえず、仲良さそうには見えないんだけど、もしかして私が妬いてると思ってる?

「大丈夫だよ。びっくりしただけだから」
「それはそれで悲しいんだが」

 私が笑いながら手を横に振ると、ユウヤくんは女の子を無理矢理、自分から引き剥がすと、私に向かってくるなり抱きしめてきた。

「ちょっと! 人前だよ」
「いいんだよ」

 私のあごをつかんでキスしようとしてきたので、手でユウヤくんの口を塞ぐ。

「駄目!」
「なんで」
「というか、今ここでそれをする意味がわからないよ」
「つーか、もうちょっと、なんか反応があってもいいんじゃねぇの?」

 なぜか不貞腐れたようにユウヤくんは言う。

 うーん。
 これはヤキモチを妬いて欲しかったって事なのかな?
 でもそれってユウヤくんを信じてないって風にも思えるから。

「私はユウヤくんを信じてるんだけど?」
「・・・・・やばい。やっぱ可愛い」
「えっ?!」

 上目遣いで言ってみたところ、予想以上に喜んでくれたようで、私にとっては名もしらぬ女の子の前で、再度抱きしめられてしまった。

「ちょっ、ユウヤくん!」
「ユウヤ! 私がいるんだけど!」

 女の子は頬を膨らませながら、私達に近付いてくると、ユウヤくんの腕をつかみ叫ぶ。

「誰なの、この女!」

 睨まれた上に指をさされたので、ついつい眉をひそめてしまう。
 何より、キャンキャンわめかれると耳に響く。
 
 リアなら毒舌掃いてるだろうな。
 なんて、呑気な事を考えた。

「あの、こんな格好で申し訳ありません。私、ユウヤ殿下の婚約者の」

 抱きしめられたままの状態で、挨拶をしようとすると、

「婚約者なら名前は知ってるわ! ユーニ様でしょ! あなたがいなかったら、ユウヤは私のものだったのに!」

 私の顔の前に指を突きつけて叫んだ。

「それは申し訳ありませんでした」
「ユーニ」

 心配そうな顔でユウヤくんが見てくるから、無言で頷く。
 
 私自身は不安にならないくらいの愛情をユウヤくんから受け取ってるつもりでいる。
 返せるときは返さないと。

 というか、この子だれ?

「あの、失礼ですが」

 私が口を開くと、その先の言葉をユウヤくんが察してくれて耳打ちしてくる。

「アネモネ・アンドリッシュ」
「え?!」

 その名を聞いて、思わず耳を疑った。
 ということは、目の前にいる彼女が、マヌグリラのお姫様?!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
恋愛
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

【完結】アッシュフォード男爵夫人-愛されなかった令嬢は妹の代わりに辺境へ嫁ぐ-

七瀬菜々
恋愛
 ブランチェット伯爵家はずっと昔から、体の弱い末の娘ベアトリーチェを中心に回っている。   両親も使用人も、ベアトリーチェを何よりも優先する。そしてその次は跡取りの兄。中間子のアイシャは両親に気遣われることなく生きてきた。  もちろん、冷遇されていたわけではない。衣食住に困ることはなかったし、必要な教育も受けさせてもらえた。  ただずっと、両親の1番にはなれなかったというだけ。  ---愛されていないわけじゃない。  アイシャはずっと、自分にそう言い聞かせながら真面目に生きてきた。  しかし、その願いが届くことはなかった。  アイシャはある日突然、病弱なベアトリーチェの代わりに、『戦場の悪魔』の異名を持つ男爵の元へ嫁ぐことを命じられたのだ。  かの男は血も涙もない冷酷な男と噂の人物。  アイシャだってそんな男の元に嫁ぎたくないのに、両親は『ベアトリーチェがかわいそうだから』という理由だけでこの縁談をアイシャに押し付けてきた。 ーーーああ。やはり私は一番にはなれないのね。  アイシャはとうとう絶望した。どれだけ願っても、両親の一番は手に入ることなどないのだと、思い知ったから。  結局、アイシャは傷心のまま辺境へと向かった。  望まれないし、望まない結婚。アイシャはこのまま、誰かの一番になることもなく一生を終えるのだと思っていたのだが………? ※全部で3部です。話の進みはゆっくりとしていますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。    ※色々と、設定はふわっとしてますのでお気をつけください。 ※作者はザマァを描くのが苦手なので、ザマァ要素は薄いです。  

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む

浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。 「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」 一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。 傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

完 独身貴族を謳歌したい男爵令嬢は、女嫌い公爵さまと結婚する。

水鳥楓椛
恋愛
 男爵令嬢オードリー・アイリーンはある日父が負った借金により、大好きな宝石だけでは食べていけなくなってしまった。そんな時、オードリーの前に現れたのは女嫌いと有名な公爵エドワード・アーデルハイトだった。愛する家族を借金苦から逃すため、オードリーは悪魔に嫁ぐ。結婚の先に待ち受けるのは不幸か幸せか。少なくとも、オードリーは自己中心的なエドワードが大嫌いだった………。  イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!

駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど
恋愛
『私は恋に生きるから、探さないでそっとしておいてほしい』 という置き手紙を残して、駆け落ちした姉のクラリス。 それにより、主人公のレイチェルは姉の婚約者────“悪辣公爵”と呼ばれるヘレスと結婚することに。 そうして、始まった新婚生活はやはり前途多難で……。 まず、夫が会いに来ない。 次に、使用人が仕事をしてくれない。 なので、レイチェル自ら家事などをしないといけず……とても大変。 でも────自由気ままに一人で過ごせる生活は、案外悪くなく……? そんな時、夫が現れて使用人達の職務放棄を知る。 すると、まさかの大激怒!? あっという間に使用人達を懲らしめ、それからはレイチェルとの時間も持つように。 ────もっと残忍で冷酷な方かと思ったけど、結構優しいわね。 と夫を見直すようになった頃、姉が帰ってきて……? 善意の押し付けとでも言うべきか、「あんな男とは、離婚しなさい!」と迫ってきた。 ────いやいや!こっちは幸せに暮らしているので、放っておいてください! ◆小説家になろう様でも、公開中◆

私を簡単に捨てられるとでも?―君が望んでも、離さない―

喜雨と悲雨
恋愛
私の名前はミラン。街でしがない薬師をしている。 そして恋人は、王宮騎士団長のルイスだった。 二年前、彼は魔物討伐に向けて遠征に出発。 最初は手紙も返ってきていたのに、 いつからか音信不通に。 あんなにうっとうしいほど構ってきた男が―― なぜ突然、私を無視するの? 不安を抱えながらも待ち続けた私の前に、 突然ルイスが帰還した。 ボロボロの身体。 そして隣には――見知らぬ女。 勝ち誇ったように彼の隣に立つその女を見て、 私の中で何かが壊れた。 混乱、絶望、そして……再起。 すがりつく女は、みっともないだけ。 私は、潔く身を引くと決めた――つもりだったのに。 「私を簡単に捨てられるとでも? ――君が望んでも、離さない」 呪いを自ら解き放ち、 彼は再び、執着の目で私を見つめてきた。 すれ違い、誤解、呪い、執着、 そして狂おしいほどの愛―― 二人の恋のゆくえは、誰にもわからない。 過去に書いた作品を修正しました。再投稿です。

処理中です...