17 / 59
14 奇妙な関係
しおりを挟む
シャーロット様たちとお話をした5日後の昼、わたしとシャーロット様とイボンヌさんはリアド辺境伯領にあるカフェで集まっていた。
朝と昼の時間だけ貸し切りになっているテラスに一つだけ置かれている丸テーブルを囲んでいる私たちは、店員からしてみれば、何の共通点があって集まっているのだろうと不思議に思うところでしょう。
わたしとシャーロット様だけなら、二人でお茶を楽しんでいると見られただけかもしれないけれど、肌の露出が多い服に、少し派手なメイクをしたイボンヌさんがいることによって受ける印象がまったく違う感じだった。
「あの、アルミラ様、なんなんですか、この地味子」
「「じみこ?」」
わたしとシャーロット様が聞き返すと、イボンヌさんは腕を組み豊満な胸を見せつけるように揺らしながら、シャーロット様を見つめる。
「この人ですよ! 一体誰なんですか?」
「イボンヌさん、この方はシャーロット様で、リアド辺境伯令嬢よ」
「えっ!? あ、それは失礼しましたっ!」
イボンヌさんは慌てた顔をしたあと、立ち上がって深々と頭を下げた。
「いえ。いいんです。私は地味ですから」
あの話し合いのあと、シャーロット様は思ったよりも早くに立ち直ってくれた。
だけど、卑屈さが直っているわけではないので、なぜか彼女がイボンヌさんにペコペコと頭を下げている。
「地味でごめんなさい」
「別に地味は悪口じゃないです! 印象を言ってるだけです!」
「地味だとはわかっているんですが、どうしたら良いのかわからないんです!」
シャーロット様は俯いた状態で叫んだ。
助けてくれと言わんばかりにイボンヌさんがわたしを見てくるので、シャーロット様に話しかける。
「シャーロット様、あなたはイボンヌさんをどうにでもできる立場なんです。家に帰ってお父様に抹殺命令を出しても良いんですよ」
「ちょっと待ってください! 駄目に決まっているでしょう!」
「なら、シャーロット様にもっと敬意を持ちなさい」
イボンヌさんは、このままでは自分の立場が危ういと思ったのか話を促してくる。
「ところで今日の本題は何なんですか?」
「イボンヌさんに頼みたいことがあるの。リアド辺境伯には、あなたをお借りしても良いと許可を得ているわ」
「何をすれば良いんですか?」
「平民の間で流行っている派手なメイクがあるのでしょう?」
「ありますよ。あたしもやってます。下品にならないように、あたしは控えめにやってますけど」
「そうね。あなたが普段しているようなメイクをシャーロット様にしてあげてほしいの」
「メイクっていっても流行りがあるんですけど、それはどうするんです?」
「今の流行りで良いわ。あと、シャーロット様のメイドたちにも教えてあげてほしいの」
話を聞いたイボンヌ様は訝しげな顔をして聞いてくる。
「かまわないですけど、どうしてそんなことをするんです? あたしが地味だとか言ったからですか?」
「違うわよ。目的があるの」
自分から話出せないシャーロット様の代わりにわたしが説明することになった。
シャーロット様はまた働こうと考えているらしいのだけれど、元々、自分がいたポジションはお兄様のフィリップ様が代わりに働いてくれているし、同じ部署にはファニがいる。
今はまだ、ファニと一緒に働くのは辛いというので、ファニの婚約者のラギリ様が紹介してくれた仕事に就くことになった。
シャーロット様は自分を変えたくて、普通の貴族がしない、平民で流行っているメイクをしてもらおうと思ったんだそう。
印象が変われば、気持ちも明るくなれそうだと言うから、シャーロット様のメイドに話をしてみると、教えられたメイクの仕方しか知らず、その人の肌や顔立ちなどによって臨機応変に対応するということができなかった。
だから、貴族であれば貴族の流行りになってしまうため、同じようなメイクになってしまい目新しさがない。
イメージチェンジをするために、下品でなく華やかなメイクをしているイボンヌさんにお願いすることになったことを説明すると、イボンヌさんが訝しげな顔をして聞いてくる。
「シャーロット様の目的はわかりましたけど、アルミラ様の目的な何ですか?」
「わたしの目的はシャーロット様にファニとオズック様の様子を見てきてもらって、ラギリ様にその感想を伝えてもらうことよ」
「シャーロット様もアルミラ様と同じで人が良さそうですけど大丈夫ですか? また、オズックに騙されません?」
イボンヌさんに心配されてしまったけれど、シャーロット様は顔を上げて言う。
「もう、オズック様にはときめきません。ですから、お願いできないでしょうか」
シャーロット様の力強い口調から覚悟を感じ取ったのか、イボンヌさんは頷く。
「しょーちしました! パッと見ただけではシャーロット様だとはすぐにわからないように頑張ってみますね」
「よろしくお願いいたします!」
シャーロット様は手を合わせて喜んだ。
シャーロット様とイボンヌさんは性格が正反対のような気がしたけれど、だからこそ仲良くなれるかもしれないと思った。
※次の話はシャーロットとオズック視点になります。
朝と昼の時間だけ貸し切りになっているテラスに一つだけ置かれている丸テーブルを囲んでいる私たちは、店員からしてみれば、何の共通点があって集まっているのだろうと不思議に思うところでしょう。
わたしとシャーロット様だけなら、二人でお茶を楽しんでいると見られただけかもしれないけれど、肌の露出が多い服に、少し派手なメイクをしたイボンヌさんがいることによって受ける印象がまったく違う感じだった。
「あの、アルミラ様、なんなんですか、この地味子」
「「じみこ?」」
わたしとシャーロット様が聞き返すと、イボンヌさんは腕を組み豊満な胸を見せつけるように揺らしながら、シャーロット様を見つめる。
「この人ですよ! 一体誰なんですか?」
「イボンヌさん、この方はシャーロット様で、リアド辺境伯令嬢よ」
「えっ!? あ、それは失礼しましたっ!」
イボンヌさんは慌てた顔をしたあと、立ち上がって深々と頭を下げた。
「いえ。いいんです。私は地味ですから」
あの話し合いのあと、シャーロット様は思ったよりも早くに立ち直ってくれた。
だけど、卑屈さが直っているわけではないので、なぜか彼女がイボンヌさんにペコペコと頭を下げている。
「地味でごめんなさい」
「別に地味は悪口じゃないです! 印象を言ってるだけです!」
「地味だとはわかっているんですが、どうしたら良いのかわからないんです!」
シャーロット様は俯いた状態で叫んだ。
助けてくれと言わんばかりにイボンヌさんがわたしを見てくるので、シャーロット様に話しかける。
「シャーロット様、あなたはイボンヌさんをどうにでもできる立場なんです。家に帰ってお父様に抹殺命令を出しても良いんですよ」
「ちょっと待ってください! 駄目に決まっているでしょう!」
「なら、シャーロット様にもっと敬意を持ちなさい」
イボンヌさんは、このままでは自分の立場が危ういと思ったのか話を促してくる。
「ところで今日の本題は何なんですか?」
「イボンヌさんに頼みたいことがあるの。リアド辺境伯には、あなたをお借りしても良いと許可を得ているわ」
「何をすれば良いんですか?」
「平民の間で流行っている派手なメイクがあるのでしょう?」
「ありますよ。あたしもやってます。下品にならないように、あたしは控えめにやってますけど」
「そうね。あなたが普段しているようなメイクをシャーロット様にしてあげてほしいの」
「メイクっていっても流行りがあるんですけど、それはどうするんです?」
「今の流行りで良いわ。あと、シャーロット様のメイドたちにも教えてあげてほしいの」
話を聞いたイボンヌ様は訝しげな顔をして聞いてくる。
「かまわないですけど、どうしてそんなことをするんです? あたしが地味だとか言ったからですか?」
「違うわよ。目的があるの」
自分から話出せないシャーロット様の代わりにわたしが説明することになった。
シャーロット様はまた働こうと考えているらしいのだけれど、元々、自分がいたポジションはお兄様のフィリップ様が代わりに働いてくれているし、同じ部署にはファニがいる。
今はまだ、ファニと一緒に働くのは辛いというので、ファニの婚約者のラギリ様が紹介してくれた仕事に就くことになった。
シャーロット様は自分を変えたくて、普通の貴族がしない、平民で流行っているメイクをしてもらおうと思ったんだそう。
印象が変われば、気持ちも明るくなれそうだと言うから、シャーロット様のメイドに話をしてみると、教えられたメイクの仕方しか知らず、その人の肌や顔立ちなどによって臨機応変に対応するということができなかった。
だから、貴族であれば貴族の流行りになってしまうため、同じようなメイクになってしまい目新しさがない。
イメージチェンジをするために、下品でなく華やかなメイクをしているイボンヌさんにお願いすることになったことを説明すると、イボンヌさんが訝しげな顔をして聞いてくる。
「シャーロット様の目的はわかりましたけど、アルミラ様の目的な何ですか?」
「わたしの目的はシャーロット様にファニとオズック様の様子を見てきてもらって、ラギリ様にその感想を伝えてもらうことよ」
「シャーロット様もアルミラ様と同じで人が良さそうですけど大丈夫ですか? また、オズックに騙されません?」
イボンヌさんに心配されてしまったけれど、シャーロット様は顔を上げて言う。
「もう、オズック様にはときめきません。ですから、お願いできないでしょうか」
シャーロット様の力強い口調から覚悟を感じ取ったのか、イボンヌさんは頷く。
「しょーちしました! パッと見ただけではシャーロット様だとはすぐにわからないように頑張ってみますね」
「よろしくお願いいたします!」
シャーロット様は手を合わせて喜んだ。
シャーロット様とイボンヌさんは性格が正反対のような気がしたけれど、だからこそ仲良くなれるかもしれないと思った。
※次の話はシャーロットとオズック視点になります。
228
あなたにおすすめの小説
私を愛すると言った婚約者は、私の全てを奪えると思い込んでいる
迷い人
恋愛
お爺様は何時も私に言っていた。
「女侯爵としての人生は大変なものだ。 だから愛する人と人生を共にしなさい」
そう語っていた祖父が亡くなって半年が経過した頃……。
祖父が定めた婚約者だと言う男がやってきた。
シラキス公爵家の三男カール。
外交官としての実績も積み、背も高く、細身の男性。
シラキス公爵家を守護する神により、社交性の加護を与えられている。
そんなカールとの婚約は、渡りに船……と言う者は多いだろう。
でも、私に愛を語る彼は私を知らない。
でも、彼を拒絶する私は彼を知っている。
だからその婚約を受け入れるつもりはなかった。
なのに気が付けば、婚約を??
婚約者なのだからと屋敷に入り込み。
婚約者なのだからと、恩人(隣国の姫)を連れ込む。
そして……私を脅した。
私の全てを奪えると思い込んでいるなんて甘いのよ!!
私を裏切った運命の婚約者、戻って来いと言われても戻りません
迷い人
恋愛
竜と言う偉大な血が民に流れる国アクロマティリ。
偉大で狂暴で凶悪で、その身に膨大なマナを持つ民。
そんな彼等は世界の礎である世界樹を枯らした。
私は、世界樹を復活させるために……愛の無い夫婦の間に生まれた子。
それでも、家族は、母が父を呪いで縛り奪ったにも拘らず愛してくれた。
父 ジェフリー
義母 ニーヴィ
腹違いの姉 ヴィヴィアン
婚約者 ヨハン
恨むことなく愛を与えてくれた大切な家族。
家族の愛を信じていた。
家族の愛を疑った事は無かった。
そして国を裏切るか? 家族を裏切るか? 選択が求められる。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
妹は謝らない
青葉めいこ
恋愛
物心つく頃から、わたくし、ウィスタリア・アーテル公爵令嬢の物を奪ってきた双子の妹エレクトラは、当然のように、わたくしの婚約者である第二王子さえも奪い取った。
手に入れた途端、興味を失くして放り出すのはいつもの事だが、妹の態度に怒った第二王子は口論の末、妹の首を絞めた。
気絶し、目覚めた妹は、今までの妹とは真逆な人間になっていた。
「彼女」曰く、自分は妹の前世の人格だというのだ。
わたくしが恋する義兄シオンにも前世の記憶があり、「彼女」とシオンは前世で因縁があるようで――。
「彼女」と会った時、シオンは、どうなるのだろう?
小説家になろうにも投稿しています。
王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?
ねーさん
恋愛
公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。
なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。
王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!
【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?
よどら文鳥
恋愛
デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。
予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。
「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」
「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」
シェリルは何も事情を聞かされていなかった。
「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」
どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。
「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」
「はーい」
同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。
シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。
だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる