【完結】都合のいい女ではありませんので

風見ゆうみ

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14.5(シャーロットsideとオズックside)

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(シャーロットside)

 私、シャーロット・リアドは自分のことを生まれてきてはいけなかった人間だと思い込んでいた。

 家族も使用人も、そんなことはないと言い続けてきてくれた。
 それなのに、私は誰かにそう言い続けてほしくて聞こえないふりをしていた。

 誰かに必要とされていると思いたかった。

 友人もできなければ恋人もできない。
 お見合いは全て断られた。

 どうすれば必要とされるのか考えて、誰かの真似をすることにした。
 学園ではクラスメイトがダイエットに励んでいたから、まずは私も痩せることにした。

 そうすれば、人に羨ましがられて声を掛けてもらえると思った。
 でも、そんなことはなかった。
 家族や使用人からはもっと食べるようにと怒られた。

「骸骨みたい」

 学園では陰口を叩かれているのを聞いてしまい、生きていくのが嫌になった。

 どうすれば、私は人に必要とされるの?

 鬱々とした気持ちで就職した先で出会ったのが、オズック様だった。

 オズック様は社交界ではどうなのかわからなかったけれど、職場では部署など関係なく人気者だった。

 そんな人に声を掛けられて、私は舞い上がった。
 いつの間にか、彼のことばかり考えて夜も眠れなくなった。
 彼と廊下ですれ違ったり、立ち話をすることがあればそれだけで幸せで、お金に困っていると聞いたら、お金を押し付けるようにして渡していた。

 それから約1年後、別れの日は突然やって来た。

「婚約者の友人がここで働くことになったんだ。誤解されても困るから、仕事以外でオレには話しかけないでほしい」

 納得できなかった。

 婚約者がいることはわかっていた。
 だけど、いつか、アルミラ様と別れて私と一緒になってくれるんじゃないかと勝手に期待していた。

「愛人でもいいんです!」

 そう言って縋ると彼は苦笑して言った。

「オレはそういうつもりで優しくしていたんじゃない」
 
 私一人が暴走していただけだった。

 その後は自分が大嫌いになって引きこもった。
 引きこもることで、皆に迷惑をかけることになるだなんてことは、その時は何も考えていなかった。

 リアド辺境伯令嬢は任されていた仕事を投げ出す、いいかげんな令嬢。
 そして、それをどうにもすることのできない腑抜けた辺境伯として、お父様までもが馬鹿にされるようになったと、お兄様たちから聞いた。

 このままではいけない。

 変わらなくちゃ。
 変わりたい。
 変わるの。

 そんなことを思っていた時にアルミラ様に出会った。
 
 アルミラ様は婚約者に裏切られたのに、ただ前を向いて、オズック様たちをじわじわと苦しめる計画を立てていた。

 そんな彼女を怖いと思いながらも協力したいと思えたのはなぜだろうか。

 今はまだわからない。

 とにかく、私は変わりたい。

 その一歩を踏み出すために、お父様の権限で職場内ではシャルロット・ロウドという偽名を使うことを許された。
 そして、今日、

 私は新しい職場である国境警備隊の事務所に足を踏み入れた。



◇◆◇◆◇◆

(オズック視点)




 ここ最近、本当に上手くいかない。
 アルミラがサプライズを企てていると知っていて、わざと彼女にオレとの関係を教えようとしたファニのせいだ。

 元々、ファニとは距離を置くつもりだった。
 それなのに、あいつが勝手にオレを好きになってのめり込んできた。

 お祖母様も「アルミラさんと別れて他の女性と一緒になりなさい」と言うようになった。
 
 オレは金と女が好きだ。

 だから、オレに金をもたらせてくれる女が一番好きだ。

 オレにとってはアルミラは理想の相手だった。

 顔も可愛いし、親も侯爵で金を持っている。
 しかも、結婚すればオレが後を継げる可能性があった。
 
 ファニにはあんなことを言ったが、オレは結婚してもアルミラを捨てるつもりはない。

 どうせ、ファニもそのうち婚約者と結婚するだろう。
 ファニはそんなに金を持ってないし、プレゼントをくれても安物ばかりだ。

 こんな面倒なことになるのなら、さっさと捨てておけば良かった。

 仕事が休みだったので、昼間から酒を飲んでいると兄上が訪ねてきた。

「上手くいってないみたいだな」

 オレよりも顔立ちの整った兄にも婚約者はいるが、裏では愛人が多くいる。
 オレも兄上のようになりたい。
 
「兄上みたいに上手くいきません」
「無差別に愛想を振りまくからだ。いいか。しばらくは女に手を出すなよ」
「承知しました」

 今、証拠を掴まれてアルミラに婚約破棄されたら困る。
 お祖母様はオレには甘いが、切り捨てる時は容赦なく切り捨ててくるだろう。

 絶対に馬鹿な真似はしない。

 そう思っていたのに、国境警備隊に新たにやって来た、シャルロットという女性に、オレは興味を持ってしまうのだった。
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