【完結】都合のいい女ではありませんので

風見ゆうみ

文字の大きさ
19 / 59

15 シャーロットからの手紙

しおりを挟む
 シャーロット様が働き始めた2日後に速達で手紙が届いた。

 まずは定型文の挨拶と、職場での話が書かれていた。

 イボンヌさんにメイクをしてもらい、髪型なども変えて出勤すると、シャーロット様のことを知っている人とすれ違っても全く気付かれないとのことだった。

 いつも俯いて顔を隠していたことが、今回は良い結果に出たらしい。
 声についても、普段はあまり発してなかったので知られていないとも書かれていた。

 驚いたことに、オズックはシャーロット様に近づいただけでなく、彼女を気に入ったようだった。

 これについてはイボンヌさんがオズック好みの化粧にしたからだ。
 イボンヌさんには色々なタイプのお客様がいたから、相手の好みを把握して、その都度メイクの仕方を変えていた。

『どうせならオズックをオトしてフッてやれば良くないですか』

 3人で集まったあの日、イボンヌさんは面白がってわたしに言ってきた。

『気に入られたら婚約破棄なんて余計にしづらくなるわ』と応えたら、驚くことにそれを聞いていたシャーロット様が立候補した。

 こんなことを言うと失礼かもしれないけれど、シャーロット様がまたオズックにのめり込んでしまわないか心配だった。
 だから、リアド辺境伯に相談したところ、こんな目に遭って、それでもまた好きだと言い出すのなら、辺境伯家から除籍される覚悟でいるようにとシャーロット様に伝えていた。

 そして、シャーロット様もそのことに納得している。
 イボンヌさんがリアド辺境伯邸に住んで見張ってくれると言っていたから、おかしなことがあれば連絡が来るので、そんなことになる前にわたしが何とかするつもりでいる。
 問題は、イボンヌさんは文字が読めても書くのが苦手だった。
 だから、きっと手紙はシャーロット様に書いてもらうと思われる。

 シャーロット様にしてみれば、自分のことを客観的に見た意見を自分で文字にしなければならないから苦痛でしょうね。

 イボンヌさんがわざとそうするように仕向けている可能性もある。

 イボンヌさんは長女で下に弟妹が4人もいるらしい。
 だから、お金が必要だと言っていた。
 自分だけのために働いているわけじゃないとわかってからは、彼女への見方が変わってしまったのは、わたしが単純だからかしら。

 騙されやすいと言われているのだから気を引き締めないといけない。
 でも、今のところ調べた結果、彼女の言う通りの事実が確認できている。

 気になるのがオズックの家族の動きだった。

 セルロッテ様が婚約の解消を認めたことは、エルモード伯爵家にしてみれば誤算だったらしい。

 オズックにはわたしの機嫌を取るように命令していると聞いた。
 だけど、当の本人は焦りはなく、自分が婚約破棄を認めなければなんとかなると思っている。

 このことを教えてくれたのはセルロッテ様なのだから何とも言えない。

 彼女なりに孫を助けようとしているのかもしれない。
 でも、肝心のオズックはセルロッテ様の厚意を無下にする行動を取っていた。

 シャーロット様からの手紙に本題として書かれていたのは、オズックから食事に誘われたということだった。

 日時、場所が書かれていたので、この日時にその場に乗り込むために仕事の調整をすることにした。
 
 そうだわ。
 その前にセルロッテ様にお手紙を書かなければいけない。

 一緒に来ていただいて自分の目で確かめていただきましょう。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私を愛すると言った婚約者は、私の全てを奪えると思い込んでいる

迷い人
恋愛
 お爺様は何時も私に言っていた。 「女侯爵としての人生は大変なものだ。 だから愛する人と人生を共にしなさい」  そう語っていた祖父が亡くなって半年が経過した頃……。  祖父が定めた婚約者だと言う男がやってきた。  シラキス公爵家の三男カール。  外交官としての実績も積み、背も高く、細身の男性。  シラキス公爵家を守護する神により、社交性の加護を与えられている。  そんなカールとの婚約は、渡りに船……と言う者は多いだろう。  でも、私に愛を語る彼は私を知らない。  でも、彼を拒絶する私は彼を知っている。  だからその婚約を受け入れるつもりはなかった。  なのに気が付けば、婚約を??  婚約者なのだからと屋敷に入り込み。  婚約者なのだからと、恩人(隣国の姫)を連れ込む。  そして……私を脅した。  私の全てを奪えると思い込んでいるなんて甘いのよ!!

私を裏切った運命の婚約者、戻って来いと言われても戻りません

迷い人
恋愛
竜と言う偉大な血が民に流れる国アクロマティリ。 偉大で狂暴で凶悪で、その身に膨大なマナを持つ民。 そんな彼等は世界の礎である世界樹を枯らした。 私は、世界樹を復活させるために……愛の無い夫婦の間に生まれた子。 それでも、家族は、母が父を呪いで縛り奪ったにも拘らず愛してくれた。 父     ジェフリー 義母    ニーヴィ 腹違いの姉 ヴィヴィアン 婚約者   ヨハン 恨むことなく愛を与えてくれた大切な家族。 家族の愛を信じていた。 家族の愛を疑った事は無かった。 そして国を裏切るか? 家族を裏切るか? 選択が求められる。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

妹は謝らない

青葉めいこ
恋愛
物心つく頃から、わたくし、ウィスタリア・アーテル公爵令嬢の物を奪ってきた双子の妹エレクトラは、当然のように、わたくしの婚約者である第二王子さえも奪い取った。 手に入れた途端、興味を失くして放り出すのはいつもの事だが、妹の態度に怒った第二王子は口論の末、妹の首を絞めた。 気絶し、目覚めた妹は、今までの妹とは真逆な人間になっていた。 「彼女」曰く、自分は妹の前世の人格だというのだ。 わたくしが恋する義兄シオンにも前世の記憶があり、「彼女」とシオンは前世で因縁があるようで――。 「彼女」と会った時、シオンは、どうなるのだろう? 小説家になろうにも投稿しています。

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?

よどら文鳥
恋愛
 デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。  予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。 「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」 「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」  シェリルは何も事情を聞かされていなかった。 「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」  どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。 「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」 「はーい」  同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。  シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。  だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。

処理中です...