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26 ある男の計画
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フィリップ様に言われたドリル子爵令嬢は焦った顔をして彼に目を向けた。
店内は静まり返り、店内にいる人たちはわたしたちに注目していたけれど、リアド辺境伯家のメイドや侍女たちが店員や他の人たちに何やら話をして現金を渡していくのが見えた。
急遽、貸し切りにすることを決めたらしい。
代金はこちら持ちで迷惑料も渡している様子だ。
出し替えてくださっている、この分の迷惑料などはドリル子爵家とエルモード伯爵家に求めれば良いのかしら。
「悪いことをしているのは、レイドック侯爵令嬢のほうではないですか! アフック様を自分のものにしたいからって付きまとうだなんて!」
「自分のものにしたくないし、付きまとってもいないわ」
はっきりと答えると、ドリル子爵令嬢は目を大きく見開いて、わたしのほうに顔を向ける。
「どういうことですか」
「そのままの意味よ。わたしは別にアフック様を自分のものにはしたくないの」
「オズック様との婚約が破棄になって、あなたをもらってくれる相手がいないから、アフック様に責任を取らせようとしているのではないのですか?」
「アフック様があなたにそう言ったのかもしれないけれど実際は違うわ。一方的な意見だけ聞いて、自分の思いを口にするのはやめておいたほうが良いわよ。間違っている時が恥ずかしいでしょうから」
苦笑すると、馬鹿にされたと思ったのか、ドリル子爵令嬢は顔を真っ赤にした。
「アフック様はオズック様の責任を取って自分が婚約者になると自ら言ってきているのよ」
わたしの話を聞いた、周りの騎士たちはそれを肯定するかのように首を縦に振る。
彼らもアフック様がそんな話をしていることを聞いているからだ。
「嘘です! アフック様はそんなことを言っておられませんでした!」
「聞きたいのだけれど、今日、わたしたちがここにいることはどうやって知ったの?」
尋ねると、ドリル子爵令嬢はハッとした顔をして答える。
「……アフック様が教えてくださいました」
「あなたが調べてほしいとお願いしたの?」
「……いいえ」
ドリル子爵令嬢はファニほど頭が悪いわけではないらしく、自分が置かれている状況に気が付いたようだった。
彼女の顔が青ざめていく。
自分が嵌められたことに気がついたのでしょう。
「今頃、エルモード卿のところに知らせが入ってるだろうな。その後のことは、どうなるか言わなくてもわかるだろ」
フィリップ様は呆れた顔でドリル子爵令嬢に言った。
呆然とした表情で彼女は呟く。
「では……、私は婚約を破棄されるということですか」
「そうなる原因をあなたが自分で作ったことになるわね」
「そんな……」
わたしが応えると、ドリル子爵令嬢は両手で顔を覆って泣き始める。
「どうされます? 聞かなかったことにします? 騙された子もどうかと思いますけど、相手が嫌な奴じゃないですか」
イボンヌさんが眉根を寄せて聞いてきた。
「そうね。アフック様の思い通りなるのも癪に障るわね」
ドリル子爵令嬢のやったことを許すわけにはいかないけれど、これを理由に婚約の破棄をされたら余計に面倒なことになりそうだわ。
その時、締め切っていた店の扉が叩かれる音がした。
店長らしき人が扉を開けて、今日は貸し切りだと伝えた。
すると、相手は答える。
「婚約者がご迷惑をおかけしていると聞きましたので、中に入らせていただけませんか」
アフック様の声に似ているような気がした。
でも、確信は持てない、と思ったけれど ドリル子爵令嬢の泣き声が大きくなったので間違いなさそうだ。
椅子が引かれる音がして、そちらに目を向けるとフィリップ様が立ち上がっていた。
「時間稼ぎくらいはする。それまでにどう対処するか決めてくれ」
わたしたちの国では辺境伯家と侯爵家の地位はそう変わらない。
だから、フィリップ様はわたしにそう言うと、出入り口のほうに向かっていく。
「ありがとうございます」
フィリップ様に一声かけると、ドリル子爵令嬢が謝ってくる。
「申し訳ございませんでした」
「あなたのやったことは良くないわ。だけど、あなたが間違っていることはわかったでしょう。このタイミングでアフック様が来るなんておかしいわよね」
わたしは苦笑してから、今回の件はアフック様やエルモード家には何もなかったことにしようと考えた。
※
次の話はアフック視点です。
店内は静まり返り、店内にいる人たちはわたしたちに注目していたけれど、リアド辺境伯家のメイドや侍女たちが店員や他の人たちに何やら話をして現金を渡していくのが見えた。
急遽、貸し切りにすることを決めたらしい。
代金はこちら持ちで迷惑料も渡している様子だ。
出し替えてくださっている、この分の迷惑料などはドリル子爵家とエルモード伯爵家に求めれば良いのかしら。
「悪いことをしているのは、レイドック侯爵令嬢のほうではないですか! アフック様を自分のものにしたいからって付きまとうだなんて!」
「自分のものにしたくないし、付きまとってもいないわ」
はっきりと答えると、ドリル子爵令嬢は目を大きく見開いて、わたしのほうに顔を向ける。
「どういうことですか」
「そのままの意味よ。わたしは別にアフック様を自分のものにはしたくないの」
「オズック様との婚約が破棄になって、あなたをもらってくれる相手がいないから、アフック様に責任を取らせようとしているのではないのですか?」
「アフック様があなたにそう言ったのかもしれないけれど実際は違うわ。一方的な意見だけ聞いて、自分の思いを口にするのはやめておいたほうが良いわよ。間違っている時が恥ずかしいでしょうから」
苦笑すると、馬鹿にされたと思ったのか、ドリル子爵令嬢は顔を真っ赤にした。
「アフック様はオズック様の責任を取って自分が婚約者になると自ら言ってきているのよ」
わたしの話を聞いた、周りの騎士たちはそれを肯定するかのように首を縦に振る。
彼らもアフック様がそんな話をしていることを聞いているからだ。
「嘘です! アフック様はそんなことを言っておられませんでした!」
「聞きたいのだけれど、今日、わたしたちがここにいることはどうやって知ったの?」
尋ねると、ドリル子爵令嬢はハッとした顔をして答える。
「……アフック様が教えてくださいました」
「あなたが調べてほしいとお願いしたの?」
「……いいえ」
ドリル子爵令嬢はファニほど頭が悪いわけではないらしく、自分が置かれている状況に気が付いたようだった。
彼女の顔が青ざめていく。
自分が嵌められたことに気がついたのでしょう。
「今頃、エルモード卿のところに知らせが入ってるだろうな。その後のことは、どうなるか言わなくてもわかるだろ」
フィリップ様は呆れた顔でドリル子爵令嬢に言った。
呆然とした表情で彼女は呟く。
「では……、私は婚約を破棄されるということですか」
「そうなる原因をあなたが自分で作ったことになるわね」
「そんな……」
わたしが応えると、ドリル子爵令嬢は両手で顔を覆って泣き始める。
「どうされます? 聞かなかったことにします? 騙された子もどうかと思いますけど、相手が嫌な奴じゃないですか」
イボンヌさんが眉根を寄せて聞いてきた。
「そうね。アフック様の思い通りなるのも癪に障るわね」
ドリル子爵令嬢のやったことを許すわけにはいかないけれど、これを理由に婚約の破棄をされたら余計に面倒なことになりそうだわ。
その時、締め切っていた店の扉が叩かれる音がした。
店長らしき人が扉を開けて、今日は貸し切りだと伝えた。
すると、相手は答える。
「婚約者がご迷惑をおかけしていると聞きましたので、中に入らせていただけませんか」
アフック様の声に似ているような気がした。
でも、確信は持てない、と思ったけれど ドリル子爵令嬢の泣き声が大きくなったので間違いなさそうだ。
椅子が引かれる音がして、そちらに目を向けるとフィリップ様が立ち上がっていた。
「時間稼ぎくらいはする。それまでにどう対処するか決めてくれ」
わたしたちの国では辺境伯家と侯爵家の地位はそう変わらない。
だから、フィリップ様はわたしにそう言うと、出入り口のほうに向かっていく。
「ありがとうございます」
フィリップ様に一声かけると、ドリル子爵令嬢が謝ってくる。
「申し訳ございませんでした」
「あなたのやったことは良くないわ。だけど、あなたが間違っていることはわかったでしょう。このタイミングでアフック様が来るなんておかしいわよね」
わたしは苦笑してから、今回の件はアフック様やエルモード家には何もなかったことにしようと考えた。
※
次の話はアフック視点です。
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