【完結】都合のいい女ではありませんので

風見ゆうみ

文字の大きさ
35 / 59

28 婚約者候補②

しおりを挟む
 アフック様が大人しくなったからか、フィリップ様がわたしに尋ねてくる。

「話は終わったんですか」
「まだですけれど、切りの良いところで来ました。話し出すとしばらくは終わりそうにありませんから」
「楽しんでるなら良かったですよ」

 フィリップ様は口元に笑みを浮かべたあと、アフック様に顔を向ける。

「楽しくやってるらしいから帰ったらどうだ」
「それを言い出したら、あなただって帰ったらどうなんですか」
「俺の場合は妹の付添いなんだ」

 フィリップ様が答えた時、わたしは手を挙げる。

「そのことなんですけれど、フィリップ様、先程、シャーロット様にお聞きしたのですが、今日はわたしたちのお見合いらしいです」
「……お見合い?」
「ええ」
「お兄様、お父様からは了承を得ていますわ。アルミラ様とお兄様次第だとおっしゃっておられました」

 シャーロット様が後ろから現れて、フィリップ様に話しかけた。

「俺なんて迷惑だろ」
「アルミラ様に判断していただこうと思ったんです。それに」

 シャーロット様はアフック様を見て言葉を止めた。

 オズック様よりも自分の兄のほうが良いと言いたいのでしょうけれど、失礼に当たると思って口に出せないみたいだった。

「オズック様よりもフィリップ様のほうが素敵ですものね」

 わたしが代わりに言うと、アフック様は苦虫を噛み潰したような顔になった。

 オズック様が悪く言われるのは嫌みたいね。
 そして、フィリップ様が何か言う前に、アフック様は話し始める。

「何を言っているんですか。彼は乱暴者で有名なんですよ。先日のレストランの件でも、オズックの足を引っ掛けたのは彼です!」

 オズックが女性に向かっていこうとした時に、誰かが足を引っ掛けたことは知っている。
 あの時、派手にオズックがこけたものだから、そちらに気を取られて誰が引っ掛けたかを確認はしていなかった。

「フィリップ様だったんですね」
「……余計なことをして悪かった」
「いいえ。ありがとうございました」

 首を横に振ると、フィリップ様だけじゃなく、アフック様も驚いた顔になった。

 そして、アフック様は尋ねてくる。

「人の足を引っ掛ける男にお礼を言う必要はありますか?」
「理由がありましたでしょう。とっさに足を引っ掛けてもらわなければ、女性が危ない目に遭うところでした」
「他にやり方があるでしょう!」
「そうですわね。でも、おかげでわたしはオズック様との婚約破棄まで持っていけましたから」

 微笑んで答えると、アフック様もなぜかにこりと微笑んだ。

「アルミラ嬢、そういうことですか」
「どういうことでしょう」
「あなたはフィリップ様に脅されているのですね」
「意味がわかりません」

 この人は自分がどうして選ばれないのか、本当にわかっていないのね。

 どうしたら、ここまで自分に対してポジティブなれるのかがわからないわ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私を愛すると言った婚約者は、私の全てを奪えると思い込んでいる

迷い人
恋愛
 お爺様は何時も私に言っていた。 「女侯爵としての人生は大変なものだ。 だから愛する人と人生を共にしなさい」  そう語っていた祖父が亡くなって半年が経過した頃……。  祖父が定めた婚約者だと言う男がやってきた。  シラキス公爵家の三男カール。  外交官としての実績も積み、背も高く、細身の男性。  シラキス公爵家を守護する神により、社交性の加護を与えられている。  そんなカールとの婚約は、渡りに船……と言う者は多いだろう。  でも、私に愛を語る彼は私を知らない。  でも、彼を拒絶する私は彼を知っている。  だからその婚約を受け入れるつもりはなかった。  なのに気が付けば、婚約を??  婚約者なのだからと屋敷に入り込み。  婚約者なのだからと、恩人(隣国の姫)を連れ込む。  そして……私を脅した。  私の全てを奪えると思い込んでいるなんて甘いのよ!!

私を裏切った運命の婚約者、戻って来いと言われても戻りません

迷い人
恋愛
竜と言う偉大な血が民に流れる国アクロマティリ。 偉大で狂暴で凶悪で、その身に膨大なマナを持つ民。 そんな彼等は世界の礎である世界樹を枯らした。 私は、世界樹を復活させるために……愛の無い夫婦の間に生まれた子。 それでも、家族は、母が父を呪いで縛り奪ったにも拘らず愛してくれた。 父     ジェフリー 義母    ニーヴィ 腹違いの姉 ヴィヴィアン 婚約者   ヨハン 恨むことなく愛を与えてくれた大切な家族。 家族の愛を信じていた。 家族の愛を疑った事は無かった。 そして国を裏切るか? 家族を裏切るか? 選択が求められる。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

妹は謝らない

青葉めいこ
恋愛
物心つく頃から、わたくし、ウィスタリア・アーテル公爵令嬢の物を奪ってきた双子の妹エレクトラは、当然のように、わたくしの婚約者である第二王子さえも奪い取った。 手に入れた途端、興味を失くして放り出すのはいつもの事だが、妹の態度に怒った第二王子は口論の末、妹の首を絞めた。 気絶し、目覚めた妹は、今までの妹とは真逆な人間になっていた。 「彼女」曰く、自分は妹の前世の人格だというのだ。 わたくしが恋する義兄シオンにも前世の記憶があり、「彼女」とシオンは前世で因縁があるようで――。 「彼女」と会った時、シオンは、どうなるのだろう? 小説家になろうにも投稿しています。

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?

よどら文鳥
恋愛
 デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。  予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。 「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」 「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」  シェリルは何も事情を聞かされていなかった。 「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」  どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。 「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」 「はーい」  同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。  シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。  だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。

処理中です...