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29 婚約者候補③
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「どういうことだ?」
フィリップ様が聞き返してやっと、アフック様から答えが返ってくる。
「そのままの意味ですよ。自分で言うのもなんですが、僕と付き合いたがっている女性は数多くいます。それなのに、アルミラ嬢が頑なに僕を嫌がる理由がわからなかったんですよ」
「自分を裏切った男性のお兄様と婚約したいなんて、普通は思わないものでしょう」
「でも、相手は僕ですよ」
アフック様は自分にかなりの自信があるようだった。
実際、彼の顔は整っているし、その見た目に虜になる女性が多いのも確かだ。
そして、わたしは彼の弟のオズックが好きだった。
だから、顔だけでいえばアフック様は好みのタイプではある。
でも、何を重視するかは人によって違う。
顔が良ければどんな性格でも許せる人もいれば、性格が良くなければ嫌だと言う人もいる。
わたしの場合は性格が云々ももちろんあるけれど、彼を断る理由は他の人とは少し違っている。
「アフック様の容姿が整っておられることは認めます。ですが、だからこそ嫌なのです」
「だからこそ、というのは?」
「アフック様はオズック様と似ているからです。浮気していた相手と似ている人と結婚だなんてしたら、毎日、そのことを思い出すかもしれません。そんなことは時間の無駄ですわ」
「オズックのことはお詫びいたします。だからこそ、僕はあなたを助けたい」
「そう思うなら近寄らないでください」
わたしが睨みつけても、アフック様は怯む様子はなかった。
すると、フィリップ様が口を開く。
「とにかく帰れよ。そんなにも中に入りたいなら、あと数時間後に来たらどうだ? 店に話はつけといてやる」
「数時間後に来て何があると言うのです?」
「自分の婚約者を迎えに来てやれよ」
「で、ですが彼女は!」
「とても可愛らしい方ですわね。大事にしてあげてくださいませ」
何か訴えてこようとしたアフック様の言葉を遮って言ったあと、フィリップ様に顔を向ける。
「少し、お話をさせていただいてもよろしいでしょうか」
「かまわないですが、俺と話をしても面白くないですよ」
「大丈夫ですわ。面白くないと感じましたら、わたしがひたすらお話するだけですから」
微笑んで見せると、フィリップ様は苦笑する。
「面白くないという言葉は否定しないんですか」
「まだお話をしていませんもの。面白いか面白くないかは、その後にわかってくるでしょう」
フィリップ様を捕まえることができたら、さすがのアフック様もわたしの婚約者になることは諦めざるを得ないはずだわ。
フィリップ様には申し訳ないけれど、事情を話して協力を仰いでみましょう。
「アルミラ嬢!」
フィリップ様とシャーロット様と一緒に店の中に戻ろうとすると、アフック様が声をかけてきた。
足を止めて無言で彼を見る。
「僕は純粋にあなたに」
そこで言葉を止めて、アフック様は口を閉ざした。
浮気発言をしてくれるかと思ったけど駄目だったわ。
オズック様ほど馬鹿ではないのかしら。
「あとでドリル子爵令嬢を迎えに来ます」
アフック様は悔しそうな顔をして、わたしたちに背を向けたのだった。
フィリップ様が聞き返してやっと、アフック様から答えが返ってくる。
「そのままの意味ですよ。自分で言うのもなんですが、僕と付き合いたがっている女性は数多くいます。それなのに、アルミラ嬢が頑なに僕を嫌がる理由がわからなかったんですよ」
「自分を裏切った男性のお兄様と婚約したいなんて、普通は思わないものでしょう」
「でも、相手は僕ですよ」
アフック様は自分にかなりの自信があるようだった。
実際、彼の顔は整っているし、その見た目に虜になる女性が多いのも確かだ。
そして、わたしは彼の弟のオズックが好きだった。
だから、顔だけでいえばアフック様は好みのタイプではある。
でも、何を重視するかは人によって違う。
顔が良ければどんな性格でも許せる人もいれば、性格が良くなければ嫌だと言う人もいる。
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「アフック様の容姿が整っておられることは認めます。ですが、だからこそ嫌なのです」
「だからこそ、というのは?」
「アフック様はオズック様と似ているからです。浮気していた相手と似ている人と結婚だなんてしたら、毎日、そのことを思い出すかもしれません。そんなことは時間の無駄ですわ」
「オズックのことはお詫びいたします。だからこそ、僕はあなたを助けたい」
「そう思うなら近寄らないでください」
わたしが睨みつけても、アフック様は怯む様子はなかった。
すると、フィリップ様が口を開く。
「とにかく帰れよ。そんなにも中に入りたいなら、あと数時間後に来たらどうだ? 店に話はつけといてやる」
「数時間後に来て何があると言うのです?」
「自分の婚約者を迎えに来てやれよ」
「で、ですが彼女は!」
「とても可愛らしい方ですわね。大事にしてあげてくださいませ」
何か訴えてこようとしたアフック様の言葉を遮って言ったあと、フィリップ様に顔を向ける。
「少し、お話をさせていただいてもよろしいでしょうか」
「かまわないですが、俺と話をしても面白くないですよ」
「大丈夫ですわ。面白くないと感じましたら、わたしがひたすらお話するだけですから」
微笑んで見せると、フィリップ様は苦笑する。
「面白くないという言葉は否定しないんですか」
「まだお話をしていませんもの。面白いか面白くないかは、その後にわかってくるでしょう」
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