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5 無駄なことをしているだけではないですか
クプンマ王国の王妃陛下が介入してくるとは思っていなかったのは私も同じだった。だが、この反応を期待していたのは確かだ。
今、お肉を食べたらさっきよりも美味しく感じると思うのだけれど、さすがにそういうわけにはいかない。
答えられないワウキロヤ様の代わりに姉が涙目で答える。
「ワウキロヤ様はリファーラが私をいじめていたと知って気にかけてくださったのです。それから、私たちの関係は始まりました。元々は、リファーラが悪いことをしなければ、こんなことにはならなかったのです!」
「だから、彼女が悪いと言いたいわけね?」
「はい」
「あなたの言い分はわかったわ」
王妃陛下はうなずくと、私に目を向ける。
「で、あなたの反論は?」
私は王妃陛下に軽く一礼してから、姉に尋ねた。
「私があなたをいじめていたとおっしゃいましたが、それはいつどこででしょうか」
「とぼけるな!」
あなたに聞いたわけではないんですけど。
会話に入ってきたワウキロヤ様を一瞥すると、彼は気圧されたのか、気まずそうな顔になって口を閉ざした。
姉はプルプル震えながら訴える。
「リファーラ、罪を認めてちょうだい。あなたが私をいじめていたことは、両親も知っていることよ。言い逃れなんてできないわ」
姉は涙を流しながら、両親を探しているのか辺りを見回した。すると、私たちがいる場所から、かなり離れた所にいた両親が姉に加勢した。
「そうだ! リファーラが全て悪い!」
「リファーラ、あなたは日常的にキュージーに嫌がらせをしていましたわよね!」
「……日常的」
私はぽつりと呟いた。
ほとんどの時間を愛しの我が家で一人で暮らしてきた。
それなのに、日常的に姉をいじめていたですって?
ふと、視線を感じて振り返ると、クプンマ王国の両陛下がどこか挑戦的な笑みを浮かべて私を見つめていた。
馬鹿にしているとか、そういう感じではなく、まるで「さあ、どうする?」と問われているように感じた。
「お聞きしますが、私が学園を中退させられた理由は何だったのでしょうか」
「そ、それは、病気になって寝たきりになったからだろう」
なぜ、そんなことを聞いてくるのかと言わんばかりの顔をして父は答えた。
世間にそう伝えていることは知っている。最近になって姿を現し始めたのは、体調が良くなってきたからということにしているが、まだ本調子ではないので、外出ができないという設定だ。
「日常的にとおっしゃいましたが、寝たきりの私がどうやってお姉様をいじめるのです?」
「い、いじめ始めたのは最近の話だ。お前はもう元気になっていただろう?」
「最近と言うのはいつ頃の話でしょうか」
「こ、この一年くらいの話だ。もういいだろう! 罪を認め、この場でキュージーに謝り、婚約の破棄を認めろ!」
激昂した父はそう叫びながら、私に近づいてきた。
この展開は正直に言えば予想していなかった。だが、プリンセスラインのドレスを着るとわかった時、これは使えるかもしれないと思ったことは確かだ。
「私の居場所なんて、あの家にはないでしょう?」
「な、何を言っているんだ?」
「チャルブッレ邸に私の部屋なんてどこにもありません。だって、私はあなたたちと一緒に住んでいませんから。そして、このことについては、どう説明するのですか?」
私は立ち上がると、おろしていた髪を一つにまとめて前に流した。
すると「なんてことなの!」とクプンマ王国の王妃陛下が声を上げた。近くにいた他の国の王妃や貴族の夫人たちが近寄ってきて私の背中の傷を見ると、口々に「酷い」と呟いた。
プリンセスラインのドレスは背中が大きく開いている。そのため、メイドはムチで打たれたを隠すために私の髪を背中に流すだけにしていた。
このことを隠したがっていたくせに、こんなドレスを渡してくるのだからお笑いだ。
「そ、それはお前がキュージーに嫌がらせをするから罰としてやったんだ!」
「嫌がらせとは具体的にどんなことです? まさか、その場にいるだけで嫌がらせなんて馬鹿なことは言いませんわよね?」
「そ、そんなことは」
「あなたたちは必要な時だけ私を呼び出し、その度に私がお姉様をいじめたと言いがかりをつけて鞭打ちをした」
「お前がキュージーを日常的にいじめるから躾をしただけだ!」
父は額から大粒の汗を流しながら訴えた。
躾という言葉で、暴力を肯定させようとするのだから恐ろしい。
「たとえ話になりますが、あなた方の話が本当だとします。私がお姉様を日常的にいじめていたから鞭打ちをしたんだとしても、何回やっても私には効果がなかったのでしょう? 無駄なことをしているだけではないですか。他の方法が思い浮かばなかったのですか?」
「い、一番効果があると思ったんだ!」
「でも、何度も繰り返されたということは効かなかったということですよね。なら、私を部屋から出さないなどの対策を取れば良かったのでは?」
私は一度そこで言葉を区切り、わざとらしく小首を傾げて尋ねる。
「まさか、人を鞭打ちすることで、ストレス発散をしていたなんてことはないですわよね?」
「う……ぐぅ」
父は声にならない声を上げ、悔しそうな顔をして私を見つめた。
今、お肉を食べたらさっきよりも美味しく感じると思うのだけれど、さすがにそういうわけにはいかない。
答えられないワウキロヤ様の代わりに姉が涙目で答える。
「ワウキロヤ様はリファーラが私をいじめていたと知って気にかけてくださったのです。それから、私たちの関係は始まりました。元々は、リファーラが悪いことをしなければ、こんなことにはならなかったのです!」
「だから、彼女が悪いと言いたいわけね?」
「はい」
「あなたの言い分はわかったわ」
王妃陛下はうなずくと、私に目を向ける。
「で、あなたの反論は?」
私は王妃陛下に軽く一礼してから、姉に尋ねた。
「私があなたをいじめていたとおっしゃいましたが、それはいつどこででしょうか」
「とぼけるな!」
あなたに聞いたわけではないんですけど。
会話に入ってきたワウキロヤ様を一瞥すると、彼は気圧されたのか、気まずそうな顔になって口を閉ざした。
姉はプルプル震えながら訴える。
「リファーラ、罪を認めてちょうだい。あなたが私をいじめていたことは、両親も知っていることよ。言い逃れなんてできないわ」
姉は涙を流しながら、両親を探しているのか辺りを見回した。すると、私たちがいる場所から、かなり離れた所にいた両親が姉に加勢した。
「そうだ! リファーラが全て悪い!」
「リファーラ、あなたは日常的にキュージーに嫌がらせをしていましたわよね!」
「……日常的」
私はぽつりと呟いた。
ほとんどの時間を愛しの我が家で一人で暮らしてきた。
それなのに、日常的に姉をいじめていたですって?
ふと、視線を感じて振り返ると、クプンマ王国の両陛下がどこか挑戦的な笑みを浮かべて私を見つめていた。
馬鹿にしているとか、そういう感じではなく、まるで「さあ、どうする?」と問われているように感じた。
「お聞きしますが、私が学園を中退させられた理由は何だったのでしょうか」
「そ、それは、病気になって寝たきりになったからだろう」
なぜ、そんなことを聞いてくるのかと言わんばかりの顔をして父は答えた。
世間にそう伝えていることは知っている。最近になって姿を現し始めたのは、体調が良くなってきたからということにしているが、まだ本調子ではないので、外出ができないという設定だ。
「日常的にとおっしゃいましたが、寝たきりの私がどうやってお姉様をいじめるのです?」
「い、いじめ始めたのは最近の話だ。お前はもう元気になっていただろう?」
「最近と言うのはいつ頃の話でしょうか」
「こ、この一年くらいの話だ。もういいだろう! 罪を認め、この場でキュージーに謝り、婚約の破棄を認めろ!」
激昂した父はそう叫びながら、私に近づいてきた。
この展開は正直に言えば予想していなかった。だが、プリンセスラインのドレスを着るとわかった時、これは使えるかもしれないと思ったことは確かだ。
「私の居場所なんて、あの家にはないでしょう?」
「な、何を言っているんだ?」
「チャルブッレ邸に私の部屋なんてどこにもありません。だって、私はあなたたちと一緒に住んでいませんから。そして、このことについては、どう説明するのですか?」
私は立ち上がると、おろしていた髪を一つにまとめて前に流した。
すると「なんてことなの!」とクプンマ王国の王妃陛下が声を上げた。近くにいた他の国の王妃や貴族の夫人たちが近寄ってきて私の背中の傷を見ると、口々に「酷い」と呟いた。
プリンセスラインのドレスは背中が大きく開いている。そのため、メイドはムチで打たれたを隠すために私の髪を背中に流すだけにしていた。
このことを隠したがっていたくせに、こんなドレスを渡してくるのだからお笑いだ。
「そ、それはお前がキュージーに嫌がらせをするから罰としてやったんだ!」
「嫌がらせとは具体的にどんなことです? まさか、その場にいるだけで嫌がらせなんて馬鹿なことは言いませんわよね?」
「そ、そんなことは」
「あなたたちは必要な時だけ私を呼び出し、その度に私がお姉様をいじめたと言いがかりをつけて鞭打ちをした」
「お前がキュージーを日常的にいじめるから躾をしただけだ!」
父は額から大粒の汗を流しながら訴えた。
躾という言葉で、暴力を肯定させようとするのだから恐ろしい。
「たとえ話になりますが、あなた方の話が本当だとします。私がお姉様を日常的にいじめていたから鞭打ちをしたんだとしても、何回やっても私には効果がなかったのでしょう? 無駄なことをしているだけではないですか。他の方法が思い浮かばなかったのですか?」
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「でも、何度も繰り返されたということは効かなかったということですよね。なら、私を部屋から出さないなどの対策を取れば良かったのでは?」
私は一度そこで言葉を区切り、わざとらしく小首を傾げて尋ねる。
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「う……ぐぅ」
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