あなた方が後悔しても私にはどうでもいいことです

風見ゆうみ

文字の大きさ
8 / 10

7  会えて嬉しいわ

しおりを挟む
「婚約破棄ってどういうことなんだ?」

 リックは一直線に私の所に向かってくると整った顔を歪めて私を見つめた。

 少しだけ顔を上げ、彼を見つめ返して思った。

 こんなに身長差があったかしら。最後に会った時のリックはたしか17歳だったわよね。

 黒色の艶のある髪に晴れ渡った青空のような青い瞳は当たり前だが昔と変わっていない。でも、やっぱり大人びた感じがする。

 そうだわ。私と知り合いだということを隠しておかなくていいのかしら。
 そんな疑問が浮かんだけれど、今更もう遅いわよね。

 私はリックに詳しいことを話す前に、少しの間だけ再会を喜ぶ時間を作ることにした。
 
「久しぶりね、リック。元気にしていた?」
「……久しぶり。俺は元気にしていたよ。リファーラは?」
「元気にしていたわ。あなたがこのパーティーに来ているか不安だったのだけど、来てくれていて良かった。会えて嬉しいわ」
「ああ。俺も嬉しい。今日は本当に来て良かった」

 私の笑顔につられたかのように、リックは表情を緩めた。
 その時、不意に頭をよぎったのは、国王陛下が誰かと似ていると思った時のことだった。

 ちょっと待って。
 クプンマ王国の国王陛下とリックは顔立ちがそっくりだわ。もしかして、リックはフレデリック様の影武者とか?  

 彼からは貴族ではないと聞いているし……って、ちょっと待って。

 ――王族は貴族とは言わないんじゃない?

 もし、彼がクプンマ王国の王太子だとしたら、さっきのような会話をしてしまったら不敬罪に問われてしまうのでは!?

 血の気が引いた時、姉の甘ったるい声が聞こえてきた。

「ちょ、ちょっとリファーラ、その方はどなたなの?」

 姉は私がリックと仲が良さそうにしていることが気に食わないのかと思ったが、顔が蕩けたようになっているので、一目惚れでもしたのかもしれない。

 この方はどなたか?
 なんと答えたらいいのかわからない。ただ、リックと浮気をしていたのではないかと言いがかりをつけられても困る。

「まあ! キュージー様はフレデリック様のことをご存じないのね!」

 私が答える前に口を開いたのは、クルリン王国の王太子殿下の婚約者だ。レモンイエローのドレスがよく似合う、姉とは違い美人タイプの令嬢でとても気が強そうに見える。
 自分の座を奪った相手だと思っているのか、彼女を忌々しげに見つめながら姉は尋ねる。

「あなたはこの方がどなたかご存知なんですか?」
「もちろんですわ。この方はクプンマ王国の王太子、フレデリック殿下です」
 
 公爵令嬢は満面の笑みを浮かべているが、私も姉も全く笑えなかった。

 こ、これは人生終了のお知らせだったのでは?
 死ぬ前にお腹いっぱいお肉を食べておかなくちゃ。あ、あと、デザートは別腹だから、最後に好きなだけ食べたいと言ったら許してくれるかしら。

「そんな! リファーラが王太子殿下と知り合えるわけがないではないですか!」
「ええ。普通はそうでしょう。ですが、リファーラ様は森の中のログハウスに一人で暮らしておられました。クルリン王国とクプンマ王国合同の狩猟で森に入った殿下と、リファ―ラ様がお会いしていたことなど、あなた方は知らないのでしょうね」

 ゆっくりとした足取りでこちらに足を進めながら、イセンさんが言った。

「どういうこと?」
「森の中に一人で暮らしていただと?」

 この話を聞いた人たちから驚きと非難の声が上がり、両親や弟は姉の所に駆け寄ると焦った表情で身を寄せ合った。

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

私は彼に選ばれなかった令嬢。なら、自分の思う通りに生きますわ

みゅー
恋愛
私の名前はアレクサンドラ・デュカス。 婚約者の座は得たのに、愛されたのは別の令嬢。社交界の噂に翻弄され、命の危険にさらされ絶望の淵で私は前世の記憶を思い出した。 これは、誰かに決められた物語。ならば私は、自分の手で運命を変える。 愛も権力も裏切りも、すべて巻き込み、私は私の道を生きてみせる。 毎日20時30分に投稿

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

婚約者を寝取った妹にざまあしてみた

秋津冴
恋愛
 一週間後に挙式を迎えるというある日。  聖女アナベルは夫になる予定の貴族令息レビルの不貞現場を目撃してしまう。  妹のエマとレビルが、一つのベットにいたところを見てしまったのだ。  アナベルはその拳を握りしめた――

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

義理姉がかわいそうと言われましても、私には関係の無い事です

渡辺 佐倉
恋愛
マーガレットは政略で伯爵家に嫁いだ。 愛の無い結婚であったがお互いに尊重し合って結婚生活をおくっていければいいと思っていたが、伯爵である夫はことあるごとに、離婚して実家である伯爵家に帰ってきているマーガレットにとっての義姉達を優先ばかりする。 そんな生活に耐えかねたマーガレットは… 結末は見方によって色々系だと思います。 なろうにも同じものを掲載しています。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

買われた彼を解放しろと言うのなら返品します【完】

綾崎オトイ
恋愛
彼を解放してあげてください!お金で縛り付けるなんて最低です! そう、いきなり目の前の少女に叫ばれたルーナ。 婚約者がこの婚約に不満を感じているのは知っていた。 ルーナにはお金はあるが、婚約者への愛は無い。 その名前だけで黄金と同価値と言われるほどのルーナの家との繋がりを切ってでも愛を選びたいと言うのなら、別に構わなかった。 彼をお金で買ったというのは、まあ事実と言えるだろう。だからルーナは買ってあげた婚約者を返品することにした。 ※勢いだけでざまぁが書きたかっただけの話 ざまぁ要素薄め、恋愛要素も薄め

私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?

榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」 “偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。 地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。 終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。 そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。 けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。 「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」 全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。 すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく―― これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。

処理中です...