あなたの妻にはなりません

風見ゆうみ

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11  激怒

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  日にちが経ち準備が整うと、堂々と人前でオードル様と話すようになっていた。

 でも、そのことを私からわざわざディール様に話をすることはなかった。
 そんなある日のこと、話したいことがあると言われて、ディール様から繁華街のレストランに呼び出された。

「最近、スノン氏とよく会っているみたいだな」

 食事を始めた頃は、当たり障りのない話だった。
 でも、ずっと気になっていたのだろうか、突然、話題を変えてきた。

「どうしてご存知なのですか」

 いくら、婚約者だといっても全てのことを話す必要はない。
 調べないとわからないことなので、不快感を表情に出して聞き返した。

「いや、知り合いから教えてもらったんだ。僕たちは婚約者だろう。それなのに、他の男と会っているから、ちゃんと把握しているのかと言われたんだ」
「そうでしたか。その方は変な誤解をしていらっしゃるようですので、私からお話に伺いますわ。どなたでしょうか」
「そこまでしなくても良い。それよりも、彼とどんな話をしているか気になる。良かったら教えてもらえないか」
「おわかりになりませんか?」
「……どういうことだろうか」

 ディール様は整った顔を歪めて、私を見つめる。

「レイズが殺されたんです。仇討ちをしたいと思ってもおかしくないでしょう」
「でも、犯人はわからないんだろう?」
「ですから、そのことを相談しているのです。犯人がわかればその人にレイズと同じ目にあってもらいたいんです。こんなことを思うことはおかしいことでしょうか」
「おかしいわけではないが……。もう、レイズのことは忘れたほうが」
「忘れないという話は以前にお話しましたわよね?」

 フォークを皿の上に置いて、ディール様を睨みつけるようにして続ける。

「ディール様、もしかして、あなたはレイズを襲った人物に心当たりがあるのではないですか?」
「な、どうして、そんなことを言うんだ!? スノン氏に何か言われたのか!?」

 私と同じく食事の手を止めて、声を荒らげるディール様に苦笑する。

「ディール様はオードル様とお知り合いなのですか」
「い、いや。別に僕は」
「なら、そこまで気にする必要がないのではないでしょうか。それに、仇討ちは家族がやることは認められています。わたしが罪に問われることはありませんのでご心配なく」
「世間体的にも良くないからやめてほしいと言ってるんだ!」

 ディール様はテーブルを強く叩くと、わたしを睨みつける。

「彼とはもう二度と会わないでくれ。いや、会うな」
「会ったらどうなりますか」
「その時は君が馬鹿なことをしないように、結婚を早めて屋敷に閉じ込めるまでだ」
「……承知しました。ですが、そうなった時、わたしと連絡が取れなくなったら、オードル様はどう思うでしょうか。そのことを考えて行動なさったほうがよろしいかと思います」
「……用事を思い出した。悪いが、今日はもう帰らせてもらう」

 ディール様はわたしの返事を待たずに個室から出て行った。

 きっと、ディール様はオードル様に連絡を取るはずだ。

 どんな話かはオードル様が教えてくれるでしょう。
 
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