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13 夫と浮気女の末路 ④
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私が立ち去ろうとした時、タオズクがナターシャに問いかけた。
「ナターシャ、僕と家族、どちらを選んでくれるんだ?」
「……ごめんなさい。タオズク様。私、家族を選びます!」
「なっ!? どうしてだよ!?」
「だって、家族に反対されているし、やっぱり、親友の旦那様を奪うなんていけないことだわ!」
ナターシャは涙を流しながら、タオズクに言った。
「ナターシャ! どうして、僕を裏切るんだ!? せっかく一緒になれるのに! 今まであんなに好きだと言ってくれていたじゃないか!」
「わかって、タオズク様。わたしは家族が大事なの」
そう言うと、ナターシャは私を追いかけてきて、言葉を続ける。
「そして、親友だって大事だわ。ごめんなさい、ソア。本当に悪かったわ。今回の件で目が覚めたの。また、昔のようにあなたと仲良くしたいの。お願い。許してもらえませんか。許してもらえるまで頭を下げ続けるわ」
ナターシャが深々と頭を下げた。そんな彼女の後頭部を見て、きれいなつむじね、と、関係のないことを思う。
それくらい、ナターシャの謝罪に興味がなかった。
「……ソア?」
私が何も言わないからか、ナターシャは頭を下げたままの状態で、不思議そうな声を出した。
「ナターシャ、悪いけど、許すつもりはないわ。あ、頭をあげてもらっていいわよ?」
「い、言われなくてもあげるわよ!」
さっきまでの大人しさはどこへやら。ナターシャは声を荒らげて、顔を上げた。
「ソア、わたしがタオズク様と付き合っていたのは、あなたのためだったの! わかってよ!」
「……何を言ってるの?」
話を聞いてやる必要はないんだけど、何を言い出すのか気になって聞いてみた。
「わたしは、あなたの親友としてタオズク様を試したの!」
「浮気をするような男性かどうか試したと言いたいの?」
「そう。それに、ソアの男性を見る目も確かめたかったの」
「男性を見る目を確かめたかったって、どうして、あなたはそんな上から目線なのよ」
「上からじゃない! あなたの友人だから考えたことよ!」
「ふざけたことを言わないで。それにもう、友人じゃないから、どうこう言われる筋合いもないし、話を聞く必要もないわね」
思ったよりもくだらない話だった。時間を無駄にしてしまったことを後悔して歩き出そうとした時だった。
「待ってよ、ソア!」
「ナターシャ! いい加減にしなさい!」
追いすがってくるナターシャとトールド子爵夫人の声。その後すぐにバチンという音が聞こえた。
「いた……痛い!」
振り返ると、ナターシャが頬を押さえて、トールド子爵夫人を見つめていた。
「ナターシャに酷いことをするな!」
タオズクが間に割って入り、ナターシャを庇いながら、トールド子爵夫妻に叫ぶ。
「ここはもう僕の家なんだ! お前たちは出ていけ!」
「ナターシャ、お前はどうするんだ? 本当に私たちと帰るつもりなのか?」
トールド子爵に尋ねられたナターシャは、少しの沈黙のあとに答える。
「……やっぱり、わたしはここに残ります。タオズク様と一緒になります! 暴力をふるう親なんていりません!」
「……わかった。お前の荷物は近い内に、ここに送ることにする」
トールド子爵は涙を流している夫人を促し、わたしがいる方向に歩いてきた。そんな夫妻にタオズクたちには聞こえないように小声で伝える。
「この家を相続しているのはわたしです。近い内に彼らを追い出しますから、荷物を送るのは少しお待ちください」
夫婦になってから得たものは共有財産だから分けなければならないけれど、相続でもらった財産は別だ。
彼らが仕事をし始めて、エヴァンスの姓から、新しい姓に変更後、辺境伯家の財政状況に気がつくまでは、この家に住まわせてあげようと思う。
さあ、タオズクとナターシャはどんな反応を見せてくれるのかしら。
「ナターシャ、僕と家族、どちらを選んでくれるんだ?」
「……ごめんなさい。タオズク様。私、家族を選びます!」
「なっ!? どうしてだよ!?」
「だって、家族に反対されているし、やっぱり、親友の旦那様を奪うなんていけないことだわ!」
ナターシャは涙を流しながら、タオズクに言った。
「ナターシャ! どうして、僕を裏切るんだ!? せっかく一緒になれるのに! 今まであんなに好きだと言ってくれていたじゃないか!」
「わかって、タオズク様。わたしは家族が大事なの」
そう言うと、ナターシャは私を追いかけてきて、言葉を続ける。
「そして、親友だって大事だわ。ごめんなさい、ソア。本当に悪かったわ。今回の件で目が覚めたの。また、昔のようにあなたと仲良くしたいの。お願い。許してもらえませんか。許してもらえるまで頭を下げ続けるわ」
ナターシャが深々と頭を下げた。そんな彼女の後頭部を見て、きれいなつむじね、と、関係のないことを思う。
それくらい、ナターシャの謝罪に興味がなかった。
「……ソア?」
私が何も言わないからか、ナターシャは頭を下げたままの状態で、不思議そうな声を出した。
「ナターシャ、悪いけど、許すつもりはないわ。あ、頭をあげてもらっていいわよ?」
「い、言われなくてもあげるわよ!」
さっきまでの大人しさはどこへやら。ナターシャは声を荒らげて、顔を上げた。
「ソア、わたしがタオズク様と付き合っていたのは、あなたのためだったの! わかってよ!」
「……何を言ってるの?」
話を聞いてやる必要はないんだけど、何を言い出すのか気になって聞いてみた。
「わたしは、あなたの親友としてタオズク様を試したの!」
「浮気をするような男性かどうか試したと言いたいの?」
「そう。それに、ソアの男性を見る目も確かめたかったの」
「男性を見る目を確かめたかったって、どうして、あなたはそんな上から目線なのよ」
「上からじゃない! あなたの友人だから考えたことよ!」
「ふざけたことを言わないで。それにもう、友人じゃないから、どうこう言われる筋合いもないし、話を聞く必要もないわね」
思ったよりもくだらない話だった。時間を無駄にしてしまったことを後悔して歩き出そうとした時だった。
「待ってよ、ソア!」
「ナターシャ! いい加減にしなさい!」
追いすがってくるナターシャとトールド子爵夫人の声。その後すぐにバチンという音が聞こえた。
「いた……痛い!」
振り返ると、ナターシャが頬を押さえて、トールド子爵夫人を見つめていた。
「ナターシャに酷いことをするな!」
タオズクが間に割って入り、ナターシャを庇いながら、トールド子爵夫妻に叫ぶ。
「ここはもう僕の家なんだ! お前たちは出ていけ!」
「ナターシャ、お前はどうするんだ? 本当に私たちと帰るつもりなのか?」
トールド子爵に尋ねられたナターシャは、少しの沈黙のあとに答える。
「……やっぱり、わたしはここに残ります。タオズク様と一緒になります! 暴力をふるう親なんていりません!」
「……わかった。お前の荷物は近い内に、ここに送ることにする」
トールド子爵は涙を流している夫人を促し、わたしがいる方向に歩いてきた。そんな夫妻にタオズクたちには聞こえないように小声で伝える。
「この家を相続しているのはわたしです。近い内に彼らを追い出しますから、荷物を送るのは少しお待ちください」
夫婦になってから得たものは共有財産だから分けなければならないけれど、相続でもらった財産は別だ。
彼らが仕事をし始めて、エヴァンスの姓から、新しい姓に変更後、辺境伯家の財政状況に気がつくまでは、この家に住まわせてあげようと思う。
さあ、タオズクとナターシャはどんな反応を見せてくれるのかしら。
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