愛しているなら何でもできる? どの口が言うのですか

風見ゆうみ

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6  持つべきものは良き友人

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「久々に手紙をもらって喜んだのに、内容を読んだ時には驚きましたわ! すぐに連絡をしようと思ったのですけれど、家出してしまったのなら、どこに連絡したら良いのかわからないと思って連絡を待つつもりだったんですの」

 ミオ様は水色の腰まであるふわふわの長い髪に同じ色の瞳を持つ、小柄で愛くるしい顔立ちの女性だ。
 腕や足は少し力を入れて握ったら、骨が折れてしまうのではないかと思うくらいに細い。

 これでも体調が良くなったほうで、昔はベッドから下りて歩くことも辛そうだった。
 今はだいぶ元気になられて、毎日は無理だけれど外出できるくらい元気になっている。

「ご心配をおかけてして申し訳ございません」
「あなたが元気でしたらそれで良いですわ。それよりも、一体何があったんですの?」

 向かい側のソファに座っていたミオ様は立ち上がって、私の隣にやって来て座ると小声で尋ねてきた。

「夫や義父母と揉めてしまいました」
「そうなのね。実はここに来ましたのは、リグマ伯爵家のメイドが助けを求めてきたからなんですの。あなたが大変な目に遭っていると聞いて、慌てて来てしまったのですけれど、迷惑じゃなかったかしら」
「迷惑なんかではありません!」

 ミオ様宛の手紙を出してくれたメイドが、わざわざ、ミオ様の元にまた出向いて助けを求めてくれたんだそうだ。
 先にお礼は伝えておいて、落ち着いたら改めてお礼をしようと思い、メイドの名前を心に刻んでおく。

「メイドにも感謝ですし、ミオ様にも今日、ここまで足を運んでいただけて本当に助かりました」

 頭を下げたあと、今までに起きた出来事を簡単に説明すると、ミオ様は怒り始める。

「どういうことですの!? そんなことになるのなら、結婚前に伝えておくべきですわ! そうすれば、そんな方と結婚なんてしなかったでしょう」
「まだ、養子をむかえると言い出すならまだしも、私の妹と関係を結び、妹の夫と私に関係を結べだなんて言ってくるなんて思いもしませんでした」
「また、あなたの妹が絡んでいるのね」

 ミオ様は不満そうに大きく息を吐いた。

 私とフェリックス様が自然消滅する前から、ミシェルはフェリックス様に猛アタックしていた。
 そのことを思い出して言っているのだと思った。

「ミシェルがどうして私にこだわるのかわかりません」
「あなたのお家の事情もあるのでしょうけれど、もしかして、お兄様のことで逆恨みしているのかもしれませんわ」
「どういうことでしょうか」
「あなたが断った代わりに、あなたのご両親はミシェルさんをどうかと言ってきていたの」
「……お待ちください。私が断ったというのは一体どういうことでしょう」

 眉根を寄せて尋ねると、ミオ様は悲しそうな顔になって答えてくれる。

「やっぱりそうなのね。おかしいと思っていたんですのよ。あの時から、あなたの私宛の手紙の内容が私が送った手紙と噛み合わなくなっていたから」

 そう言ってから、ミオ様が話してくれた内容を要約すると、ミオ様、そしてフェリックス様から私宛に送られた手紙や、私がミオ様たちに送った手紙は何者かによって存在しないものになっていた可能性があるということだった。

「余計なお世話かもしれないけれど、お兄様からの婚約の申込みをどうして断ったのか知りたいと書いたんですの。でも、その返事は一向に帰ってこなくて、しばらくしてあなたから届いた手紙には私の体調を心配する内容しかなくて、私からの質問には答えてくれていなかったんですの。その時は、答えたくないのだと思って深く考えないようにしたのですけれど……」

 ミオ様は太ももの上に両手を置いて、その手を見つめながら話を続ける。

「お兄様もあなた宛に手紙を送っていたし、返事がこないからあなたに会いにも行ったらしいわ。だけど、あなたが会うことを嫌がっていると言われたと聞いています」
「……それは誰にでしょうか」
「ミシェルさんや、あなたのご両親からだと聞いていますわ」
「私は何も聞いていませんでした。フェリックス様からもミオ様も連絡が来なかったので、自分から何度か手紙を送りましたが、その手紙も両親が使用人に命令して、何もなかったようにしていたのでしょうね」

 封筒を買ってきてくれていたのは使用人だから、一度、封を開けて中身を確認して、送っても良い内容であれば、同じ封筒に入れ直して封蝋を押して閉じればいいだけ。
 
 フェリックス様からの私宛の手紙は全て、両親に破棄されていた可能性が高い。

 あの時期は流行病が流行しているから家にいろと言われて、一歩も家から出してもらえなかった。

 私が二人に会いに行かないようにしたのね。

「お兄様は」

 ミオ様は何か言おうとして口を閉ざした。
 口をへの字に曲げて、何かを我慢しているように見えたので尋ねる。

「何かありましたか?」
「……いいえ。とにかく、私の家に来てくださいな。あなたの夫には、久しぶりに会ってお話を始めたら話が尽きないので、我が家に何日か滞在してもらうと言いますわ」
「とても有り難い申し出ではあるのですが、ご迷惑ではないですか?」
「迷惑だなんてことはありません。友人なのに今までシェリルの苦しみに気付けなくてごめんなさい。今からはできる限りのことはさせてもらいますわ。何とか離婚に持っていきましょう」

 ミオ様は私の両手を握って言った。

 
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