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20 弟妹との会話
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ソナルナ伯爵は夫人を見捨てたようだったので、馬車などのキャンセルはしなくて済んだ。
そんなことをしたら、今後、あの二人は夫婦生活を続けていけるのかしら。
わたしがそんな心配をする必要もないのかもね。
伯爵はわたしの味方のふりをして、自分だけ楽に生きようとしているのかもしれない。
夫人のほうはロザンナとロブに、まだ愛情があれば許せると思えた。
でも、二人から話を聞くと、そんな風には思えなかった。
今までの話を聞かせてほしいとお願いすると、二人は顔を見合わせてから、まずはロザンナが話し始めてくれた。
「ちょっと前に、いきなり、使用人や料理人が辞めていっちゃったんです。だから、食べるものを作ってくれたり、家のことをする人がいなくなりました。だから、私が洗濯や掃除をして、食事は、お父様たちが作ったものを食べていました」
「家族で食事をしに出かけたりしなかったの?」
「お父様とお母様から、屋敷の外に出ちゃいけないって言われたんです。誘拐されるかもしれないからって」
「どうして、そんなことを言うのか、理由は教えてくれた?」
ロザンナは年の割に、とてもしっかりしている子で、わたしの質問に淀みなく答える。
「理由を聞いても教えてもらえませんでした。今、思うと、お姉様がとても有名な方だから、誘拐されてしまうかもしれないという意味だったのかもしれません」
「そうね。絶対とは言えないから、今はそういうことにしておきましょうか。で、学園にも通っていなかったの?」
「はい」
ロザンナは隣で小さく切ってもらったドーナツをフォークに刺して、一心不乱になって食べているロブを見た。
よく見てみると、二人の着ている服は薄汚れているし、とても痩せていた。
わたしが仕送りをやめたのは、そんなに前じゃない。
だから、ここまで痩せ細るのは異常な気がした。
「家庭教師はいたの? あと、今まで、食べ物はお腹いっぱい食べられていた?」
「いいえ。でも、お父様とお母様は食べていなかったから」
ロザンナの言葉を聞いて、大きなため息を吐いてしまいそうになった。
食べていないのではなく、家で食べていないだけだ。
あの二人のことだから、自分たちは外食をしてお腹いっぱいになって、二人の前では食べなかっただけだわ。
本当に親としてどうなのよ。
外食するのはかまわないけど、それならそれで、子供たちがお腹いっぱい食べれるくらいのものを買って帰ってあげるべきだわ。
伯爵夫人は、このことを知られたくないから、ロザンナたちを返してほしかったのね。
行儀が悪いとわかっていながらも、ダイニングテーブルに両肘をついて頭を抱えていると「あの」とロブの声が聞こえた。
顔を上げてロブを見ると、大きな目でわたしを見つめて問いかけてくる。
「本当に、僕のおねえさまなんですか?」
「そうよ。今まで会ったことがなかったのは、お父様とお母様が会わせてくれなかったの。二人は色々と忙しいから、王都に来る暇がないと言っていたのよ」
「僕たちはずっと家にいたよ」
「わたしが暇を作って会いに行くべきだったのよね。本当にごめんなさい」
頭を下げると、二人は何度も首と手を横に振る。
「謝ってもらわなくても大丈夫です」
「うん。今、美味しいものを食べさせてもらってるからいいよ」
ロザンナは微笑み、ロブは無邪気な笑顔を見せてくれた。
伯爵夫人は捕まっているだろうから急がなくても良いけど、ソナルナ伯爵はきっと、連絡を待っているわよね。
聞かなければならないことを聞かなくちゃ。
「二人には正直に答えてほしいんだけど」
「何でしょう」
「なに?」
「私と住むか、お父様とお母様と住むか、あなたたちはどっちが良い?」
無理やり引き離すことはできるけれど、出来れば、ロザンナとロブの意思を優先したかった。
そんなことをしたら、今後、あの二人は夫婦生活を続けていけるのかしら。
わたしがそんな心配をする必要もないのかもね。
伯爵はわたしの味方のふりをして、自分だけ楽に生きようとしているのかもしれない。
夫人のほうはロザンナとロブに、まだ愛情があれば許せると思えた。
でも、二人から話を聞くと、そんな風には思えなかった。
今までの話を聞かせてほしいとお願いすると、二人は顔を見合わせてから、まずはロザンナが話し始めてくれた。
「ちょっと前に、いきなり、使用人や料理人が辞めていっちゃったんです。だから、食べるものを作ってくれたり、家のことをする人がいなくなりました。だから、私が洗濯や掃除をして、食事は、お父様たちが作ったものを食べていました」
「家族で食事をしに出かけたりしなかったの?」
「お父様とお母様から、屋敷の外に出ちゃいけないって言われたんです。誘拐されるかもしれないからって」
「どうして、そんなことを言うのか、理由は教えてくれた?」
ロザンナは年の割に、とてもしっかりしている子で、わたしの質問に淀みなく答える。
「理由を聞いても教えてもらえませんでした。今、思うと、お姉様がとても有名な方だから、誘拐されてしまうかもしれないという意味だったのかもしれません」
「そうね。絶対とは言えないから、今はそういうことにしておきましょうか。で、学園にも通っていなかったの?」
「はい」
ロザンナは隣で小さく切ってもらったドーナツをフォークに刺して、一心不乱になって食べているロブを見た。
よく見てみると、二人の着ている服は薄汚れているし、とても痩せていた。
わたしが仕送りをやめたのは、そんなに前じゃない。
だから、ここまで痩せ細るのは異常な気がした。
「家庭教師はいたの? あと、今まで、食べ物はお腹いっぱい食べられていた?」
「いいえ。でも、お父様とお母様は食べていなかったから」
ロザンナの言葉を聞いて、大きなため息を吐いてしまいそうになった。
食べていないのではなく、家で食べていないだけだ。
あの二人のことだから、自分たちは外食をしてお腹いっぱいになって、二人の前では食べなかっただけだわ。
本当に親としてどうなのよ。
外食するのはかまわないけど、それならそれで、子供たちがお腹いっぱい食べれるくらいのものを買って帰ってあげるべきだわ。
伯爵夫人は、このことを知られたくないから、ロザンナたちを返してほしかったのね。
行儀が悪いとわかっていながらも、ダイニングテーブルに両肘をついて頭を抱えていると「あの」とロブの声が聞こえた。
顔を上げてロブを見ると、大きな目でわたしを見つめて問いかけてくる。
「本当に、僕のおねえさまなんですか?」
「そうよ。今まで会ったことがなかったのは、お父様とお母様が会わせてくれなかったの。二人は色々と忙しいから、王都に来る暇がないと言っていたのよ」
「僕たちはずっと家にいたよ」
「わたしが暇を作って会いに行くべきだったのよね。本当にごめんなさい」
頭を下げると、二人は何度も首と手を横に振る。
「謝ってもらわなくても大丈夫です」
「うん。今、美味しいものを食べさせてもらってるからいいよ」
ロザンナは微笑み、ロブは無邪気な笑顔を見せてくれた。
伯爵夫人は捕まっているだろうから急がなくても良いけど、ソナルナ伯爵はきっと、連絡を待っているわよね。
聞かなければならないことを聞かなくちゃ。
「二人には正直に答えてほしいんだけど」
「何でしょう」
「なに?」
「私と住むか、お父様とお母様と住むか、あなたたちはどっちが良い?」
無理やり引き離すことはできるけれど、出来れば、ロザンナとロブの意思を優先したかった。
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