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33 それぞれの思いや考え①
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「どうかしたのか?」
テナミ様を見つめていたわたしに、アクス様が尋ねてきた。
「テナミ殿下を見てください」
王族を指差すことはできないので、顔を向けたまま言うと、アクス様が言う。
「顔色が悪そうだな。もしかして、テナミ殿下は雷が苦手なのか?」
「ええ。雷が落ちると、おヘソを取りに魔物のようなものがやって来ると信じているんです」
「だから、お腹を押さえているんだな?」
「はい。おヘソを隠しているんだと思います」
周りがざわつく声で我に返ったテナミ様は、わたしに向かって言う。
「きょ、今日のところはここまでにしておいてあげよう。用事を思い出したので部屋に戻る。また、連絡するから話をしよう」
「わたしは話すことなどないのですが」
「俺にはあるんだよ。だから改めて、俺と話をし」
テナミ様が話をしている途中で、何の前触れもなく、また雷が落ちた。
「ひぃっ!」
テナミ様は情けない声を上げて床に座り込んでしまった。
大人になっても雷が怖い人はいるし、これについてはしょうがないとは思う。
ただ、外を見に行った人の話だと、空は満天の星空で雷雲らしきものなんて見当たらないみたいだった。
ということは、原因はテナミ様の発言だと思われる。
「テナミ様、神様はわたしとあなたが二人で話す必要はないと言っておられるのだと思います」
「そ、そんなことはな」
また、光と共に雷が落ちる。
その度にわたしも驚いて体を震わせてしまうから、アクス様の腕の力が少しずつ強くなる。
「テナミ様、もうわたしのことは諦めてください。何があっても、わたしがあなたを選ぶことはありません」
「そんな! 少しくらいチャンスをくれたって良いじゃないか!」
「駄目ですよ、兄上!」
お腹をおさえたまま、涙目で訴えてきていたテナミ様を押し退けて、ハリー様が言う。
「雷くらいで怖がっているような人が国王陛下になるだなんてありえないよね! リアンナの言っていることは正しい!」
「誰にだって怖いものはある! 雷が怖いことの何が悪いんだ!」
「国民の前でそんな醜態をさらすつもりなのですか!?」
「これを醜態とは言わない!」
突如として始まった兄弟喧嘩に、わたしたちを含め、周りは呆れてものも言えないといった感じだった。
「怪我人がいないか確認しようか。驚いて倒れたり、怪我をしたりしている人がいないとも限らない」
「そうですわね」
アクス様の言葉に頷いた時、会場の奥から陛下の叫ぶ声が聞こえてきた。
「いいかげんにしろ! テナミ! ハリー! お前たちは何を考えているんだ!」
「ち、父上! ハリーが雷を怖がる私を馬鹿にするんです!」
「馬鹿にしたくもなるでしょう! お腹をおさえるなんて子供のやることですよ!」
「テナミの肩を持つわけではないが、怖いものは人によって違うんだ! お前の怖いものを今ここでバラされたくないのであれば黙っていろ!」
国王陛下に怒られたハリー様は肩を落として俯いた。
結局、落雷騒ぎでパーティーどころではなくなり、早めの解散となった。
テナミ様は何か言いたげにわたしを見つめてきていたけれど、声をかければ雷が落ちると思うのか口は開かなかった。
だから、わたしのほうから話しかける。
「テナミ殿下。わたしはあなたの愛は必要ありません。わたしのことは忘れて、新たな道を歩んでくださいませ」
「どうしても復縁を拒むのか? 雷が怖い以外は、俺は優しくて良い人間だぞ?」
「雷が怖いからって悪い人間ではないでしょう? テナミ殿下はわたしの人生のパートナーではないと確信しております。それは雷を怖がっているからという理由ではございません」
そこまで言ってから、多くの視線がわたしたちに集まっていることに気が付く。
場所を変えたほうが良さそうね。
「二人きりにはなれませんが、場所を変えてお話をしましょう」
「俺も付いていっても良いかな」
「え? あ、は、はい」
わたしを支えてくれていたアクス様が尋ねてきたので、少し驚きながらも承諾した。
「待って! 私はアクス様に用事があります!」
そう言って会話に入ってきたのはムーニャだった。
※ 母親が病院に運ばれたため、2月8日の夕方の更新はお休みさせていただきます。
申し訳ございません。
テナミ様を見つめていたわたしに、アクス様が尋ねてきた。
「テナミ殿下を見てください」
王族を指差すことはできないので、顔を向けたまま言うと、アクス様が言う。
「顔色が悪そうだな。もしかして、テナミ殿下は雷が苦手なのか?」
「ええ。雷が落ちると、おヘソを取りに魔物のようなものがやって来ると信じているんです」
「だから、お腹を押さえているんだな?」
「はい。おヘソを隠しているんだと思います」
周りがざわつく声で我に返ったテナミ様は、わたしに向かって言う。
「きょ、今日のところはここまでにしておいてあげよう。用事を思い出したので部屋に戻る。また、連絡するから話をしよう」
「わたしは話すことなどないのですが」
「俺にはあるんだよ。だから改めて、俺と話をし」
テナミ様が話をしている途中で、何の前触れもなく、また雷が落ちた。
「ひぃっ!」
テナミ様は情けない声を上げて床に座り込んでしまった。
大人になっても雷が怖い人はいるし、これについてはしょうがないとは思う。
ただ、外を見に行った人の話だと、空は満天の星空で雷雲らしきものなんて見当たらないみたいだった。
ということは、原因はテナミ様の発言だと思われる。
「テナミ様、神様はわたしとあなたが二人で話す必要はないと言っておられるのだと思います」
「そ、そんなことはな」
また、光と共に雷が落ちる。
その度にわたしも驚いて体を震わせてしまうから、アクス様の腕の力が少しずつ強くなる。
「テナミ様、もうわたしのことは諦めてください。何があっても、わたしがあなたを選ぶことはありません」
「そんな! 少しくらいチャンスをくれたって良いじゃないか!」
「駄目ですよ、兄上!」
お腹をおさえたまま、涙目で訴えてきていたテナミ様を押し退けて、ハリー様が言う。
「雷くらいで怖がっているような人が国王陛下になるだなんてありえないよね! リアンナの言っていることは正しい!」
「誰にだって怖いものはある! 雷が怖いことの何が悪いんだ!」
「国民の前でそんな醜態をさらすつもりなのですか!?」
「これを醜態とは言わない!」
突如として始まった兄弟喧嘩に、わたしたちを含め、周りは呆れてものも言えないといった感じだった。
「怪我人がいないか確認しようか。驚いて倒れたり、怪我をしたりしている人がいないとも限らない」
「そうですわね」
アクス様の言葉に頷いた時、会場の奥から陛下の叫ぶ声が聞こえてきた。
「いいかげんにしろ! テナミ! ハリー! お前たちは何を考えているんだ!」
「ち、父上! ハリーが雷を怖がる私を馬鹿にするんです!」
「馬鹿にしたくもなるでしょう! お腹をおさえるなんて子供のやることですよ!」
「テナミの肩を持つわけではないが、怖いものは人によって違うんだ! お前の怖いものを今ここでバラされたくないのであれば黙っていろ!」
国王陛下に怒られたハリー様は肩を落として俯いた。
結局、落雷騒ぎでパーティーどころではなくなり、早めの解散となった。
テナミ様は何か言いたげにわたしを見つめてきていたけれど、声をかければ雷が落ちると思うのか口は開かなかった。
だから、わたしのほうから話しかける。
「テナミ殿下。わたしはあなたの愛は必要ありません。わたしのことは忘れて、新たな道を歩んでくださいませ」
「どうしても復縁を拒むのか? 雷が怖い以外は、俺は優しくて良い人間だぞ?」
「雷が怖いからって悪い人間ではないでしょう? テナミ殿下はわたしの人生のパートナーではないと確信しております。それは雷を怖がっているからという理由ではございません」
そこまで言ってから、多くの視線がわたしたちに集まっていることに気が付く。
場所を変えたほうが良さそうね。
「二人きりにはなれませんが、場所を変えてお話をしましょう」
「俺も付いていっても良いかな」
「え? あ、は、はい」
わたしを支えてくれていたアクス様が尋ねてきたので、少し驚きながらも承諾した。
「待って! 私はアクス様に用事があります!」
そう言って会話に入ってきたのはムーニャだった。
※ 母親が病院に運ばれたため、2月8日の夕方の更新はお休みさせていただきます。
申し訳ございません。
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