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34 それぞれの思いや考え②

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「俺は君に用事はないんだが?」
「私の話を聞いてほしいのです!」
「しょうがないな。では、手短に頼む」
「ち、違うんです! ここではお話できません!」
「よくわからない。どこなら良いんだ?」

 アクス様が不思議そうに尋ねると、ムーニャは笑顔で叫ぶ。

「人の少ないところです!」
「では、改めて日にちと時間を連絡してくれ。スケジュール調整をするから。悪いが、今すぐに予定を入れられると思わないでくれ」
「そ、そんな! でも、リアンナ様とテナミ様のお話は聞くんですわよね?」
「今日はリアンナ嬢と一緒にいる時間にするつもりでここにいる。君との予定を入れるつもりはない」

 アクス様はそう言うと、わたしに顔を向けて聞いてくる。

「どこで話をするんだ?」
「そうですね。ここではムーニャ様の言うとおり、人の目がありますから、一度、外に出ましょうか。いつ、雷が鳴るかわかりませんけれど」
「そうだな。雷はきっと鳴るだろうな」

 わたしの考えに気付いてくれたのか、アクス様は雷という言葉を強調してくれた。
 すると、テナミ様が思い通りに反応してくれる。

「か、雷が鳴るのに外に出るのはどうかと思う!」
「ですが、ここでお話するのはちょっと……。嫌だとおっしゃるなら、わたしと話をすることを諦めていただかないといけませんわ」
「どうしてだよ!? リアンナ! このままじゃ俺はムーニャやハリーに馬鹿にされる人生を歩まないといけなくなるんだ!」

 テナミ様は泣きそうな顔で訴えてくる。

「今まで、王太子という肩書きがあったから、チヤホヤしてくれた。でも、そうじゃなくなったら、ムーニャとハリーは!」

 思った以上に嫌な話になりそうだと思ったのか、周りにいた貴族たちは静かに、この場から離れていく。

「ムーニャ嬢とハリー殿下は何なのです?」

 人がいなくなったのを確認してから、アクス様が先を促すと、テナミ様はムーニャたちを睨みつけて話し始めた。

「俺のことを無能だとか言い始めたんだ。俺を騙したのは2人なのに!」
「なっ! 騙してなんかいませんわ!」
「そうですよ! 僕たちが兄上をどう騙したって言うんですか!」
「テイル公爵令息とリアンナが浮気をしているという嘘を俺に言ったじゃないか!」

 テナミ様の叫びを聞いて、改めて思い出す。

 そういえば、テナミ様はわたしの浮気を疑って婚約破棄してきたのよね。

 そんなことを呑気に考えた時だった。

 ハリー様がわたしとアクス様を指差して叫ぶ。

「騙してなんかいませんよ! 見てください! この2人は仲良くしていますよ! これが真実です!」

 ハリー様が叫び終えると、会場内は静まり返った。

 今、会場内にいるのは、わたしとアクス様、テナミ様とムーニャ、ハリー様と両陛下、それから護衛騎士たちだけだ。

 だから、静かになることはおかしくない。
 でも、人がいないから静かになったわけでもない。

 国王陛下は呆れた顔をしているし、王妃陛下は悲しげな顔をしている。

 両陛下はお忙しいから、子育てはナニーに任せていたのだと思う。
 ナニーが甘やかしすぎたのかしら。
 ハリー様が何を言っているのかわからない。

「ハリー殿下」
「何だよ」

 アクス様に話しかけられたハリー様は眉根を寄せた。

「テナミ殿下がおっしゃっておられるのは過去の話であって、今の話ではありません。過去の私とリアンナ嬢はほとんど接点はありませんでしたので、浮気をしているだなんて話をテナミ殿下にされたのであれば、それは騙したことになるのではないでしょうか?」

 アクス様に丁寧に説明されたハリー様は、顔を真っ赤にして反論する。

「違う! 君たちは昔から仲良くしていたんだ!」
「その発言が嘘だった場合、テイル公爵家は黙っていませんが、責任を取る覚悟はおありですか?」

 優しげだったアクス様の表情が一変し、冷たいものに変わった。

 テイル公爵家は筆頭公爵家でもある。
 それに、いくら王子だからって、テイル公爵家の名誉を傷つけても良いわけではない。

 そのことに気がついたのか、ハリー様の顔色は真っ青になった。





詳しくは近況ボードに書かせていただきましたが、母は緊急入院となりました。
母の体調や更新についてなど、温かいお言葉をありがとうございました。

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