37 / 43
36 ムーニャへの天罰
しおりを挟む
※ 虫を想像するだけでも嫌な方はさらっとお読みください。
「ムーニャ! なんてことを言うんだよ! 大体、テイル公爵令息とリアンナが浮気をしているということにしようと計画したのは君なんだよ!?」
「ハリー殿下、酷いです! どうして私がそんなことを言っただなんて、嘘をおっしゃるんです!? 私がそんな嘘をついたって何のメリットもないじゃないですか! 私とリアンナ様はお友達だったんですよ!? お友達を裏切るようなことを、そんなに簡単にできるわけがありません! ハリー殿下に言われたから信じたんです!」
ムーニャはわたしのほうに顔を向けて訴えてくる。
「リアンナ様! 私たちはお友達でしたわよね!?」
「そうね。友達だったわね」
「リアンナ様、ごめんなさい! 私はハリー殿下に騙されていただけなんです! また、お友達になってくれませんか?」
ムーニャは胸の前で両手を合わせて懇願してくる。
「嫌よ。あなたのような友達なんていりません!」
「そんな冷たいことを言わないでください! ハリー殿下に言われて勘違いしていただけなんです。仲直りしてくれますよね?」
「するわけないでしょう。聖なる力が使えるからって、何でもかんでも許せるような優しい性格じゃないのよ」
「そんな! 酷い! 神様はどうしてこんな冷たい人に聖なる力を与えられたのかしら。私のほうがよっぽど王妃にふさわしいのに!」
ムーニャが両手で顔を覆って泣き始めた時だった。
開け放たれたままだった会場の扉の方から黒い虫が大量に入ってきた。
「ひっ!」
虫が苦手なわたしが声を上げると、アクス様が私を守るように抱きかかえて、虫が見えないように大きな手で両目を隠してくれた。
「怖いなら見なくて良い。君の所へ来る様子はないから」
お言葉に甘えて身を寄せたままでいると、ハリー殿下とテナミ殿下も小さな悲鳴を上げた。
顔を後ろに動かして、両陛下のほうを見ると、王妃陛下も国王陛下の胸に顔を押し当てて、虫の大群を見ないようにしていた。
今度は手をどけてもらいムーニャの方を見る。
すると、彼女は両手で顔を覆って俯いていた。
だから、虫の大群が近づいてきていることに気付いていなかった。
黒い虫はムーニャの、すぐ近くまで来ていた。
「ム、ムーニャ」
声を掛けると、ムーニャは手を顔から離し、ゆっくりと顔を上げて、わたしを見つめる。
「許してくださるんですか?」
「……いいえ」
「どうしてですか!?」
「だって……、神様は……ゆる、許さなくて……よ、良いと言って、る、も、もの」
声が震えてしまって上手く話せない。
「うっ!」
ムーニャの足元に虫たちがたどり着いた瞬間、わたしはアクス様にしがみついた。
「な、何? え? あ、い、い、いや、いやあああっ!」
ムーニャも自分のドレスに何かが這い上がってきていることに気がついたらしい。
そして、何かわかった瞬間に絶叫した。
ムーニャは虫たちを追い払おうとするけれど、虫たちはしがみついて離れない。
そして、彼女の顔より下は虫で覆われてしまった。
「あ、ああ」
虫が嫌いな人でなくても、こんな状態になればパニックになる人は多いはず。
ムーニャもそうだった。
「助け……、助けてっ、いや、いやっ」
「ムーニャ、真実を話して。きっと、神様はあなたが嘘をつくから罰を与えているのよ」
ムーニャのほうを見ずに話すと、しばらくの沈黙の後、ムーニャは叫んだ。
「ごめんなさい! 許してください! アクス様とリアンナ様が浮気をしていると嘘をつきました! 王妃になりたかった! 聖なる力を使えるようになって、皆にチヤホヤされたかったんです!」
うわあああと、ムーニャの泣き声が聞こえてきた。
「もう大丈夫だ」
アクス様の優しい声が聞こえて、ゆっくりとムーニャのほうに顔を向ける。
彼女の体を覆っていた虫たちは、跡形もなく消え去っていた。
「ムーニャ! なんてことを言うんだよ! 大体、テイル公爵令息とリアンナが浮気をしているということにしようと計画したのは君なんだよ!?」
「ハリー殿下、酷いです! どうして私がそんなことを言っただなんて、嘘をおっしゃるんです!? 私がそんな嘘をついたって何のメリットもないじゃないですか! 私とリアンナ様はお友達だったんですよ!? お友達を裏切るようなことを、そんなに簡単にできるわけがありません! ハリー殿下に言われたから信じたんです!」
ムーニャはわたしのほうに顔を向けて訴えてくる。
「リアンナ様! 私たちはお友達でしたわよね!?」
「そうね。友達だったわね」
「リアンナ様、ごめんなさい! 私はハリー殿下に騙されていただけなんです! また、お友達になってくれませんか?」
ムーニャは胸の前で両手を合わせて懇願してくる。
「嫌よ。あなたのような友達なんていりません!」
「そんな冷たいことを言わないでください! ハリー殿下に言われて勘違いしていただけなんです。仲直りしてくれますよね?」
「するわけないでしょう。聖なる力が使えるからって、何でもかんでも許せるような優しい性格じゃないのよ」
「そんな! 酷い! 神様はどうしてこんな冷たい人に聖なる力を与えられたのかしら。私のほうがよっぽど王妃にふさわしいのに!」
ムーニャが両手で顔を覆って泣き始めた時だった。
開け放たれたままだった会場の扉の方から黒い虫が大量に入ってきた。
「ひっ!」
虫が苦手なわたしが声を上げると、アクス様が私を守るように抱きかかえて、虫が見えないように大きな手で両目を隠してくれた。
「怖いなら見なくて良い。君の所へ来る様子はないから」
お言葉に甘えて身を寄せたままでいると、ハリー殿下とテナミ殿下も小さな悲鳴を上げた。
顔を後ろに動かして、両陛下のほうを見ると、王妃陛下も国王陛下の胸に顔を押し当てて、虫の大群を見ないようにしていた。
今度は手をどけてもらいムーニャの方を見る。
すると、彼女は両手で顔を覆って俯いていた。
だから、虫の大群が近づいてきていることに気付いていなかった。
黒い虫はムーニャの、すぐ近くまで来ていた。
「ム、ムーニャ」
声を掛けると、ムーニャは手を顔から離し、ゆっくりと顔を上げて、わたしを見つめる。
「許してくださるんですか?」
「……いいえ」
「どうしてですか!?」
「だって……、神様は……ゆる、許さなくて……よ、良いと言って、る、も、もの」
声が震えてしまって上手く話せない。
「うっ!」
ムーニャの足元に虫たちがたどり着いた瞬間、わたしはアクス様にしがみついた。
「な、何? え? あ、い、い、いや、いやあああっ!」
ムーニャも自分のドレスに何かが這い上がってきていることに気がついたらしい。
そして、何かわかった瞬間に絶叫した。
ムーニャは虫たちを追い払おうとするけれど、虫たちはしがみついて離れない。
そして、彼女の顔より下は虫で覆われてしまった。
「あ、ああ」
虫が嫌いな人でなくても、こんな状態になればパニックになる人は多いはず。
ムーニャもそうだった。
「助け……、助けてっ、いや、いやっ」
「ムーニャ、真実を話して。きっと、神様はあなたが嘘をつくから罰を与えているのよ」
ムーニャのほうを見ずに話すと、しばらくの沈黙の後、ムーニャは叫んだ。
「ごめんなさい! 許してください! アクス様とリアンナ様が浮気をしていると嘘をつきました! 王妃になりたかった! 聖なる力を使えるようになって、皆にチヤホヤされたかったんです!」
うわあああと、ムーニャの泣き声が聞こえてきた。
「もう大丈夫だ」
アクス様の優しい声が聞こえて、ゆっくりとムーニャのほうに顔を向ける。
彼女の体を覆っていた虫たちは、跡形もなく消え去っていた。
応援ありがとうございます!
32
お気に入りに追加
2,873
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる