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37 傷だらけの男性
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結局、この日はテナミ殿下と話をする時間を取ることはできなかった。
ムーニャは気絶してしまい騎士に運ばれていったし、わたしも気分が悪くて、それどころじゃなかった。
「天罰って雷だけじゃないのか?」
ハリー様はそう呟いたあと、逃げるように走って会場を出ていった。
変なことを言って、罰が当たることを恐れたみたいだった。
パーティーの主役のテナミ様も話す気力は一切無くなったらしく、トボトボと会場を出ていった。
そんな姿を見送ったあと、アクス様が話しかけてくる。
「俺たちも帰ろうか」
「は、はい。あの、ありがとうございました」
今更ながら、抱きしめられていることにドキドキしてしまい離れようとすると、アクス様は少し残念そうな顔をした。
「どうかされましたか?」
「いや。何でだろうか、離れがたかったんだ」
「え!? あ、そうだったのですね!」
何がそうだったのですね!
なのか、自分で自分に言いたくなってしまった。
ちょうどその時、両陛下から話しかけられたので、わたしたちは体を離した。
わたしとアクス様は今回の件も含めて、両陛下から謝罪を受けたのだった。
*****
ムーニャはわたしとアクス様の名誉を傷つけたということで逮捕された。
といっても、ムーニャのご両親がお金を払ったのですぐに保釈された。
でも、ムーニャはあの日のことがトラウマになってしまい、部屋に閉じこもって一歩も出なくなったそうだ。
可愛らしかった顔はやつれ、たまに何かに怯えるかのように、訳のわからないことを叫んでいるらしい。
わたしや王妃陛下については神様の計らいなのか、あんなことがあったということは覚えているのに、思い浮かぶのは虫に囲まれたムーニャではなく、花に囲まれたムーニャだった。
そのため、変な夢を見たりすることもなく、平穏な日常に戻りかけていた。
そんな中、新たな問題が出てきた。
ムーニャにチヤホヤしていた複数の若い男性が、自分は最初から関係ないと言わんばかりに、ムーニャの話題を口にしなくなり、わたしに媚びを売るようになったのだ。
「リアンナ様は今日もお美しい!」
「目が悪いみたいね。お医者様に診てもらうことをおすすめするわ」
「リアンナ様の奉仕精神には尊敬の念を覚えざるを得ません!」
「残念ながら貴族からはお金をもらっているの」
教会で聖なる力を使っていると、こんな風に話しかけてくるから、正直言うと鬱陶しかった。
騎士が守ってくれているから、わたしには近づけない。
でも、周りをウロウロするから、女性は特に治療を受けにくそうだったので追い払うことに決めた。
「わたしはあなた方に用事はないの! あなた方も病人や怪我人じゃないなら帰ってください!」
「僕たちはリアンナ様とお友達になりたいんです!」
「あなた方のような友達はいりません!」
声を荒らげると、皆、渋々といった感じで教会から出ていった。
その後は順調に聖なる力を使っていると、外が急に騒がしくなった。
「大変です、リアンナ様! 怪我人がいます!」
シスター二人が体を支えて、男性を教会の中に連れて来た。
その男性は顔を下に向けているから、どんな表情なのかはわからない。
髪の毛は空色で髪は長く後ろでシニヨンにしていた。
「空色の髪?」
思わず口に出すと、嫌な予感が胸に広がった。
そして、ゆっくりと顔を上げた男性と目があった瞬間、わたしは眉根を寄せた。
「リアンナ、俺を癒やしてくれ」
わたしの目の前に現れたのは、なぜか傷だらけで、服もボロボロになった、テナミ様だった。
ムーニャは気絶してしまい騎士に運ばれていったし、わたしも気分が悪くて、それどころじゃなかった。
「天罰って雷だけじゃないのか?」
ハリー様はそう呟いたあと、逃げるように走って会場を出ていった。
変なことを言って、罰が当たることを恐れたみたいだった。
パーティーの主役のテナミ様も話す気力は一切無くなったらしく、トボトボと会場を出ていった。
そんな姿を見送ったあと、アクス様が話しかけてくる。
「俺たちも帰ろうか」
「は、はい。あの、ありがとうございました」
今更ながら、抱きしめられていることにドキドキしてしまい離れようとすると、アクス様は少し残念そうな顔をした。
「どうかされましたか?」
「いや。何でだろうか、離れがたかったんだ」
「え!? あ、そうだったのですね!」
何がそうだったのですね!
なのか、自分で自分に言いたくなってしまった。
ちょうどその時、両陛下から話しかけられたので、わたしたちは体を離した。
わたしとアクス様は今回の件も含めて、両陛下から謝罪を受けたのだった。
*****
ムーニャはわたしとアクス様の名誉を傷つけたということで逮捕された。
といっても、ムーニャのご両親がお金を払ったのですぐに保釈された。
でも、ムーニャはあの日のことがトラウマになってしまい、部屋に閉じこもって一歩も出なくなったそうだ。
可愛らしかった顔はやつれ、たまに何かに怯えるかのように、訳のわからないことを叫んでいるらしい。
わたしや王妃陛下については神様の計らいなのか、あんなことがあったということは覚えているのに、思い浮かぶのは虫に囲まれたムーニャではなく、花に囲まれたムーニャだった。
そのため、変な夢を見たりすることもなく、平穏な日常に戻りかけていた。
そんな中、新たな問題が出てきた。
ムーニャにチヤホヤしていた複数の若い男性が、自分は最初から関係ないと言わんばかりに、ムーニャの話題を口にしなくなり、わたしに媚びを売るようになったのだ。
「リアンナ様は今日もお美しい!」
「目が悪いみたいね。お医者様に診てもらうことをおすすめするわ」
「リアンナ様の奉仕精神には尊敬の念を覚えざるを得ません!」
「残念ながら貴族からはお金をもらっているの」
教会で聖なる力を使っていると、こんな風に話しかけてくるから、正直言うと鬱陶しかった。
騎士が守ってくれているから、わたしには近づけない。
でも、周りをウロウロするから、女性は特に治療を受けにくそうだったので追い払うことに決めた。
「わたしはあなた方に用事はないの! あなた方も病人や怪我人じゃないなら帰ってください!」
「僕たちはリアンナ様とお友達になりたいんです!」
「あなた方のような友達はいりません!」
声を荒らげると、皆、渋々といった感じで教会から出ていった。
その後は順調に聖なる力を使っていると、外が急に騒がしくなった。
「大変です、リアンナ様! 怪我人がいます!」
シスター二人が体を支えて、男性を教会の中に連れて来た。
その男性は顔を下に向けているから、どんな表情なのかはわからない。
髪の毛は空色で髪は長く後ろでシニヨンにしていた。
「空色の髪?」
思わず口に出すと、嫌な予感が胸に広がった。
そして、ゆっくりと顔を上げた男性と目があった瞬間、わたしは眉根を寄せた。
「リアンナ、俺を癒やしてくれ」
わたしの目の前に現れたのは、なぜか傷だらけで、服もボロボロになった、テナミ様だった。
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