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39 必要ないもの④ (付きまとってくる人たち②)
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「兄上、抜け駆けは許しませんよ! 兄上はリアンナに取り入って、王太子の座を取り戻そうとしているのでしょう?」
「そんなことを言うお前はどうなんだ! 国王になりたくて、ムーニャを捨ててリアンナを自分のものにしようとしているじゃないか!」
「国王になりたいと思うことの何が悪いんですか! 後から生まれたというだけで、国王になれない僕の気持ちが兄上にわかるんですか!」
くだらない兄弟喧嘩が始まってしまった。
いや、彼らにとってはくだらないことではないのでしょうね。
ハリー様のように国王になりたいという気持ちが出てくれば、後に生まれたというだけで認めてもらえないことについて悔しいという気持ちはわからないでもない。
スキャンダルか何かで、テナミ様が失脚すれば、ハリー様は次の国王になれる機会があるけれど、そんなことは中々ないもの……。
ああ、そういうことだったのね。
私とアクス様が浮気をしているという噂を流した理由がわかったわ。
「ハリー殿下、あなたはテナミ殿下を失脚させるために、あんな嘘をついたのですね?」
「どういうことだ?」
テナミ様は突然のわたしの発言に戸惑っているみたいだった。
でも、ハリー様はわたしを見て笑顔で頷く。
「そうだよ。兄上は馬鹿だから、僕たちの嘘を信じて、リアンナと婚約破棄をしてくれた。そこまでは良かったんだ!」
ハリー様は近くにあった長椅子に座ると、足を組んで話を続ける。
「テイル公爵家が抗議することによって、リアンナがテイル卿と浮気なんてしていなかったことがわかったら、兄上には責任を取ってもらうつもりだったんだ」
「責任を取ってって、俺は騙されたのに責任を取らないといけないのか!?」
「ムーニャに誘惑されて、心が動いていたのは確かなんでしょう?」
ハリー様に鼻で笑われたテナミ様は、図星だったのか俯いてしまった。
「こんな兄上が国王になるなんてありえない! 僕のほうがふさわしいと、皆が思うはずだったのに、リアンナ! 君が聖なる力を使えるせいで計画が無茶苦茶になったんだ!」
「そんな計画が最初から上手くいくわけがないでしょう」
わたしは呆れてしまい、大きな息を吐いてから言った。
たしか、ハリー様はムーニャが好きだったのよね。
ムーニャは王妃になりたかったと言っていた。
それに聖なる力を使いたかったとも言っていたわね。
昔は国王になる人に愛される人が聖なる力を使えると思われていたから、ハリー様は自分が国王になれば、ムーニャに選んでもらえると思ったのかもしれない。
でも、言わせてもらうと、わたしにとっては、そんなものはくだらない動機だ。
そんな動機で国王になりたいだなんて信じられないわ。
「上手くいくはずだったんだ! リアンナが邪魔しなければ!」
神様は、わたしがどこにいても見てくれているものだと思っている。
この国の神様を信仰している人たちの多くは、神様は頑張っている人間を見てくれているものだと思っている。
でも、人の数が多すぎるので見落とすことがあってもおかしくはない。
そう理解している。
でも、どうしても神様に自分を見てほしいと思う人たちもたくさんいる。
だから、わたしたちの国で言う教会は、神様に自分の存在を見つけやすくする場所だと言われている。
そんな場所で、しかも、神様に見守られているわたしに対して文句を言ってくるのだから、ある意味、すごい度胸だと感心してしまう。
「わたしは邪魔なんてしていません。ハリー様は次期国王になる器量がないだけではないでしょうか?」
「何だって!?」
ハリー様が激昂して立ち上がった時だった。
「ハリー殿下を探していたんだが、まさか、こんな所にいたとはな」
教会の中に入ってきたのはアクス様だった。
白い紙を手に持っていて、わたしのほうに近寄ってくる。
「久しぶりだな」
「あ、はい。お久しぶりです」
「リアンナ嬢に会えて嬉しい。少し話をしたいんだ。後で時間をもらえないか?」
「え、あ、はい」
予想もしていなかったアクス様の登場に、そんな場合ではないのに胸が高鳴ってしまう。
アクス様はわたしが頷いたのを確認すると、ハリー様のほうに振り返る。
「ハリー殿下、国王陛下から勅令が出ています」
「父上から!?」
「はい。許可もなく部屋から出たということが陛下のお耳に入ったようです」
「そ、そんな……!」
ハリー様の驚くくらいに青くなっていった。
「代理で読み上げさせていただきます。ハリー・サナイは国王からの命令を勝手な理由で拒否した罰として国外追放とする」
「……え?」
ハリー様は呆然とした表情でアクス様に聞き返し、膝から床に崩れ落ちた。
「そんなことを言うお前はどうなんだ! 国王になりたくて、ムーニャを捨ててリアンナを自分のものにしようとしているじゃないか!」
「国王になりたいと思うことの何が悪いんですか! 後から生まれたというだけで、国王になれない僕の気持ちが兄上にわかるんですか!」
くだらない兄弟喧嘩が始まってしまった。
いや、彼らにとってはくだらないことではないのでしょうね。
ハリー様のように国王になりたいという気持ちが出てくれば、後に生まれたというだけで認めてもらえないことについて悔しいという気持ちはわからないでもない。
スキャンダルか何かで、テナミ様が失脚すれば、ハリー様は次の国王になれる機会があるけれど、そんなことは中々ないもの……。
ああ、そういうことだったのね。
私とアクス様が浮気をしているという噂を流した理由がわかったわ。
「ハリー殿下、あなたはテナミ殿下を失脚させるために、あんな嘘をついたのですね?」
「どういうことだ?」
テナミ様は突然のわたしの発言に戸惑っているみたいだった。
でも、ハリー様はわたしを見て笑顔で頷く。
「そうだよ。兄上は馬鹿だから、僕たちの嘘を信じて、リアンナと婚約破棄をしてくれた。そこまでは良かったんだ!」
ハリー様は近くにあった長椅子に座ると、足を組んで話を続ける。
「テイル公爵家が抗議することによって、リアンナがテイル卿と浮気なんてしていなかったことがわかったら、兄上には責任を取ってもらうつもりだったんだ」
「責任を取ってって、俺は騙されたのに責任を取らないといけないのか!?」
「ムーニャに誘惑されて、心が動いていたのは確かなんでしょう?」
ハリー様に鼻で笑われたテナミ様は、図星だったのか俯いてしまった。
「こんな兄上が国王になるなんてありえない! 僕のほうがふさわしいと、皆が思うはずだったのに、リアンナ! 君が聖なる力を使えるせいで計画が無茶苦茶になったんだ!」
「そんな計画が最初から上手くいくわけがないでしょう」
わたしは呆れてしまい、大きな息を吐いてから言った。
たしか、ハリー様はムーニャが好きだったのよね。
ムーニャは王妃になりたかったと言っていた。
それに聖なる力を使いたかったとも言っていたわね。
昔は国王になる人に愛される人が聖なる力を使えると思われていたから、ハリー様は自分が国王になれば、ムーニャに選んでもらえると思ったのかもしれない。
でも、言わせてもらうと、わたしにとっては、そんなものはくだらない動機だ。
そんな動機で国王になりたいだなんて信じられないわ。
「上手くいくはずだったんだ! リアンナが邪魔しなければ!」
神様は、わたしがどこにいても見てくれているものだと思っている。
この国の神様を信仰している人たちの多くは、神様は頑張っている人間を見てくれているものだと思っている。
でも、人の数が多すぎるので見落とすことがあってもおかしくはない。
そう理解している。
でも、どうしても神様に自分を見てほしいと思う人たちもたくさんいる。
だから、わたしたちの国で言う教会は、神様に自分の存在を見つけやすくする場所だと言われている。
そんな場所で、しかも、神様に見守られているわたしに対して文句を言ってくるのだから、ある意味、すごい度胸だと感心してしまう。
「わたしは邪魔なんてしていません。ハリー様は次期国王になる器量がないだけではないでしょうか?」
「何だって!?」
ハリー様が激昂して立ち上がった時だった。
「ハリー殿下を探していたんだが、まさか、こんな所にいたとはな」
教会の中に入ってきたのはアクス様だった。
白い紙を手に持っていて、わたしのほうに近寄ってくる。
「久しぶりだな」
「あ、はい。お久しぶりです」
「リアンナ嬢に会えて嬉しい。少し話をしたいんだ。後で時間をもらえないか?」
「え、あ、はい」
予想もしていなかったアクス様の登場に、そんな場合ではないのに胸が高鳴ってしまう。
アクス様はわたしが頷いたのを確認すると、ハリー様のほうに振り返る。
「ハリー殿下、国王陛下から勅令が出ています」
「父上から!?」
「はい。許可もなく部屋から出たということが陛下のお耳に入ったようです」
「そ、そんな……!」
ハリー様の驚くくらいに青くなっていった。
「代理で読み上げさせていただきます。ハリー・サナイは国王からの命令を勝手な理由で拒否した罰として国外追放とする」
「……え?」
ハリー様は呆然とした表情でアクス様に聞き返し、膝から床に崩れ落ちた。
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