25 / 59
22 変わる気のある人とそうでない人③
しおりを挟む
エレインがフールー伯爵令嬢を睨み付けながら話し掛ける。
「必要以上にリネ様に近付くことは許されていないはずよ。しかも暴力をふるおうとしたんだから、どうなるかわかっているわよね?」
「うるさいわね! もう我慢できないのよ! こんな女の顔色を私が気にしないといけないなんて御免だわ!」
フールー伯爵令嬢は、エレインのほうを見もせずに私に噛み付いてくる。
この数日の間に、エレインやお義母様には女性との付き合い方を教えてもらった。
友人と接するものではなく、顔見知りや初対面の相手とのやり取りの仕方などだ。
もちろん、他のパターンも教えてもらっていて、フールー伯爵令嬢のような人が相手の場合は無視をするのが一番だと聞いた。
でも、何度も無視したとしても、彼女はしつこく絡んできそうだった。
大丈夫。
言いたいことを言うと決めたんだから。
それに私は一人じゃない。
エレインが見守ってくれている。
大きく深呼吸してから口を開く。
「フールー伯爵令嬢、私はあなたみたいな人と関わりあいたくないの。普通の人は、イライラしたりしても人に攻撃なんかしたりしないのよ。自分の性格の悪さをわざわざ他の人に知らしめているってこともわからないの?」
「うるさいわね! 昔からこうやってきて許されてきたのよ! それなのに!」
フールー伯爵令嬢の言い分が誰かのものに似ていると思ったら、お姉様だとわかった。
いつかは戦わないといけない、お姉様との対策のために、まずはフールー伯爵令嬢と戦うことに決めた。
上半身が熱く感じるのは、怒りとまだ残っているフールー伯爵令嬢への恐怖で興奮状態になっているからかもしれない。
「ちょっと聞いてるの!?」
とにかく気持ちを落ち着けようとすると、フールー伯爵令嬢は、白ブラウスを着ている私の胸あたりに手を伸ばしてきた。
「やめなさいって言っているでしょう!」
エレインが叫び、フールー伯爵令嬢の腕に手刀を叩き込んだ。
フールー伯爵令嬢は腕を反対の手で押さえながら訴える。
「痛いわね! 暴力はやめなさいよ!」
「先に暴力をふるおうとした人間がよく言うわね?」
このままだと、またエレインに任せてしまうことになるので、立ち上がって止める。
「エレイン、助けてくれてありがとう。もう大丈夫よ。手を出すようなら出させたほうがいいのよ」
「ですが……」
「大丈夫。今日で終わらせるわ」
「……承知しました」
エレインは渋々といった感じで頷いてくれた。
フールー伯爵令嬢は私たちの会話を聞いたあと、鼻で笑う。
「今までは何も言えなかったくせに、急に強気になったの? でもね、人間の本性なんてそう変わらないのよ!」
「そうね。そうかもしれない。だけど、変わる場合もある。あなたのお母様は表向きだけでも変わったふりをしてほしいみたいだったけれど意味がなかったのね」
「私の何が間違っているって言うのよ! どうして私がこんな惨めな思いをしなくちゃいけないの!?」
「全ての出来事に対して、やられたらやり返しても良いというわけじゃないけれど、自分も同じような目に遭うかもしれないということくらい考えていないといけなかったのよ」
いじめをする人やいじめに遭う人と関わりたくないという防衛本能のようなものが働くのは、おかしくないと思う。
だから、周りの人間がフールー伯爵令嬢と関わらないようにすることだっておかしくない。
自分が他の人からどう見られているということを考えないのかしら。
それとも、いじめをする自分がカッコ良いとでも思っている?
よくわからないわ。
「私はこんな扱いを受けて良い人間じゃない!」
「だからといって人を傷付けても良いという権利はないわ」
ヒステリックに叫ぶフールー伯爵令嬢に言い返した。
いつまでものんびり話をしているわけにはいかない。
エディ様がこんな話を聞いたら私よりも怒るに決まっている。
早くに終わらせるために尋ねる。
「反省する気はないの?」
「あるわけないでしょう! さっき偉そうに今日で終わるとか言っていたけれど終わるわけがないわ! たとえ修道院に行かされたとしても、あなたを恨んで、いつか復讐してやる!」
「それは大変だ」
声と共に教室の扉が開き、エディ様とテッド様が中に入ってくる。
エディ様は顔に笑みを浮かべているけれど、目は笑っていない。
「フールー伯爵令嬢、君は本当に恐ろしいことを言うよね。そんな人でも修道院は受け入れてくれるんだろうけど、僕は君を違うところに送りたくなってきたなあ」
エディ様の言葉を聞いたフールー伯爵令嬢の顔が一瞬にして真っ青になった。
「必要以上にリネ様に近付くことは許されていないはずよ。しかも暴力をふるおうとしたんだから、どうなるかわかっているわよね?」
「うるさいわね! もう我慢できないのよ! こんな女の顔色を私が気にしないといけないなんて御免だわ!」
フールー伯爵令嬢は、エレインのほうを見もせずに私に噛み付いてくる。
この数日の間に、エレインやお義母様には女性との付き合い方を教えてもらった。
友人と接するものではなく、顔見知りや初対面の相手とのやり取りの仕方などだ。
もちろん、他のパターンも教えてもらっていて、フールー伯爵令嬢のような人が相手の場合は無視をするのが一番だと聞いた。
でも、何度も無視したとしても、彼女はしつこく絡んできそうだった。
大丈夫。
言いたいことを言うと決めたんだから。
それに私は一人じゃない。
エレインが見守ってくれている。
大きく深呼吸してから口を開く。
「フールー伯爵令嬢、私はあなたみたいな人と関わりあいたくないの。普通の人は、イライラしたりしても人に攻撃なんかしたりしないのよ。自分の性格の悪さをわざわざ他の人に知らしめているってこともわからないの?」
「うるさいわね! 昔からこうやってきて許されてきたのよ! それなのに!」
フールー伯爵令嬢の言い分が誰かのものに似ていると思ったら、お姉様だとわかった。
いつかは戦わないといけない、お姉様との対策のために、まずはフールー伯爵令嬢と戦うことに決めた。
上半身が熱く感じるのは、怒りとまだ残っているフールー伯爵令嬢への恐怖で興奮状態になっているからかもしれない。
「ちょっと聞いてるの!?」
とにかく気持ちを落ち着けようとすると、フールー伯爵令嬢は、白ブラウスを着ている私の胸あたりに手を伸ばしてきた。
「やめなさいって言っているでしょう!」
エレインが叫び、フールー伯爵令嬢の腕に手刀を叩き込んだ。
フールー伯爵令嬢は腕を反対の手で押さえながら訴える。
「痛いわね! 暴力はやめなさいよ!」
「先に暴力をふるおうとした人間がよく言うわね?」
このままだと、またエレインに任せてしまうことになるので、立ち上がって止める。
「エレイン、助けてくれてありがとう。もう大丈夫よ。手を出すようなら出させたほうがいいのよ」
「ですが……」
「大丈夫。今日で終わらせるわ」
「……承知しました」
エレインは渋々といった感じで頷いてくれた。
フールー伯爵令嬢は私たちの会話を聞いたあと、鼻で笑う。
「今までは何も言えなかったくせに、急に強気になったの? でもね、人間の本性なんてそう変わらないのよ!」
「そうね。そうかもしれない。だけど、変わる場合もある。あなたのお母様は表向きだけでも変わったふりをしてほしいみたいだったけれど意味がなかったのね」
「私の何が間違っているって言うのよ! どうして私がこんな惨めな思いをしなくちゃいけないの!?」
「全ての出来事に対して、やられたらやり返しても良いというわけじゃないけれど、自分も同じような目に遭うかもしれないということくらい考えていないといけなかったのよ」
いじめをする人やいじめに遭う人と関わりたくないという防衛本能のようなものが働くのは、おかしくないと思う。
だから、周りの人間がフールー伯爵令嬢と関わらないようにすることだっておかしくない。
自分が他の人からどう見られているということを考えないのかしら。
それとも、いじめをする自分がカッコ良いとでも思っている?
よくわからないわ。
「私はこんな扱いを受けて良い人間じゃない!」
「だからといって人を傷付けても良いという権利はないわ」
ヒステリックに叫ぶフールー伯爵令嬢に言い返した。
いつまでものんびり話をしているわけにはいかない。
エディ様がこんな話を聞いたら私よりも怒るに決まっている。
早くに終わらせるために尋ねる。
「反省する気はないの?」
「あるわけないでしょう! さっき偉そうに今日で終わるとか言っていたけれど終わるわけがないわ! たとえ修道院に行かされたとしても、あなたを恨んで、いつか復讐してやる!」
「それは大変だ」
声と共に教室の扉が開き、エディ様とテッド様が中に入ってくる。
エディ様は顔に笑みを浮かべているけれど、目は笑っていない。
「フールー伯爵令嬢、君は本当に恐ろしいことを言うよね。そんな人でも修道院は受け入れてくれるんだろうけど、僕は君を違うところに送りたくなってきたなあ」
エディ様の言葉を聞いたフールー伯爵令嬢の顔が一瞬にして真っ青になった。
239
あなたにおすすめの小説
幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!
ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。
同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。
そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。
あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。
「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」
その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。
そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。
正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。
婚約解消の理由はあなた
彩柚月
恋愛
王女のレセプタントのオリヴィア。結婚の約束をしていた相手から解消の申し出を受けた理由は、王弟の息子に気に入られているから。
私の人生を壊したのはあなた。
許されると思わないでください。
全18話です。
最後まで書き終わって投稿予約済みです。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
婚約破棄した王子は年下の幼馴染を溺愛「彼女を本気で愛してる結婚したい」国王「許さん!一緒に国外追放する」
佐藤 美奈
恋愛
「僕はアンジェラと婚約破棄する!本当は幼馴染のニーナを愛しているんだ」
アンジェラ・グラール公爵令嬢とロバート・エヴァンス王子との婚約発表および、お披露目イベントが行われていたが突然のロバートの主張で会場から大きなどよめきが起きた。
「お前は何を言っているんだ!頭がおかしくなったのか?」
アンドレア国王の怒鳴り声が響いて静まった会場。その舞台で親子喧嘩が始まって収拾のつかぬ混乱ぶりは目を覆わんばかりでした。
気まずい雰囲気が漂っている中、婚約披露パーティーは早々に切り上げられることになった。アンジェラの一生一度の晴れ舞台は、婚約者のロバートに台なしにされてしまった。
【完結】そんなに好きならもっと早く言って下さい! 今更、遅いです! と口にした後、婚約者から逃げてみまして
Rohdea
恋愛
──婚約者の王太子殿下に暴言?を吐いた後、彼から逃げ出す事にしたのですが。
公爵令嬢のリスティは、幼い頃からこの国の王子、ルフェルウス殿下の婚約者となるに違いない。
周囲にそう期待されて育って来た。
だけど、当のリスティは王族に関するとある不満からそんなのは嫌だ! と常々思っていた。
そんなある日、
殿下の婚約者候補となる令嬢達を集めたお茶会で初めてルフェルウス殿下と出会うリスティ。
決して良い出会いでは無かったのに、リスティはそのまま婚約者に選ばれてしまう──
婚約後、殿下から向けられる態度や行動の意味が分からず困惑する日々を送っていたリスティは、どうにか殿下と婚約破棄は出来ないかと模索するも、気づけば婚約して1年が経っていた。
しかし、ちょうどその頃に入学した学園で、ピンク色の髪の毛が特徴の男爵令嬢が現れた事で、
リスティの気持ちも運命も大きく変わる事に……
※先日、完結した、
『そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして』
に出て来た王太子殿下と、その婚約者のお話です。
殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。
和泉鷹央
恋愛
雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。
女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。
聖女の健康が、その犠牲となっていた。
そんな生活をして十年近く。
カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。
その理由はカトリーナを救うためだという。
だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。
他の投稿サイトでも投稿しています。
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる