人の顔色ばかり気にしていた私はもういません

風見ゆうみ

文字の大きさ
52 / 59

42 姉との最終決戦①

しおりを挟む
 その後は、お母様は何度も私に謝ってくれた。
 お父様だけでなく、エディ様やお義父様にもすぐに連絡すると言うので、屋敷に戻ってからで良いと伝えた。
 嫌な気持ちのままで、シオンやお母様とのお出かけを終えたくなかったのだ。

 それに、エディ様が聞いたら、すぐに私をニーソン公爵邸に戻らせるために迎えに来そうな気がするわ。
 気持ちは有り難いけれど、家族と過ごすことも大事なことだから、その時間を大切にしたかった。

「リネお姉様、ニーソン公爵家に帰ったりしませんよね?」
「もちろん! シオンと遊ぶって約束したものね」

 シオンが私の手を握って尋ねてきたので、笑顔で頷いた。

 私は気付いていなかったけれど、お母様は騎士に頼んで、お父様に連絡を入れていた。
 だから、数時間後に私たちが家に帰った時には、お父様がニーソン公爵家に連絡を入れていた後だった。

「まったく、そんなことがあったのに買い物を続けるだなんて」

 お父様がお母様を責めたので、私は間に割って入る。

「申し訳ございません、お父様。お母様は悪くありません。物心ついてからは、家族で出かけたりすることがなかったので、本当に楽しかったんです。私のわがままであり、考えの甘さです。本当に申し訳ございませんでした」
「リネが謝る必要はないよ」
「そうよ。あなたはまだ子供なんだから、大人である私がちゃんとあなたに言い聞かせるべきだったわ」

 お父様とお母様はそう言ったあと、これ以上、この話をすれば、私が傷付くと思ってくれたようで、ニーソン公爵家からの連絡を待つということで、話を終えた。

 この時の私は、自分のワガママで人に迷惑をかけてしまうことを改めて実感した。
 顔色をうかがうのをやめたからといって、ワガママを言っても良いとは限らない。

 そんな当たり前のことを心に刻み込んだ。

 その日の夜、ニーソン公爵家から連絡が来た。
 両親宛の手紙が1通と、私宛の手紙が3通あった。

 両親宛はお義父様から、私宛は、お義父様、お義母様、そしてエディ様からだった。

 両親のほうには、『リネはあなた達の子供なのだから、私に謝る必要はない。ただ、子供を守るのは親の義務だろう』と書かれていたそうで、本当に申し訳なかった。

 私宛には、お義父様からは、すぐに屋敷に帰らなかったことへのお叱り、お義母様はそれを慰めるもの、エディ様は色々と書かれていて長文だった。
 どの手紙にも私を心配する言葉が書かれていたので、それについてはとても嬉しかった。

 数日後、エディ様が私を迎えに来てくれた。
 両親やシオンの前では冷静だったエディ様は、私たちが乗った馬車が動き出すと、急に抱きしめてきた。

「シンス公爵令息の件だけど、怖くなかった?」
「大丈夫です。心配かけてしまって申し訳ございません。ところで、デイリ様は何かお咎めがあったのでしょうか?」
「それはもちろんだよ。あの日は学園の行事で、あの場所に来ていたらしい。リネの姿を見て勝手に抜け出したらしいよ。だから、学園からもペナルティーを受けたし、シンス侯爵は彼を卒業後は北の辺境伯の門兵として送ると決めたそうだ」
「北の辺境伯の門兵に!?」

 驚いて聞き返すと、エディ様は大きく頷いた。

 北の辺境伯の地は一年中雪に覆われた場所が多い地域でもある。
 領民は山の麓で暮らしている人が多く、山の麓は辺境伯の住んでいる屋敷がある場所とは違い、雪は少ない。

 けれど、デイリ様が送られるところは辺境伯の門兵だというのだから、デイリ様は確実に過酷な環境に置かれることになる。
 私たちが住んでいる地はとても温暖な気候だから、寒さに慣れていないデイリ様には余計に辛く感じることでしょう。

 最悪な出来事だって考えられる。

「リネが責任を感じることじゃないよ。本当にリネに悪いと思っているのなら、復縁したいだなんて言わないはずだから。それにリネを責めるようなこともね」
「ありがとうございます。私は大丈夫です」
「それなら良かった」

 エディ様は私の手を握って、頬を寄せてきた。

 けれど、すぐに頬を離して、私の顔を覗き込んでくる。

「リネに伝えないといけないことがあるんだ」
「……何でしょうか?」
「近々、王家主催のパーティーが開かれるんだ。そこに僕たちも出席しないといけない。そして、トワナ嬢もそこに来るらしい」

 トワナ様は今度こそ、絶対にエディ様を狙いに来るはずだわ。
 絶対に負けないし、もうなめられたりなんかしない。

「大丈夫です。そのパーティーでトワナ様との縁を断ち切ります」

 私の人生に影を落とす人とは、もう関わり合いたくないもの。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなただけが私を信じてくれたから

樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。 一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。 しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。 処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。

幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!

ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。 同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。 そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。 あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。 「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」 その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。 そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。 正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

初恋を諦めたあなたが、幸せでありますように

ぽんちゃん
恋愛
『あなたのヒーローをお返しします。末永くお幸せに』  運命の日。  ルキナは婚約者候補のロミオに、早く帰ってきてほしいとお願いしていた。 (私がどんなに足掻いても、この先の未来はわかってる。でも……)  今頃、ロミオは思い出の小屋で、初恋の人と偶然の再会を果たしているだろう。  ロミオが夕刻までに帰ってくれば、サプライズでルキナとの婚約発表をする。  もし帰ってこなければ、ある程度のお金と文を渡し、お別れするつもりだ。  そしてルキナは、両親が決めた相手と婚姻することになる。  ただ、ルキナとロミオは、友人以上、恋人未満のような関係。  ルキナは、ロミオの言葉を信じて帰りを待っていた。  でも、帰ってきたのは護衛のみ。  その後に知らされたのは、ロミオは初恋の相手であるブリトニーと、一夜を共にしたという報告だった――。 《登場人物》  ☆ルキナ(16) 公爵令嬢。  ☆ジークレイン(24) ルキナの兄。  ☆ロミオ(18) 男爵子息、公爵家で保護中。  ★ブリトニー(18) パン屋の娘。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

処理中です...