人の顔色ばかり気にしていた私はもういません

風見ゆうみ

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41 君とやり直したい②

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 デイリ様は自分がどれだけ酷いことをしていたかということに気づき、それを真摯に受け止めて反省していく内に、私を幸せにすることが、自分の罪滅ぼしになるのだと考えたらしかった。
 
「それって勝手な自己満足じゃないか。リネは僕のなのに!」

 手紙を今にも破り捨てそうなエディ様を見て、慌てて手紙を自分の手に戻して、封筒の中に入れた。

「一応、お義父様たちにも見せようと思いますので、まだ破らないでくださいませ」
「それ、見せる必要あるの?」
「お返事はしようと思いますから。どうお返事するかは相談しようと思うんです」
「……なんて返事をするの?」

 エディ様は少しだけ、離していた体をまたくっつけて尋ねてきた。

「そうですね。言わなくてもおわかりだとは思いますが、お断りのお手紙です」
「だよね!」

 エディ様は重かった表情を一変させて笑顔で私の顔を覗き込んできた。

 こんなことを言ったら怒られてしまいそうだけれど、エディ様って時々、大きな犬みたいに見えてしまうのよね。
 可愛いから良いのだけど。

 その後、お義父様に相談して「謝罪の気持ちは受け取るけれど、婚約者としてやり直すことはできない」と書いて返事を送った。

 デイリ様のお父様であるシンス侯爵にも連絡を入れてもらったところ、デイリ様は何の相談もせずに手紙を送っていたのだとわかった。

 学園寮にいるため、把握できていなかったと謝ってくれた。
 もし、しつこく連絡を取ろうとするなら、また連絡がほしいとも言われた。

 それから数日後、私はシーラル家に滞在していた。
 長期休暇は何日間かこちらで過ごすと約束していたこともあったのと、弟のシオンが心待ちにしてくれていたからだ。

「リネお姉様とお出かけしたいです!」

 シオンにせがまれて、私とシオンとお母様で繁華街に出かけることになった。

 護衛騎士や侍女たちと一緒なので、かなりの大人数にはなってしまったけれど、楽しく買い物をしていた。
 その時、かすかに私の名を呼んでいる声が聞こえた。

「リネ! 俺だよ! リネ!」

 その声はどんどん近づいてくる。
 私たちが歩いている大きな通りは、ただでさえ人が多いから姿は見えない。
 護衛騎士が私たちの周りを囲んでいるから、余計に遠くのほうが見えなかった。

 でも、声に聞き覚えがあったので、相手が誰だかすぐにわかった。

「お母様、シンス侯爵令息です」
「なんですって!?」

 不安げな表情だった、お母様は眉根を寄せて声のする方向に目を向けた。
 そしてすぐに騎士に指示する。

「絶対にリネに近づけないで!」
「承知しました!」
「俺はリネに危害を加えるつもりはない!」

 そう言って、制服姿のデイリ様が人混みをかき分けて騎士たちの前に現れた。

「リネお姉様は僕がまもります!」

 シオンが私の前に立って両手を伸ばした。

「ありがとう、シオン」

 お礼を言って、シオンの頭を撫でてからデイリ様に視線を戻すと、彼と目が合った。
 以前よりも少し痩せているように見えて、少しだけ驚いた。

 手紙ではああ書いているだけで、本当に反省しているだなんて思ってもいなかったから。
 でも、痩せているだけで反省したと判断するには早すぎるわよね。

「リネ、聞いてくれ。本当に俺は悪いことをしたと思ってる。だから、俺にだってチャンスがほしいんだ」
「俺にだってと言われても、あんなことをされて許す人がいると思うのですが?」
「後悔して生まれ変わるって決めたんだよ!」
「それはあなたの勝手です! 私と婚約しなくても、あなたが自分を変えたいと思うのなら変えられるんです! 私を巻き込まないでください!」

 私が叫ぶと、お母様が私の肩を抱き寄せてくる。

「リネ、相手にしなくて良いのよ、行きましょう」
「待ってくれ!」

 お母様に促され、デイリ様に背中を向けると、デイリ様が叫んだ。

「君はそんなに心の狭い女だったのか?」
「……何を言ってらっしゃるんですか?」

 耳を傾けてはいけないと思っていたのに、私は足を止めて反応してしまった。
 
 この人は、自分のために反省しただけなんだわ。

「心の狭い女だと思われてもかまいません。私があなたを許すことは絶対にありません」

 私がはっきりと言い終えると、それを合図にしたかのように、デイリ様を捕まえていた騎士が彼を引きずって、私たちから遠ざかっていった。
 
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