人の顔色ばかり気にしていた私はもういません

風見ゆうみ

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47 元姉の末路①(トワナside)

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 どうして、私が悪者になるのよ!

 リネとの話し合いを終えたあと、私は怒りで叫びたくなる気持ちを何とか抑えて、待たせていた馬車に乗って屋敷に帰った。
 馬車の中で冷静になって考える。

 最近の屋敷内は使用人が一気に少なくなった。
 よっぽどお金に困っているのかもしれない。
 
 明日になったら、今日の件でセング子爵家に抗議の連絡を入れて、その分の慰謝料をもらわなくちゃいけないわ。
 だって、婚約者を置いて一人でさっさと帰ってしまったんだから、それくらの文句は言ってもいいはず。
 うちにはお金がないんだから搾り取れるところからは搾り取らないといけないわ。

 リネにはしばらくの間は幸せな思いをさせてあげる。

 幸せになって、その幸せな生活に慣れたところで、リネの幸せを私のものにするのよ。

 エディ様もその時になって、今日、リネを選んだことを後悔すればいいわ。

 その日は初めて悔し涙で枕を濡らした。
 まさか、リネにこんな思いをさせられるなんて悔しくてしょうがなかった。



***** 


 次の日の朝、怒鳴り合う声が聞こえて目が覚めた。
 廊下に出ても誰もいない。 
 しょうがないから自分で様子を見るために、寝間着姿のままで一階に下りた。

 すると、制服姿の男性数人とお父様が言い争っていた。

「帰れ! トワナは夫を亡くした可哀想な子なんだ! よくもそんなデタラメなことが言えるな!」
「私たちに暴力をふるうなら、あなたも捕まえますよ」
「うるさい! ここは私の屋敷だ!」

 お父様は警察と揉み合って、最終的には取り押さえられてしまった。
 警察は私に用事があったらしく、その後、私は元夫への殺人教唆で捕まった。
 だけど、私は殺意を否定したし証拠はなかったので、すぐに釈放された。
 警察署の外に出ると、お父様かセング子爵令息が迎えに来ていると思ったのに、二人共来ていなかった。
 
 お父様はまだ警察に捕まったままなのかもしれない。

 しょうがないので屋敷に戻ると、騎士も使用人も料理人も誰一人、屋敷の中にいなかった。

 探し回って、お父様の執務室に入ったところで、その理由がわかった。
 お父様の執務室の机には、たくさんの辞表届が出されていた。

 私一人で生きていけるはずがない。
 現金はまだ金庫に残されていたから、それを持って、セング子爵家に向かうことにした。
 とにかく、彼に助けてもらわなければいけない。
 だって、彼は私の婚約者なのだから。

「君との婚約は無しになった。君は知らないのか? ティファス伯爵家はもう借金だらけだそうじゃないか」

 セング子爵令息は助けを求めた私にそう言って、門前払いし、その場を立ち去ろうとした。
 
「どうしてよ! 伯爵令嬢じゃなくても私は魅力的でしょう!」

 セング子爵令息に言葉を投げかけると、彼は立ち止まってこちらを振り返る。

「いくら顔が綺麗でも、性格が悪いし頭も悪いんじゃ魅力的とは言わない。君の妹だったリネ嬢のほうがよっぽど良い」
「嘘よ! 私がリネに負けるだなんて、そんなこと絶対にありえない!」

 閉ざされた鉄柵を掴んで叫んだ。
 それでも、セング子爵令息は訂正してはくれなかった。

「行くところがないんなら、うちに来ますか?」

 呆然としている私に、一部始終を見ていた門兵が声を掛けてくれた。

 私には頼れる人がいなかった。
 
 お母様は私を見捨てた。
 お父様は捕まっている。
 そして、妹はもういない。

 とりあえず、この男に助けてもらって、友人に連絡しよう。
 そう思った。

 けれど、仲が良かったはずの友人に手紙を書いても、いつまでたっても返事はこなかった。

 
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