人の顔色ばかり気にしていた私はもういません

風見ゆうみ

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48 姉の末路②

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 トワナ様との一件から、約20日後、お義父様から話があると呼び出された。
 談話室に入ると、お義父様だけでなく、お義母様やエディ様もいた。
 深刻そうな表情をしているので、足を止めると、座っていたエディ様が立ち上がった。

「大丈夫だよ、リネ。君に報告したいことがあるだけだから」

 エディ様は柔らかく微笑み、私の手を取って黒のソファに座るように促す。

 緊張しながらもお義父様たちの向かい側に座ると、私の左隣にエディ様が座った。

 メイドがお茶を淹れて出て行ったあと、お義父様が話してくれたのは、トワナ様のことだった。

「トワナ嬢は精神を病んだ」
「えっ」

 あまりの驚きに、それ以上の言葉が出てこなかった。

 お義父様が暗い表情で話をしてくれてわかったのは、私の予想通り、ティファス家が没落し、トワナ様は貴族ではなくなったということ。
 それから、セング子爵令息との婚約もその前に解消されていたとのことだった。

 トワナ様の詳しい話をする前に、セング子爵家のことも教えてくれた。
 セング子爵家は田舎の地に追いやられ、子爵令息は、その地に住んでいた男爵令嬢との婚約が決まったそうだ。

 その男爵令嬢は束縛の激しい人らしく、結婚もしていないのに子爵家に住みつき、彼から少しも離れようとしないとのことだった。

 男性の友人とも会うことが許されず、少しずつ顔から生気が無くなってきていると教えてくれた。

 彼は浮気をしそうな男性に見えたから、それくらいの女性が良いのかもしれない。

「トワナ嬢は一時期、セング子爵家の門兵の世話になっていたそうだが、関係を迫られたそうで、その家から逃げ出したらしい」
「その後は知り合いの家を回ったらしいけれど、誰も彼女を助けようとしなかったそうよ」

 お義父様の言葉を継いだ、お義母様が悲しげな顔になった。

 その後、トワナ様は平民に助けられ、その家で暮らすようになった。
 でも、お嬢様育ちのトワナ様に、平民の暮らしがそう簡単になじめるわけがなかった。

 彼女は自分が見下していた人たちから馬鹿にされて苦しんだ。

 自分が馬鹿にされるはずがない。

 そう思い込んでいたトワナ様には、平民ができるのに自分ができず、平民に馬鹿にされるせいで、ヒステリーを起こし、最終的にストレスが限界に達してしまったようだった。

「トワナ様は今はどうされてるんですか?」
「病院にいるよ。発作みたいなものを起こして、突然、暴れ出したりするらしいから、鎖で繋がれているそうだ。自分は生きている価値がないと叫んでいるとも言っていた」

 結局は、トワナ様の心には私の言葉は届かなかった。
 私は、馬鹿にされる立場の気持ちになって、痛みを知ってほしかっただけだった。

 でも、そんなことになるほどプライドが高いのなら、間違いを正されても素直に受け入れられなかったことも理解できる。

 すべての人が同じことを思うわけではない。
 私にとって悪いと思えることでも、それを悪いと思わない人もいる。

 人の考えることなんて、それぞれ違う。

 ただ、私は思いやりは誰もが持っていてほしいと思う。

 思いやる気持ちがあれば、トワナ様だって違う道を選べていたのではないか。
 そう思った。



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