58 / 59
48 姉の末路②
しおりを挟む
トワナ様との一件から、約20日後、お義父様から話があると呼び出された。
談話室に入ると、お義父様だけでなく、お義母様やエディ様もいた。
深刻そうな表情をしているので、足を止めると、座っていたエディ様が立ち上がった。
「大丈夫だよ、リネ。君に報告したいことがあるだけだから」
エディ様は柔らかく微笑み、私の手を取って黒のソファに座るように促す。
緊張しながらもお義父様たちの向かい側に座ると、私の左隣にエディ様が座った。
メイドがお茶を淹れて出て行ったあと、お義父様が話してくれたのは、トワナ様のことだった。
「トワナ嬢は精神を病んだ」
「えっ」
あまりの驚きに、それ以上の言葉が出てこなかった。
お義父様が暗い表情で話をしてくれてわかったのは、私の予想通り、ティファス家が没落し、トワナ様は貴族ではなくなったということ。
それから、セング子爵令息との婚約もその前に解消されていたとのことだった。
トワナ様の詳しい話をする前に、セング子爵家のことも教えてくれた。
セング子爵家は田舎の地に追いやられ、子爵令息は、その地に住んでいた男爵令嬢との婚約が決まったそうだ。
その男爵令嬢は束縛の激しい人らしく、結婚もしていないのに子爵家に住みつき、彼から少しも離れようとしないとのことだった。
男性の友人とも会うことが許されず、少しずつ顔から生気が無くなってきていると教えてくれた。
彼は浮気をしそうな男性に見えたから、それくらいの女性が良いのかもしれない。
「トワナ嬢は一時期、セング子爵家の門兵の世話になっていたそうだが、関係を迫られたそうで、その家から逃げ出したらしい」
「その後は知り合いの家を回ったらしいけれど、誰も彼女を助けようとしなかったそうよ」
お義父様の言葉を継いだ、お義母様が悲しげな顔になった。
その後、トワナ様は平民に助けられ、その家で暮らすようになった。
でも、お嬢様育ちのトワナ様に、平民の暮らしがそう簡単になじめるわけがなかった。
彼女は自分が見下していた人たちから馬鹿にされて苦しんだ。
自分が馬鹿にされるはずがない。
そう思い込んでいたトワナ様には、平民ができるのに自分ができず、平民に馬鹿にされるせいで、ヒステリーを起こし、最終的にストレスが限界に達してしまったようだった。
「トワナ様は今はどうされてるんですか?」
「病院にいるよ。発作みたいなものを起こして、突然、暴れ出したりするらしいから、鎖で繋がれているそうだ。自分は生きている価値がないと叫んでいるとも言っていた」
結局は、トワナ様の心には私の言葉は届かなかった。
私は、馬鹿にされる立場の気持ちになって、痛みを知ってほしかっただけだった。
でも、そんなことになるほどプライドが高いのなら、間違いを正されても素直に受け入れられなかったことも理解できる。
すべての人が同じことを思うわけではない。
私にとって悪いと思えることでも、それを悪いと思わない人もいる。
人の考えることなんて、それぞれ違う。
ただ、私は思いやりは誰もが持っていてほしいと思う。
思いやる気持ちがあれば、トワナ様だって違う道を選べていたのではないか。
そう思った。
※
エピローグも同時に公開しています。
談話室に入ると、お義父様だけでなく、お義母様やエディ様もいた。
深刻そうな表情をしているので、足を止めると、座っていたエディ様が立ち上がった。
「大丈夫だよ、リネ。君に報告したいことがあるだけだから」
エディ様は柔らかく微笑み、私の手を取って黒のソファに座るように促す。
緊張しながらもお義父様たちの向かい側に座ると、私の左隣にエディ様が座った。
メイドがお茶を淹れて出て行ったあと、お義父様が話してくれたのは、トワナ様のことだった。
「トワナ嬢は精神を病んだ」
「えっ」
あまりの驚きに、それ以上の言葉が出てこなかった。
お義父様が暗い表情で話をしてくれてわかったのは、私の予想通り、ティファス家が没落し、トワナ様は貴族ではなくなったということ。
それから、セング子爵令息との婚約もその前に解消されていたとのことだった。
トワナ様の詳しい話をする前に、セング子爵家のことも教えてくれた。
セング子爵家は田舎の地に追いやられ、子爵令息は、その地に住んでいた男爵令嬢との婚約が決まったそうだ。
その男爵令嬢は束縛の激しい人らしく、結婚もしていないのに子爵家に住みつき、彼から少しも離れようとしないとのことだった。
男性の友人とも会うことが許されず、少しずつ顔から生気が無くなってきていると教えてくれた。
彼は浮気をしそうな男性に見えたから、それくらいの女性が良いのかもしれない。
「トワナ嬢は一時期、セング子爵家の門兵の世話になっていたそうだが、関係を迫られたそうで、その家から逃げ出したらしい」
「その後は知り合いの家を回ったらしいけれど、誰も彼女を助けようとしなかったそうよ」
お義父様の言葉を継いだ、お義母様が悲しげな顔になった。
その後、トワナ様は平民に助けられ、その家で暮らすようになった。
でも、お嬢様育ちのトワナ様に、平民の暮らしがそう簡単になじめるわけがなかった。
彼女は自分が見下していた人たちから馬鹿にされて苦しんだ。
自分が馬鹿にされるはずがない。
そう思い込んでいたトワナ様には、平民ができるのに自分ができず、平民に馬鹿にされるせいで、ヒステリーを起こし、最終的にストレスが限界に達してしまったようだった。
「トワナ様は今はどうされてるんですか?」
「病院にいるよ。発作みたいなものを起こして、突然、暴れ出したりするらしいから、鎖で繋がれているそうだ。自分は生きている価値がないと叫んでいるとも言っていた」
結局は、トワナ様の心には私の言葉は届かなかった。
私は、馬鹿にされる立場の気持ちになって、痛みを知ってほしかっただけだった。
でも、そんなことになるほどプライドが高いのなら、間違いを正されても素直に受け入れられなかったことも理解できる。
すべての人が同じことを思うわけではない。
私にとって悪いと思えることでも、それを悪いと思わない人もいる。
人の考えることなんて、それぞれ違う。
ただ、私は思いやりは誰もが持っていてほしいと思う。
思いやる気持ちがあれば、トワナ様だって違う道を選べていたのではないか。
そう思った。
※
エピローグも同時に公開しています。
196
あなたにおすすめの小説
幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!
ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。
同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。
そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。
あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。
「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」
その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。
そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。
正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。
妹ばかり見ている婚約者はもういりません
水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。
自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。
そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。
さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。
◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐
◆小説家になろうにも投稿しています
殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。
和泉鷹央
恋愛
雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。
女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。
聖女の健康が、その犠牲となっていた。
そんな生活をして十年近く。
カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。
その理由はカトリーナを救うためだという。
だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。
他の投稿サイトでも投稿しています。
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
希望通り婚約破棄したのになぜか元婚約者が言い寄って来ます
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢ルーナは、婚約者で公爵令息エヴァンから、一方的に婚約破棄を告げられる。この1年、エヴァンに無視され続けていたルーナは、そんなエヴァンの申し出を素直に受け入れた。
傷つき疲れ果てたルーナだが、家族の支えで何とか気持ちを立て直し、エヴァンへの想いを断ち切り、親友エマの支えを受けながら、少しずつ前へと進もうとしていた。
そんな中、あれほどまでに冷たく一方的に婚約破棄を言い渡したはずのエヴァンが、復縁を迫って来たのだ。聞けばルーナを嫌っている公爵令嬢で王太子の婚約者、ナタリーに騙されたとの事。
自分を嫌い、暴言を吐くナタリーのいう事を鵜呑みにした事、さらに1年ものあいだ冷遇されていた事が、どうしても許せないルーナは、エヴァンを拒み続ける。
絶対にエヴァンとやり直すなんて無理だと思っていたルーナだったが、異常なまでにルーナに憎しみを抱くナタリーの毒牙が彼女を襲う。
次々にルーナに攻撃を仕掛けるナタリーに、エヴァンは…
初恋を諦めたあなたが、幸せでありますように
ぽんちゃん
恋愛
『あなたのヒーローをお返しします。末永くお幸せに』
運命の日。
ルキナは婚約者候補のロミオに、早く帰ってきてほしいとお願いしていた。
(私がどんなに足掻いても、この先の未来はわかってる。でも……)
今頃、ロミオは思い出の小屋で、初恋の人と偶然の再会を果たしているだろう。
ロミオが夕刻までに帰ってくれば、サプライズでルキナとの婚約発表をする。
もし帰ってこなければ、ある程度のお金と文を渡し、お別れするつもりだ。
そしてルキナは、両親が決めた相手と婚姻することになる。
ただ、ルキナとロミオは、友人以上、恋人未満のような関係。
ルキナは、ロミオの言葉を信じて帰りを待っていた。
でも、帰ってきたのは護衛のみ。
その後に知らされたのは、ロミオは初恋の相手であるブリトニーと、一夜を共にしたという報告だった――。
《登場人物》
☆ルキナ(16) 公爵令嬢。
☆ジークレイン(24) ルキナの兄。
☆ロミオ(18) 男爵子息、公爵家で保護中。
★ブリトニー(18) パン屋の娘。
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる