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第15話 公爵令嬢からの情報
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彼女の目的が何なのかはわかりませんが、指定された日、指定された時間よりも少しだけ早くに、ジィルワ家にたどり着くと、執事らしき男性が出てきて、歓迎の言葉を述べてくれてから、私を中に通してくれました。
家の中に入ると案内は執事からメイドにバトンタッチされたので、持ってきていた手土産を執事らしき方に渡すとお礼を言って、屋敷の奥に歩いて行かれました。
メイドに促され、執事らしき男性が歩いていった方向とは逆方向に歩いていくと、少し行ったところでメイドが立ち止まり、部屋の扉を開けて中に入るように促してくれました。
座って待っていてほしいと言われたので、大人しく下座に座って待っていると、しばらくして扉がノックされ、ジィルワ公爵家の次女、サマンサ様が中に入ってこられました。
サマンサ様は背が低くぽっちゃりした体型で、白のドレスに金色の髪。
頭にはバレッタでしょうか。
大きな赤いリボンがついていて、とても可愛らしい印象です。
ただ、20歳で大きな赤いリボンというのはあまり見た事がありません。
でも、個人の趣味ですし、私がどうこう言う筋合いもありませんね。
立ち上がって挨拶をすると、サマンサ様も綺麗なカーテシーを返してくれました。
「はじめまして、サマンサ・ジィルワと申します。気軽にサマンサと呼んでくださいませ。本日は私のお誘いをお受けいただき、ありがとうございました」
「こちらこそはじめまして。リーシャ・アーミテムと申します。リーシャとお呼び下さいませ」
「それでは早速、お言葉に甘えますわね。リーシャ様のお噂はかねがね。とても苦労されているとお聞きしておりますわ」
きらんとサマンサ様の青い瞳が光った気がしました。
座る様に促されたので、大人しくその場に座ると、サマンサ様は向かい側に座り、メイドにお茶の用意をさせてから、またきらんとした瞳をこちらに向けられました。
どうして私がここに呼ばれたのか謎でしたが、そのおかげで何となくわかった気がしました。
サマンサ様は私の不幸話が聞きたいようです。
過去の話もそうですが、ライト様は世間では冷酷公爵として通っておりますから、夫婦生活もさぞかし上手くいっていないと思われているのでしょう。
結婚式も挙げていませんしね。
お出かけも買い物に出かけた一回きりで、新婚旅行にも行っていませんから、不仲説が流れてもおかしくはない気がしてきました。
それだけ、アーミテム家の使用人達の口が固いという事もわかって良い事ですが。
だって、アームテム家の使用人でしたら、私とライト様が同じ寝室で眠っている事も、食事も出来る限り一緒にとっている事なども知っていますから、不仲説ではなく、円満にやっているという噂が流れるはずですから。
「そうですね。元々は、私はアッセルフェナムの人間ではありませんでしたし」
とにかく、こういう方には私がどれだけ不幸で、聞いてくださるサマンサ様がどれだけ幸せであるかという話をしなければいけません。
ライト様とは上手くいっていますが、私は過去が幸せではありませんから、不幸話でしたら過去の話がたくさんあります。
身内の恥ずかしい話ではありますが、どうせ知られている事です。
私が話せば話す事により、シルフィーの評判も落ちれば、それはそれで良いですしね。
そういえば、サマンサ様はシルフィーが私と姉妹であった事は知っておられるのでしょうか。
少しずつ探りを入れていきましょう。
そう思っていると、サマンサ様が話しかけてこられます。
「ノルドグレンはとても素敵な国だと聞いていますわ。国民は食べるものに困ることもなく、医療も充実しているのだとか」
「はい。病院は24時間体制ですし、医療費もタダでした」
「まあ、なんて羨ましいの!」
「ですが、病院にまで病人を連れていかなければなりませんから、遠くに住む人は不便だと思います」
「それはそんな病院がある国の方だからこその贅沢な悩みですわ。アッセルフェナムにはそんな病院はありませんもの」
「ですが、サマンサ様のお家には名医がいらっしゃるのではないですか?」
「あら、ご存知でいらしたのですか!?」
サマンサ様がにんまりと微笑みました。
これに関してはリサーチ済みです。
サマンサ様は若くて外見の良い医者を屋敷に住まわせていて、その事を自慢するのがお好きだという事です。
「はい。社交場に行っている侍女から聞きました」
「あら、社交場でそんな噂が流れているのですね。嫌だわ、お恥ずかしい」
サマンサ様は困ったような言い方をされましたが、笑顔で医者についての話をしてくれました。
大部分はどれだけ、自分の家のお医者様がイケメンであるかの話でした。
こちらとしては、私から話さなくて良いので、とても楽でしたが、その話のネタも尽きてしまい、私に話題をふってこられました。
「で、どうなんですの? 新婚生活は? 結婚式もされておられないし新婚旅行にも行かれていないと聞きましたわ」
「ライト様のお仕事が忙しくて、中々…」
「あら、お可哀想! 普通は結婚式を挙げるのは当たり前ですし、新婚旅行に行くのも当たり前なのですよ?」
「……そうなんですね」
「あら! 呑気にしている場合ではありませんわよ! 女は愛されて美しくなるのですから」
そう言って、サマンサ様は綺麗な髪をサラリとかきあげて誇らしそうにされました。
「私の場合は政略結婚の様なものですし、そんな扱いでもしょうがないとは思っておりますが、ライト様の事を悪く言う事だけはおやめくださいませ」
「あら! 私はあなたの味方をしているのよ!!」
サマンサ様がすごい剣幕で叫んでこられました。
ああ、サマンサ様は相手が自分の旦那様の事を褒めたり庇ったりすると、ご機嫌が悪くなるのでした!
ですので、慌てて話題を変える事にします。
「ところで、サマンサ様は、シルフィー様をご存知で?」
「ええ。もちろんよ! あなたのお姉様で、たしか侯爵令息の次男に嫁入りされたとかいう…。ですけれど、あの方の旦那様、長男が爵位を継がれましたら、平民になりますわよね?」
「……はい!?」
シルフィーが幸せそうにしているだなんて知りたくもなくて、詳しくは調べておりませんでしたが、まさかの情報に思わず素っ頓狂な声を上げてしまったのでした。
家の中に入ると案内は執事からメイドにバトンタッチされたので、持ってきていた手土産を執事らしき方に渡すとお礼を言って、屋敷の奥に歩いて行かれました。
メイドに促され、執事らしき男性が歩いていった方向とは逆方向に歩いていくと、少し行ったところでメイドが立ち止まり、部屋の扉を開けて中に入るように促してくれました。
座って待っていてほしいと言われたので、大人しく下座に座って待っていると、しばらくして扉がノックされ、ジィルワ公爵家の次女、サマンサ様が中に入ってこられました。
サマンサ様は背が低くぽっちゃりした体型で、白のドレスに金色の髪。
頭にはバレッタでしょうか。
大きな赤いリボンがついていて、とても可愛らしい印象です。
ただ、20歳で大きな赤いリボンというのはあまり見た事がありません。
でも、個人の趣味ですし、私がどうこう言う筋合いもありませんね。
立ち上がって挨拶をすると、サマンサ様も綺麗なカーテシーを返してくれました。
「はじめまして、サマンサ・ジィルワと申します。気軽にサマンサと呼んでくださいませ。本日は私のお誘いをお受けいただき、ありがとうございました」
「こちらこそはじめまして。リーシャ・アーミテムと申します。リーシャとお呼び下さいませ」
「それでは早速、お言葉に甘えますわね。リーシャ様のお噂はかねがね。とても苦労されているとお聞きしておりますわ」
きらんとサマンサ様の青い瞳が光った気がしました。
座る様に促されたので、大人しくその場に座ると、サマンサ様は向かい側に座り、メイドにお茶の用意をさせてから、またきらんとした瞳をこちらに向けられました。
どうして私がここに呼ばれたのか謎でしたが、そのおかげで何となくわかった気がしました。
サマンサ様は私の不幸話が聞きたいようです。
過去の話もそうですが、ライト様は世間では冷酷公爵として通っておりますから、夫婦生活もさぞかし上手くいっていないと思われているのでしょう。
結婚式も挙げていませんしね。
お出かけも買い物に出かけた一回きりで、新婚旅行にも行っていませんから、不仲説が流れてもおかしくはない気がしてきました。
それだけ、アーミテム家の使用人達の口が固いという事もわかって良い事ですが。
だって、アームテム家の使用人でしたら、私とライト様が同じ寝室で眠っている事も、食事も出来る限り一緒にとっている事なども知っていますから、不仲説ではなく、円満にやっているという噂が流れるはずですから。
「そうですね。元々は、私はアッセルフェナムの人間ではありませんでしたし」
とにかく、こういう方には私がどれだけ不幸で、聞いてくださるサマンサ様がどれだけ幸せであるかという話をしなければいけません。
ライト様とは上手くいっていますが、私は過去が幸せではありませんから、不幸話でしたら過去の話がたくさんあります。
身内の恥ずかしい話ではありますが、どうせ知られている事です。
私が話せば話す事により、シルフィーの評判も落ちれば、それはそれで良いですしね。
そういえば、サマンサ様はシルフィーが私と姉妹であった事は知っておられるのでしょうか。
少しずつ探りを入れていきましょう。
そう思っていると、サマンサ様が話しかけてこられます。
「ノルドグレンはとても素敵な国だと聞いていますわ。国民は食べるものに困ることもなく、医療も充実しているのだとか」
「はい。病院は24時間体制ですし、医療費もタダでした」
「まあ、なんて羨ましいの!」
「ですが、病院にまで病人を連れていかなければなりませんから、遠くに住む人は不便だと思います」
「それはそんな病院がある国の方だからこその贅沢な悩みですわ。アッセルフェナムにはそんな病院はありませんもの」
「ですが、サマンサ様のお家には名医がいらっしゃるのではないですか?」
「あら、ご存知でいらしたのですか!?」
サマンサ様がにんまりと微笑みました。
これに関してはリサーチ済みです。
サマンサ様は若くて外見の良い医者を屋敷に住まわせていて、その事を自慢するのがお好きだという事です。
「はい。社交場に行っている侍女から聞きました」
「あら、社交場でそんな噂が流れているのですね。嫌だわ、お恥ずかしい」
サマンサ様は困ったような言い方をされましたが、笑顔で医者についての話をしてくれました。
大部分はどれだけ、自分の家のお医者様がイケメンであるかの話でした。
こちらとしては、私から話さなくて良いので、とても楽でしたが、その話のネタも尽きてしまい、私に話題をふってこられました。
「で、どうなんですの? 新婚生活は? 結婚式もされておられないし新婚旅行にも行かれていないと聞きましたわ」
「ライト様のお仕事が忙しくて、中々…」
「あら、お可哀想! 普通は結婚式を挙げるのは当たり前ですし、新婚旅行に行くのも当たり前なのですよ?」
「……そうなんですね」
「あら! 呑気にしている場合ではありませんわよ! 女は愛されて美しくなるのですから」
そう言って、サマンサ様は綺麗な髪をサラリとかきあげて誇らしそうにされました。
「私の場合は政略結婚の様なものですし、そんな扱いでもしょうがないとは思っておりますが、ライト様の事を悪く言う事だけはおやめくださいませ」
「あら! 私はあなたの味方をしているのよ!!」
サマンサ様がすごい剣幕で叫んでこられました。
ああ、サマンサ様は相手が自分の旦那様の事を褒めたり庇ったりすると、ご機嫌が悪くなるのでした!
ですので、慌てて話題を変える事にします。
「ところで、サマンサ様は、シルフィー様をご存知で?」
「ええ。もちろんよ! あなたのお姉様で、たしか侯爵令息の次男に嫁入りされたとかいう…。ですけれど、あの方の旦那様、長男が爵位を継がれましたら、平民になりますわよね?」
「……はい!?」
シルフィーが幸せそうにしているだなんて知りたくもなくて、詳しくは調べておりませんでしたが、まさかの情報に思わず素っ頓狂な声を上げてしまったのでした。
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