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第一部
2 3人姉弟
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レファお姉様は見た目だけは可愛らしい。
性格も可愛いと思える人には可愛らしい。
けれど、生涯を共にするとなると疲れると考える人が多かった。
私とお姉様は性格が全く違うということもあり、昔から仲が良くも悪くもなかった。
話をするとお互いにイライラするので関わらないようにしていたからだ。
「きゃるるるーん! 怖い顔しないでよぉん!」
「きゃるるるーんって何ですの?」
「きゃー、って意味! 貴族の可愛い女の子の間では流行ってるのよぉ? リーチェ、そんなことも知らないのぉ? 仕事ばっかりしてるからじゃないかなぁ?」
体をくねくねさせるという気持ち悪い動きを繰り返しながら、お姉様は私に近付いてくる。
内股にも程があるでしょう。
って、今はそんなことを気にしている場合じゃないわね。
近付いてくるお姉様を手で制してから答える。
「婚約を破棄されたことにつきましては気にしておりません。ところで、お姉様とローディ様はどちらでお知り合いになられたのです?」
「えっとねぇ? お見舞いにいったのぉ! そしたらねぇ、わたしの話し方とかぁ、顔とかぁ、可愛いって! でね、結婚しましょって話になったのぉ!」
「はい? も、もしかして、一度会っただけとかじゃないですわよね?」
「んーっとぉ、最初に会った時に結婚しましょって話をしたのん!」
「話をしたのん、ですね」
この言葉遣いについては、亡きお父様や、今は平民になってしまったお母様も頭を抱えていた。
そして、弟のグレイルも同じように良くは思っていない。
けれど、グレイルは自分が家督を継いだら、お姉様を容赦なく放り出すつもりでいるらしいので、今は注意をすることもやめて好きなようにさせていた。
学生時代からこんな感じだったため、お姉様は女性の知り合いも少なく、夜会などに呼ばれることもないため、ほとんど家にいたからだ。
「でぇ! 何度か会っていくうちにぃ、やっぱり、これは浮気だってなってぇ。きゃるるるーん! ごめんね? 怒らないでぇ? だから、リーチェに話すことにしたんだからぁ!」
「怒ってはいません。お姉様とローディ様のほうがお似合いだと思いますので祝福いたしますわ」
「きゃるるるーん! やめてよぉ、そんなぁっ照れちゃうぅ!」
「お姉様、きゃるるるーんはもう良いです」
「えぇ? どうしてぇ? ローちゃんは好きって言ってくれたわよぉ?」
「ローちゃん」
ローディ様のことをそんな風に呼んでいるのね。
「お姉様、私のことは気になさらないでください。そして、もし、私のことを気にされるのでしたら、あと300日後以降に結婚してくださいませ」
「えぇ? もっと早くにしたいのっ!」
「しても良くなりましたらご連絡しますわ」
そう伝えてから、近くにいた執事にグレイルの居場所を尋ねた。
婚約破棄されたことを伝えないといけないことと、このままではこの国は終わる。
暴君である国王陛下が今すぐに亡くなることはないだろうから、それまでに国を出れば良いだけの話だ。
私はすぐにこの国を出る事はできる。
だけど、グレイルは無理だった。
代々続いてきたマラク公爵家ををグレイルが簡単に捨てられるわけがないし、私だって亡くなったお父様のためにもグレイルにマラク公爵家を継いでもらい、その後もグレイルの子供なりに継いでいってほしい。
自室にいたグレイルに今日の出来事を話すと、絶望した表情になった。
少年とも言っていい年齢の彼に、こんな顔をさせてしまったことを姉として、とても申し訳なく思って謝る。
「ごめんなさい、グレイル。お姉様を放置しすぎたわ」
「僕のほうこそごめんなさい。レファお姉様を放置してしまった僕の責任だ。とにかく、リーチェお姉様は婚約破棄してもらって良かったと思います。ローディ殿下に嫁げば命の危険がありますから」
「そうね。国王陛下は気まぐれに剣を抜いて首をはねるような人だもの」
お姉様だってそのことを知っているはずだけれど、頭がお花畑だから、自分が同じ目に遭うかもしれないという恐怖はないのだと思われる。
不安そうな顔をしているグレイルに話しかける。
「グレイル、大丈夫よ。あなたがここにいる間は、私があなたを守るからね」
グレイルはまだ15歳。
しっかりしているとはいえ、誰か頼れる人間が必要なはず。
私がグレイルを支えてあげなきゃ。
そう思っていたのに、国王陛下はそれを許してはくれなかった。
数日後、私は国王陛下から呼び出された。
国王陛下が座っている玉座付近には、大事なところだけ隠された、ほとんど裸状態の若い女性たちがたくさんいた。
けれど、王妃陛下の姿は見えなかった。
国王陛下には愛人が多くいると聞いたけれど、周りにいる10人近くの若い女性が、その愛人なのだろう。
金色に輝く王冠を被った精悍な体と整った顔立ちを持つ陛下は、ギラギラした金色の瞳を私に向けて口を開いた。
「ローディの浮気はリーチェの責任だ。ここで殺されるか国外追放、どちらか今すぐ選べ」
国王陛下は玉座の横に置いていた剣を一人の女性に持ってこさせると、鞘から剣を引き抜いた。
性格も可愛いと思える人には可愛らしい。
けれど、生涯を共にするとなると疲れると考える人が多かった。
私とお姉様は性格が全く違うということもあり、昔から仲が良くも悪くもなかった。
話をするとお互いにイライラするので関わらないようにしていたからだ。
「きゃるるるーん! 怖い顔しないでよぉん!」
「きゃるるるーんって何ですの?」
「きゃー、って意味! 貴族の可愛い女の子の間では流行ってるのよぉ? リーチェ、そんなことも知らないのぉ? 仕事ばっかりしてるからじゃないかなぁ?」
体をくねくねさせるという気持ち悪い動きを繰り返しながら、お姉様は私に近付いてくる。
内股にも程があるでしょう。
って、今はそんなことを気にしている場合じゃないわね。
近付いてくるお姉様を手で制してから答える。
「婚約を破棄されたことにつきましては気にしておりません。ところで、お姉様とローディ様はどちらでお知り合いになられたのです?」
「えっとねぇ? お見舞いにいったのぉ! そしたらねぇ、わたしの話し方とかぁ、顔とかぁ、可愛いって! でね、結婚しましょって話になったのぉ!」
「はい? も、もしかして、一度会っただけとかじゃないですわよね?」
「んーっとぉ、最初に会った時に結婚しましょって話をしたのん!」
「話をしたのん、ですね」
この言葉遣いについては、亡きお父様や、今は平民になってしまったお母様も頭を抱えていた。
そして、弟のグレイルも同じように良くは思っていない。
けれど、グレイルは自分が家督を継いだら、お姉様を容赦なく放り出すつもりでいるらしいので、今は注意をすることもやめて好きなようにさせていた。
学生時代からこんな感じだったため、お姉様は女性の知り合いも少なく、夜会などに呼ばれることもないため、ほとんど家にいたからだ。
「でぇ! 何度か会っていくうちにぃ、やっぱり、これは浮気だってなってぇ。きゃるるるーん! ごめんね? 怒らないでぇ? だから、リーチェに話すことにしたんだからぁ!」
「怒ってはいません。お姉様とローディ様のほうがお似合いだと思いますので祝福いたしますわ」
「きゃるるるーん! やめてよぉ、そんなぁっ照れちゃうぅ!」
「お姉様、きゃるるるーんはもう良いです」
「えぇ? どうしてぇ? ローちゃんは好きって言ってくれたわよぉ?」
「ローちゃん」
ローディ様のことをそんな風に呼んでいるのね。
「お姉様、私のことは気になさらないでください。そして、もし、私のことを気にされるのでしたら、あと300日後以降に結婚してくださいませ」
「えぇ? もっと早くにしたいのっ!」
「しても良くなりましたらご連絡しますわ」
そう伝えてから、近くにいた執事にグレイルの居場所を尋ねた。
婚約破棄されたことを伝えないといけないことと、このままではこの国は終わる。
暴君である国王陛下が今すぐに亡くなることはないだろうから、それまでに国を出れば良いだけの話だ。
私はすぐにこの国を出る事はできる。
だけど、グレイルは無理だった。
代々続いてきたマラク公爵家ををグレイルが簡単に捨てられるわけがないし、私だって亡くなったお父様のためにもグレイルにマラク公爵家を継いでもらい、その後もグレイルの子供なりに継いでいってほしい。
自室にいたグレイルに今日の出来事を話すと、絶望した表情になった。
少年とも言っていい年齢の彼に、こんな顔をさせてしまったことを姉として、とても申し訳なく思って謝る。
「ごめんなさい、グレイル。お姉様を放置しすぎたわ」
「僕のほうこそごめんなさい。レファお姉様を放置してしまった僕の責任だ。とにかく、リーチェお姉様は婚約破棄してもらって良かったと思います。ローディ殿下に嫁げば命の危険がありますから」
「そうね。国王陛下は気まぐれに剣を抜いて首をはねるような人だもの」
お姉様だってそのことを知っているはずだけれど、頭がお花畑だから、自分が同じ目に遭うかもしれないという恐怖はないのだと思われる。
不安そうな顔をしているグレイルに話しかける。
「グレイル、大丈夫よ。あなたがここにいる間は、私があなたを守るからね」
グレイルはまだ15歳。
しっかりしているとはいえ、誰か頼れる人間が必要なはず。
私がグレイルを支えてあげなきゃ。
そう思っていたのに、国王陛下はそれを許してはくれなかった。
数日後、私は国王陛下から呼び出された。
国王陛下が座っている玉座付近には、大事なところだけ隠された、ほとんど裸状態の若い女性たちがたくさんいた。
けれど、王妃陛下の姿は見えなかった。
国王陛下には愛人が多くいると聞いたけれど、周りにいる10人近くの若い女性が、その愛人なのだろう。
金色に輝く王冠を被った精悍な体と整った顔立ちを持つ陛下は、ギラギラした金色の瞳を私に向けて口を開いた。
「ローディの浮気はリーチェの責任だ。ここで殺されるか国外追放、どちらか今すぐ選べ」
国王陛下は玉座の横に置いていた剣を一人の女性に持ってこさせると、鞘から剣を引き抜いた。
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