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第一部
24 動かれたら面倒!
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レイティア様に事情をお話したところ、嫌な顔一つせずに了承してくれた。
そして、早速、行動に移すことになり、私たちも人を巻き込まない場所に移動して、レイティア様と準備を整えた。
「それにしても、なんて楽しそ……、いえ、リーチェ様は無理をなさらないでくださいませね。ジェド、しっかりお守りするのよ」
「もちろん、そのつもりでおります」
「リーチェ様、私は段取りだけさせてもらいますわね。本来なら、私も一発入れたいところではありますが」
「もう、何発も入れているでしょう」
私が何も言わずにいると、ジェド様が呆れた顔で言った。
レイティア様は必殺技を最低国王以外の他の男性には何度もしたことがあるらしく、私にとっては第二の師匠だったりする。
でも、ジェド様からはレイティア様を師匠にするのは良くないと止められてもいる。
エル様に言わせると、レイティア様は頼もしいのか心配の種なのか判断がしづらいらしい。
「悪い人はたくさんいるでしょう。こちらも磨きをかけないと駄目よ」
「警察や護衛の意味がありませんね」
レイティア様の反論にジェド様が応えた時、レイティア様の部屋の扉が叩かれた。
「来たわね」
レイティア様はなぜか嬉しそうな顔をして返事をした。
すると、最低国王が中に入ってきて叫ぶ。
「俺を呼び出すなんていい度胸だな! そんなに殺されたいのか!」
「殺されたくはないですわね! ただ、今日はいつもと違ったことをしようと思っていますのよ」
レイティア様は微笑むと、鏡の方に目を向けた。
エル様が確認するように私を見る。
私は準備ができているので、無言で頷いた。
今、私とエル様とジェド様は森の中に来ている。
周りは木で囲まれていて、太陽の光も通りにくくて視界が悪い。
そこへ、最低国王を転移させて、エル様に対峙してもらう。
その間に、私が後ろから必殺技を食らわせるというやつだ。
「何をするつもりなんだ!?」
「とっても楽しいことですわ」
最低国王に向かってレイティア様は微笑むと、持っていた扇を広げた。
それが転移の合図になっているので、エル様は最低国王を森の中に転移させると同時に、ジェド様が地面に置いていた水晶玉を拾い上げ、私を木々の後ろに隠れさせた。
「な!? 何だ!?」
私達の前に現れた最低国王は焦った顔をして周りを見回し、すぐにエル様の存在に気が付いた。
「だ、誰だお前は!?」
最低国王は剣を抜こうとしたけれど、彼の剣は大剣だから木に当たってしまい扱いにくそうだった。
「俺が誰かは近い内に知ることになると思う。どうせ、覚えていないんだろうけどな」
「うるさい! 俺を元の場所に戻せ! ここはどこなんだ!?」
「元の場所に戻してくれるのは、レイティア様の気まぐれだよ。レイティア様にお祈りしたらどうだ?」
「くそっ! どうして、俺がそんなことを! 母上が人質にとられていないければ、こんなことにはならなかったのに!」
「あんたの母上は、レイティア様と一緒にいるほうが楽しいと思うけどな」
エル様が大木にもたれかかり、胸の前で腕を組んで笑った。
実際、先代の王妃様の様子を見せてもらったら、レイティア様の家の予算で美味しいものを食べたり飲んだりしていて、とても幸せそうだった。
ちなみに、私と連絡を取るようになってから、レイティア様のお家は商売が今まで以上に繁盛するようになったらしい。
「うるさい! そんなことがあるわけがないだろう!」
最低国王が怒りで体を震わせながら叫んだ。
彼はエル様の挑発のせいで、私たちがいることに全く気付いていないようだった。
そろりそろりと息を殺して近付き、最低国王の真後ろに立ったところで、最低国王は大剣をかまえて、エル様に今にも斬りかかろうとした。
動かれたら面倒!
そう思って急いで蹴り上げたところ、タイミングがおかしくなった。
本当なら向こう脛あたりで蹴るつもりで、防具までつけていたというのに失敗した。
ただ、空振りはしなかった。
私のつま先が、何とか彼の急所をとらえることができたのだった。
※
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
1作終わらせまして、新たに「残念ながらすべてお見通しです」という新作を始めました。
ご興味ありましたら、読んでいただけますと幸いです。
そして、早速、行動に移すことになり、私たちも人を巻き込まない場所に移動して、レイティア様と準備を整えた。
「それにしても、なんて楽しそ……、いえ、リーチェ様は無理をなさらないでくださいませね。ジェド、しっかりお守りするのよ」
「もちろん、そのつもりでおります」
「リーチェ様、私は段取りだけさせてもらいますわね。本来なら、私も一発入れたいところではありますが」
「もう、何発も入れているでしょう」
私が何も言わずにいると、ジェド様が呆れた顔で言った。
レイティア様は必殺技を最低国王以外の他の男性には何度もしたことがあるらしく、私にとっては第二の師匠だったりする。
でも、ジェド様からはレイティア様を師匠にするのは良くないと止められてもいる。
エル様に言わせると、レイティア様は頼もしいのか心配の種なのか判断がしづらいらしい。
「悪い人はたくさんいるでしょう。こちらも磨きをかけないと駄目よ」
「警察や護衛の意味がありませんね」
レイティア様の反論にジェド様が応えた時、レイティア様の部屋の扉が叩かれた。
「来たわね」
レイティア様はなぜか嬉しそうな顔をして返事をした。
すると、最低国王が中に入ってきて叫ぶ。
「俺を呼び出すなんていい度胸だな! そんなに殺されたいのか!」
「殺されたくはないですわね! ただ、今日はいつもと違ったことをしようと思っていますのよ」
レイティア様は微笑むと、鏡の方に目を向けた。
エル様が確認するように私を見る。
私は準備ができているので、無言で頷いた。
今、私とエル様とジェド様は森の中に来ている。
周りは木で囲まれていて、太陽の光も通りにくくて視界が悪い。
そこへ、最低国王を転移させて、エル様に対峙してもらう。
その間に、私が後ろから必殺技を食らわせるというやつだ。
「何をするつもりなんだ!?」
「とっても楽しいことですわ」
最低国王に向かってレイティア様は微笑むと、持っていた扇を広げた。
それが転移の合図になっているので、エル様は最低国王を森の中に転移させると同時に、ジェド様が地面に置いていた水晶玉を拾い上げ、私を木々の後ろに隠れさせた。
「な!? 何だ!?」
私達の前に現れた最低国王は焦った顔をして周りを見回し、すぐにエル様の存在に気が付いた。
「だ、誰だお前は!?」
最低国王は剣を抜こうとしたけれど、彼の剣は大剣だから木に当たってしまい扱いにくそうだった。
「俺が誰かは近い内に知ることになると思う。どうせ、覚えていないんだろうけどな」
「うるさい! 俺を元の場所に戻せ! ここはどこなんだ!?」
「元の場所に戻してくれるのは、レイティア様の気まぐれだよ。レイティア様にお祈りしたらどうだ?」
「くそっ! どうして、俺がそんなことを! 母上が人質にとられていないければ、こんなことにはならなかったのに!」
「あんたの母上は、レイティア様と一緒にいるほうが楽しいと思うけどな」
エル様が大木にもたれかかり、胸の前で腕を組んで笑った。
実際、先代の王妃様の様子を見せてもらったら、レイティア様の家の予算で美味しいものを食べたり飲んだりしていて、とても幸せそうだった。
ちなみに、私と連絡を取るようになってから、レイティア様のお家は商売が今まで以上に繁盛するようになったらしい。
「うるさい! そんなことがあるわけがないだろう!」
最低国王が怒りで体を震わせながら叫んだ。
彼はエル様の挑発のせいで、私たちがいることに全く気付いていないようだった。
そろりそろりと息を殺して近付き、最低国王の真後ろに立ったところで、最低国王は大剣をかまえて、エル様に今にも斬りかかろうとした。
動かれたら面倒!
そう思って急いで蹴り上げたところ、タイミングがおかしくなった。
本当なら向こう脛あたりで蹴るつもりで、防具までつけていたというのに失敗した。
ただ、空振りはしなかった。
私のつま先が、何とか彼の急所をとらえることができたのだった。
※
いつもお読みいただき、ありがとうございます!
1作終わらせまして、新たに「残念ながらすべてお見通しです」という新作を始めました。
ご興味ありましたら、読んでいただけますと幸いです。
応援ありがとうございます!
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