待つわけないでしょ。新しい婚約者と幸せになります!

風見ゆうみ

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10  ため息を吐かれる

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 早速、今日からルーと呼ぶ事になり、彼と一緒に呼ぶ練習をしている内に、食事が運ばれてきた。
 店内も騒がしくなってきて、店の中に急に人が増えてきたなと感じた。

 それにしても、ルーと一緒に食べる事がこんなに緊張するだなんて思わなかった。
 胸がいっぱいだから、何を食べても味がしない。
 かたや、ルーはそんな様子は全く無く、王子なのに食べ方も豪快で、ついつい見入ってしまうと、彼は食べる手を止めて首を傾げた。

「食いたいのか?」
「えっと、あの、違います」
「遠慮すんなって」

 ルーはステーキを食べていたのだけど、一口サイズに切ってくれて、3切れをフォークにさして、小皿にのせてくれた。

「美味いから」
「ありがとうございます。あの、ルーは食べますか?」

 私が食べていたパスタを指さしながら聞くと、ルーは大きく頷く。

「迷惑じゃなければ。そういうの女性と一緒じゃないと食いにくい気がして、あんまり食べたりことないんだ」
「お城では出なかったんですか?」
「あまり帰らないからな。たまに帰ると肉料理ばっかなんだよ。俺が肉料理が好きだと知ってるからなんだろうけど」

 ルーの話を聞きながら、小皿にパスタを移して、彼に渡した。

「美味そう」
「ステーキも美味しそうです」

 2人で笑いあった後、交換した料理を食べる。
 すごく、すごく美味しい。
 彼から分けてもらったというだけで美味しい。
 って、なんか恋人同士みたいじゃない?
 幸せ…。

「そういえば、さっきの話の続きだけど、君の元婚約者は城下に来てるみたいだ。ついでに俺の元婚約者も」
 
 ルーが話し始めると、なぜかあちらこちらからため息が漏れた。

 たまたまかな、と思って気にしないでいたんだけど…。

「君もビアンカに会いたくないだろ? 彼女達はあと一週間はこっちに滞在予定らしい。だから、明後日からは城下を離れて違う場所に移動しないか?」
「違う場所?」
「エッジホール領の様子を見に行こうと思ってるんだ。だから、一緒に行かないか?」

 ルーの言葉にまた、ため息だけではなく、今度は舌打ちと失笑も聞こえてきた。
 すると、ルーが食事の手を止めて立ち上がる。

「俺の仲間は、今すぐに店から出ていけ」

 しーんと店内が静まり返ったと思うと、ガタガタと椅子から大勢の人が立ち上がり、お会計をして帰っていく。

「飯食ったら帰りまーす」

 と手を挙げる人もいた。
 人が増えたと思ったら、ルーの部下というか、お仲間の人だったのね。
 関係のないお客さんは目を丸くして、ルーを見ていたけど、ルーが席に座ると、彼を見るのを止めた。

「皆さん、ルーの事が好きなんですね」
「絶対に面白がってるだけだ」
「そうかもしれませんが…。非番の人が心配して様子を見に来て下さってるんでしょう? 愛されてる証拠ですよ」
「君はポジティブなんだな」
「そうでないと、戦地に行った父や兄の帰りを家で待ってなんていられませんよ」
「…そうだよな」

 ルーはどこか悲しげな顔をしたあと、私の言葉に同意した。
 しめっぽくなってしまったので話題を変えてみる。
 
「そういえば、ルーはビアンカ様が愛人を作ると思ってたんですか?」 
「ああ。俺になんぞ、指一本も触れてほしくなさそうだったしな。俺は俺で、留守にしている間、心配したくなる相手ではなさそうだったから都合が良かったんだ」
「そうですか…」

 自分で聞いておいてダメージを受けている。
 結局、ルーは私の事もそういう風に思える相手だから、婚約をしようとしてくれてるのよね?

「……どうした?」
「あ、いえ」

 首を横に振ると、ルーの目の前に折りたたまれた紙が落ちてきた。
 ルーが紙を広げたと思うと、なぜか紙を私の方に差し出してきた。

「?」

 紙を受け取って、書かれている文字を読んでみると『デートしてるんだから、今はお嬢の話をしろ。長く付き合ってる女が相手じゃないんだから、過去の女の話をするな』だった。

「というわけで、君が喜ぶ話ってなんなのか教えてくれ。その、女性と2人で食事っていうのも初めてなんだよ。店も仲間から教えてもらった店だし」
「喜ぶ話…?」

 少し考えてから、勇気を出して言ってみる。

「ルーは日頃はどんな風に鍛練されているのですか?」
「ん?」
「昨日、姉御からお話を聞きまして、ルーは魔法も使えるし、接近戦も強いとお聞きしたんです! 魔法は私には使えませんが、もっと強くなりたい私としましては、どのように鍛えれば良いのか教えていただきたいんですが!」

 テーブルに身を乗り出して言うと、ルーが目を輝かせて言う。

「そっか。そういうのに、興味があるんだな。じゃあ、今度、城の方に来るか? 騎士団の練習を見せてやる」
「本当ですか!?」

 両手を合わせて喜んだ私だったけれど、護衛として残っていた周りの人達からはため息を吐かれてしまった。
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