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9 勘違いされる
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次の日、昼前にルーザー殿下が私の泊まっている宿にやって来た。
今日は会う予定ではなかったから、だらけた服装をしてたんだけど、出かける用意をすぐに済ませ、殿下と2人で食事をしに外へ出かけた。
姉御達が私を気に入ってくれたようで「逃がすな」と言われたらしく、殿下が今日、視察に行かなければならなかった場所を部下の人達が代わりに見に行ってくれる事になったとの事。
気に入ってもらえたのも嬉しいし、殿下とはデートしてるみたいですごく嬉しい!
気持ちを自覚してしまうと、殿下が今までよりもキラキラして見えてしまう。
といっても、浮かれた気分なのは私だけで、殿下は席について注文を終えるなり、昨日の話を持ち出してきた。
「昨日は悪かった。あれから部下から報告があって、あの男の目的が何だったかはわかった」
「…目的は何だったんでしょうか?」
「あの男はミゲル伯爵令息から、自分が待っている場所に君を連れて来る様に頼まれたらしい」
「私の元婚約者にですか?」
「ああ。どうやら、彼は君を諦めきれないみたいだな」
殿下が苦笑して続ける。
「君の気持ちはどうなんだ? 彼がフリーになったら、よりを戻したいか?」
「絶対にありえません!」
「ならいいけど、君に婚約を申し込む前に調べた様子だと、君と彼はその…」
「深い関係ではありません! もちろん、好きだった事は確かですけど…」
テーブルの上で両手を握りしめて俯くと、殿下が頭を下げた。
「嫌な事を思い出させてごめん」
「全然! それよりも殿下は失望したんじゃないですか? 私があんな男を好きだったなんて」
「何で?」
「だって、おかしい男じゃないですか」
「その時は良く見えたんだろ? 今は気付けたんだからいいと思うし、それに俺はそんな事で君に失望したりしない」
殿下がにこりと笑うから、胸がきゅうんとなる。
何回も自分で言うのもなんだけど、私ってば本当にチョロい!
「どうした?」
「いえ、何でもないです。ちょっと反省しただけです」
「反省する必要ないだろ。それに、俺なんか、元婚約者に虫けらみたいな目で見られてたのに、婚約解消しなかったんだぞ?」
「……殿下は、ビアンカ様が好きだったんですか?」
好きだった、なんて言われたらどうしよう。
そう思って握りしめていた両手を、改めて握りなおす。
「んな訳ないだろ? アイツとだったら、結婚しても俺に興味はないだろうし、愛人でも作るだろうと思って、わざと解消しなかったんだ」
「殿下は、その、あまり、結婚生活には興味がないのでしょうか?」
「ん?」
殿下はきょとんとした後、なぜかアワアワし始めた。
「いや、興味がないわけではなく、知識と経験がないだけで! もちろん、君が望むなら、どんなものかは結婚までに調べるから!」
「知識はまだしも、経験は私もないのですが…?」
「…その、君は相手が……だと」
「はい?」
なぜか声が小さくなってしまったので聞き返すと、殿下は顔を背けてしまった。
気に障るような事を言ってしまった?
そんなに結婚が嫌なの?
無意識に肩を落としていたらしく、殿下が慌てる。
「がっかりしないでくれ! 君がどうしてもと言うなら娼館に行って覚えてくる!」
「はい?」
なんで娼館が出てくるの?
って、ああ!
もしかして、勘違いしてる!?
「あの、殿下。私が言っています結婚生活というのは、夜の方ではなく、ご飯を一緒に食べたりとか、お話したり、お出かけしたりとか、そっちの方です」
「………」
殿下は私の方を見て固まったかと思うと、テーブルに額をぶち当てた。
「ででで、殿下ぁっ!?」
思わず、大きな声を上げてしまったので、口をおさえて、周りを見回したけれど、皆、こちらを気にしていない様で大丈夫そうだった。
「本当にごめん」
「いえ、私の聞き方が悪かったんです」
「いや、俺が悪い。ごめん」
殿下は顔を上げた後、また謝ってくれた。
「では、どちらも悪くないでどうですか?」
「それだと助かるけど」
どこか納得した様子ではなさそうだけれど、殿下が首を縦に振る。
「それにしても、覚えてくるだなんて…」
あはは、と笑うと、殿下は少しムッとした顔をする。
「結婚生活だなんて言うから」
「殿下、私は夜の話とは言っていませんよ」
「ルーでいい」
「はい?」
「殿下呼びはちょっとな。それに、ルーザーと呼ばれるのも名前で身バレしそうだから、仲間にも基本はボス呼びだが、外ではルーと呼ばせてる。様もいらない」
殿下はポリポリと頬をかきながら言った。
「……私も、呼んでもいいんですか?」
「当たり前だろ」
胸がドキドキして、声が震えそうになるのをこらえて聞くと、殿下は笑って頷いた。
今日は会う予定ではなかったから、だらけた服装をしてたんだけど、出かける用意をすぐに済ませ、殿下と2人で食事をしに外へ出かけた。
姉御達が私を気に入ってくれたようで「逃がすな」と言われたらしく、殿下が今日、視察に行かなければならなかった場所を部下の人達が代わりに見に行ってくれる事になったとの事。
気に入ってもらえたのも嬉しいし、殿下とはデートしてるみたいですごく嬉しい!
気持ちを自覚してしまうと、殿下が今までよりもキラキラして見えてしまう。
といっても、浮かれた気分なのは私だけで、殿下は席について注文を終えるなり、昨日の話を持ち出してきた。
「昨日は悪かった。あれから部下から報告があって、あの男の目的が何だったかはわかった」
「…目的は何だったんでしょうか?」
「あの男はミゲル伯爵令息から、自分が待っている場所に君を連れて来る様に頼まれたらしい」
「私の元婚約者にですか?」
「ああ。どうやら、彼は君を諦めきれないみたいだな」
殿下が苦笑して続ける。
「君の気持ちはどうなんだ? 彼がフリーになったら、よりを戻したいか?」
「絶対にありえません!」
「ならいいけど、君に婚約を申し込む前に調べた様子だと、君と彼はその…」
「深い関係ではありません! もちろん、好きだった事は確かですけど…」
テーブルの上で両手を握りしめて俯くと、殿下が頭を下げた。
「嫌な事を思い出させてごめん」
「全然! それよりも殿下は失望したんじゃないですか? 私があんな男を好きだったなんて」
「何で?」
「だって、おかしい男じゃないですか」
「その時は良く見えたんだろ? 今は気付けたんだからいいと思うし、それに俺はそんな事で君に失望したりしない」
殿下がにこりと笑うから、胸がきゅうんとなる。
何回も自分で言うのもなんだけど、私ってば本当にチョロい!
「どうした?」
「いえ、何でもないです。ちょっと反省しただけです」
「反省する必要ないだろ。それに、俺なんか、元婚約者に虫けらみたいな目で見られてたのに、婚約解消しなかったんだぞ?」
「……殿下は、ビアンカ様が好きだったんですか?」
好きだった、なんて言われたらどうしよう。
そう思って握りしめていた両手を、改めて握りなおす。
「んな訳ないだろ? アイツとだったら、結婚しても俺に興味はないだろうし、愛人でも作るだろうと思って、わざと解消しなかったんだ」
「殿下は、その、あまり、結婚生活には興味がないのでしょうか?」
「ん?」
殿下はきょとんとした後、なぜかアワアワし始めた。
「いや、興味がないわけではなく、知識と経験がないだけで! もちろん、君が望むなら、どんなものかは結婚までに調べるから!」
「知識はまだしも、経験は私もないのですが…?」
「…その、君は相手が……だと」
「はい?」
なぜか声が小さくなってしまったので聞き返すと、殿下は顔を背けてしまった。
気に障るような事を言ってしまった?
そんなに結婚が嫌なの?
無意識に肩を落としていたらしく、殿下が慌てる。
「がっかりしないでくれ! 君がどうしてもと言うなら娼館に行って覚えてくる!」
「はい?」
なんで娼館が出てくるの?
って、ああ!
もしかして、勘違いしてる!?
「あの、殿下。私が言っています結婚生活というのは、夜の方ではなく、ご飯を一緒に食べたりとか、お話したり、お出かけしたりとか、そっちの方です」
「………」
殿下は私の方を見て固まったかと思うと、テーブルに額をぶち当てた。
「ででで、殿下ぁっ!?」
思わず、大きな声を上げてしまったので、口をおさえて、周りを見回したけれど、皆、こちらを気にしていない様で大丈夫そうだった。
「本当にごめん」
「いえ、私の聞き方が悪かったんです」
「いや、俺が悪い。ごめん」
殿下は顔を上げた後、また謝ってくれた。
「では、どちらも悪くないでどうですか?」
「それだと助かるけど」
どこか納得した様子ではなさそうだけれど、殿下が首を縦に振る。
「それにしても、覚えてくるだなんて…」
あはは、と笑うと、殿下は少しムッとした顔をする。
「結婚生活だなんて言うから」
「殿下、私は夜の話とは言っていませんよ」
「ルーでいい」
「はい?」
「殿下呼びはちょっとな。それに、ルーザーと呼ばれるのも名前で身バレしそうだから、仲間にも基本はボス呼びだが、外ではルーと呼ばせてる。様もいらない」
殿下はポリポリと頬をかきながら言った。
「……私も、呼んでもいいんですか?」
「当たり前だろ」
胸がドキドキして、声が震えそうになるのをこらえて聞くと、殿下は笑って頷いた。
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